台湾Gamaniaが手がける“新作自社開発タイトル”を独占取材!
Unreal Engine 3を使った「Project Core」や名作「ラングリッサー」のMMORTS版など5タイトル


2月収録

Gamania本社


ガマニア本社の入っている複合オフィスビル

 日本では台湾産オンラインタイトルの運営会社というイメージの強いガマニアだが、台湾のGamania Digital Entertainment(以下、Gamania)本社では新作ゲームが着々と作られている。「Taipei Game Show 2010」期間中にGamania本社を訪問して、一足先にそれらのタイトルを取材してきた。この時期の掲載になったのは、Gamania本社の正式発表に合わせる形になったためだ。情報の鮮度は保障するので、何卒ご了承願いたい。

 新作は合わせて5本。Unreal Engine 3を使った力作「Project Core」、ジョン・ウーの最新映画「剣雨江湖」とタイアップした「Project SR」、「ルーセントハート」開発チームの新作MMORPG「Divina」、メガドライブ時代の名作シミュレーションRPG「ラングリッサー」の世界観をモチーフにした「Langrisser Online(ラングリッサーオンライン)」、欧米の子ども向けカジュアルゲーム「HERO:108」とバラエティ豊富だ。5本のうち「Divina」、「Langrisser Online」の2本は企画段階から日本市場を意識したキャラクターや世界観で作られている。

 開発はすべて自社で行なわれているが、Gamaniaでは今年から開発部門をすべて子会社化して、独立採算制に切り替えた。子会社は同じビル内にあり、Alibangbang Digital GamesのJack Chang氏、RedGate GamesのZack Chang氏とArthur Shen氏、PlayCooのMikey Chiu氏らが取材に応じてくれた。新作の情報と合わせて、それぞれの開発現場の雰囲気や、サービススケジュールなどをまとめて紹介したい。また、Albert Liu氏へのインタビューでも自社タイトルについて質問しているので合わせて参照いただきたい。




■ 平均年齢28歳。社内には若いエネルギーが充満

gamania本社のパブリックスペースは、コーポレートカラーのオレンジ色で明るい雰囲気にコーディネートされている
今回、取材の対応をしてくれたPRマネージャーのTing Hung氏

 Gamaniaは、台北市の南、中和市に建つIT企業の複合テナントビルに居を構える。平均年齢28歳という若い会社だけあり、社内はポップな雰囲気のデザインでまとめられ、社員食堂はオシャレなカフェのようだ。食堂の壁に埋め込まれたガラスケースの中には、出世作「便利商店」をはじめ、Gamaniaの過去の作品が飾られている。奥の壁には、Albert LiuCEOが現在凝っているという登山の写真が張り出されていた。食堂に置いてあった社内報はまるで大学のサークル紹介のようで、楽しんで仕事をしている雰囲気が伝わってくる。

 Gamaniaは近年開発部門を強化しつつあるが、昨年、部内で開発することを辞め、開発部門をすべて子会社して、予算の管理まで任せる形で開発が進められている。今回、開発現場を訪ねたRedGate GamesやPlayCooなどはみな本社と同じビルにある。隣り合った子会社は、同じGamaniaグループの一員でありながら、しのぎを削るライバルでもあるわけだ。取材では、最初に本社会議室でそれぞれの作品のプロモーションムービーを見せてもらい、その後子会社を回ってそれぞれのプロデューサーから話を聞かせてもらった。

 紹介する5本のうち「Langrissa Online」は、ムービーのみで実際のゲーム画面は見られなかった。他の4本は開発現場で動いている画面を見ながら話を聞くことができた。北米市場でサービスを目前に控える「HERO108」はもうほぼ完成系といっていい状態だったが、残り3本はまだボイスが仮だったり、一応の形はできているが細かい部分の調整はこれからという状態で、特に「Project Core」についてはまだまだ不明な部分が多い。

 5本のゲームは全て、東京ゲームショウ(TGS) 2010にプレイアブルで出展する予定だ。その頃には、ゲームの詳細も明らかになっているだろう。日本人が喜びそうなタイトルが多いだけに、期待して待ちたい。




■ Unreal Engine 3を使ったド迫力のアクションMMO「Project Core」

RedGate Gamesの入り口にある赤いドア
「Project Core」の説明をしてくれた、RedGate Games RD Dep1 CoodinatorのZack Chang氏

 今回、見せてもらった新作の中で、もっとも話題を呼びそうなのがRedGate Gamesが開発しているアクションMMORPG「Project Core」だろう。RedGate Gamesは、Gamania社内にある開発子会社の1つで、その社名通り、社の入り口には赤いドアがある。ドアには“Behind this Gate.We are creating the World”というメッセージが書かれていた。Red Gateではこの「Project Core」と、今回紹介する「HERO 108」の2本を開発している。

 「Project Core」は、コンシューマー用アクションゲームのような、派手で自由度の高い戦闘が楽しめるMMORPGだ。「Unreal Engine 3」(以下、UE3)を使用した美麗なグラフィックスが特徴だ。近年はFPSに使われる高性能なエンジンを用いたMMORPGが増えているが、本作もその流れにのった作品といえる。他にUE3を使った作品としてはNCSoftの「Blade & Soul」があげられるが、その迫力に勝るとも劣らない。

 見せてもらった映像では、プレーヤーキャラクターが画面内を縦横に駆け巡りながら、敵MOBや木などのオブジェクトをなぎ倒し、最後には巨大なサルのモンスターと戦っていた。スピード感はかなりのもので、実際「MMOです」とChang氏に教えてもらうまで、てっきりMOのアクションゲームだと思っていた。それくらいキャラクターがよく動き、画面に躍動感があった。武器で攻撃すると、敵だけでなくオブジェまで破壊できるというのも、UE3ならではのダイナミズムだろう。

 「“Project Core”という仮のタイトルは、このゲームが今後RedGate Gamesの中核(コア)になっていくだろうという気持ちを込めました」とプロデューサーのZack Chang氏。「Project Core」のビジネスモデルはまだ確定していない。基本プレイ無料のアイテム課金になる可能性が大きいが、「状況によっては定額課金も含めたハイブリッドという選択肢もありうる」(Chang氏)と、新しいビジネスモデルを模索していることを伺わせた。今回見ることができたのは短い戦闘シーンのPVだけなので、操作方法やスキルなどの詳細は不明だ。台湾発のアクションMMORPGとしては、今までにない大作になりそうだ。台湾でのCBTは2010年の第2四半期の予定だ。


大剣を持った渋めのキャラクターの画像を入手



■ 「デュアルクラスシステム」で2つのクラスを同時に育成できる「Divina」

PlayCooは、「ルーセントハート」の開発会社として日本でも著名なメーカーだ
PlayCooのProduct Development Department Senior ManagerのMikey Chiu氏
開発中の「Divina」のゲーム画面

 「ルーセントハート」を開発したPlayCooの最新作は、世界の神話や伝説をモチーフにしたカジュアルなMMORPG「Divina」だ。こちらも「Project Core」と同様、2010年第2四半期に台湾でのCBTが予定されており、現在はまだ開発半ばといった所だ。

 「まだまだ調整はこれからです」と、プロデューサーのMikey Chiu氏は開発中の画面を見せながら説明してくれた。キャラクターは、「ルーセントハート」と同様にとてもかわいらしく日本人好みにデフォルメされている。また、「ルーセントハート」ではスケジュールの関係で間に合わなかった日本の声優のボイスが、今作では最初から組み込んだ状態でサービスを行なうという。現在開発中のバージョンにも既に仮の日本語音声が入っていた。それは既存のゲームから転用した仮ボイスということで、本番では人気声優の声でゲームを楽しめそうだ。

 本作は、マップのエリアごとに日本神話、ギリシア神話、中国神話、北欧神話と、各国の神話をベースにした世界が広がっている。今回見せてもらったのは、日本神話をモチーフにしたステージだ。神話というよりは、昔話的な風景に神社や招き猫、和風のオブジェが並んでいた。日本エリアではイザナギ、イザナミなどの神話の登場人物も出てくるらしい。

 しかし「Divina」をもっとも特徴付ける要素として注目したいのは、1人のキャラクターで2種類のクラスを同時に育成できる「デュアルクラスシステム」だろう。「ルーセントハート」にも「ほしとも」などの独創的なアイデアが採用されており、他にはない一風変わったシステムはPlayCooの得意技だ。「デュアルクラスシステム」は1人のキャラクターで2つのクラスを同時にプレイできるという、今までにないシステムだ。

 プレーヤーは最初、戦士、魔法使い、ヒーラー、スカウトの4クラスから1つを選ぶ。そのクラスでレベル20まで育てると、「デュアルクラス」を選択できるようになる。転職ではなく、元のクラスの職のまま、もう1つ新しいクラスとして同じキャラクターを育てることができるのだ。レベル20で覚えられる2つめのクラスは、レベル1から育てることになるが、最初のクラスよりも育てやすい仕組みが用意してあるそうだ。現在のクラスから別のクラスに転職することもできる。

 2つのクラスを任意で切り替えながら、同時に2つのクラスをプレイすることができる。切り替えには、戦闘でたまる“ハート型”ポイントが必要で、最大3つまでストックできる。パーティーを組むときに、足りないクラスを補うために利用したり、戦闘中に状況に応じてロールを換えたりするなど臨機応変にクラスを変えることができる。

 クラスを変えると、装備がそれぞれのクラスでセットしているものに瞬時で変わるうえに、ステータスもそのクラスで育てた数値に変わるので、アタッカーの時には回避や攻撃力重視、盾の時には生命や防御力重視と、シーンに合わせて変更することができる。状況に合わせて素早くクラスを切り変えながらの戦いは、さながら1人でタッグマッチを組むようなものだ。2つのクラスの使いどころが、新しいプレーヤースキルの要素として重要になりそうだ。


「デュアルクラスシステム」で1キャラを育てながら、2つのクラスを楽しめる日本神話をベースにした世界には、まねきねこや鯉のぼりなど、日本らしいオブジェがたくさん配置されている



■ ジョン・ウー監督の映画世界をオンラインゲーム化した「Project SR」

Alibangbang Digital Gamesのロゴマークはトビウオがモチーフ
「Project SR」の説明をしてくれた、Alibangbang Digital GamesのR&D Department Manager、Jack Chang

 「Project SR」は、「レッドクリフ」のジョン・ウー監督の新作映画「剣雨江湖」をオンラインゲーム化したものだ。映画は明朝の中国を舞台にした武侠ファンタジーで、ゲームでは映画には登場しないエリアにも行くことができる。開発しているAlibangbang Digital GamesのJack Chang氏によると、現在の開発度は約30%程度で、映画と同時期のサービスインを予定している。映画は台湾では2010年末に公開される予定だ。Gamaniaは映画のスポンサーにもなっていて、映画にかける期待も大きい。

 映画の主人公はゲームにはNPCとして登場し、プレーヤーは彼を助けることになる。レベル20までは映画のストーリーに沿って進み、それ以降は映画には登場しない中国西部へ旅立っていく。南京や上海など実在の街も登場する。グラフィックはしっとりと美しく、広大な世界を緻密に表現している。

 プレーヤーキャラクターが選べるクラスは5つ。中には、自分と同じくらいのサイズの人形を糸を使って操る「傀儡師」といった変わったクラスもある。スキルを使うと、墨文字のような漢字のエフェクトが出る。ムービーを見る限り、かなりアクション性が高そうに見えるが、操作は簡単なのだそうだ。対人戦では、最大3対3のグループ戦も楽しめる。

 一風変わったペットシステムも本作の特徴だ。「剣雨江湖」のペットは、プレーヤーがオフラインの間に登録しておくことで、自分と趣味の合う友人を探してくれたり、クエストを受けてきてくれる。オンライン上の友達作りがあまり得意ではない日本人プレーヤーが、この機能を上手に使いこなせるかどうかは少々疑問だが、自動的に知人を増やしてくれるという便利なシステムだ。

 Alibangbang Digital Gamesには、「仙魔道」のシステムが安定せずに結局日本での正式サービスが見送られたという苦い経験がある。そのため「剣雨江湖」では「システムの安定化に力を入れている」(Chang氏)ということだ。ミニマップを使った自動移動といった、便利な機能も盛り込まれる予定だ。


「Project SR」の舞台となる中国武侠世界プレーヤーキャラの1つ、「禁咒師」のイラスト



■ 同時期にスタートするアニメと共に欧米市場に勝負を挑む「HERO:108 Online」

「HERO:108 Online」の説明をしてくれた、RedGate Games RD Dep2 Assistant Project ManagerのArthur Shen氏
RedGate Gamesの開発現場。手前が「HERO:108 Online」、中央の柱から向こう側が「Project Core」を開発している

 「HERO:108 Online」は、Gamaniaが初めて欧米市場に向けて開発したキッズ向けのカジュアルオンラインゲーム。「Project Core」と並ぶ、RedGate Gamesのもう1つの柱だ。デフォルメされたキャラクターは、水滸伝の108人の英傑たちがモデルとなっている。対象としているプレーヤーは12歳から15歳くらいの子どもで、ゲームのサービスに先立って、同様のキャラクターと世界観を使ったアニメーション番組「HERO:108 Online」がカートゥーンネットワークで放送される。このアニメはGamaniaがハリウッドのスタッフと共に製作したもので、アニメとゲームのコラボレーションが「HERO:108」というプロジェクトの柱になっている。

 アニメは欧米で3月から、ゲームは4月からのサービスが予定されている。台湾では、その後年内のサービス開始を目指しているとのことだ。日本へのサービスは、現在のところ決まっていない。

 本作は3D空間を使った横スクロールアクションゲームで、上下に移動しながら横に向かって攻撃する。街とフィールド部分はMMOだが、インスタント・ダンジョンに入り、そこでボスと戦うという遊び方がメインになる。パーティーは最大8人。ギルドなどMMOに必要な要素は全て入っている。

 インスタント・ダンジョンのボスを倒すと、一定の確率でそのボスに変身できるようになるアイテムを落とす。そのアイテムを使うと、キャラクターがボスの姿になり、ステータスにもボーナスがつく。変身できるのは、キャラクターとそれほどサイズの変わらない通常のボスだけで、「メガボス」と呼ばれる巨大なボスには変身できない。

 「メガボス」は、ギルト単位で挑まなければならない強敵だ。「メガボス」のいるインスタントダンジョンには最大30人まで入ることができるので、Raidのような楽しみ方ができる。実際に開発のスタッフがパーティーを組んで「メガボス」に挑戦して見せてくれた。

 「メガボス」を倒すには、全員が攻撃に回るのではなく役割分担が必要だ。ボスの周りにはミニゲームが設置されており、それにクリアすると「メガボス」の動きを一時的に止めることができる。ミニゲームは籠の中に入ってる人形をそろえるといったとても単純なもので、「子ども向けなので、わかりやすく作っている」(Shen氏)のだそうだ。

 他にも、色々な種類の乗り物を見せてもらった。乗り物は4人のNPCが担いでいる輿や、戦車、動物などかなりのバリエーションがある。近年、子供向けのオンラインゲーム市場活発になってきているが、そんな中で本作がどれくらいの存在感を示せるのか、Gamaniaの挑戦を見守りたい。


大きなエフェクトと凝ったアクション。戦闘はかなり派手だゲームとアニメは連動していて、同じキャラクターが登場する
ゲームのイベントシーン巨大な「メガボス」は、仲間全員の協力がなければ倒せない



■ あの名作がオンラインゲームで復活。美少女がいっぱいのオンラインRTS「Langrissa Online」

 最後に紹介する「Langrissa Online」は、メサイヤの名作シミュレーションRPG「ラングリッサー」をベースにしたMMORTSだ。今回見ることができたのは、キャラクターが登場するイメージPVで、実際のプレイ画面がどうなるかについては今後の発表を待つことになる。

 ムービーでは、元のイラストよりも幾分子供向けにデフォルメされた女性キャラが勢揃いで登場していた。往年の「ラングリッサー」ファンはもちろん、新しいファンも楽しめる作品になりそうだ。本作も、今年のTGSにはプレイアブルで出展される予定なので、往年のファンはぜひ楽しみに待っていて欲しい。


まだ謎の多い「Langrissa Online」。詳細発表は東京ゲームショウになる見込みだが、引き続き期待していきたいところだ


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(2010年 3月 18日)

[Reported by 中村聖司/ 中村聖司]