インタビュー

【TGS2014】稲葉敦志氏と神谷英樹氏がXbox One「Scalebound」について語る

「ドラゴンと人間の絆を描きたい」。ドラゴンにこだわる神谷氏の最新作にかける想いとは!?

9月18日〜21日 開催(一般公開日 20日〜21日)



会場:幕張メッセ1〜9ホール



入場料:
前売り 1,000円
当日 1,200円
小学生以下無料

 E3 2014で正式発表され、Xbox Oneの純国産タイトルとして大きな期待が寄せられている「Scalebound」。開発はプラチナゲームズが担当し、エグゼクティブプロデューサーに稲葉敦志氏、ディレクターに神谷英樹氏という豪華な顔ぶれを揃えたAAAタイトルとなる。

 6月の発表以降、沈黙を守ってきたタイトルだが、東京ゲームショウでついにインタビューの機会が設けられ、稲葉氏と神谷氏、そしてクリエイティブプロデューサーを務めるJP Kellams氏の3名に対してゲームコンセプトや開発状況を聞くことができた。

 残念ながら新たな映像やスクリーンショットは一切無しで、パートナーのMicrosoftからまだ語るなと念押しされているためか、インタビュー前半はかなり口が重かったが、“ドラゴン”というキーワードの登場を境に神谷氏が堰を切ったように語り始め、稲葉氏が必死に抑えるという展開になり、久々に純粋なクリエイター魂に触れられたインタビューとなった。発売時期はもうしばらく先になりそうだが、ぜひお楽しみいただきたい。

【Scalebound - アナウンス トレーラー】

E3トレーラーは「すべての要素はゲーム性に直結」(神谷氏)、「1フレームの無駄もない」(稲葉氏)

「Scalebound」タイトルロゴ

――今回の東京ゲームショウでの出展内容は?

神谷氏: 特にありません。まだこのタイトルだけです(笑)。あとは、E3で発表したトレーラーぐらいですね。

――現在の開発状況はいかがですか?

神谷氏: 大変な状況です(笑)。

稲葉氏: 今どういう状況にあるのかというのもまだご説明できる段階ではないので、ご説明するのが難しいですね。

――発売時期はどのぐらいを目指しているのですか?

稲葉氏: そう遠くない時期だったらいいな(笑)。

神谷氏: 遠くてもいいんじゃない?

――(笑)。というと発売は2015年どころではなく、2016年以降という感じですか?

稲葉氏: タイトルを発表した以上、そう何年もお待たせするわけにはいかないと思います。特に我々は常習犯ですので(笑)。

――開発体制は?

稲葉氏: 開発はプラチナゲームズなので日本です。今回はMicrosoftとのパートナーシップを組んでいるので、Microsoft Studioから様々な協力をしてもらっています。リードクラスのスタッフから協力を受けているので、プラチナゲームズとMicrosoftの共同開発体制ということになります。

――開発規模は?

稲葉氏: AAAクラスだと思っていたければ。これだけ大きな開発体制は日本ではなかなかできなくなっていますし、Microsoftのサポート体制も手厚いので、巨大なプロジェクトと言えると思います。

――Xbox One専用タイトルということで、SmartGlassへの対応や、Kinectの採用などはありますか?

稲葉氏: 興味があるのは事実ですね。ゲームの基本が完成した上で、ハード独自の要素をつけれるだけ付け加えていきたいですけどね。

――現時点でお約束するという段階ではない?

稲葉氏: 少なくとも何かがないと楽しめないというゲームにはしたくありません。ただ、それがあることで違う楽しさが得られるのであれば、それは活かしていきたいという考え方ですね。ゲームコントローラーだけで遊べます。そこは否定することでもないので(笑)。

――実機映像が出るのはいつ頃になるのでしょう?

稲葉氏: こればかりは何とも言えませんね。それは出せるクオリティにないという話では無くて、どのタイミングで出すかは我々の一存では決められないので、ただ、日々の開発中に、作っている自分たちが「ああ、これ良いなあ」と言いながら開発しているのは確かです(笑)。

神谷氏: 映像の方向性に関しては、これまではたとえば「ベヨネッタ」とか、「デビル(メイクライ)」みたいなアクションゲームにフォーカスして作っていて、触り心地や遊び心地、反射神経、動体視力にかけるみたいな、その辺のおもしろさにフォーカスしていたが、今回はそういうベクトルでゲームを作っていないんですよ。単純なアクションゲームではないですし、グラフィクスも大事にしています。グラフィックスに関しては、これまで我々が作っていたものと違う絵作りが見せられるんじゃないかと思っています。

――グラフィックスに関しては、E3で発表されたプリレンダーのトレーラーのみですが、あの映像をそのままリアルタイムで動かすイメージで考えていいのですか?

神谷氏: そうですね。うーん、単純にプリレンダーとリアルタイムを比べられないと思うんですけど、あのプリレンダーの絵作りとはまたちょっと違うと思います。もう少し、なんていうんでしょうね、時間をかけて満足のいく絵作りを目指して作っています。

稲葉氏: 実機の方が遙かに驚きと迫力が大きいと思いますよ。

――トレーラーは、どの程度、実際のゲーム性を表現しているものでしょう?

神谷氏: 今回はゲームに関する詳しい説明はできないんですが、意味のないカットはひとつもありません。だから、後で実際のゲームを見て貰えれば「ああ、そうだったんだ」というのがわかると思います。トレーラーで表現しているすべての要素はゲーム性に直結しているので、そういうところも意識しながらもう一度見ていただくといいと思います。

稲葉氏: 神谷が言うとおり、1フレームすら無駄はないですよ。神谷は最後の最後までこの数フレームが足りないんだとかこだわって作ってトレーラーです。

――「これ良いなあ」と感じながらゲーム開発をしているということですが、具体的にどういうシーンでそれを感じているんでしょう?

神谷氏: トレーラーでも紹介しているように、このゲームの柱となるものは、巨大な怪物同士の激しいバトルだと思うんですよね。その部分をどう迫力を出すのか、そこにどう自分たちが干渉していって戦っていくのかというのを現場では作っているのでその部分ですよね。どんどん満足していく形に近づいているなという実感はあります。

――そのバトルについてですが、あれは1人で戦っているのか、それとも複数人で戦うのか、そのあたりはいかがでしょう?

稲葉氏: そこはまだお答えできません。答えられるとしたら短いプレイ時間で終わるゲームではないので、そこで想像していただけたらというところですね。

神谷氏: 僕が作っているということもあって「BEYONETTA」とか「The Wonderful 101」、「ビューティフルジョー」のような、あのあたりと比べて、ボスを倒してまたボスを倒して、1周終わって2周目やろうみたいなゲームを想像している人が多いんですが、そういうゲームではまったくないんですよ。プラチナゲームズとしても僕としても、クローバー時代、(カプコン)第4開発時代までさかのぼってもなかったタイプのゲームに挑戦していますね。

――というと、既存のタイトルにも類例はありませんか?

神谷氏: ないですね。

――強いて表現することも難しい?

稲葉氏: そうですね。思い浮かばないということはないですね。

――ゲームジャンルとしては?

稲葉氏: ジャンルを言うとそれが一人歩きしていくので、神谷がさっき言ったように、ウチが作るとピュアアクションになりがちなんですが、そうではない。アクションのインターフェイスではあるんだけど、単純なアクションではないということです。

――シングルプレイで遊べるゲームなのか、マルチプレイにも対応したゲームなのか、そのあたりもまだ明かせないという感じですか?

稲葉氏: そうですね、話せませんね(笑)。話すと怒られてしまいますから。

――ふーむ、つまり、そこがゲームデザイン上、重要な要素ではある感じですか?

稲葉氏: はい、大切な要素ですね。色んなプレイの仕方があるゲームですし、違うプレイスタイルで違う楽しさが表現できるゲームにもなっていると思います。

――巨大なモンスターと戦うゲームというと、日本では「モンスターハンター」シリーズがありますし、海外では今年のE3でも話題を集めた「Evolve」がありますが、それらともまったく異なるゲーム性を備えたアクションゲームというわけですか?

神谷氏: そもそも、僕はそのゲームを遊んだことがないのでわからないです(笑)。

稲葉氏: ちょっとだけ触ったじゃん(笑)

神谷氏: ああ、必要があってちょっとだけ触りました。でも遙か昔です(笑)。

Kellams氏: 今までプラチナゲームズのゲームは、ユーザーに新しい刺激を与えたいという信念に基づいて作ってきました。このプロジェクトも同じように、新しいハードで、新しく学んだことを身につけたので、また新しい刺激を与えられると思っています。それは単純にゲーム要素のチェックボックスを埋めていって表現するようなことではなく、“ゲームの楽しさ”で表現したいと思っています。最終的に遊ぶ理由は「ああ、楽しい」で良いと思っていて、この新しいプロジェクトを通じて、新しい楽しさを伝えたいなと思っています。

神谷氏: 「ベヨ(ネッタ)」みたいなゲームだとどうしても動的なゲームが得意な人に遊び手が絞られますし、そういう人にとってたまらないゲームを作っているつもりなんですが、そこらへんの裾野を広げたいという思いで作っているタイトルでもありますね。

巨大なモンスター同士のバトルを通じて、ドラゴンと人間の絆を描くストーリー

中央の人間を護るようにドラゴンが控えているイメージイラスト
ドラゴンに対して熱い想いを語る神谷氏。神谷氏は大が付くほどのドラゴン好きだった

――このゲームのキーコンセプトは何ですか?

神谷氏: そこは先ほどもいった“巨大なモンスター同士のバトルを迫力を持って描きたい”というところから開発がはじまっています。このコンセプトを思い付いたときに、具体的にどういうゲームにしようというのはまだなかったんですが、その方向に向けてゲーム性を練っていって、現在形になりつつあります。そこは今も1番大事な柱として守っていますよね。ここがこのゲームの全てだと思います。大迫力のモンスター同士のバトルが見たいとか、ファンタジーの世界が好きだとか、ドラゴンが好きだとか。僕は単純にドラゴンが好きだったので、ドラゴンが活躍するゲームをいつか作ってみたいと思っていたので、それを叶えるゲームでもあるんですけど、ゲームファンの中には、ドラゴンファンみたいな方も多いと思うので、そういう人に楽しんで貰えるゲームにしたいと思っています。

――ゲームエンジンは何を使っていますか?

稲葉氏: Unreal Engine 4です。

――採用の理由は?

稲葉氏: このゲームでは、色んなテクノロジーに対して、同時にアップデートする必要があって、グラフィックスもその1つですけど、新たなハードということもあり、捌かなければいけない要素が膨大で、そこに対するベストなアプローチとしてUnreal Engine 4というものを選定しました。

――Xbox Oneという新しいハードでゲームを開発してみて、どのような印象を持ちましたか?

神谷氏: Xboxがというか、僕は思い返してみれば、大概のゲームを新しいハードで開発してきたので(笑)、「ベヨネッタ」なんかは会社を設立して、ライブラリも何もない状態から作って行かなければならないということを経験していますし、新しいハードでゼロからというのは、あるいは何かを探りながら作って行くというのは刺激的なおもしろさがあって、いつもと同じだなという感じですね。

稲葉氏: 今回はハードというより、Microsoft Studiosのサポートには驚かされています。やっぱりレベルの高い人材が山のように揃っている会社なので、そことガッツリ組んで作っているというのは刺激的ですよね。Xboxでというより、icrosoft Studiosと一緒に作っているというのがもの凄く刺激的な体験ですよね。

――刺激の面で具体的なエピソードは何かありますか?

稲葉氏: MicrosoftはもともとOSをはじめ色んなソフトを作っている会社なので、エンジニアのレベルがもの凄いものがありますし、Microsoft Game Studiosとして様々なゲームをリードしてきた実績もあるので、様々な会社からやってきた優秀な人材が沢山いるので、意見の重みだったり、コンセプトを膨らませることについての説得力だったり、ちゃんと組んでやっているという実感が得られています。

Kellams氏: 神谷のビジョンを実現させようという思いは強く感じますね。サポートには「好きにゲームを作って下さい」というやり方もあって、それも自由で楽しいのですが、今回はどんな壁があっても一緒に乗り越えましょうというぐらいのサポートを得ているので、刺激的ですね。

――プラチナゲームズのゲームは、現代か未来とモチーフにしたものが多かったですが、今回は見た感じでは王道的なファンタジー世界ですが、ファンタジーをモチーフに選んでみていかがですか?

神谷氏: このインタビューを受けながら自覚したことなんですが、僕はファンタジーゲームを作ろうと思って作ってなくて、やりたいことを表現していったら、言われてみればこれはファンタジーだなという感じですね。

 子供の頃から高校生の頃に、当時のパソコンで「ソーサリアン」や「ハイドライドIII」などの剣と魔法の世界を楽しんできたんで、ゲームを作る機会は一杯あったんですが、そういう想いを形にしたことがなかったんで、今回出してるなあという感じですね。

――という意味では、開発していて楽しいですか?

神谷氏: 楽しいですね。今までとはまた違った楽しさがありますね。どこかでドラゴンを出したいというのは、どの開発でも思っていて、ドラゴンっぽい敵がいたりだとか、「ベヨネッタ」にも出しましたし、「デビル メイ クライ」の時には博物館に標本という形で恐竜みたいなものを出したりとか、ドラゴンをメインにしたゲームをいつか作りたいなと昔から思っていたのでそういう気持ちを割と素直に出して作っていると思います。

――そのドラゴンについてですが、トレーラーではいくつかの解釈ができそうですが、1つは強大な敵として、もう1つは味方にもなるんでしょうか?

神谷氏: そうですね。強大な力を持つドラゴンという存在と、等身大の人間と、この2つの存在の絆を描きたいというのがあります。ゲームプレイのバトルを通じて、ストーリーを通じてもそうです。この2つのアプローチで2者の絆を描いていきたいですね。

――両者はどのような方法でコミュニケーションを取るのでしょう?

稲葉氏: それはまた今度で(笑)。ゲーム性に深く関わる部分なので。

――イメージとしてはドラゴンを手懐けて一緒に戦うという感じですか?

神谷氏: ドラゴンを、ペットであったり、攻撃するための道具という描き方はしたくないですね。生きている、命のあるものとして……

稲葉氏: それ以上は(笑)。PVを1フレームずつ見ていただければと。

――いずれにしてもこのゲームにおいてドラゴンは非常に大きな存在であるわけですね。

神谷氏: そうですね。ゲームの世界観としてもストーリーとしても非常に重要な位置づけの存在になります。

――ちなみに神谷さんが過去に触れたドラゴンの中で、一番お気に入りのものは何ですか?

神谷氏: ドラゴンで1番印象に残っているのは「ソーサリアン」ですかね。「ソーサリアン」の1番のシナリオが消えた王様の杖で、敵がヒドラなんです。だからといってPVの最後に出てくるヒドラが関係あるかといったら関係あるかも知れないんですけど(笑)。それぐらい「ソーサリアン」には影響を受けています。

――だからといって「ソーサリアン」のドラゴンを現代に蘇らせたいというわけではないんですよね?

神谷氏: そうではないですね。ただ、ああいう剣と魔法の世界、ファンタジー世界というのは深く心に突き刺さっているので、ゲームを作る上での財産のひとつにはなっていると思いますね

――神谷さんが描くファンタジーの世界観はどのようなものですか?

神谷氏: どうなんでしょうね。ファンタジーって結構幅広いと思うので、どれと比較してこう作りたいというものではなく、僕なり解釈で作っていますね。

――日本のゲームファンに向けてメッセージをお願いします。

神谷氏: 僕が強く伝えたいのは、単純にアクションにフォーカスしたゲームを長く作っていたので、そういうゲームを期待される方もいるかもしれませんが、そこで培った気持ち良さや操作性などのノウハウは最大限活かしていきますが、今回は僕自身が作ったことのないゲームにチャレンジしているので、そこも含めて楽しみにしていただければなと思います。

稲葉氏: 神谷と同じですが、何も言えないのがもどかしいのですが、体験したことのない遊びを味わえると思うんで、しかもそれは敷居の高い遊びではなく、まだゲームってこういう方向に進化できるんだっていう遊びが体験できると思うので、ぜひ期待して待っていただければと思います。

Kellams氏: チームでは楽しさを最優先にしています。ずっと楽しめるコンテンツにしていきたいのでどうぞご期待下さい。

――ありがとうございました。

(中村聖司)