インタビュー

「PsychoBreak」クリエイターインタビュー

プロデューサー木村雅人氏とアートディレクター片貝直紀氏にさらに深く聞いていく!

2014年発売予定

 三上氏のインタビューに続いてお次は三上氏の脇を固める2人の中核メンバーのインタビューをお届けしたい。

 1人目の木村雅人氏はプロデューサーという立場でプロジェクト全体を統括する。三上氏の方がキャリア的には上だが、三上氏が現場のディレクションにこだわったため、木村氏はあえて上の立場でプロデュースを担当する。こういったところが“三上組”のユニークなところだ。

 もうひとりは三上氏の脳内のイメージをビジュアル化するという重要な役目を担うアートディレクターの片貝直紀氏。木村氏同様、カプコン時代からのパートナーで、これに三上氏を加えたトロイカ体制で、「PsychoBreak」が開発されているようだ。

 今回のインタビューでは、三上氏のサバイバルホラーのビジョンを、どのように具現化しようとしているかを中心に話を伺った。

「PsychoBreak」のビジュアルコンセプトについて

左がプロデューサーの木村雅人氏。右がアートディレクターの片貝直紀氏
昨年公開したイメージボード。ゲームはまさにこの世界観そのままだった

――まずはおふたりの担当分野とこれまでのキャリアをお聞かせください。

片貝直紀氏: 本作ではアートディレクターをしています。過去の作品では、アートディレクターでは、「BIOHAZARD」のリメイクと、「大神」と、「VANQUISH」と本作です。ホラーゲームは久しぶりで、三上とやるのは「VANQUISH」以来です。「BIOHAZARD」シリーズは「4」には参加していましたがアートディレクターではありませんでした。そのほかにも三上作品には絡んではいるのですが、立ち上げ後に関わって、あとで抜けています。画面全体のクオリティは僕が最終的に管理しています。僕の専門ジャンルは背景とライティングと画面全体のクオリティ調整が担当です。

木村雅人氏: 僕は元々カプコンで、クローバースタジオや別の会社に行き、ここにいます。片貝の場合は、クローバーから一旦プラチナを挟んでこちらです。私はプロデューサーですので何でも屋です。ゲームを良くするため、チームの為になるのであれば何でもやっている感じです。

――しかし、木村さんはディレクターではなくプロデューサーなのですね。

木村氏: ええ、今作は三上が現場べったりなので、僕がサポートしています。

――それでは、このプロジェクトは、木村さんがコスト管理やリソースの割り振りなどを行なっているですか?

木村氏: はい。そういった多岐にわたるところを繋ぎながら色々な人と仕事をしていき、チームを運営しています。各分野にスペシャリストがいますので、その方と一緒に進めていく形です。

――現在の開発の規模を教えてください。

木村氏: はっきりとは申し上げられませんが、“大規模ライン”という人数で作っています。

――先ほどデモを見ましたが、とにかくアートの部分に圧倒されました。今回はどのようなビジュアルコンセプトで挑んでいるのでしょうか?

片貝氏: コンセプトはもちろんホラーです。画面が綺麗というのは当たり前のことで、それ以上にホラーならではの怖さ、不気味さ、不安定さ、ノイズといった要素を全面に出しています。次世代機と綺麗な絵作りはあまり意識していなくて、生々しさやリアリティや嫌悪感の表現にかなり力を入れています。

――ここまでやるのかというところまで踏み込んでいますね。

片貝氏: シーンによってはかなりグロテスクだと思います。

木村氏: 不安定さというのはすごくふさわしい言葉だなと思うのですが、色々な意味において不安定さはすごく大事にしています。

――序盤シーンは、タランティーノの「ホステル」をイメージしてしまったのですが、絵作りをする上で、何か影響を受けた作品はありますか?

片貝氏: 特に何か影響を受けている作品はないのですが、ホラー全般好きなので、久しぶりのホラーということもあり、色々なところから影響を受けてちょっとずつ頂いていると思います。

――私もホラー好きなのですが、ホラーにも色々なベクトルがありますよね。三上さんが好きなホラーと皆さんが好きなホラーは一致しているのでしょうか。

片貝氏: 完全には一致していないと思います。そこは違うだろうという大まかな方向性だけは守っていって、あとは枝分かれした好みが節々に出ていると思います。

――三上さんから今回与えられたタスクは何でしょうか。

片貝氏: 「とにかく怖くしろ」ということです。よく三上から言われるのが、「カッコイイけど怖くないね」と。これはよく言われます。どうしても絵作りする人からすると、かっこよかったり綺麗に仕上げようとする傾向があるのですが、それを綺麗にならないようにある意味汚くしなければならない。画面のクオリティとのバランスの上でも難しいです。

――ライティングやシャドーイングはすべてリアルタイム処理するなど技術的な進化をキャッチアップしながら、うまく“怖さ”に活かしているのが伝わってきました。そのほかにこだわっている要素はありますか?

片貝氏: まだまだ未調整の部分もありますが、とにかく怖さ。怖さをとにかく最優先にして作っています。怖さというところに関しては力が入っています。

木村氏: 光と影の部分はホラーにおいてはすごく大事な部分です。

――あとは、これまではハードの制限でできなかったような表現を、思い切りやっているなと感じました。たとえば、家屋や建物の壁や床のテクスチャはすごいなと思いました。あれは何か三上さんからヒントが提示されたのか、それとも片貝さんのほうでこれまで温めていたものがあったのですか?

片貝氏: やはりリアリティと舞台の選択だと思います。ホラーとして怖いシチュエーションとしてのロケーションはどういうところであるべきかということを先に考えて、それに合うようなリアルなテクスチャを作っていきました。

木村氏: リアルなテクスチャは、実際テクスチャを撮りに取材に行ったり色々なことをしています。いわゆる基本の努力にプラスして、もう一歩踏み込んで不安定さを今回ぐっと掘り下げています。

――昨年公開したイメージボードがありますよね。あのイメージがそのまま動き出しているような感じがして、待っていた人間のひとりとしてちょっとうれしかったですね。

片貝氏: コンセプト的にはまったく変わっていません。ちょっと
怪しく不安定で、このところそういうタイトルはあまり見ていないです。クオリティが高いゲームはたくさんあるのですが、本格的にホラーとしての舞台を作ろうとしたタイトルはそれほどなかったと思います。

【まさにサバイバルホラーなスクリーンショット】
恐怖感を増幅させてくれるスクリーンショット。光と闇、壁のテクスチャを効果的に使ってホラー感を生み出している

(中村聖司)