スクエニ、「ファイナルファンタジーXIV」ディレクター/プロデューサー吉田直樹氏インタビュー(前編)

新生「FFXIV」を実機で確認! 「FF」らしさが実感できる最新鋭のMMORPGに


6月5~7日開催(現地時間)

会場:Los Angeles Convention Center



 スクウェア・エニックスが社運を賭けて全面リローンチに取り組んでいる「ファイナルファンタジー」シリーズ最新作「ファイナルファンタジーXIV」。土壇場でE3への最新トレーラーの公開を見合わせたものの、あくまで“開発は順調”として、「FFXIV」ディレクター/プロデューサーの吉田直樹氏が、E3会場でインタビューに応じてくれた。

 今回のインタビューのテーマは、新生「FFXIV」について。E3 2012初日に公開された最新スクリーンショットや、直前のプロデューサーレターで明らかにされたユーザーアンケートなどをネタに、様々な視点から質問し、新生「FFXIV」の魅力を浮き彫りにするつもりだったが、なんとインタビュー中、吉田氏がおもむろに実機によるデモンストレーションを実施し、「トレーラーが見送られたということは、予想より開発は遅れているのではないか?」という疑惑を責任者自らが払拭してくれた。まずは、インタビュー前編でデモンストレーションの模様をお届けし、後編でQAを紹介しよう。


【スクウェア・エニックスブース】
海外タイトルを全面に押し出していたスクウェア・エニックスブース。ブースの裏に、かろうじて「ファイナルファンタジーXIV」のイメージが掲示されていた


■ 吉田氏自ら新生「FFXIV」デモ。あのスクリーンショットは本物だった!

デモを行なう吉田氏。画面は残念ながら撮影禁止のためお見せできない

 吉田氏のデモは、Core i-7、Radeon搭載の2011年モデルのノートPCで行なわれた。詳細なスペックは不明だが、ハイエンドのゲーミングPCモデルというわけでもなく、吉田氏は必ずしもハイスペックが必要でないということを示すために、わざわざCore i-5/Ge Force MX330のノートPCでも起動して見せてくれた。

 読み込まれたフィールドは、都市国家グリダニアのすぐ近くにある森林エリア「黒衣森(こくえのもり)」と、都市国家ウルダハの郊外にある「ザナラーン」の2つのエリア。共に都市から出てすぐのエリアであるため馴染みがあるはずだったが、新生「FFXIV」ではマップを完全に作り替えており、エリアデザインがまったく異なるため、吉田氏に指摘されるまでここがどこだかわからなかった。ちなみにエリア名は新生「FFXIV」でも従来と同じものを採用するという。

 「黒衣森」は周囲を木々や草木に囲まれた森林エリアで、地面には木漏れ日が差し込め、木陰が落ち、その影が揺らいでいる。自らの体にも木漏れ日やセルフシャドウが落ち、キャラクター周りの描写はかなりリアルだ。キャラクターはヒューラン男のナイトと思いきや、よくよく見るとしっぽが伸びており、ミコッテ男だった。種族の別性別は、9月以降のαテストでは実装されず、βテスト以降での実装となるようだ。

 実機デモで最初に驚いたのは、そのサクサク感だ。オフラインバージョンとは言え、キャラクターの移動も、画面視点の変更もグリグリ、サクサクで、あたかもハイエンドPCで古めのMMORPGを動かしたかのようにキビキビと動作していた。とりわけ、すでに型落ちのCore i-5でもグリグリ動くことが確認できたときは、これは確かにPS3でもしっかり動きそうだという手応えを持った。いずれにしても現行の手持ちのPCでもグリグリ動くということが確認できたのは、多くのPCゲームファン、そして発売を待ち望むPS3ユーザーにとっては朗報だろう。

 もっとも、森林地帯は表示するオブジェクトやエフェクトが多いため、移動中、所々フレームレートが低下していたが、吉田氏は「すでに現行の『FFXIV』よりも軽くなっていて、処理落ちして重くなっても20fpsぐらいは出ています。30fpsで安定させるのが目標です」と語ってくれた。ちなみに現在のクオリティで絵としては85%の出来映え、最適化はまだまだで15%程度だという。

 さて、LODは意図的にオフになっているため、視界はかなり遠くまで見通すことができた。頭上には太陽が照りつけ、陽光が周囲の木々にまで溢れており、プレーヤーとの距離に従ってフォグのエフェクトを応用した光散乱シミュレーションを適用して“空気の色”を変えている。具体的には太陽の近くは原色そのままだが、そこから離れれば離れるほど、青が深くなっていく。その瑞々しい空気感は森林地帯の雰囲気たっぷりだ。

 周囲を見渡すと森林地帯がどこまでも続くような感じで、かなり広大なフィールドであることを伺わせる。評判の悪かった“パターン化されたマップ”は全廃され、どこを見ても違う景色に見える。これはまさかすべて手付けなのか? それともプロシージャル生成もあるのかと問うたところ、吉田氏は「基本は手付けで、わからないようにそうしたプロシージャルの方法論も使って全体の付加を軽減させています。パターンに見えないように作るというのは、作り方の問題というところもあるし、ゲーム製作というのはそういうものだと思っています」と淡々と応えてくれた。

 フィールドマップの公開はまだNGということで全体的な広さはわからなかったが、小高い丘のようなエリアがあったかと思えば、人為的な施設もあり、多くの謎を感じさせる。フィールドにはヤングトレント(トレントの幼生?)やファンガーなどが森林地帯ならではのモンスターが棲息していたが、今回はE3向けのオフラインバージョンということで、バトルは行なえなかった。

 今回は、フィールドを走るだけのデモだったが、それでも木漏れ日が差し込める中、木々の間を抜けることができたり、多少の高低差ならジャンプや自然な落下で突破していくことができたのは楽しかった。この森林地帯を踏破していく感覚は、現行の「FFXIV」にはほとんど味わえなかっただけに、特に「FFXIV」経験者は大きな衝撃を受けることだろう。また、「FFXIV」を未体験の新規ユーザーも純国産の新鋭MMORPGとして魅力的に感じるはずだ。

【「黒衣森(こくえのもり)」】
このクオリティが、現行のノートPCでサクサク動作していた。今後最適化が図られ、さらに軽く、表現もリッチになるという

■ 美しくなったザナラーン。エーテライトのあるキャンプは“集落”に進化、都市への移動はゾーニングするように

デモの内容に自信を覗かせる吉田氏

 次に吉田氏には特別ということでもうひとつのエリア「ザナラーン」も見せてくれた。降り立ったところは柵で囲まれた中に石畳が敷かれ、その上にいくつかの建物やオブジェクトが点在している生活感のあるエリアで、吉田氏はこれを「集落」と呼び、もともとエーテライトのあるキャンプが置かれていたところだという。新生「FFXIV」ではエーテライトのあるキャンプは、“MMOの街”として機能拡張が計られ、いくつかのショップとNPCが配置され、クエストなども受けられるようになるという。

 吉田氏がこのザナラーンで見せてくれたのは、建物や地面の作り込み。共に石造りとなっており、ノーマルマップの技法を使って、フォトリアルな質感を実現している。吉田氏は「MMORPGのオブジェクトもここまでできるんです。現行のコンソール向けのスタンドアロンゲームに負けないぐらいになっています」と自信を覗かせた。「これがPS3でも実現できるのか?」と質問したところ、「テクスチャとMIPMAPの解像度は落ちますが、グラフィックスとしては基本的に同じものが出せます」とのこと。

 集落から視点を変えると、遠くにウルダハの特徴的なドーム状の建物が見えた。「ハイエンドPCなら、LODもオフにしてどこまでも表示させることができます」と吉田氏。ちなみに現行の「FFXIV」ではゾーニング(エリアチェンジ)は存在せず、街とフィールドがシームレスに繋がっているが、新生「FFXIV」ではウルダハのような街に入る際、ゾーニングするという。

 最後に集落の外でジャンプして貰った。吉田氏は、ミコッテ男のジャンプモーションがまだ発展途上のため見せたくないようだったが、かなり自然な雰囲気でピョンとジャンプした。このジャンプはゲーム性に影響はなく、多少の段を乗り越えられる程度で、あくまで見た目の楽しさの追求となるが、この手の“どうでもいいが楽しい要素”がMMORPGでは重要だったりする。パーティー一行でジャンプしながら移動すれば退屈も紛れそうだ。ちなみにジャンプとエモーションの同時発動については、「モーションの崩れをどこまで許容するか。海外ではおそらくありだけど、日本のユーザーさんはどうだろう(笑)。要検討ですね」と回答してくれた。

 おそらく吉田氏は、最新トレーラーと同様に、この実機によるデモの実施も大いに迷ったはずだが、今回の実演は正解だと思う。これで多くのメディアは新生「FFXIV」の存在を信じることができるようになったし、具体的な対象として期待することができるようになったからだ。実機映像を使ったトレーラーは8月の公開を予定。それまでにさらにグラフィックスとパフォーマンスの両面に磨き込みをかけるということなので、さらなるブラッシュアップに期待したいところだ。後編では新生「FFXIV」についてのQAをお届けするのでこちらもお楽しみに。

【「ザナラーン」】
ザナラーンを飛びながら走るララフェル。デモで見たバージョンは、この奥の集落にエーテライトがなかった。このスクリーンショットがより正式版に近いもののようだ

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(2012年 6月 8日)

[Reported by 中村聖司]