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「ボーダーウォーカー」開発スタッフインタビュー
「ファイナルファンタジー」など大作を手がけたスタッフが勢揃い!
少人数でのゲーム制作ならではの魅力をスタッフ自らが熱く語る!


配信中(5月7日 配信開始)

価格:900円


 株式会社クランジー・プロダクツが企画・開発をおこなったiPhone/iPod touch用アクションアドベンチャー「ボーダーウォーカー」。少人数で開発されたという本作だが、注目すべきはその開発スタッフの顔ぶれだ。

【開発スタッフ】※敬称略
・プログラム:赤尾実(株式会社RedSpark)
・シナリオ:野島一成(有限会社ステラヴィスタ)
・キャラクターデザイン:皆葉英夫(有限会社デザイネイション)
・音楽:植松伸夫(有限会社スマイルブリーズ)
・楽曲アレンジ:成田勤
・モンスターデザイン:日暮央 / 米谷尚展
・オープニングイラスト:池田柚規
・プランニング/ディレクター:羽入田新(株式会社クランジー・プロダクツ)
・プロデューサー:山地浩(株式会社クランジー・プロダクツ)

 これをご覧いただけば、「ファイナルファンタジー」シリーズのファンならずとも知っている豪華スタッフが集結していることがおわかりいただけるだろう。そして、ディレクターとしてこのスタッフを束ねているクランジー・プロダクツの代表取締役である羽入田新氏は、前職は株式会社スクウェア・エニックスでオンライン事業推進部長として、「ファイナルファンタジーXI」をはじめとするさまざまなタイトルにPRやビジネス面の業務で関わっており、ゲームマスコミ業界ではよく知られた人物だ。

 今回は本作がほぼ完成し、配信開始を目前に控えたタイミングで、開発スタッフの面々にお話を伺った。参加してくれたのは、野島一成氏、植松伸夫氏、赤尾実氏、皆葉英夫氏、羽入田新氏の5人。お互いが気心の知れた仲ということもあり、笑いあり、毒舌ありの楽しい雰囲気の中、これだけのスタッフを集め、開発を始めるまでの経緯から、開発中のエピソード、さらには次回作にまで話題が及んだ。

 なお、ゲーム内容については、こちらの紹介記事をお読みいただきたい。




■ 羽入田氏と野島氏の茶飲み話から始まった「ボーダーウォーカー」

インタビューは植松氏の自宅にあるスタジオにて、リラックスした雰囲気の中で行なわれた。左から皆葉氏、羽入田氏、赤尾氏、植松氏、野島氏

――この豪華メンバーで「ボーダーウォーカー」を開発することになった経緯は?

羽入田新氏(以下、羽入田氏): 僕と野島さんの家が近く、さらに前の会社(スクウェア・エニックス)に在籍していた頃からヘヴィメタル、プログレッシブロック、プロレスをキーワードに仲良くさせていただいていたんです。それで、僕が会社を辞める前に野島さんから「僕らが得意とする世界観をよりシンプルに、遊びやすい形で世の中に出したいと思ってるんです」という話を伺っていまして。その後、僕が前の会社を円満退社しまして、2カ月くらいブラブラしてから、自分で会社でも設立しようかという気持ちでいたところで、野島さんとお会いして、その気持ちは変わらず残ってるという話を伺いました。僕と野島さんの茶飲み話から始まったような感じですね。

 また、野島さんと植松さんと皆葉さんはずいぶん前から、ファンタジックな絵本のようなアプリを出したいという話をしていたそうで、そういった下地もあり、植松さんと皆葉さんには早い段階で提案させていただきました。

 プログラマーについては、iPhoneアプリということで、ストレスなく、遊びたいときにすぐ遊べて、すぐ中断できるというインターフェイスがすごく重要だなと考え、iPhoneアプリを作られた経験がある方がいないかなと思っていたところで、野島さんから赤尾さんがいいんじゃないかというお話があり、「赤尾さんも独立されて自分の会社から(アプリを)出されていましたね」ということで渋谷の居酒屋(笑)でお話しました。皆さん、一切もめることなく快諾していただいて、チームができたという流れです。

――野島さんに話が来た時は、「ついに来た!」って感じですか?

野島一成氏(以下、野島氏): ついに来た!ってほど確信はなかったんですけど(笑)、羽入田さんならやってくれるかもしれないなと。僕とか植松さんとか皆葉さんとかは、「集まって、やろうね、やろうね」って話にはなるの。「あれやろう、これやろう」みたいに。

植松伸夫氏(以下、植松氏): リーダーがいないんだよね。口ばっかり(笑)。

野島氏: そんな中、羽入田さんがクビになって(笑)。リーダーになってくれそうな人がいたということで。このほかにもアイディアはいっぱいあるんだけど、プロジェクトになるのはほんと少なくて、中には実際に進んでも途中で終わっちゃうのもあったんで、(始まったときは)今回はうまくいけばいいなと思いましたね。

羽入田氏: ありがたい話です。でもクビじゃないですって(笑)。

――羽入田さんが話に加わったのはちょうどタイミングが良かったということですね。

野島氏: そうですねぇ……あ、でも、当時はすごく忙しかった覚えがありますね(笑)。

植松氏: 僕でも、絵本っぽいものを作ろうっていう企画は、そんなに真剣に話したことはないですけど、どうやって始めるって話になったとき、僕が曲を書いてそれに物語を付けるというのもいいんじゃない? 最初に音楽があって、そこに付けた物語に絵を付けるってのもありなんじゃないのって。まず僕が曲を作らなきゃならないなぁと思って、僕は作り始めてたんだよ、野島君にプレゼンする用の曲を。まだできてないけど(一同笑)。作り始めてたのは本当。そういうことなんだよ。始めるんだけど、完成しなかったら何もしてないのと一緒(笑)。

野島氏: プログラマーはどうしようって話になってた頃、赤尾さんとパーティーで久しぶりにお会いして「失業予備軍の仲間じゃないか(笑)」と。失業とフリーは紙一重ですから。赤尾さんと名刺交換したのを覚えてる。嫁同士が仲良く話し込んでて。

植松氏: あ、君らの嫁さん、みんな元スクウェアの人じゃないか!

赤尾実氏(以下、赤尾氏): そうです。社内恋愛です(笑)。

植松氏: 友達というか知り合いばっかり集まっちゃうのもどうかっていうのもあったんですけど。それはそれで恐いじゃないですか。僕、怒られないとやらないっていうのがあるから。でもまあ、みんな大人だったってことだね(笑)。




――開発がスタートしてからはとんとん拍子って感じですか?

本作のプロジェクトを中心になって推し進めた羽入田新氏。前職はスクウェア・エニックスで「FFXI」などに深く関わる。植松氏のバンド「EARTHBOUND PAPAS」にもドラマーとして参加
音楽を担当した植松伸夫氏。「FF」シリーズの大半の曲を手がけ、世界中に熱狂的なファンを持つ作曲家

羽入田氏: そうですね。シナリオは早い段階からできあがったんですけど、そこにどうゲーム性を加えていくかっていうところに時間をかけた感じですね。基本的なゲームのシステムは、こうやってシナリオを進めていって、合間のバトルはこういう仕様にっていうラフな部分は、僕と野島さんの間で詰めていった感じですかね。それをある程度組み上がったところで、みなさんに説明して、一切異論が出ることもなく。

野島氏: (その企画説明の)メールをみんな読んだのかって(笑)。

赤尾氏: たぶん、みんな、作ってみてできたものを見ないとわかんないところがあると思うんですよね。

植松氏: 異論っていうかさ、1番最初の根幹になる部分にいろんな人がああだこうだ言ってると、物事って進まないじゃん。だから、誰かやりたい人が作っちゃっていいのよ。それに後々乗っけていく人たちが合わせればいいわけでさ。根幹になる部分を作るのは監督なわけで。監督だけが最終形を知っているわけでしょ。音楽屋さんや絵描き屋さん、物書き屋さんとかが監督にああだこうだ言ってると進まないんですよね。だから監督の設計図がまずありきだと思うの。だから、(開発しているゲームに)興味がないわけじゃなくて(笑)。

 僕らはいつもそれ考えますよ。このプロジェクトのディレクターは最終的にどういうものを表現したいんだろうなって。じゃあ、僕はどういうふうに乗っかっていけば、そのディレクターの伝えたいことができるんだろうって。ソロアルバムとかは勝手にやらせてもらいますけどね。

――では、このゲームの話が来た時に、どう受け止めて表現しようと考えられましたか?

植松氏: 久々にファンタジー来た!って感じでしたね。ファンタジーをやってなかったとは言わないけど、こういうベタな中世っぽいファンタジーってかなり久々にやった気がするんですよね。スクウェア辞めてからやった「ブルードラゴン」とか、「ロスト オデッセイ」とか……「ラストストーリー」も中世とは言い切れないだろうし。なかなか中世っぽいファンタジーっていうのがなかったんで、久々に自分のやりたい音楽が合う世界観のものが来たかなって感じはしましたね。

――皆葉さんは初めにお話を聞かれたときはどうでしたか?

皆葉英夫氏(以下、皆葉氏): ファンタジーっていうのが、自分の中でどれがファンタジーなんだろうって悩んでる時にお話をいただいたので、実際に作業をしながら、確認できたかなっていうのがすごくあります。僕が影響を受けていたのが、映画の「コナン・ザ・グレート」などのヒロイック・ファンタジーや、ゲームの「ウィザードリィ」とか、古くは「ダンジョンズ&ドラゴンズ」とか、そういう世界観に憧れていました。当時は英語がわからなかったのでパッケージの絵を眺めて楽しんでるみたいな子供だったんですが、それが何十年後の今、自分の中でどういう形にファンタジーとして残ってるんだろうという確認作業が、今回あったんじゃないかなと思いました。

――絵本の話をしていた頃から、世界観や物語の大枠は決まっていたんですか?

野島氏: 絵本の話をしていた頃は、具体的に何も考えてないですね。植松さんが曲作らなかったから(笑)。

――ではその後の羽入田さんとの話のときにファンタジーでということに?

羽入田氏: 昼と夜に分かれた世界とかのアイディアは、野島さんのストックの中にあって、そこから引っ張り出してこられたという印象がありました。

シナリオ担当の野島一成氏。「FFVII」や「FFVIII」、「キングダム ハーツ」シリーズなど、多数のタイトルでシナリオを手がけたシナリオライター。有限会社ステラヴィスタ代表

野島氏: そうですね。ファンタジーとは何かっていうのは答えもいろいろあると思うんですけど、僕としてはすごくシンプルなのがいいなと。例えば、ファンタジーっぽいけど機械が出てきたりすると、そこでまた設定が増えてきて今回の“シンプル”という主旨に合わなくなると思ったので、設定については何か1個大きなものがあり、それ以外はシンプルにしたいなという思いがありましたね。今回は、昼と夜の世界というアイディアがあったので、それ以外は何もないのがいいなと思ってました。長いことロールプレイングゲームを作ってきて、システム的にこうじゃなくちゃならないみたいのがあるんですよ。それを今回、そういうものは全部なしでいこうというのがあったんで、全体的にシンプルにということに。昼と夜という大きなアイディアがあったんであとは大丈夫みたいな感じで考えました。

――そのストーリーを最初に見たときの印象はいかがでしたか?

植松氏: 昼と夜で世界がすべて入れ替わるということは、12時間起きて12時間眠るわけじゃないですか。それは夜退屈だぞと思いましたけどね。

野島氏: そういうことまでは考えてなかった(笑)。

羽入田氏: iPhoneアプリじゃなくて、他のプラットフォームでゲームを出そうとしたら、たぶんもっといろんなことを突き詰めなきゃいけないような気がするんですよね。iPhoneアプリの世界設定がずさんでいいというわけではなくて、その曖昧な部分をうまく料理できるのが、iPhoneアプリの遺伝子なのかなと。

植松氏: ずさんというわけではないんだけど、「昼の世界と夜の世界がありました。お互いの世界は交じり合えません」っていうのって家庭用ゲーム機の大作ゲームの設定としてはやりにくいと思いません? それが童話だったらあるんだよね。

野島氏: 曖昧な部分を残せるっていうか、想像の余地がある状態で世に出せる。これが3年くらいかけて作るゲームだったら、きっとガチガチの設定処理をしているんじゃないかな。

植松氏: 僕は童話のような印象があった。(シナリオの)書き方もそんなことを意識してた気がするんだけど、そんなことない?

野島氏: うん、意識してた。

羽入田氏: 僕がこのタイトルの仕事をしてきて、「これでいける」と思った瞬間がいくつかあるんですけど、その最初が野島さんから上がってきたシナリオを読んだときですね。ゲームのシナリオとはこういうものかと感動した覚えがあります。そこから自分の中でイメージを膨らませていって、どういうバトルを入れればいいかとか、どういうキャラクター設定がいいかとか考えていきました。

 あとモンスターのイラストは、日暮央さんと米谷尚展さんにお願いしたのですが、僕が決めたモンスターの設定が1行くらいなんですよ。「きのこ」とか「邪悪な魚」とか(笑)。そういった内容でも、快くバンバン描いていただいて、イラストが1点1点上がってくるたびに、「ああ、すごいすごい。これだよ」って感動したのも覚えていますし、植松さんから楽曲が上がってきたときも、こういった形でご一緒することはなかったので、「個人的に期待されているんだな、応援されているんだな」という部分での感動がすごく大きかったですね。

 皆葉さんは、最初の打ち合わせのときに喫茶店で、鞄からノートとペンを取り出して、「どういうのがいいですか」と言いながら、3つのバリエーションの顔を描いてくれたんですよ。ゲーム的なものと写実的なもの、その中間のものを5分くらいでささっと描いてくれて。プロのグラフィックスデザイナーさんというのはこういうものかと。そういうのを体験するたびに、この方々のこのタイトルへの期待やかける思いっていうのを裏切れないっていう意味で、感動すると同時に心が引き締まるというのがありました。

 こうして仕様とか設定が固まった後に、赤尾さんからバトルのテストをお願いしますという形で上がってきたのを見たときに、「これで安心だ」と思いましたね。モンスターデザインの2人もそうなんですけど、こちらの意図するものをいとも簡単にご理解いただいて、要望通りのものを上げてきていただいたりと、感動することが多かったですね。

――それはお互い気心が知れてるという部分があったからですか?

羽入田氏: どうなんですかねぇ。気心が知れてても、「きのこ」だけではできないと思うんですよね(笑)。やっぱり、皆さんの応用力というか理解力とか、今までそういう仕事をずっとされてきて、オーダーに対する引き出しの多さなどがすごいんだろうなと。そういう方々とご一緒できたのがなによりだったかなと思います。

――キャラクターデザインを担当された皆葉さんは、最初にシナリオを読んだときはどう思われましたか?

キャラクターデザインを担当した皆葉英夫氏。アートディレクターを務めた「FFIV」や「FFIX」などをはじめ、数多くのタイトルにデザイナーとして携わる。株式会社デザイネイション代表
プログラム担当の赤尾実氏。スクウェアでは「FF」シリーズをはじめ、「サガ フロンティア」や「クロノ・トリガー」など、多数のタイトルのサウンドプログラムを手がける。株式会社RedSpark代表取締役

皆葉氏: 昼と夜の世界の設定があって、これって結構しびれるじゃないですか。昔、ファンタジー映画で名作で「レディホーク」というのがあって、そんなイメージがわき上がってきて。絵はすごく描きやすい設定でした。

羽入田氏: 最初は数が多くて調整が入りましたね。本当に申し訳なかったですけど。

皆葉氏: 絵を日数で割れる数にしてくれと(笑)。

野島氏: あと、僕は兵士って(兜で)顔隠しておけば使えるなって思ってたのに、全部別々の顔になっていて、こりゃすごい、豪華って(笑)。

羽入田氏: 脇役キャラにもすごく力を入れていただいていて。

皆葉氏: なにしろ兵士っていっても、昼と夜の顔を両方描かなきゃいけないっていう(笑)。全部2倍みたいな。

――赤尾さんはこれまでにもいくつかiPhone用のプログラミングをされてきたと思うのですが、今回何かチャレンジみたいなことはありましたか?

赤尾氏: 純粋にゲームというジャンルに乗せられるアプリというのは出したことなかったので、すべてがある意味初めてでした。苦労というか、今までできなかったけど、こういうことしてみようと思ってたのを試しちゃおうみたいなことをしています。自分の中での新しい試みとしては、バトルのフィンガーアクションの部分ですね。

羽入田氏: バトルのシステムについては、僕がバトルはこういうイメージで作ってくださいっていう動画を作って渡したら、その通りに作ってきていただいて、感動しました。

赤尾氏: それを判定させるためのデータをどうやって入れておこうっていうのが、ちょっと悩みましたね。

――ゲームの資料を見ると、シナリオクエスト(メインシナリオとは別に用意されたサブクエスト)がかなりの分量がありそうなんですが、シナリオの作成は大変でしたか?

野島氏: シナリオクエストに関しては、羽入田さんのほうから、アイディアなどをいただいて、それを直したり、アレンジしたりですね。

羽入田氏: 僕が出したものはアイディアレベルのものなので、それを一字一句シナリオのフォーマットにしていただくのは、相当な手間だったとは思います。

野島氏: 「あ、きっとこのギャグはカットしちゃいけないんだろうな」とか、「わざわざ書いてくるくらいだから、自信作なんだろうな」みたいな(笑)。

――わりとシリアスなストーリーかと思ったのですが、そういう笑えるお話とかもあるんですか?

羽入田氏: シナリオクエストにはありますね。

野島氏: メインストーリーは、真面目な人たちが登場人物で、わりと真面目にやってます。

羽入田氏: シナリオクエストにオネェ系な執事が出てくるお話があるんですけど、僕はそれがすごく好きですね。




――楽曲はどのくらい作曲されたのですか?

植松氏: 音楽は20曲くらいですかね。結構得意分野だなって感じたところはありました。中世のファンタジーなので、コテコテの古楽でいこうと思ったんですけど、古楽でやっちゃうと中世は表現できるんですけど、ファンタジーまで跳べないんですよ。中世のヨーロッパで流れてた音楽は古楽ですから、古楽だけで攻めていったら中世感は出るんですけど、ファンタジーっていうのは何があっても許される世界じゃないですか。だから、バトルなんかは4リズムのいわゆるバンド形式のドラム、ベース、ギターが入ってたほうがいいのかなぁとか。いろんなタイプの音楽が入っているんで、僕の思うファンタジーにはなっていると思います。

 ファンタジーってもともと作り事の世界なので、そこにケルティックみたいな音楽が入ってもいいだろうし、ハリウッド映画みたいな壮大なオーケストラ音楽が入ってもいいし、プログレッシブロックみたいな変拍子のバトル曲が入ってもいいだろうし、何が入っても許されるフィールドだと思っているんです。そういう意味で、音楽は自分らしいファンタジー感を出せたかなという印象はあります。

 あとは「愛のテーマ」みたいのが1曲あったら、もうちょっと自分色が出せたかなぁと。「愛のテーマ」っぽいのと主題歌ですかね。(続編の)「2」では入りますんで(笑)。

野島氏: (今回の音楽を聴いて)たぶん、みんなが1番聴きたいと思っている植松さんの音楽が詰まっていると思いますよ。

――iPhoneなので、iTunes Storeでサントラだけ発売することもできますよね。そこに盛り込んで「2」では入りますよみたいなやり方もありますよね。

ゲーム開発論にまで話題が及んで楽しそうに話す植松氏と野島氏

野島氏: あ!サントラだけ先に「2」のを作っちゃえばいいんだ。音楽ありきで。でも絶対完成できないよね、これって(笑)。

植松氏: でも、そういうやり方があってもいいと思いません? (本来は)シナリオがあって、それに対して絵とか音楽を付けるわけですけど、先に音楽があって、後からシナリオを付けるっていうのがあってもいいと思うんですよね。だってさ、オープニングとエンディング、街、フィールド、バトル曲があれば、RPGってなんとかなるじゃんか。無理に言っちゃえばだけど、5曲あればできるんだよ。で、その5曲を野島君に渡すのよ。これで物語作れって(笑)。

野島氏: なんかこう爆弾受け取ったみたいな気分になりそう(笑)。

植松氏: やってはみたいですよね、こういうのも。

野島氏: やりたいことはたくさんあるんですよ。今やってることが不満かっていうわけじゃないけど(笑)。早くやらないとどんどん年取っちゃうし。こういう形で出せる受け皿ができたっていうことは、ジョブズすげぇな、ありがとうって。

羽入田氏: 僕らは若くはないんですよね。残された時間っていうと悲しくなるんですけど(笑)、こういうアプリって短い期間で作れるじゃないですか。そういう意味では大きなチャンスが増えているんだろうなって思いましたね。

植松氏: 短期間に少人数で出せるっていうのはおもしろいですよね。あとはアイディア次第っていう。

――絵を描くときは何か指示とかありましたか?

皆葉氏: 自由はすごくありました。ただ、不思議素材はあまり使わないでくれっていうお約束はありましたけどね。でも、なんとなくの線がそのままゲームに出せるのは、こんなにいいことなのかって思いました(笑)。

 あと、キャラクターデザインで背面描かなくていいって、こんなに楽だったのかって思いましたね。背面描くと2倍ですし、3Dに起こすとなるとさらにいろいろ聞かれますし。

――ここまでお話を伺った印象としては、みなさん短期間で自分の好きなアイディアも盛り込めた感じですか?

羽入田氏: そうですね。関わっていただいた方々には、とにかくやりたいようにやっていただこうと思っていたので。そこでこっちの意図しているものと、よっぽど違わないものが上がってきたら、リテイクのお願いをすることもあるかと思ってたんですけど、基本的には好きなものをお願いしますというスタンスでやっていました。




――iPhoneユーザーでこういう敷居が低いけど、本格的なゲームを欲してる人っていうのは、だいぶいると思うんですが、いかがですか?

羽入田氏: たぶん、こういった感じのゲームは、iPhoneではあまりなかったと思うんですよね。

野島氏: 僕の世代、大学生の頃にファミコンが出たぐらいの人だと、もうゲームやってない人が多くて、友達とかと話してて、一応僕が手がけたゲームを買ってはくれてるんだけど、「最初の3時間ぐらいだな」とか言われちゃって最後までやってないって。音楽だってラスボスとかエンディングにすごく力入れてるし、シナリオだって進めば進むほどおもしろくなるのに、「覚えなくちゃならないことが多い」とか、「時間がない」っていう理由で最後まで遊べない。今回はそういう人にもやっていただけるんじゃないかなぁと思っているんです。

羽入田氏: 基本的にどこでもセーブできるように赤尾さんに頑張っていただいていて、端末のホームボタンを押せばセーブできるって仕様なので、通勤通学の合間にプレイしてもらえるかなと。(ちょっとエッチなイベントは)最強のモンスターをコロシアムで倒すと、受付のお姉さんの態度がちょっと艶っぽくなるくらいですかね(笑)。そっち系は審査が厳しいので極力入れないようにしました。

皆葉氏: 絵のほうは戦いなんですよね。ぎりぎりまで出そうっていう。本当に出しちゃうと、(ユーザーも)どっちもガッカリしちゃうっていう(笑)。

――ゲームの敷居を低くしてあるのは、最後までプレイしてほしいということですか?

羽入田氏: そうですね。ただ、それなりのやりごたえもちょっと残したほうがいいかなと思っているので、全然簡単っていう感じではなくて、やりごたえはあると思いますよ。

 難しいんだけど、挫折しないような印象作りっていうのは、いろいろ考えました。例えば、ダンジョンを巡っていて、モンスターとバトルして負けた場合、ユーザーが「負けてむかつくー!よしもう1回やろう」ってなるのか、「もうやってられるか」ってなるのの違いって大きいじゃないですか。そこをもう1回チャレンジしたくなるような雰囲気作りというか、デスペナルティを極力排除するとか、結構気を遣ったゲームになっていますね。難易度は高くないけど、やりごたえはあるっていうか。表現が難しいところですが、セーブポイントを探さなくていいとか、めんどくさくはないようにしています。ターゲットユーザーについては、あらゆる人に向けているので「全人類です」とか答えられないです(笑)。

――iPhoneというと海外市場も大きいのですが、本作を海外でも出されるんですか?

羽入田氏: テキスト量がものすごく多くて、翻訳のコストがどれくらいかという相談ですね。まず日本語で出してみて、という感じですね。

野島氏: 中一の教科書レベルで良ければ僕が(笑)。




――最後に本作にかける思いや次回作への展望などをお願いします。

野島氏: こういうやり方で、初めて形にできて、ちゃんと出せたっていうのが、今はとにかく嬉しい。正直感動しています。あとは出たものがどう受け入れられるかっていうことで、ドキドキしています。おもしろいと思うんだけどな、どうなんだろうな(笑)。

羽入田氏: ずっとデバッグとかでプレイしていると、このゲームはおもしろいかどうかっていうのを越えて、俺は今何をしているんだろうってなりますよね(笑)。

野島氏: 作ってるとわからなくなってくるんだよね。おもしろいと思って作ってるんだけど、誰かがおもしろいと言ってくれないと。

――それはもしかしたら、大きなシステムの中で作っているときよりも、不安感は大きいかもしれないですよね。

野島氏: そうですね。出て行くものが“生”に近いですからね。普段は、自分で出したものがいろんな工場のラインを通って外に出るんだけど、今回はラインがすごく短いので、磨き残しとかもそのまま出るなあと思うと緊張はしますね。

植松氏: 今更、野島君のシナリオにおもしろいねとか面と向かって言えるわけないじゃないですか。例えば、何百人もで製作していて、タバコ部屋とかで「野島っていうの、あいつのシナリオっていいよね」とかいう会話があったとしても、昔から何年も一緒に酒飲んだりしている仲で、「野島君、今度のシナリオ、おもしろいね」とか今更言えないでしょ(笑)。改めては言えないですよねぇ。彼らしいものを出してくれれば、良いものが出てくるっていうのは、もうわかってますからね。

野島氏: 磨き残しがあるかどうかはわからないんだけど、常に何かあるような気がしちゃうっていうのはありますよね。この手離れの悪さ(笑)。もうちょっと触らせてくださいって。

羽入田氏: (普段の大規模な開発では)いろんな人の承認が得られたことで、安心感が増すみたいなところはあるんでしょうね、きっと。

――今回は逆に自分らしさがストレートに伝わるっていうところが楽しみっていうことですね。

野島氏: 書いてからしばらく経って、この前、ちょっと修正が入ったときに久しぶりに見直したんですけど、ああ、俺のいいところも悪いところも全部入ってて、ちょっと恐い(笑)。この癖のある台詞まわしとか。

植松氏: 僕も少人数で作るゲームって、ずいぶん昔、スクウェアにいた頃に、「半熟英雄」の1作目を6人くらいで2カ月か3カ月くらいで作ったことがあるんですよ。あの時もそれぞれの担当の人が淡々と自分の持ち分を一生懸命やるだけで、誰もあれがこうだとか、こうしろとかいうのがないままできたんですけど、今回も同じ感じでやれてある意味で懐かしかったですし、いまだにこういう作り方ができる土壌があることを確信しておもしろかったですね。

 ここにいるみんなは、何百人、何十億ってかけてでっかいゲームを作ってきた会社にいた人間ですからね。そうではなくて、こうやってフットワーク軽く数人で、アイディアがすぐ形にできるアプリの世界っていうのは、自分たちにとってまだまだ可能性があるなって思いました。実際に自分は「よし、このゲームにかけてやろう」って肩に力が入っていたわけでもないですし、「アプリでしょ」ってなめてたわけでもないですし、非常にニュートラルに自分のやりたいものが表現できて、すごく気持ちはいいですね。次回作は主題歌入りますよ(笑)。

赤尾氏: 少人数で作ったっていう意味で、遊んでもらえるユーザーにすごく近いところで、みんなの“生”感が感じられるんじゃないかと思うので、お気軽に楽しんでいただければと思います。

皆葉氏: 最近、ゲーム作っててすごく不安っていうのが大きかったんですよ。不安になると、これを入れなくちゃいけない、これもしなくちゃいけないみたいなことばっかりだったんで、作ってても楽しめないところも大きくなってきてて。それがこういうふうに、荒削りでも1人でキャラクター全部とか背景全部とか、小さいカテゴリーで1人で作業できちゃうので、不安が完全にはなくなったりしないんですけど、結果がストレートに来るんだろうなというのがすごく楽しみです。

羽入田氏: iPhoneとiPod touchで遊べますけど、ネット対戦とかアイテム課金とかは一切ないです。完全スタンドアロンのゲームで、ビジュアル的にはRPGに見えますが、実はアクションアドベンチャーです。スタンドアロンでこの世界に没入できるシナリオと、さくさく遊べるバトル、ストレスフリーで遊んでいただけると思いますので、とにかくプレイしていただいて、シナリオ、世界観、キャラクターの雰囲気、音楽、手触り感、そういったものがまとまったときに、どういったファンタジックな世界が広がるのかというものをぜひ体験していただきたいので、よろしくお願いします。

――今日は忙しい中、皆さんありがとうございました!


(C)2012 Crunge Products Co., Ltd.

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(2012年5月7日)

[Reported by 滝沢修]