WeMade、「QUAKE WARS ONLINE」運営プロデューサーインタビュー
役割分担が重要な「協力型FPS」。αテストを経て次に向かう進化の方向とは?


2011年1月20日クローズドβテスト実施予定



「QUAKE WARS ONLINE」

 オンラインゲームパブリッシャーの株式会社WeMade Onlineは、新作オンラインFPS「QUAKE WARS ONLINE(クエイクウォーズオンライン)」のクローズドαテストを12月17日から20日まで実施した。2011年1月20日からはクローズドβテスト、2月にはオープンβテストの実施が予定されている。

 今回行なわれたαテストは国内サービスの開始にあたっての技術テストという趣が強く、本作のコンテンツのうちごくわずかな部分のみの公開に留まる。そこでユーザーとして気がついたのが、必要な部分だけを必要なだけ順次公開していくという、WeMade Onlineのやや慎重なサービススケジューリング姿勢だ。

 一方、WeMade Onlineが今年2月より正式サービスを行なっていたオンラインFPS「STING」は不振に終わり、来年2月20日のサービス終了を既に告知済みだ。それだけにWeMade Onlineが今回の「QUAKE WARS ONLINE」にかける意気込みはいっそう大きく、周到な準備を経てしっかりとしたサービスを提供したいという意図が感じられる。

 アメリカ生まれの濃厚なゲーム性を誇る「QUAKE WARS ONLINE」をどう料理し、どのように日本向けのサービスを展開するのか? 今回弊誌ではそのあたりを確認すべく、Wemade Onlineで本作の運営プロデューサーを務める亀田誠氏にインタビューを行ない、将来に向けての質問をぶつけてみた。




■ 「QUAKE WARS ONLINE」とは?

「QUAKE WARS ONLINE」公式サイト
αテストでプレイ中の様子

  「QUAKE WARS ONLINE(以下『QWO』」は、米id Software/Splash Damageが2007年に開発したPC向けFPS「Enemy Territory: Quake Wars」のオンライン版だ。韓国Dragonflyがオンライン版の開発を担当し、WeMade Onlineが国内サービスを担当。来年2月の正式サービスを予定している。

 ゲーム内容としては、既存のオンラインFPSに比べてチームでの連携がより重要になっていることが特徴だ。基本となる「ミッションモード」は、各マップに3つの戦略目標(オブジェクティブ)が存在する。攻撃側のチームはそれぞれのオブジェクティブを達成することで勝利を目指すルールだが、個々のオブジェクティブの達成には特定のプレーヤークラスが必須な場合も多く、これがチーム内の役割分担と連携を強力に推進する仕組みとなっている。

 αテストで公開された内容は、ミッションモードの一部分だけがプレイできる「フリーミッション」と、各陣営に5つずつ存在するプレーヤークラスの使い方がわかるチュートリアルの2種類にとどまった。公開内容をごくわずかに絞った内容ではあったが、αテストでは本作の「Quake」ライクな操作性、独特のゲームテンポを確認することができた。特に印象的なのは、侵略者「Strogg」陣営が持つ特殊な武器の数々。走っていても飛んでいても、狙った場所に致命的な一撃が飛ぶレールガンなどはまさに「Quake」の世界ならではだ。

 戦場が広大であることもあって、両陣営に用意された各種の乗り物の活用も面白い部分だ。地球軍「GDF」には、ひとり乗りの高速車両「ハスキー」、2人乗りの主力戦車「タイタン」をはじめ、全8種類の乗り物が登場。対する「Strogg」には巨大ロボット「サイクロプス」を始め、SF的な兵器のオンパレード。一部はαテストでも実際に試すことができたが、βテストや正式サービスで全てが登場するようになれば、また違ったゲーム性が楽しめるようになりそうだ。

 これを踏まえて、将来のコンテンツ拡大やアップデートに期待が持てる「QWO」。運営プロデューサーの亀田誠氏に正式サービスに向けての展望を伺ったインタビューをご覧いただこう。


オンライン版の提供にあたり力が入れられているチュートリアル要素。動画で各クラスの操作方法を確認し、チュートリアルミッションで実際に確かめることができた


チュートリアルミッション。移動・射撃といった基本的なものから、各クラスの固有アクションの使い方まで丁寧に構成されている




■ 運営プロデューサー亀田誠氏インタビュー

WeMade Onlineで本作の運営プロデューサーを務める亀田誠氏
αテストではフリーミッションとチュートリアルがプレイできた

──まず今回αテストを実施された主要な目的は何でしょうか?

亀田氏:オンラインゲームは色々なお客様の環境下で動作させるものですので、今回はどこまできちんと起動できるか、快適に動作するか、あるいはどこに問題が発生するかという部分を確認するのが主目的です。

──いわゆるテクニカルテストですね。

亀田氏:はい。というのも、「Code Name STING」のときは、ノートPCのオンボードビデオで動作しないという現象がかなり出てしまいまして、そこでユーザー様を逃してしまったという経緯がありました。そのあたりを今回はきちんとクリアにしてサービスに入りたいという思いがありまして。

──「QUAKE WARS ONLINE」は、かのPCゲーム「Enemy Territory: Quake Wars」をベースにしているということで、ゲームルールが少々複雑ですよね。このあたり遊びやすくするために本作ではどのように取り組まれていますか?

亀田氏:そうですね。まず、「QUAKE WARS ONLINE」のメインのゲームモードは「ミッションモード」となっていますが、これをどれだけ新規のお客様にわかりやすくご提供できるかというところに今注力して製作しています。韓国で先行してサービスしていますが、チュートリアルというものが元々無かったんですよね。本作ではクラス制が重要になっていますから、この部分の紐解きというものをまずしなければならないと。新規の方でもチュートリアルをご覧になっていただければ理解していただけるよう、ゲーム内を調整しているところです。

──なるほど。具体的にはどんなチュートリアル要素がありますか?

亀田氏:今回αテストで公開した分に関しましては、チュートリアルとフリーミッションというゲームモードがあります。チュートリアルはクラス毎の動画による説明と、ガイドに従ってプレイするチュートリアルミッションが入っています。フリーミッションというのは新しいモードです。通常ミッションでは1つのマップに3つの目標(オブジェクト)がありますが、フリーミッションはその3つを1つずつに分けたモードになっています。

──それは既存のマップの一部を切り抜いたようなイメージでしょうか?

亀田氏:そうです。例えば「MCPを護衛せよ」というミッションだったら、それだけで完結する形ですね。1つづつを個別にプレイすることで、いきなり複雑なルールに振り回されることなく、本作のゲームルールを少しづつ理解できるようにというのが狙いですね。ユーザーインターフェイスについてはまだまだ開発中の部分もあるのですが、ゲームモードに自体は完成ということでαテストで公開させていただきました。

──なるほど、「Enemy Territory」らしいフルのミッションモードは今後順次投入という形になりますか。

亀田氏:そうですね、いっぺんに入れてしまうと、「Enemy Territory」をプレイされた方なら迷わずプレイできるものの、新しいお客様はみんな「?」になってしまうという恐れがあります。そのあたりをしっかりと紐解きしながら順次入れていきたいと考えています。次回予定のクローズド、オープンのβテストを通じてまた新しいモードを入れていく形です。




■ 「QUAKE WARS」ならではの面白さ。ボイスチャットに「Dolby Axon」を採用

αテストではショップやアイテム関係の要素は公開されていなかったが、今後はアイテムの調合や改造といった要素も組み込まれていく

──オンラインならではの要素としてアイテムやショップがありますね。こちらについては?

亀田氏:ショップでは「サプライボックス」というものが買えるようになります。これはランダムにアイテムが出てくるもので、レベルによって出てくるもののグレードも変化します。今回はレベル0のサプライボックスがゲーム終了後に入手できるという形ですが、今後ゲーム内ポイントを使ってショップで購入できるようにはしていく予定です。

 それから「売買」という機能も入れていきます。サプライボックスから出てくるアイテムはランダムですので、出てきたものが必然的に余ってしまうことがあるんですね。そういうものがでてきたときにプレーヤー間で売り買いができる場所です。アイテムは「調合」や「改造」といった要素で活用できますので、そういった部分につながっていくコミュニティ要素という位置づけですね。

──ゲームモード的な部分では、今後どのような拡張を予定していますか?

亀田氏:今回のαテストではフリーミッションとチュートリアルしかありませんでしたけれども、「Enemy Territory」で出ていたゲームモードの種類が少ないといった不満点に答えるモードを投入予定です。TDMや、「占領モード」、あるいは韓国で出ている「脱走モード」などで差別化を図っていくつもりです。

──なるほど。韓国では先行してサービスが進んでいますが、開発については、日本向けは別のラインで動いているんですか?

亀田氏:正確に言いますと、開発は韓国のDragonflyさんですが、元々本作自体を日本向けに作っていただいているんですよ。今韓国で入っているUIの変更や「脱走モード」といった要素、チュートリアルなど全て日本からの要望で実現しています。まず韓国で導入して問題が無ければ日本で、という形で動いています。αテストで公開したフリーミッションも、このために新規で実装したというものになっています。

──そうすると、日本向けの展開はかなり重要視されているようですね。今ではオンラインFPS市場も混戦気味になってきて差別化が重要ともいえますが、今他のオンラインFPSをプレイしているユーザーが「QUAKE WARS ONLINE」をプレイする理由はどのあたりに見出せると思いますか?

亀田氏:まず、今の無料オンラインFPSの多くはTDMや爆破モードといった、小規模な戦いをメインにしていますが、本作では大規模なマップであったり、同時プレイ人数の多さといった点で全く違った体験ができます。もうひとつは、「GDF」陣営に7種類の乗り物があり、「Strogg」陣営には5種類の乗り物がありと、既存のFPSに慣れたユーザー様でも新鮮なプレイが楽しめるというふうに思っています。


「GDF」、「Strogg」それぞれに用意された乗り物。乗り物専用のミッションも用意するらしい?

話題はボイスチャットシステムにも広がった。「Dolby Axon」を採用し、エンジンに組み込んだたという

──「QUAKE WARS」であること自体が大きな差別化になっていますね。

亀田氏:そうですね。ゲームルールについても、他のFPSでは凄く上手な方がひとり居るだけで勝敗が決まってしまう部分も多いかと思いますが、本作では役割分担というものが非常に重要で、ひとりだけが突出したとしても、他が連動しなければそうそう戦局が変わらないという面白さがあります。だからこそ弊社でも「協力型ガンシューティング」として本作をご紹介しています。

──特定のクラスでしか達成できないオブジェクト、というものがルールを引き締めていると?

亀田氏:ええ、その通りです。そのあたりの面白さをさらに強化するという意味で、コミュニケーションの要素がとても重要になると考えています。そのため本作ではボイスチャットの機能に力を入れているんですよ。ヘッドセットをつなぐだけですぐにチーム内で会話できるようになっています。

──それはパッケージゲームでは既に必須とされる機能ですね。オンラインFPSではまだ実装例が少ない部分で、他のタイトルでは「Skype」など外部ツールに頼るユーザーも少なくないですから。

亀田氏:そうなんですよね。それから、なかなかボイスチャットで話せないシャイなユーザー様もいらっしゃると思いますので、今後ボイスチェンジャー機能の実装も予定しています。

──それはいいですね。「Strogg」でプレイするときは、ぜひドスの効いたエイリアン風のボイスチェンジで会話してみたいものです(笑)。ちなみにボイスチャットのテクノロジーは、何かサードパーティ製のものを使っているんですか?

亀田氏:ドルビーさんの「Dolby Axon」を採用させていただいています。ポジショナルボイスチャットにも対応していますので、味方が右にいたら右から声が聞こえるというような演出も可能です。

──「Dolby Axon」というとデビュー間もない最先端のボイスチャットソリューションですよね。もしかして初めての採用ゲームになるのでは?

亀田氏:そうかもしれません。少なくともオンラインゲームでの採用は初になりそうですね。他のゲームでは外部ツールを活用されているユーザー様もいらっしゃいますが、ゲームそのものに内蔵されていることで、自動的にチーム内にチャンネルが振り分けられるなど、よりFPSユーザーの皆さんが利用しやすいボイスチャットになっていると思います。




■ オリジナルを尊重しつつ、オンライン版として独自の拡張も

オリジナルを尊重しつつ、新たな面白さもどしどし入れていきたいという亀田氏。マップについても日本を舞台にしたものを企画中であるようだ

──来年2月には正式サービスを予定されています。そのころにはパッケージ版の「Enemy Territory: Quake Wars」に入っていたマップは全て実装されるんでしょうか?

亀田氏:全部ではないです。逆にオンライン版オリジナルのマップも入ります。例えば「ETQW」で日本を舞台にしたマップがありましたが、オンライン版ではそれをさらに調整したものを入れようかなと。完全オリジナルのマップを作成していくプランもありますので、年間スケジュールで見た場合6から7マップくらいはプラスアルファされていくことになるかなと。

──オリジナルの「ETQW」では、地球上の各地域に4つの「キャンペーン」があり、それぞれ3つのマップを内包していました。それで、3マップを連戦することでキャンペーン単位の勝敗を決めるという、大きな流れがありましたよね。オンライン版ではそのあたりは再現されるんでしょうか?

亀田氏:現状では、マップを跨いでの連戦というものは想定していないです。あくまでマップ単体を単位としてコンテンツを考えています。そのかわり、独自のモードとして乗り物だけで勝負をするとか、レース的な形で対戦をするような企画も考えていまして、オリジナル版とは違った進化の方向ではありますね。

──「QUAKE WARS」という素材を使って、FPSのシステムで実現できる様々な楽しみを追求していく。そういう点では「STING」で目指した方向性にも近いですね。

亀田氏:そうですね。ただ、やはり「QUAKE WARS」という素材の良さ、オリジナル要素の面白さという部分は絶対に崩さないつもりです。基本に忠実であることもまた大事だと考えていますので。

──オリジナル版をさんざん遊びこんだオールドファンとしては嬉しいです。

亀田氏:ただ、よりゲーム性を向上させるために若干の調整は入っています。ゲームバランス的に、エンジニアが設置できるタレットの数を2から1に減らしたことですとか、操作性を現在のFPSファンの皆さん向けにするため、移動をオリジナルよりも少しだけクイックにしたことなどです。オリジナルを経験された方は「お、ちょっと変わったかな」?という程度には感じられると思います。

──オールドファンと、新規ユーザーの両方が満足できる調整というのは難しそうですね。そういえば、オリジナル版はスナイピングがかなり強かったように記憶しますが、そのあたりも変わるんでしょうか?

亀田氏:たしかに狙撃は強いですね。しかしゲームバランス上の問題になるほどではないと考えていますので、基本的にオリジナルと同じ状態で提供しています。

──オンラインFPSのサービスではプレーヤーが楽しめる大会の開催や、クラン戦の支援といった部分も注目されますが、本作ではどのように取り組まれますか?

亀田氏:今回、弊社で2タイトル目のFPSということで「STING」で得た教訓を生かしていきたいと考えています。具体的には、まずネットカフェでの展開にかなり力をいれています。それにプラスして、大きな大会を開催したいと思い、準備を進めています。韓国のほうでは本作がWCGのエキシビジョン種目に選ばれたということもありますので、そのあたりも視野に入れて動いていきたいなと。

──最後に。αテストが終わり、今後クローズドβ、オープンβ、正式サービスと続いていきます。その中で本作をどのように日本のユーザーに届けていくか、抱負をお聞かせください。

亀田氏:まずは、本作が他のオンラインFPSとはまた違った新しいゲームであるということを見ていただきたいと思っています。FPS経験者の方に対しては、ただ撃ちあうだけでなく、より進化したものという部分をご提供していきたいです。なおかつ、本作本来のオリジナルモードの面白さをさらに引き出せるよう、運営側の努力で訴求していきます。

 また運営側としては、FPSイコール大会であるという部分もありますから、そういった部分でも多くのユーザーの皆さんに楽しんで頂けるよう取り組んでいきたいと考えています。

──ぜひ、プレーヤーがやりがいを感じるような「QUAKE WARS」を提供されるこを期待しております。ありがとうございました。

亀田氏:ありがとうございました。





(2010年 12月 27日)

[Reported by 佐藤カフジ]