「ファイナルファンタジー XIV」ディレクター河本信昭氏インタビュー
正式サービスでは「クラスクエスト」がついに実装、高レベルクラフターは敵に襲われない仕様に


9月7日収録

スクウェア・エニックス本社


 株式会社スクウェア・エニックスの新作MMORPG「ファイナルファンタジー XIV」の発売がいよいよ間近に迫ってきた。現在はオープンβテスト(OBT)が行なわれており、9月14日には発売記念イベントも開催された。

 OBTは9月20日まで行なわれ、9月22日には「コレクターズエディション」の購入者を対象に先行サービスがスタートする。そして9月30日にいよいよ日本、北米、欧州での世界同時サービスが始まる。

 今回は、正式サービス直前の非常にあわただしい中、ディレクターの河本信昭氏と、バトルプランナーの岡田厚志氏に話を聞くことができた。OBTの状況や、製品版で遊べる各種要素、さらにその後の未来像まで「FF XIV」の全体像を俯瞰できる情報をたっぷり入手してきた。

 なお、インタビューは9月7日に収録しており、9月14日に実施された「エオルゼア プレライブ」など、それ以降に発表された内容については質問できていないのであらかじめご了承頂きたい。




■ サーバーのさらなる安定化と負荷の軽減で製品版ではより快適に

「FF XIV」ディレクターの河本信昭氏
バトルプランナーの岡田厚志氏

編: 春からクローズドβテスト(CBT)を初めて、今OBTが進行中ですが、手ごたえはいかがですか?

河本信昭氏: ようやく僕自身もまとまった時間がとれて、公開でテスターの皆さんとこっそりパーティーを組んだり、継続的にログインしてプレイできるようになってきました。我々が考えていたことがその通りになっている部分もあれば、そうでない部分もあり、改善したい部分はまだあるので調整を続けています。

 批判を頂いている部分は、こちらでもそうなるだろうと認識している部分が多いです。CBTでも、ここは直すつもりですと事前にコメントで言っていた部分が最も批判されましたから。ただ、我々も言葉が足りないという部分は実感しています。もう少しこまめにメッセージを出して行ける仕組みを作れないかと、運営のスタッフとも話しています。

編:CEDECの講演を聞いて、圧倒的なボリュームから、開発現場の忙しさはすごいことになっているのではないかと思いますが……

河本氏: どちらかと言うと、今目の前にある問題をどうするか、ということをいつも考えているので、忙しいという感覚は忘れてしまいますね。

編: 開発の進捗状況はいかがですか?

河本氏: さまざまな対応に追われてるのが正直なところです。いつもそう答えているような気がします(笑)。「FF XI」の時にはβ版は全然違うものを一部分だけ動かして、実際の製品版を作っていたのですが、今回はβ版にも変更をいれて様子を見つつ、かつ製品版の作業もしつつという形です。スタッフみんなバグ取りであったり調整もぎりぎりまで続けている状態なので、そういう意味ではいろいろと大変です。

編: CBTの時に比べて、OBTでは毎日のようにアップデートが入っていますね。

河本氏: CBTの時は区切り区切りで替えようという話でした。OBTでは、かなり発売日に近いので、細かい調整とか細かいバグ修正も反映しているというのが実情です。

編: バランス調整も入ってきているということですか?

OBT開始当初は、人が殺到してログインし辛い状況が発生した

河本氏: CBTの時には発売時のものとまだ結構差がありました。ここを調整しても発売時のものとは差異が大きいので、それは次のバージョンで直しましょう、みたいな感じだったのです。今はもう発売が差し迫っている状態ですから、早めに投入して皆さんに見ていただくようにしています。

編: 例えば緊急度が高いのはどういった部分ですか?

河本氏: やはりゲームのバランス的なところですね。一番大きかったのは敵視(「ファイナルファンタジー XI」でいう敵対心)です。例えばケアルを使った時に敵の攻撃がものすごく飛んできていたのですが、そのままにしておくと、ユーザーの皆さんのプレイの仕方が発売時に大きく変わってしまうことになりますので、それは早めに投入して見ていただいたほうがいいでしょうとというような判断をくだしました。

編: ディレクターとして今回CBTまでやってみて、一番の反省点はどこですか?

河本氏: 安定度とか、ゲームを楽しんでもらう以前の部分に問題が発生しすぎたことが大きいです。意見をもらってそれに応えることだけにもっと注力できたらなと思うのですが、トラブルへの対応にかなりの時間をとられたことが残念です。

編: OBTへの各国の参加率はどうなのでしょうか?

河本氏: 日本と北米がそんなに変わらないレベルで、欧州がちょっと少ないかなという感じです。こちらのメンテナンス時間の都合による部分もあるのかもしれませんのですが、欧州のイベント、gamescomに自分自身も行った後なので、ヨーロッパの人がもう少し参加してくれたらいいなと思っています。

編: βテストについてですが、頻繁にクライアントが落ちるというユーザーと、全く落ちないというユーザーがいるようですが、原因は判明したのですか?

河本氏: それに関しては我々も調査しています。我々の環境で数十人くらいでスタッフで試しても落ちないので、かなり大がかりに負荷検証をやってみたらようやくその現象が起こったので、そこから原因と思われるものを1つ1つつぶしている状況です。ユーザーの皆さんの環境も100%こちら側で判るわけではないのでそれを調べながらといったところです。

岡田厚志氏:PCですから個人の環境もかなり違いますからね。

河本氏: もしかしたら機種依存の原因があるかもしれないし、共通のなにかがあるかもしれないということで、そこはまだバグを取っている状態です。

編: まだはっきりと原因が判らないということですか?

河本氏: 大きな理由が1つあるわけではなく、複数の理由があるので、それを1つずつつぶしているというところです。既にβテストにいれている対策もあれば、製品版で導入する対策もあります。

編: ユーザーインターフェイス(UI)が使いづらいという声が多いですが、その辺りはどうなるのでしょうか?

河本氏: これには色々な側面があって、例えば基本的な構造の問題であったりとか、負荷が重くて扱いづらいとか。これは発売前に向けてもっともっと良くしていかなくてはいけないという部分と、単なるUIの問題だけではなくてサーバーの処理負荷の影響でラグが発生して、UIが重くなっているという部分もあるのです。ですからサーバーの負荷に関しては、分散化や処理の最適化を現在重点的に行なっています。そしてUI自体も、発売時、そして発売後も含めてこんな感じで変えていこうかという調整を行なっています。βから発売時で大きく処理負荷等が改善されるものもあります。

編: 製品版は今と比べて軽くなるということですか?

河本氏: 軽くしなければいけない、ですね。今はユーザーの皆さんが1カ所に集中してしまうとそこが重くなるというのが実情なのです。軽い場所に行けば軽いけれど、重い場所は重い。そこはもう少しチューニングしようと、サーバー担当者と話しているところです。局所的に重いという部分については、改善されると思っています。もちろん、UI自体も改善する予定のものがいくつかあります。

編: 現状では、例えばアクションバーにセットしたスキルを記録することや、装備の一括変換ができませんが、こういった部分はどうなりますか?

河本氏: 最初はメニューから手動でしかできないということで苦労されていたのですが、ユーザーの皆さんにかなりマクロの使い方が広まってきて、これだと簡単、という声も聞かれるようになってきました。マクロははぜひ試していただきたいと思います。また、大きな変更としては、ほかのクラスに変えても、そのクラスで使えないアクションも外れないような処理を考えています。そこに関するユーザーの意見は非常に多いですし、採集や製作を遊んでいる皆さんが増えてきましたので、もっと気軽に替えられるように、今大幅に調整を入れているところです。

アクションバーのアクションは、OBTまではクラスを変えるとリセットされてしまった
9月14日に行なわれたオフラインイベント「エオルゼアプレライブ」で、田中弘道氏がアクションバーの仕様変更を発表した

編: 使えないアクションが外れないようになるのですか?

河本氏: 例えばギャザラーの方が戦闘系のクラスにチェンジした時に、今は採集のためのアビリティが外れてしまいます。それを外れないようにしようと考えています。外れてしまうと、次につけ直すのに手間がかかりますから、それを維持できるような仕組みを検討中です。

編: 戦闘と採取のアビリティをすべてセットしておいて、武器を変えるだけで使い分けができるようになるということですか?

河本氏: 空きがあればできるようになります。その時にAPに関しても消費しないようにとか、まだ調整中の部分もあるのですが、対策中であるということはお伝えできると思います。

編: アクションをセットする画面も少し分かり辛いですね

河本氏: そうですね、アクションをセットする画面でも、まずあのリストが出てくることに気付かない方が多いので、それに関しては自分のスキルが最初に表示されるようにとか細かい調整も含めて現在作業を行なっているところです。

編: ほかに開発側で検討課題に上がっているものはありますか?

河本氏: 山ほどあります(笑)。発売に向けてこれだけは直そうというものと、継続的に見て行こうというものがあります。大きいところでは、先ほど言ったスキルの部分と、何よりもサーバーの負荷ですね。安定して遊んでいただけることが最優先だと思っていますので。後はバグですね。それから細かい成長バランスであるとか、そういったユーザーの皆さんに楽しんでいただける部分を調整しているところです。




■ メインクエストを始め、製品版には大量のクエストを追加

「正式スタート時からすでに達成するのが大変な量のクエストを追加していく予定」と河本氏
「エオルゼアプレライブ」では「クラスクエスト」についての説明もあった

編: 正式サービス後にはどのような要素が増えるのでしょうか?

河本氏: 発売時には大幅に変わってくるのはクエストです。現在はクエストが大半マスクされていますので、お見せしているのはほんの一部に過ぎません。大量に追加されていきますので楽しみにしてください。

編: それはギルドリーヴが増えるということですか?

河本氏: 違います。もちろんギルドリーヴは増えますが、それとは別です。今は各国に3つだけクエストがありますが、あれが数倍に膨れ上がると思っていただければ。それに加えて「クラスクエスト」という各クラスごとのクエストも追加されていきますので、それに関してはいま最終調整を行なっているところです。

編: 「クラスクエスト」はどういったものになるのですか?

河本氏: 「FF XI」をプレイしていた方に判りやすく言いますと「アーティファクトクエスト」のようなクラス専用のクエストを中盤からできるようなものです。ある一定のランクに到達したところで、そのクラス専用のクエストが発生します。すべてソロでも遊べるようにデザインしていますし、例えば生産クラスや採集クラスにも固有のクエストが用意されています。それはちゃんとシナリオや固有のカットシーンが付いた、ギルドリーヴとは違う「FF」ライクなストーリー主導のクエストになっています。

編: ギルドリーヴがメインコンテンツのように感じていましたが、そうではないのですか?

河本氏: よくメインコンテンツとはどういうものなのだろうと部内でも話になります。これは僕自身の考えではあるのですが、ギルドリーヴは食べ物でいうとお米だと思うのです。成長を楽しんでいただくうえで、単調にならないように美味しくお米を食べていただこうと。だからそういう意味ではギルドリーヴは間違いなくメインコンテンツです。ただそれだけですべてが終わるものではなくて、そこにときどきクエストが挟まってきたり、新しい商売であったり、成長が挟まってくることによって楽しんでいただけるものだと思っています。ですからメインディッシュというよりも「主食」が正しい言い方だと思います。

編: では「FF XIV」は最終的にどのような遊び方をするオンラインゲームになりそうですか?

河本氏: 今回はメインシナリオはソロでかなりの部分までいけるようにデザインしています。パーティーのバトルも部分的には用意していますが、ソロで楽しめる部分が圧倒的に多いです。ストーリーはかなりのボリュームがあります。今遊んでいただいているクエストでもかなりカットシーンなどのボリューム感はあると思いますが、それがさらに増えていきます。じゃあクラフターやギャザラーの人たちにはどういうクエストがあるのだろうというのは、また仕掛けを用意していますので、そこはお楽しみにというところです。

編: 今回3つの国のメインストーリーが少しだけ実装されましたが、全体としてはどういったストーリーになるのでしょうか?

河本氏: メインシナリオは3国それぞれに進んでいきます。「FF XI」のイメージにかなり近い形ですね。最終的に、1つのストーリーに繋がっていきます。メインシナリオはかなり高レベルになるまで続いていくのですが、その中で今回インスタンスの中にある仕掛けなどが、シナリオにも関わってくるのでそこは楽しみにして欲しいです。あとはただお話しを見るだけではなくて、カットシーンに出てくるキャラクターにも特殊な仕様があるのもいるので、そこもおいおい楽しみにしてください。

OBTでは3つの国で計6つのクエストが楽しめる

編: 今のメインクエストはスキルランクが10ごとに出てきていますが、今後も同じ区切りになるのですか?

河本氏: もう少し頻繁になってくると思います。それに、メインクエストとは別にクラスクエストがありますから。クラスをいくつも育てている人であれば、クラスクエストも複数受けることになりますので、多彩なクエストが楽しめることになります。

編: 「FF XI」はクエストを全部クリアするのは不可能とまで言われていましたが、それと同程度には増えていくということですか?

河本氏: 相当大変だと思いますね。発売時点では不可能とは言いませんが、不可能に相当近いと思います。それくらいの量があります。

編: 生産職が独立したクラスとしてあると、「FF XI」のような装備を集めるというプレイがエンドコンテンツになりにくいと思いますが、「FF XIV」のプレイスタイルはどういったものになるのでしょうか?

河本氏: 基本的に最初は製作で作られたものが最も強くなるようにしています。ただハイエンドのコンテンツを今後出さないというつもりはなくて、それはクラフターやギャザラーの方たちも絡んだうえで、できるだけいいものが手に入るようにというのは今後追加していく予定でいます。

編: それはどういう形なのですか?

河本氏: それはまた今後(笑)。「FF XI」でもあったようなお馴染みのものも当然出てくるようになると思います。そこは想像を膨らませていただければと思います。

編: 「FF XI」にあったコンテンツも出てくるということですか?

河本氏: そうですね。ただ時間を強制しないことを一番に考えています。長い期間をかけて取るようなものは作るのですが、1度に何時間もかけて取るようなものは避けるようにしようという話はしています。

編: それはソロプレイでも取れるということですか?

河本氏: そういったものもありますし、パーティーでしかできないものもだんだんと出てくると思います。そこはユーザーさんのスタイルによって、色々な選択肢が選べるようにしたいと考えています。

編: OBTからギルドリーヴがパーティー推奨的な難易度になってきて、ソロプレイはあまり推奨されていないのかなという印象を受けたのですが。

河本氏: ソロで遊べるようにという方針は全く変わっていません。ソロで最高レベルまで到達できるようにというところも、ソロでクエストをクリアできるようにというところも変わっていません。ですから、まずソロで遊べるようにするのは大前提となります。そのうえで、パーティーを組むともっとメリットがありますよというバランス調整ができていなかったのがCBTの反省としてありました。OBTではパーティーを組むことでより報酬を得られるような調整を行なっています。

編: 正式後は各々クエストをこなしたり、ギルドリーヴで遊んだりという形になるのですか?

河本氏: そうですね。ギルドリーブの中にもレベル40の新しいものも出てきますので、その中にはより難易度が高かったり、より工夫するものが出てきます。ファクションリーヴに関しても、まだまだ皆さんそれほどファクションを貯めて上の方を見ているわけではないと思います。そこに関してもまた新しいものや、派手なものを見られるのではないかと思っています。




■ 将来の対人戦に備え、すでに対人用のアクションも入っている

街にはチョコボ乗り場があるが、現在はどれも使うことができない

編: チョコボはいつから乗れるようになるのですか?

河本氏: チョコボに関してはもう少しお待ちいただこうかと思っています。ただ乗れるだけというものはすぐに作れるのですが、いかんせん今回はテレポという便利なものを最初から導入しています。アニマさえあればいくらでも飛べるので、移動手段としてチョコボがそこまで便利かというとそうではないと思います。ですから移動するだけではなくて、何らかのコンテンツが追加できるタイミングに合わせてチョコボの解禁もありかなと考えています。

編:競売所に関してはどうなのでしょうか?

河本氏: まだマーケットが未成熟であることと、リテイナーの使い勝手に関してまだまだ我々の方に足りてない部分があることは認識しています。ので、これに関しては発売までに改善できる点を改善し、発売後も含めて検討していきたいと思っています。一足飛びに競売所というだけではなくて、どうやったら今のマーケットをもっと使い勝手が良いものにできるのかという部分を検討していきたいと考えています。どこに行ったらなにが買えるの? といった部分の情報をもう少し整理するなど、打てる手はあると考えています。

編: カンパニーはいかがですか?

河本氏: カンパニーは我々としても一番の最重要課題として捉えています。これに関してはもう少しお時間を頂くことになると思います。今まさにそこに向けて設計を進めている段階ではあります。もう少ししたらお知らせできるタイミングがくるかな、くらいに思っていていただければ。

「エオルゼアプレライブ」で「カンパニー」のコンテンツとして実装されるギルドハウス的な建物のイメージイラストが発表された

編: カンパニーの仕様はもう確定したのですか?

河本氏: リンクシェルでやっていたことをさらに推し進めるようなものです。リンクシェルは気軽なコミュニティの場として作られたもので、緩いコミュニティとして成立していますが、そこからさらにユーザーの中で役割を持ちたい、もしくはその枠組みでコンテンツを遊びたいという人のために何かを提供していきたいと思っています。さらに言うと、そこで資産を持ちたいとか、そういった希望に応えるものになると思います。

編: カンパニー単位のコンテンツも入りますか?

河本氏: そういった遊びとセットで提供しなければ意味がないと思っています。今回発売日に実装されていない一番の理由はそこになります。コンテンツを揃えてから、皆さんの前に提供しようと考えています。

編: ある程度育ったプレーヤーに向けた遊び方になるのですか?

河本氏: 成長したプレーヤーが初心者のプレーヤーをこの世界に引き込むようにグループに入れてあげられるのがカンパニーの重要な要素だと思っています。そのあたりを考えていま設計をしています。

編: ギルドがあると、例えばギルド戦のような要素を期待してしまうのですが、対人要素はあるのですか?

岡田氏: 考えていますが、まだいまお話しできる段階ではないので、お話しできるようになったらまた説明させていただこうかなと思っています。

編: 可能性としては濃厚なのですか?

河本氏: やるのはもう間違いありません

岡田氏: 今のアクションのいくつかの能力は、勘の鋭い人なら判るかもしれませんが対人を想定しているのかなというものが存在しています。

編: 対人戦用技能が入っているのですね。対人戦に関しては「FF XI」とは全く違った形になりそうでしょうか?

河本氏: バトル自体も違ったものになるでしょうし、チョコボやカンパニーと同じように、単に1対1で戦うだけなら意外と簡単に実装できるのです。ただ我々はやはりコンテンツとして、それを遊んだらどうなるのというところまで用意できてからリリースしようという考えがありますので、かなりその周辺に関しては練っているところです。




■ 潜在値は「違うこともしてみませんか?」という開発からの提案

「潜在値に特別なボーナスを付ける予定はありません」と河本氏

編: 潜在値はCBTの時ほど気になるものではなくなってきていますね。

河本氏: 潜在値は今の形が本来のものなのです。それがβ3では得られる修練値や経験値がバグのためにあまりに多かったので、多くの皆さんが「あれ?」と思われたのです。実際βテストの初期から普通の仕様として入れてはいたのですが、成長速度が急に上がったことで顕在化したという状態です。ですから到達するまでのパラメーターをいじったわけではありません。

編: 今の仕様ですと休んでいる時には緩やかに回復していくのですね

河本氏: 休むと言っても能動的に休むだけではなく、そのクラスを使っていなければその間は回復していきますし、必ずしもログアウトしなければならないわけではありません。

編: 潜在値は「得た」というメッセージが出ますが

岡田氏: 各クラスごとに内部的には取ってありまして、潜在値を貯めていくと潜在ランクが上がっていきますが、現状では何もボーナスはありません。それによってキャラクターが強くなってすごい技が打てるようになると、みなさんそれを取りに行くと思うのです。そういう状態は考えていません。そうではないなにかを提供できればと考えているところです。

河本氏: いま敢えて「意味がありません」とはっきり言うのは、潜在値を取らなければいけない、と誤解されないように、という意味が大きいためです。もしあるとしてもオマケ要素以上のものはありません。今は、どれくらいの方が潜在値を得ているのかというデータを収集するために記録しているという面もあります。

「エオルゼアプレライブ」では「バトルレジメン」の組み合わせが一部発表された

編: 想定修練値を超えると潜在値が入り始めるということですが、想定修練値はプレイ時間で想定されているのですか?

河本氏: プレイ時間あたりでこのくらいは習得するだろうということで計算していますが、その言い方が誤解を生んで、時間で計算していると受け取られてしまいました。実際調べてみたのですが、OBTの仕様で、スキルランク1からはじめて、1週間でランク20手前ぐらいまでは潜在値は手に入りません。ですから普通のペースでプレイしている方なら、見たことがある方はかなり少ないと思います。

 「FFXI」をプレイしている方なら判ると思いますが、レベル20手前というのはサポートジョブのタイミングですよね。それくらいになるまでには、実際に別のスキルで遊んでみる方が多いと思うのです。また、現在の成長スピードは若干想定よりも遅いと思っています。ランク1から10までは必要修練値をさらに下げようと思っています。そうすることで20前後までは潜在値を得ることはなくなると 考えています。

編: 最終的な狙いとしては、1つのクラスをずっとやり続けて欲しくないというのがあるのですか?

河本氏: 目的としては大きく2つあります。1つは成長のバランスです。カジュアルなユーザーに向けて作るか、コアなユーザーに向けて作るかは永遠のテーマではあるのですが、「FF XI」は既に様々な対処を打っているにも関わらず、やはりコアなゲーマー向けのゲームであるというイメージを持っている方はまだ多いと思うのです。それをもっとカジュアルにしたというメッセージを出したかったというのが1点あります。コアとカジュアルのバランスをとることで、全体的なスピードバランスも底上げできると感じましたので、先ほど言ったような成長をより早いバランスに調整できるというのもその効果によるものです。

 もう1点はコアなユーザーの方にも、どこかで他のクラスに切り替えるタイミングや休憩するタイミングのきっかけを提供するのが、我々の責任ではないかと思っています。ずっと遊ぶという行為はユーザーの選択ではあるのですが、ここらで別のをことをやってみてはいかがですかというオプションとしても別のスキルを用意しています。そのきっかけを与えるために、敢えてチャットログに流しています。制限することが目的なのではなく、きっかけを提供したいという考えで作りました。

編: バトルレジメンが分かりにくく、あまり使われていない印象がありますね。

岡田氏: 効果がまだ伝わっていないからだと思います。例えば通常攻撃から通常攻撃へのバトルレジメンには相手の物理体制を一時的に下げる効果があります。TPを貯めなくても使えるので、戦闘開始時にまずそれを使って耐性を下げて戦って、TPが貯まったところで今度はWSからWSへとつながるバトルレジメンでダメージをアップさせてといった形を想定しています。

編: いつ使えばいいのか迷っているうちに戦闘が終わってしまったということが多いですね

岡田氏: バトルレジメンの説明が足りないのは判っていまして、もう少し判りやすい何かを用意しなければいけないと思っています。バトルレジメンそのものの仕様は、連携よりは判りやすいものかなと考えています。UI上で今これが組まれていますよと判るようになっていますし、タイミングを連携ほどは重視していません。

編: バトルレジメンは「FF XI」の連携のような位置づけを目指しているのですか?

岡田氏: 「FF XI」の連携は相手のHPを削るためのものでした。バトルレジメンは効果がそれぞれ違いますから、使うタイミングをあらかじめパーティーのメンバーで話しておいて、その戦略の中で適宜いいタイミングで使って欲しいと思っています。「FF XI」の連携は、初めて使う人にはタイミングがシビアで非常に難しかったかなと思うのです。逆にそうだからこそ上手く成功した時にカタルシスがあったのかもしれませんが。今回はより裾野を広げたい、パーティープレイで一緒に目的を達成するための難易度を下げたいという気持ちで、あの形になりました。カタルシスよりも、遊び易さを重視しています。




■ 生産クラスだけのプレイでも世界の秘密を知ることができる

「ローカルリーヴを出会いの場にして欲しい」と河本氏

編: 生産のローカルリーヴをエーテライトの近くで行なう形にしたのは、どういった理由があるのですか?

河本氏: 今回は修理がかなり大きな要素になってくると思います。NPCの修理では一定量しか回復しませんし、かつ料金もそれなりにかかります。クラフターが修理をして初めて成り立つようなバランスになっています。それもあってできるだけクラフターの方にエーテライトまで出張していただいて、そこで交流を生んで欲しいという意図があります。ローカルリーヴでそこまで行ったついでに修理を引き受ける、など、ついでに色々なものが遊べるように、またそれが出会いや商売のきっかけになればと思っています。

岡田氏: 街にずっと引きこもっているのもなんですから、外に出るきっかけにもなりますよね。

編: さらに遠い場所まで行って生産するようなリーヴもあるのですか?

河本氏: クラフターのランクが上がると“低レベルのアクティブのモンスターに狙われない”ようになります。このためクラフターだけをプレイしていても世界を旅できますし、クラフターでもこの世界の秘密を知ることができるということを大きなテーマとして掲げていますので、世界を回って自分の商売のきっかけやコミュニケーションのきっかけをつかんでいただければなと思っています。

編: 生産でローカルリーヴをクリアするとレシピを教えてもらえますが、どこかに記録されているのですか?

エーテライト付近には、ローカルリーヴをこなすクラフターの姿が多く見られる

河本氏: あれは実を言うとギリギリで入れた仕様なのです。レシピが判らないという声が多くありますので、なんとかして今の仕様の中でヒントを出そうと。ほかにも資料をウェブで出そうと今色々と準備はしているのですが、ゲーム内でもこういったものがあるよということを少しでもユーザーに知ってもらいたいと思って入れたものです。あれを習得しなければ作れないというものではなく、感覚としてはTIPSのようなものと捉えてください。

編: レシピは今後外部で見られるようになるのですか?

河本氏: 基本的なレシピに関しては自社のWebなどを含めて開示していく方向で考えています。

編: 公式ホームページにある「調理師アマリアの一日」に「レシピ帳」というアイテムが出てきますが、ゲーム内には存在していないのですか?

河本氏: それに関してはいろいろな都合があって、今はまだお見せできる段階ではないというところです。計画はあるのですが、今はそれよりも優先的にやるべきところを作業しています。

編: 現在は生産の材料が足りなくて、クラフターの修練値が上げにくい印象がありますね。

河本氏: まだまだ市場に対して材料が供給されていないのが今の問題だと思います。それに関しては材料を店で売るというのも1つの手ですし、ドロップテーブルの計算であるとか、特に基本となるシャードとクリスタルについては大幅な追加を検討しています。開発者自身もプレイしていて「これが足りないんですけど」みたいな話をしながら作業しています。

編:生産クラスの戦闘は投石がメインですが、持っている武器で闘ったりはできないのですか?

岡田氏: 製品版で攻撃方法が急に増えるわけではありませんが、そこは様子を見ながら順次バージョンアップで対応させていただければと思っています。

河本氏: やはり手に持っているものを使いたいですよね。そこに関しては部内でも色々な意見がありますので、何らかの方針は考えていきたいと思っています。

編: 「FF XI」の「獣使い」や「召喚士」のようないわゆる“ペットジョブ”はまだ実装されないのですか?

河本氏: ネタとしてはあるのですが、まだ今回は出てきません。検討はしていますので、もう少し後になればお知らせできるのではないかと思います。今はもう少し基本部分をいじりたいと思っています。だた今回は拡張ディスクにこだわらずにクラスを追加していきたいと考えています。実はもう次のアップデートも考えているところですので、そこはおいおい話ができると思います。

編: 「FF XI」では拡張ディスクのたびにいくつかの新ジョブが追加されるというパターンでしたが、「FF XIV」ではアップデートで追加されるのですか?

河本氏: 今回はアップデートでの追加も考えています。




■ PS3版は鋭意開発中。βテストは行なうが時期は未定

「メジャーパッチは3カ月に1回程度のペース」(河本氏)

編: 正式サービス後の拡張計画は?

河本氏: 大きなメジャーパッチは3カ月に1回くらいのペースでやっていこうと思っています。ただ発売後は緊急にアップデートしなければならないことが山ほど出てくると思いますので、それと並行してという形になります。拡張ディスクは「FF XI」のスパンとそれほど大きく違わない形で考えています。

編: 「FF XI」では最近拡張コンテンツはパッケージではなく、ダウンロードコンテンツという形が中心となっていますが、この点「FF XIV」ではどうなるのでしょうか?

河本氏: ダウンロードコンテンツになる可能性は0ではないと思いますが、やるからにはドカっとまとめてやったほうが注目を得られるということもありますから、まずは拡張ディスクという形で考えています。

編: プレイステーション 3版の開発状況はいかがですか?

河本氏: 僕らがgamescomから帰って来た時にちょうどPS3版の状況を報告する会議がありまして、動いているのを見ました。パーティープレイとか基本的な部分はできてきているのですが、まだまだユーザーの皆さんにお見せするにはチューニングが足りないのでもう少しお待ちいただくことになります。

編: PS3版のβテストはいつからになりそうですか?

河本氏: βテストは、まだやりますとしか言えません。もう少しその情報はお待ちください。

編: 発売スケジュールに変更はありませんか?

河本氏: 発表している予定の通りです。

編: 最後に、正式サービスを待つユーザーへのコメントをお願いします。

河本氏: CBTから引き続き、ユーザーの意見を聞きつつやっていきたいと思っています。僕自身もログインして、ユーザーの皆さんと直に触れあってわかることが山ほどあります。正式サービスが始まるとその温度はさらに高まると思うのです。ユーザーの皆さんと一緒にこのゲームを成長させていきたい、この世界を成長させていきたいという強い気持ちはずっと変わりません、正式サービスが始まってからもよろしくお願いします。

岡田氏: 開発が始まったのはずいぶん前になります。でもサービスインで終わりではなくて、これがスタートです。ここから先どこまで行くのか、まだ全く見えないですが、面白くなるようにユーザーの皆さんと一緒に変えていって、「FF XI」を超えられるといいなと思っています。

編: ありがとうございました


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(2010年 9月 21日)

[Reported by 中村聖司 / 中村聖司]