PS3「龍が如く4 伝説を継ぐもの」
名越総合監督にジョン・カミナリが再び直撃インタビュー!

発売中(3月18日)

価格:7,980円

CEROレーティング:D(17才以上対象)

 

「龍が如く4 伝説を継ぐもの」が発売されてから数日。僕は、編集部からの大切なミッションを遂行するために、電車に乗って東京都内の大鳥居駅で下車した。歩いて5分。目の前にそびえ立っているのは、株式会社セガの大きなビル。この中には、世界中のプレーヤーを楽しませている屈指の開発チームが存在する。今回、ビルの中の1室で僕を待っていたのは、「龍が如く4 伝説を継ぐもの」の総合監督を務める名越稔洋氏だった。

 ファーストインプレッションを書かせてもらったが、今回は、ゲームの情報ではなく、制作の苦労話や、主人公達の秘密、これからのシリーズ展開を知るために、前作に続き、直接本人へのインタビューを敢行することに! 名越氏というカリスマに迫る内容にもなっているので、最後まで是非読んで欲しい。(文中敬称略)


■ サブタイトルの秘密? から本作のテーマまで

カミナリ:まず、本作の謎めいたサブタイトルから始めましょう。「伝説を継ぐもの」。去年、見た瞬間にびっくりしました。どういう意味合いでこのサブタイトルを付けたのですか?

名越: ラストまで見て、判断して貰うのが1番いいのですが、この時点で、ゲームのエンディングを迎えていない人に言える範囲って難しいですね。「なるほど」という気持ちになって貰えると思うので、最後まで見て、是非その意味を知って下さい。

カミナリ:主人公が4人になったことで、「龍が如く」ワールドはさらに広がった感じですが、名越さんがこの決断に至った経緯を聞かせて頂けますか?そして、主人公が4人になったおかげで、何が変わった(良くなった)と思いますか?

名越:(作品が)結構売れたことにより、「他のキャラクターで遊びたい」という声も沢山出ていました。ただ、それを実現するチャンスがなく、1年に1回出すというスパンもあったので、今回やっと実現できました。地下や屋上を作ったり、立体的に遊ぶきっかけも作れたし、キャラクターのメッセージ、フィロソフィーも「桐生」というパーソナリティから生まれるものでしか語ることができなかったのですが、やっぱりプレーヤーから出すメッセージは強いですから。(今回)いろんなメッセージが出せたことにより、広がりが出たのではないかと思います。

カミナリ:「秋山 駿」という新主人公で始まる本作ですが、個人的には桐生をも忘れさせるほどのとても魅力的で癖のあるキャラクターだと思いました。秋山を作る上で、頭の中で誰かをイメージしていたのですか?

名越:いや、キャラクターは設定が作られて、それに見合ったビジュアルを後から付けていきます。(ゲームが)面白いかは設定にかかっています。最初(『龍が如く』)の時に事件が起きて、100億円の行方、持っていった人の話を1回書いてみたい、という気持ちはあったし、他のドラマや映画には作れない設定のキャラクターができたという点では、よかったのではないかな。(今回)4人のプレーヤーキャラを作るのに、どんな職業がいいかとか……当然ヤクザがいれば、カウンターとして刑事、ただ、単なる刑事では面白くないから、刑事になった理由に癖があったほうが面白いし……と、いろんなドラマを膨らませる4つのパターンを考えて、それを1つにした時にバランスよくなるようにしました。

カミナリ:本作では、桐生は他の主人公の守護天使のような存在だと感じたのですが、私だけの印象ですか? それとも、名越さんも、ユーザーにそういう印象を与えたかったのですか?

名越:フフフ、それはそういう感じだと思って頂いて結構です。主人公は4人いますけれど、桐生が全く出てこないのはおかしいですから。まあ、おいしいところはちゃんと持っていくようにしていますけど(笑)。

カミナリ:谷村というキャラクターは俳優を起用していますが、冴島と秋山はオリジナルキャラクターですよね。俳優を起用しなくても、実際に存在するかのような深みのある人間を作れる名越さんの秘密とは何ですか?

名越:秘密は特にないです。いい設定がないとアイデンティティが高まらないし、ビジュアルもまとまらないので、設定はものすごく大事です。

カミナリ:秋山、冴島、谷村、桐生。それぞれの長所、短所、共通点は何ですか?

名越:まあ、バトルスタイルはそれぞれ違います。スピード重視の秋山、パワー重視の冴島。谷村に関しては悩みました。刑事は人をやっつけるというか、捕まえるイメージを生かして、「さばく」という要素をバトルに取り入れ、差を出してみました。4人の性格の共通点は「タフだけど優しい、強い男である」ということです。年齢はみんな違えど、そこは一緒ですよね。敵役の魅力もそこだと思うんですよ。人間というのは根っからの悪い人はいないと思うので、そこにはこだわってます。

カミナリ:ゲームキャラクターのお芝居と演出を評価するアカデミー賞があったら、「龍が如く4」は紛れもなく賞を1人占めすると確信しています。もちろん、良いお芝居は起用された俳優や声優のメリットでもありますが、それだけではないような気もします。ポリゴンのキャラクターに生命感を与えられる秘密は何ですか?

名越:これもキャラクターの魅力とほぼ一緒で、いい設定ができて、シナリオ、そしてセリフができます。シナリオをチェックしている時に、頭の中でイメージしている声は人それぞれ好みの差はありますけど、ほぼ一緒だと思うんです。例えば声優だとして、たくさん事務所からリストを貰って、山程聞いた時、そこから3人に絞っていくと、2人くらいは一緒だったりしますので、統一感があります。

カミナリ:現在のゲームでのタレントの起用はどのぐらい重要だと思いますか?

名越:うーん、僕は最近タレントをよく使うんだけど、タレントがいないとゲームが成り立たない訳ではない。例えば、有名なキャストがいないといい映画が作れないといったらそうではないし、ただ注目を集めたり、メジャー性はあるので、キャスティングが重要になってくるのは当然ですね。「龍が如く」以前は、キャスティングの重要性はゼロに近いぐらいの時代があって、僕は不自然に思っていました。アニメのほうは、もっと早い段階から俳優、女優を声の仕事で起用して成功している事が実証されていますよね。最近は「レイトン教授」シリーズなどもそうですし、その重要性をわかっていて、良い作品を出していく流れはまだまだ続いていくと思うんです。ただ、これは年間リリースされる中の少数ですし、全てがそうなる訳ではないし、そうなるべきでもないと思うんですけれど。

カミナリ:本作は、それぞれ主人公の違う4部で分かれているのですが、なぜその決断をしたのですか? 例えば、1度に1つのストーリーを終わらせるのではなくて、4つのストーリーを少しずつ進めるような、ザッピングみたいなスタイルなどは検討されましたか?

名越:ザッピングとか、システムはいろいろあると思うんですけれど、あまり小分けしていくと、そのキャラクターの魅力は伝えづらいと思ったので、強いて4人、それを順番に並べていくというスタイルを取ったほうが、それぞれのキャラクターを伝えやすかったんです。しかも、桐生以外は初めて見るものだし、もしこれが、すでに知っているキャラクターなら、細かく切り分けしていくこともできたと思いますが、新しいキャラクターだから、ある程度のボリュームを持って並べていったほうがベストだと判断しました。

カミナリ:本作のテーマは何ですか? そしてユーザーに送りたかったメッセージとは?

名越:まあ、そうですね。「伝説を継ぐもの」というタイトルにひっかかってくるところでもあるんですが、桐生だけでは語れないドラマを今回伝えたい部分もあった。例えば桐生は男らしいことを言うんだけど、桐生の答えがベストという訳ではなくて、ある人のポリシーを通じてまた違うものを想像したり、自分自身を引き出したりという点では、いろんなメッセージがあり得ると思う。

 今の時代でいうと、結構、絶望したり、元気がないですよね。一生懸命生きていけば必ず解決していくと思うし、周りが無理だと言っても諦めないで考えていけば、道は開けると思うし。もちろん、決めた以上は行動していかないといけないし、いままでこの時代を作ってきたのは自分達なんだから、それを誰かが何とかするのではなくて、自分で前向きに進んでいくというのが正しい生き方だ、ということが伝わっていくと嬉しいですよね。全体を通しての前向きな生き方が僕の「龍が如く」の中の1つのテーマなので、これが4通りできたのは面白いかな、と思います。

カミナリ:「龍が如く」シリーズのストーリーとセリフは本当に素晴らしいと思います。あの世界のことを実況中継しているかのようなリアルさだと思います。どうやってこのリアルさを作れるのですか?

名越:そうですね、これはやはり、いろんな映画やドラマなどの作品を開発チーム、特にプランナーは山ほど見て、それになりきって、浸ってます。映画に限らず、本でもマンガでも魅力的に描かれているツボはどこなのか、リサーチしながら、「こういう時にこういう事は言わないんじゃないか」とかやりとりは沢山あって、1つにまとまっていくんですよね。

カミナリ:「龍が如く4」のどのぐらいの部分が現実的で、どのぐらいが想像力の産物だと思いますか?

名越:フフフ、どうですかね、想像力のほうが少し多いぐらいですかね。実際人の人生って、その人にとっては当たり前でも、人から見たら、とんでもない人生ってよくあるんだけど、リアルって結構ドラマだったりするんですよね。想像だけで作っちゃうと現実性がない分、共感できないんだけど、逆に現実だけにしてしまうと、心に迫るものがなくて、むしろ平凡なものになってしまう。現実的なんだけど、非現実的なエッセンスのバランスがあるからこそ「龍が如く」は成り立っているんですよね。

 そのエッセンスというのを僕はたっぷり入れるようにしていて、そのほうが現実的に見えると思っているんです。だから現実的にしようとむしろ創造性を省いていく人が多いんだけど、想像性を思った以上に足していかないと、逆にリアルにならないと思う。あと、映画って見ているだけのものだけど、いい映画って、観終わった瞬間になんか自分が経験したかのように、勘違いできる物だと思うんですよ。結構、僕らが思っているよりもオーバーに、そのエッセンスを足していかないと追いついていかないんです。ただ、やり過ぎちゃうと壊しちゃうんで(笑)、そこが「龍が如く」の魅力かな。


■ 本作の開発について

カミナリ:本作の開発はいつ始まったのですか? 前作が発売された後か、それともその前からですか?

名越:これは本当に「龍が如く3」が終わった瞬間に、「さあどうしよう」っていうカンジです(笑)。毎回そうですね(笑)。もう休みなんか全くなくて(笑)。開発チームは2週間海外に行ったりするのもいますし……僕はその間もずっと、ね(笑)。僕自身は大体デバッグが始まった時点で「次」を考え始めますね。次を考え始める人間は、(チームが)100人いるとして、僕を含めて2~3人ですかね。徐々にぼんやり考え始めて、軽い打ち合わせ、「次はどうあるべきか」みたいな、まあ世間話程度ですけど。

カミナリ:どうやって本作をたった1年で完成できたのですか? 私は、まさに奇跡だと思いますが……

名越:本当に毎回2つ理由があります。1つ目は開発チームが同じなので、効率がよくなっているし、ボリュームが増えてもハイスピードでできる仕組みがあること。チームワークがいいと仕事が早いと思います。2つ目は、そのチームワークはどこから生まれるのか? ということですね。「龍が如く」が育っていく歴史を見てきて、最初はチャレンジャーでしたし、今もチャレンジャーなんだけど、大きなタイトルを手掛けているというプライドも出てきて、1年という期間で(発売されることをファンに)期待されているから、「僕らだったらできるはずだ」という自信とプライドが年々強くなってきてるから、このスピードでできるんだと思うんです。その2つですよね。秘密というより人間力、マンパワーでできています。

カミナリ:本作の開発チームの1日を簡潔に語って頂けますか?

名越:いやー、普通じゃないですかー? どういう答えを期待してるんだろう(笑)。仕事はそれぞれ非常にタイトなスケジュールでやっている分、休める時は休んでおかないと、いずれ大変な時期が来るとわかっているので、だらだら仕事はしないですよね。割と自分のペースは守りながら、帰れる時は帰ってますね。ただ、残り3カ月切っちゃうと、とてつもない状況がやってくることを皆知ってるので、メリハリのついた仕事をしてますよ。

カミナリ:「龍が如く」シリーズはいつもファンの期待を大切にして作られていると思いますが、名越さんにとっては、癖の強いゲームでファン達だけを満足させることと、中性的なゲームで万人を満足させることとでは、どちらが大切だと思いますか?

名越:うん、そのゲームがどこを目指しているかによるので、目指したもの通りに結果が出たらいいかな、と僕は思いますし、どっちも大事なことですよ。それは食べ物でもファッションでも一緒で、いろんなジャンルがあったほうが、生活が楽しいですし、いくらイタリアンが好きといっても、イタリアンしか食べない訳ではないし。いろんな選択肢があったほうがいいですね。まあ、どっちが大切かといったらどっちも大事です。

カミナリ:私の考えでは、「龍が如く4」は万人に受け入れられるようなゲームだと思います。皆を満足させるゲームをどうやって開発できたのですか?

名越:ちゃんと目指したものでブレなければ、大体万人ウケすると僕は思うんですよね。北野映画とか、エッジが強いですけど、毎回やりたいものが何なのか、はっきりしていると思うので、みんなそれを見に来ていると思います。だからこそ男も女も若い子もお年寄りも割と満足できるようになっているのではないかと。あれはいい例ですよね。

カミナリ:前作に比べて、特に本作で良くなったところは何だと思いますか?

名越:毎回レベルアップはしていて、技術的なベーシックなところだと、ロードのスピードだったり、表示できるシェーダーの美しさであったりとか。絵作りの良さもありますが、毎回Blu-rayの容量はいっぱいいっぱいなので(笑)、その中でやりくりして、より多くのボリュームを実現する為のテクニックなんかも結構良くなったかなと。ただ、僕個人の課題と、ユーザーが望んでいることを天秤にかけると、できる限り、ユーザーの望みを優先したいと思っています。それは大体似ているんですけどね。「龍が如く」はユーザーと共に歩んでいくタイプのゲームだと思っているので、それこそネットの書き込みとかがそうですけど、ユーザーの意見は大事ですね、参考にしています。

カミナリ:本作に入れたかったが、間に合わなかったものはありましたか?

名越:今回は、この時間内でやれることはやり尽くした感じはします。満足はしていないですが、ある程度は満足してあげないと……今回は本当に大変だったから、スタッフがかわいそうかなと(笑)。100点はさすがに出せないけど、いつもは大体80点から90点の間を言うんだけど、今回は90点よりもうちょっとあげてもいいかな。

カミナリ:「龍が如く」シリーズは、これからも毎年続編が制作されるような形になると思いますか? それとも続編を作るにあたっては、「龍が如く」のこれからについてゆっくり考える為の休みを取られますか?

名越:休みは貰えないので(笑)、諦めてるんですけど。まあ、1つの遊びのフォーマットの中で、積み上げられるものの限界はいつか来ると思うんですよね。どこかで大工事しなきゃいけなくなる。だから、それを無視して積み上げるのは望まないです。同じ地盤に建てられる高さのビルって決まってるから、やはりある程度の高さになったら、1回崩して地盤を強化して作り直さないといけなくなるので。

 それを見極めることと、その時は仮に時間を貰ったとしても、ユーザーは許してくれるんじゃないかと。その後にできあがったビルが本当に素晴らしいビルであれば、僕はその時間を許して貰えたらいいなと思っています。どこかでそのタイミングは来る気がします。いつなのかというのはここでは言えないけど、僕は勇気を持ってやりたいなと思いますね。

カミナリ:本作でどのぐらいPS3のパワーを搾りだせたと思いますか? 技術的に1番満足している部分は何ですか? 例えば、AIとか……

名越:そうですね、実はPS3のひと通りの機能は全部理解できたと思うんですよ。「龍が如く」では使っていない不必要なものもあるので、「龍が如く」を極めていけばいくほど、他のゲームが作りたくなる気持ちは現場に生まれています。他のジャンルでやったら、俺らこんなパフォーマンスができる、みたいなね。それもどこかで試せる場面を作ってあげたいなと考えています。

カミナリ:総合監督としてご自分のことをどう思いますか? ご自分の性格の何が、「龍が如く」の開発に良い影響を与えると思いますか? 逆に言うと、妨げになるような面もありますか?

名越:ジャッジ(判断)は割とスピードと正確さが必要ですよね。正確さには自信あるんですけど、業界で働いて20年、決めるのは早くないほうなんですよ。いい意味で僕はプライドを捨てているんですよね。「絶対僕が決めなきゃいけない」というプレッシャーでやると判断がおかしくなったりするので、決めかねるところは、1番頼りになる人間に結構決めてもらうことはありますね。おおよそに関しては自分で決めますけど、特定の部分は他の人の責任の上でやってもらいますね。

 妨げは自分自身にはあまり感じないですけど、自分で決め過ぎると妨げになる恐れがあるので気を付けています。作品の中で、自分が負った責任も担当として持って貰いたいので、強い意識付けをする為にも、全てを自分で決めないようにしています。アイデアを出したくても出せないという事にならないよう凄く気を遣いますね。


■ 名越さんのお気に入りは?

カミナリ:名越さんの神室町のお気に入りの景色は?

名越:全体的にネオン街をうまく再現したと思いますが、今回は天候の変化、時間の変化をきちんと再現したので、そこは自慢かな。

カミナリ:お気に入りのキャラクターは?

名越:いろいろいますけど、メインキャラかな。4人には思い入れがあるので。

カミナリ:お気に入りのプレイスポットは?

名越:今回は格闘場で遊ぶことができるようになったので、格闘家を作ったりできますし、やはりアクションゲームの要素は「龍が如く」は捨てられないですからね。

カミナリ:お気に入りのキャバクラとキャバ嬢は?

名越:秘密です(笑)。

カミナリ:お気に入りの必殺技は?

名越:必殺技ではないんですけど、苦労したのは谷村なんです。頭ではなんとなく浮かんでいるんですけど、「さばき」というものが、バトルとして気持ちよく成り立つかどうか。時間をかけて頑張った分、谷村のさばきのヒートアクションを含めて全般が好きです。


■ これからの展開について

カミナリ:可能性としては今後の続編ではどんな舞台が考えられますか?

名越:神室町を抜きに「龍が如く」はありえないですが、それは置いといて、よく「うちの町に来て下さい」と言われますね。北海道とか、九州もいいですね。韓国、台湾、香港とか、映画の世界では、今アジアは注目されていますからね。まあ、僕はシナリオありきなので、伝えたいメッセージとシナリオが映えれば、どこでもいいと思いますね。海外に絶対行かないとは言わないし、いろんな可能性を模索しながら、やっていきたいですね。

カミナリ:では、舞台を海外にする可能性はありますか?

名越:可能性はあるかもしれないですね。海外でもレビューの点は段々上がってきてるので、どこかで試してみたいですけど、プロモーションも大がかりにしていかないといけないですから、かなり大きなジャッジを問われると思うんですけれども、僕自身は海外で売っていきたいという欲求はあります。ですが、日本人に向けたエンターテインメントであるという軸はブラさないでやりたいですね。スピンオフならやりやすいですけど、そんなにたくさん手掛けるのは体がもたないかもしれませんね(笑)。

カミナリ:過去と現在のストーリーを交互に進める新作、また外伝的なエピソードは視野に入れていますか?

名越:やってみたい気持ちはあります。予想している範囲内の事をやるのはサプライズがないので、驚きがあってのゲームだと思うので、何をやるにしても常に驚きを伴った展開をやっていきたいなと思います。

カミナリ:「龍が如く」は1度映画化されましたが、シリーズの映画やテレビドラマ、アニメへの展開は考えていますか?

名越:チャンスがあれば、是非やりたいです。僕は実写に凄くこだわっているので。でもCGって逆にアニメにしてしまうと、不安はありますよ。結局画面を通すとアニメーションと一緒なので。できれば、実写は現実のものだから、ゲームのビジュアルから頭を切り離して見て貰えるので、ゲームのCGと実写の2本柱でやりたいなとは思いますね。

カミナリ:最後に、読者へのメッセージをお願いします。

名越:「龍が如く」は3つの要素でできています、ドラマ、バトルアクション、アドベンチャー。その全てがスケールアップしてきたと思います。5年間やってきた結果がここに詰まっています。PS3にもほぼ3年トップクラスを維持してこれました。できるかぎりのことをやったゲームだと思います。一級の商品と考えていますので、是非買って最後まで遊んで貰えたらと思います。最後まで遊んで貰いたいと思って、そこまで難しくしてはいないと思うので、是非遊んで下さい。よろしくお願いします。

カミナリ:今日は誠にありがとうございました!



 今回のインタビューのキーポイントは、これからのシリーズ展開だと思う。名越氏がおっしゃったように、本作ではほぼ全てのことをやり尽くしたと。同じチームだったからこそ、チームワークがあったからこそ、効率が上がって、1年という短期間でほぼ完璧な出来栄えになったとのこと。前作までは80点ぐらい付けていた名越氏は、今回の「龍が如く4」は90点以上のゲームだと。つまり、自分の最新作に大満足のご様子だった。

 

 しかし、ここからが本当の勝負だ、という印象も受けた。例えば、次のゲームも、大きな進化を遂げることなく、ボリュームだけが増したというパターンで出てきたら、シリーズの強みはだんだん減ってしまうという懸念がある。ここで名越氏が使った比喩はとてもフィットしていたと思う。ビルの地盤。地盤に建てられるビルの高さが決まっているから、もっと高いビルの建設を目指すのであれば、長期間の大工事をして、地盤を強くしなければならない。「龍が如く4」では、シリーズが飽和状態になったのではないだろうか。ここで、一旦ストップして、地盤を強くする為の大工事を実施するべきなのではないだろうか。しかし、心が優しい名越氏の大きな心配は、ユーザー達が、その大工事を許してくれるかどうかということだった。大工事が始まったら、たぶん1年毎に新作が出ないことになる。確かに残念な結果だが、桐生達を心の底から愛しているユーザーなら、必要不可欠とも言える、その大工事を許せるはず。さらなるレベルアップを望むのであれば、我慢して待つしかないと。我慢した挙句のご褒美は格別だということを忘れてはならない!

 

 あと、インタビューで何度も出てきたのは「プライド」という言葉だった。続編が出る毎に、「龍が如く」への思い入れが強くなって、自分の息子かのように愛する存在になる。だからこそ、ミスは許せない。プライドがかかっているから。その葛藤に、今、名越氏が直面しているのではないだろうか。毎年、家から出したい息子だが、その大切な息子の成長の為にも、もっと強くしてから、もっと勉強させてから、出したいと。

 

 新作の舞台についても、面白い答えを得られた。名越氏はスピンオフ的な作品にもご興味があるとのこと。アジアの各国を舞台にした、国際的な「龍が如く」も夢ではないということだ。海外での評価を上げるためにも、外国を舞台にしたスピンオフ的なエピソードが望ましいと、僕は確信している。名越氏は、あえて、「龍が如く」シリーズは日本向けのエンターテインメントと主張しているが、その常識を超えた新作を視野に入れるのも得策なのではないだろうか。名越氏のこだわりをリスペクトしていないわけではないが、開発費が高騰している今、日本だけを目標にするというのは、もったいないとも思ってならない。「龍が如く」ブランドの、世界中の認知度を上げる為には、妥協が必要かもしれないということだ。

 

 というわけで、「龍が如く」シリーズは「4」で新たなスタートを踏み出したとも言える。これからは革新的なものへと生まれ変わるかもしれない。スピンオフ的な新作が発売されるのかもしれない。または、ダウンロードコンテンツという形で、神室町ワールドがさらに広がるのかもしれない。これからの展開の詳細は謎に包まれているが、紛れもなく断言できることがある。息子のように自分の作品を愛している名越氏からは、そしてユーザー目線でゲームを作っている名越氏からは、これからも最高のデジタルエンターテインメントが生まれることは間違いない!

【Reported by ジョン・カミナリ】
芸名:ジョン・カミナリ
国籍:イタリア 年齢:34歳
職業:俳優、声優、タレント、テレビゲーム評論家
趣味:テレビゲーム、映画鑑賞、読書(山田悠介)、カラオケ(アニメソング)
主な出演作品:銀幕版スシ王子!(ペぺロンチーノ役、デビュー作)、「大好き!五つ子」(アンソニー・ジャクソン役)、侍戦隊シンケンジャー(リチャード・ブラウン役)
ブログ:ジョン・カミナリの、秘密の撮影日記
 イタリアで6年間テレビゲーム雑誌の編集部員として働いたあと、新しい刺激を求めて2005年に大好きな日本へ。子供の頃から夢見ていた役者の仕事を本格的に始める。堤幸彦監督の「銀幕版スシ王子!」で個性的なマフィアのボス、ぺぺロンチーノを熱演。現在もTVドラマやTVゲームなどで、俳優・声優として活躍中。日本語を勉強し始めたのは23歳のとき。理由は「ファイナルファンタジーVII」や「ゼノギアス」などのRPGの文章を理解するため。好きなジャンルはRPGと音楽ゲーム。「リモココロン」のような個性的なゲームも大歓迎。お気に入りのゲームは「ゲームセンターCX」と「ワンダと巨像」。芸名はイタリア人の友達に、本人が雷のように予想不可能なタイミングで現われるからという理由で付けられた。将来の夢は、大好きな「龍が如く」シリーズに敵役として出演すること

(2010年 4月 14日)

[Reported by ジョン・カミナリ ]