コーエー、「信長の野望・天道」プロデューサー北見健氏インタビュー
「道」がテーマ! 点から面に進化した新たな合戦の様相に注目

【信長の野望 天道】

9月18日発売予定

価格:11,340円



 株式会社コーエーは、Windows用歴史シミュレーション「信長の野望・天道(以下、『天道』)」を9月18日に発売する。本作のメインテーマは“道”。従来の城という“点”を取り合って統一を目指していくという従来のゲーム性から、城の周辺に広がる街全体の利権を守るために、前線を押し広げていくという“面”を構築していくゲーム性にシフトしたのが最大の特徴だ。今回は発売に先立ち、「天道」のプロデューサーである北見健氏に、本作の基本コンセプトや魅力を伺った。


■ 「天道」のコンセプトは道!街道を作り勢力を伸ばせ!

インタビューに答える「信長の野望・天道」プロデューサー北見健氏。「天道」のゲーム性を丁寧に説明していただいた
近江地方の全景。道を引き集落と城をつなぐことで勢力を拡げていく

編: 「天道」の基本コンセプトについて教えてください。

北見氏: 基本コンセプトは「道」です。この「道」というテーマを出発点にどのように拡げていこうかということでプロジェクトがスタートしました。そこから膨大なアイデアが生まれましたが、スタッフもそれぞれ、「俺の作りたい信長の野望」みたいな思い入れがすごくありますので、実際のゲームの形に落とし込むまですごく時間がかかってしまいました。

 また、「道」というテーマを選んだ理由は、実際にこの時代の道の役割を調べてみるとわかるのですが、軍事、産業などの面で、大変重要な役割を持っていました。しかし、どちらかというと地味な存在であるため、今までフィーチャーされてこなかった要素でもありました。そこで、今回はあえてそこに注目し、ゲームを通じて戦国時代の道の重要性を感じさせることを考えました。

 ゲームはまず道を使って城下を繁栄させていくところから始まります。本作では城下町は城と周辺にある集落という形にしていまして、集落と城をつなぐことによってその集落の発展が開始される仕組みにしました。つなげるということは逆に切ることも可能でして、集落単位で敵勢力との奪い合いを可能にしています。今までは国という単位で国土を区切り、ゲームが進んでいたものを、シームレスに集落を削り取る形で進行していくことにしました。

編: 行政単位は国ではなく集落にまで細分化されるイメージですか?

北見氏: そこまでやってしまいますと、最初は良くても複数の集落を支配するようになった段階で、コマンド入力が増えすぎて面倒くさいということになってしまいます。ですから最小の行政単位は城のままになります。いわゆる「民忠」は城だけではなくそれぞれの集落が数値を持っています。1つの国にだいたい5個くらい集落があって、集落自体に商人町や武家町といった種類があります。商人町は金を生み出しますので、発展させれば金銭収入が増えますし、敵の商人町を取ることによってその収入源を奪うこともます。また同じように村落を取れば今度は兵糧の収入を奪うことになります。

 少し話はそれますが、プレーヤーの面倒を避けるために変えた仕様としては、道の引き方があります。開発を始めて思いついたのは道を自由に引けるようにすることでしたが、こう引いたらこうなる、こう引いたらこうなるということをあまりやりすぎると、最初のうちはそれなりに面白くても、勢力が大きくなってくると極端に面倒くさくなってきます。そもそも「信長の野望」は1個の国を作るゲームではなく、日本を統一するゲームですので、統一するまでストレス無く遊んでいただける形にしました。

編: 今回もリアルタイム制を採用していますが、その理由を教えてください。

北見氏: リアルタイム制へのこだわりはありません。今回の仕様を考えると、ゲームデザイン的にリアルタイム制で表現するのが良かろうということで採用しただけです。敵部隊の動きを見ながら領地を削り取っていくというシステムが、リアルタイム制にすごくあっています。まずはテーマありきですので、システム面を先に決めてそこからスタートしているものはありません。

編: 個人的には、ターンベースの「信長」も大好きです。そこに回帰しようといった動きは内部ではないのでしょうか。

北見氏: 動きというよりは、その都度のアイデアになると思います。なので、今後ターン制に戻るということもあり得ます。個人的な好みですが、私は「Age of Empires」なども好きなのですが、やはりターン制を導入するならば、その利点を表すゲーム性ありきでスタートしますね。本当に何を楽しみたいか、或いは楽しませたいかというところからスタートして、次にリアルタイム制にしたりターン制にしたりというシステム面での考え方が出てきます。私も「風雲録」から入っていますのでターン制は好きなのです。考えるタイミングと興奮が、リアルタイム制とはポイントが違いますよね。

編: 「信長」シリーズを遊んでいるユーザーは40代、50代といった年配の方々も多いですよね。「天道」のターゲットは何歳くらいを考えているのでしょうか。

北見氏: メインターゲットとしては、20代後半くらいです。

編: 20代後半というのは予想より高い数字でした。私は「信長」といえば学生時代にやったというイメージが非常に強いです。リアルタイムでやったかはあいまいですが初代からプレイしています。10代の頃からやっていまして、歴史の勉強にもなるとも言われて、私の中での「信長」のターゲット層は10代を含むのではないかと思っていました。

北見氏: よく分かります。私も大学時代に友達に勧められて始めました。タイミングとしては「武将風雲録」をよく遊んだ世代です。そうした意味で私個人の遊んで欲しいターゲットは20代前半だったりします。数字から逆算すると、特に30代前後の方に買っていただいているというデータはあるのですが、昨今では戦国ブームということで、新たに歴史に興味を持った若い方にもプレイしてほしいと思っています。そこで、本作には幅広いユーザーに遊んでいただけるような仕掛けを入れています。

 ひとつは、チュートリアルの充実です。シリーズのコアユーザーの方は、より複雑な、より深い内容を求められますが、その方たちにも満足していただきながら、本作から「信長の野望」を遊ばれる方に対しての入りやすさも確保するという両立が難しかったです。CEROのレーティングは全年齢対象の「A」なのですが、正直なところ小学校高学年ぐらいの方ですと漢字が難しいかなと思うところもありますが、中学生から高校生くらいでは実際にプレイしてみて十分楽しんでいただけると思います。

編: それから、獲得したいユーザー層として、「レキジョ(歴女)」と呼ばれる方々がいらっしゃると思います。こうした女性ファンに向けたアプローチは何か考えていますか?

北見氏: 特定の層に向けて何かを追加するということはしていませんが、先ほどお話しした「入りやすさ」に関しては注力しているところですので、気軽に遊んでいただきたいですね。具体的には、これはちょっと前の作品から入っているのですが、チュートリアルで機能的な説明をする際のテキストを、コメディタッチの掛け合いにすることで入りやすくする工夫が設けられています。それは「信長」、「三國志」、それぞれのDS版含めてです。

 「天道」はレキジョの方をターゲットにしているわけではないのですが、そうした方々どういう風に歴史に興味を持ったかのお話は伺っています。多くの方がスタートはゲームやマンガから入っているそうなのですが、その後武将のエピソードやキャラクタ性に共感を持った方々が非常に多いということに気づきました。

 そこで今回は従来作よりドラマチックな部分も強化しています。ゲーム中に発生する歴史イベントは、従来の物よりもそこに出てくる武将がどういった気持ちで動いているのかもう少し深く伝わるようになっています。後は私の半分ワガママなのですが、何人かの有名な武将が死亡したときにちょっとかっこいい演出を入れてもらっています。

全国には城とそれを囲む集落が配置され、各集落は商人町や武家町など独自の機能を持っている
点在する集落は部隊が接触すると自勢力のものとなる


■ 群雄モードでは登場大名各家にフィーチャー。有名武将の死亡演出にも注目!

新しい歴史ファンも意識した作品作りを行なったとのこと。これまでの人気武将と現在の人気武将とのへだたりに、一線級の武将の線引きには苦労した様子だった
有名武将の死亡時にはエピソードを交えたイベントが入ることも
群雄覇権モードではオリジナルシナリオで各大名家の歴史が分かるようになっている。単に一地方を切り取っただけの前作からは大きく進歩したコンテンツだ

編: 死亡イベントについて詳しく教えてください。

北見氏: 例えば、私が気に入ったエピソードが本多忠勝です。本多忠勝は幾多の戦いを傷1つ負わずに駆け抜けた武将でした。それがある日、庭先で小刀をいじっているときに偶然指をケガしてしまいます。それを見たときに自分の寿命がもう長くないことを悟り、実際にそれからすぐに亡くなってしまいました。そういったドラマを感じる部分をピックアップしていきました。戦国ドラマを感じるところは川中島や桶狭間だけではないでしょうということです。そのほかに辞世の句などが出るようになっています。

編: 通常捕らえた武将を処断してしまうと、「鳥が西の空に飛んでいく・・・」といったメッセージが共通して出るところを、織田信長が亡くなるシーンでは「人間50年・・・」と続く辞世の句を表示することはこれまでの作品にも見られましたが、ああいったテキスト重視のイベントが増えると言うことですか。

北見氏: 辞世の句のシーンはテキスト表示だけでなく、よりドラマ性を感じさせる演出になっています。徳川家康や本多忠勝など数人分が用意されています。もっとも、中には通常にプレイしていては亡くならずにゲームが終わる武将もいますので、イベント自体は見づらいかもしれませんね。武将の人物を感じさせる形で展開するので、従来のコアユーザーの方にも、イベント強化として楽しんでいただけるかと思います。

 イベントを持つ武将を選ぶ線引きにも迷いました。例えば、今話題になっている直江兼続に関しても、今は日本中で有名なのですが、一昔前はそれほど有名では無かったので彼のイベントを入れるかで迷いました。ただ、「信長の野望」シリーズでは上杉家は皆武力が高いのですが、政治や知力の数値が高い武将が少ないので、直江兼続は重宝される武将ではありますが。1人1人の武将について考えていくと、実に悩ましいです。

編: 今までは大名レベルでのイベントでしたが、「天道」では武将レベルでのイベントが増えているということですか?

北見氏: もちろんイベントの発生は大名レベルではあるのですが、やはりそこで誰がフィーチャーされるのかが変化しています。「川中島の戦い」を紹介しないわけにはいきませんが、ではそのイベントで、どんな人物がどのように振る舞っていたかということです。

 前作「革新」では「地方モード」という新たなゲームモードが盛り込まれましたが、今回は「群雄覇権」というゲームモードが実装されます。「革新」の地方モードでは本編のシナリオを選び、九州と選ぶと、その部分だけざくっと切り取って楽しめるようになっていました。しかし、それだけでは面白くないということで、群雄覇権モードは新しい工夫が取り入れられています。

 群雄覇権モードでは、各地方専用のシナリオを用意し、このモードでプレイ可能なすべての大名家で、その大名家がどんな大名家だったのか伝えるようなものにしました。例えば島津であれば島津の代表的なエピソードが入っています。北条家でプレイすれば北条家、武田家でプレイすれば武田家のイベントが必ず見ることができるようになっています。どんな大名家なのかという雰囲気がわかるようなものが群雄覇権で登場する全部の大名家に取り入れられています。

編: 群雄覇権は、仮想の戦いになるのでしょうか。

北見氏: そうです。ただ、1つ1つの登場する大名家については史実に基づいたイベントをアレンジして出しています。

編: 武将をフィーチャーするということでは、近作に「三國志11」があります。例えば趙雲のような主要な登場武将のビジュアルは、若々しいビジュアルから年を取る工夫が盛り込まれていました。そういった工夫は「天道」にも盛り込まれているのでしょうか。

北見氏: 「三國志11」の登場武将は800人くらいですが、「天道」は1,200人くらいいるのです。本作は盛り込む要素も多かったのでさすがにその部分に開発の手を集中できませんでした。

編: 1,200人という数字がでましたが、時代が下っていっても主要武将の子や孫の世代でたくさんの武将が登場するということでしょうか。

北見氏: 逆です。「革新」では「シナリオ1のスタートは1555年5月の尾張統一からでしたが、今回は1546年1月の信長元服がスタートになります。実は、後ろの時代が長くなるレベルでは武将を増やさなくても何とかなるのです。しかし、描く時代を前にする場合は、絶対に登場人物を増やさざるを得ないのです。信長の元服から尾張統一までに生きていた武将がゲームの中に入っていないと意味がありません。このあたりの武将も個性的で楽しいですよね。尾張周辺にも優れた武将がたくさんいるので、そういった武将を使って遊ぶのも楽しいですね。

編: かつて「将星録」では実写のドラマ仕立てのムービーが入っていたことがありました。今回はいかがですか。

北見氏: ありましたね。でも今は、グラフィックの質も上がっていますし、ムービー部分は3Dのアニメーションが入ります。とはいってもムービーはあまり多用せずにオープニングとエンディングの部分だけに留めています。

全国モードでは、1546年1月の「信長元服」からストーリーが始まる。スタート年代の前倒しに伴い、1546年時点で活躍している武将が大幅に追加された
敵勢力の集落を奪うことで、勢力圏が拡大した。前線の展開は面白みを大きく増しそうだ


■ 気になる「天道」と「革新」との違いについて

北見氏は「革新PK」のプロデューサーとしても開発に携わった。前作をプレイしていた際に日本地図を広げて単に地図を広げて「城が少ない」とだけ筆者は考えていたが、必要のなくなった城は破棄されるという理は至極もっともだと感じた
戦法は兵種別により明快になった。戦法の種類は武将ごとに固定されている
出陣コマンドでは陣形が選択可能で、陣形ごとに得意な戦い方を考えながら選択できる

編: そろそろ「天道」に関して細かい部分の話を伺っていきます。特設サイトを見ていて一番目を引いたのが「陣形」です。鶴翼や雁行などたくさんの陣形が確認できますが、「革新」ではゲーム後半はたくさんのユニットで出陣して包囲して攻め落とすシーンが多かったので、だいぶ見やすくなった印象を受けました。

北見氏: 1つの陣形に対して5部隊を配置できます。1部隊に武将が1人ずつあてがわれます。部隊の数はもしかすると前回より増えるかもしれません。「革新」では1部隊に対して武将を3人まで入れることができ、それを連れて行っていました。前回と異なるのは、5つの部隊がいても陣形のある同じ場所にスタックできるようにしたことです。これにより画面全体に部隊がごちゃごちゃ表示されることはそれほどないように思います。ただ移動中などはその全部隊が表示されて動いていきます。集団で戦っていると同じマスに集約されることが多いですので、画面全体の見栄えが悪くなることは無いと思います。複数部隊に同じような命令を出すということころから陣形の概念が生まれています。

編: 道がテーマにということで街道や山道を作ることが紹介されていますが、敵陣営がこちらを攻めるために作った道を壊すといったこともできるのでしょうか。

北見氏: できます。ただ敵との攻防が発生しているシチュエーションでない限り、道を壊す意味はあまりないですよね。

編: 「革新」ではお城の数が少なかったという印象を持っているのですが、「天道」ではどのようになりますか?

北見氏: 城の数に関しては、史実重視と言うよりも、どちらかといえばゲーム的な部分を考えて、このゲームにはこのくらい城があるのが適切だよねというところからスタートしています。200や300といった城の数が書かれているものも作ることはできるのですが、200も城を落とすゲームにして面白くなるとは思えませんでした。正確に言うと、本城の数は前作の60に対して本作では66に増えています。支城に関しても、前作が港を抜いて43個建てられたのに対して、今回は理論値で198個建造可能です。各国に3個まで支城を建てられるのですが、地形的な問題がありまして必ずしも全部建つかは分かりません。

 城の個数についてはよく議論になりますが、その歴史の一時点で城と言えるものが100個あったかといえばきっと違うのではないでしょうか。この時代にあった城とこの時代にあった城を合計するから結果として数が増えているに過ぎないはずなのです。そのあたりの疑問も「革新PK」を作るときに考えました。「革新」をプレイした方に支城についてヒアリングした際に、あまり作らないし使わないという意見を頂きました。私は「革新PK」からの担当でしたので、なぜ支城というシステムがあるのに支城を使わないのかということで、新たに「譜代家臣」のシステムを導入しました。「革新PK」としては付け足した部分でしたので中途半端な部分はありました。

 今回、全く新たに、支城はどういう物なのかというところから改めて考えた時に、「あればありがたいけど、状況が変われば要らなくなる城」が支城ではないかと思いました。日本の歴史を考えてみてもやはりそうです。ここで城を建てた実績があっても実際はこの時代では要らなくなっている。ですから本城の数は制限していて、支城は結構な数を建てられるようにするのだけど、状況が変わればいらなくなるということに集約していきました。「革新PK」で盛り込まれていた、譜代家臣のシステムは今回では入りません。そういう部分でよりリアルに近づけたのではないかと考えています。

編: 建設可能な施設について、特色を教えてください。

北見氏: 「革新PK」の施設をベースに思い浮かべる方が多いかも知れませんが、共通なものは櫓くらいのもので、「天道」の施設は基本的には機能の異なる新しいものとして出てきます。ただ、種類をたくさん増やしてしまうと管理が煩雑になってしまうので、機能を限定させて今の種類にしてしいます。例えば狼煙台ではその周辺にいる部隊に奇襲を仕掛けることができます。前作では城からどんなに遠くてもできていたものが、どこを基点に奇襲するかを表現した形です。

編: 次に「戦法連携」についてです。「革新」では弓などの宝物を所持することで、「連射」ができるようになったりしました。今回、1人の武将が1つの戦法を持つとのことですが、1人の武将が複数の戦法を所持したり、戦法の強さをアップグレードすることはできないのでしょうか。

北見氏: 1人の武将に対して1つです。それぞれの武将が持っている「その1」といった戦法名も、戦法の強さを表しているだけで、使っていれば「その2」へとレベルが上がっていくといったものではありません。今回は陣形があるために、どの武将を出陣させるかの選択がすごく大事です。どの武将にどの戦法がついているのか、この戦法がついている武将を連れて行こう、という風に決めることになります。戦法を大量に作ったりしなかった理由としては、極端な話ですが、槍衾と槍車とどっちが強いですかというのを暗記しなければならないゲームだと、プレーヤーにとってものすごく辛いと考えました。槍の強い武将を連れて行こうとしたときに、槍の1、2、3、4となっていれば見たら分かりますよね。数字が大きければ強いわけです。それはプレイしていれば数字があがっていくというわけではなくて、この人はこのレベルのものを持っているということになります。

味方部隊の士気を維持する兵糧庫や狼煙台など戦いに役立つさまざまな施設を建設することができる
支城は1国に3つまで建設することができる。武将によっては特有の戦法を持つ者もいる


■ 城を取る点と点との戦いから面での戦いへ!

発売まで1カ月を切った「天道」。従来のユーザーには真新しいゲーム性を提供し、新しいユーザーを取り込む工夫も取り入れられている。発売日が待ち遠しい
本作では16の諸勢力がそれぞれ異なる能力を駆使して大名を助太刀してくれる。また、彼らをお抱え衆とすることで全国にかけつけてくれる

編: ちなみにスクリーンショットを見る限りでは、「天道」と「革新」は見た目はさほど変わっていないなという印象を持っていますが、実際はどうなんですか?

北見氏: プレイしてみるとびっくりするくらい違うのですが、公開している画面写真の画角が革新と同じになってしまったためかと思います。川や山などの描き方でもだいぶ違いますし、見える角度から何から違います。ただ、操作感に関しては、前作のユーザーの皆さんのプレイアビリティを考えて「革新」に似せるようにはしています。しかしプレイの方向性はまったく異なりますね。「革新」では、自分の領地を拡げるには、敵の城へ攻めていき、城を落とします。

 しかし、本作では城だけでなく、集落を落とすことが1つのキモになっています。まず、支配地域を拡げるには自分の城から集落までを道でつなげるというステップが入ります。その集落を自領地にするためには道でつないでから集落の入り口のところに部隊を派遣しなければいけません。集落は触れるだけで自分のものになるのです。常識的に考えると耐久度を0にすると集落を取れるようにしようとかできますよね。それをやってしまうとそこに小さい城がたくさんあることと同じになってしまうのです。今作のルールでは集落に接触されたらアウトなので、その集落よりも前に出て守っておかなければならない。

 今までは城から城にいく点と点との戦いだったのが、点として捉えては遅すぎるルールになっています。集落を守るために、集落より前で迎撃したりしなければならないシステムをとっているため、遊びの感覚はまったく異なるのです。

編: テーマは道というなので、点と点を線で結ぶイメージで捉えていましたが、実際は点から面で戦うようになっているのですね。

北見氏: 目に見えることは点と点をつないでいるのですが、実際にプレイしてその点だけで戦いができるかといえば、そうはいきません。集落を奪う条件が触っただけで奪われてしまうというルールになっていることで、点で戦っていると弱いということなのです。

編: 「革新」では一地方を統一し終えるゲーム中盤以降は、兵力があっという間に数十万まで膨れ上がってしまい、兵站のバランスが取れていませんでしたが、この点はどのようになっていますか?

北見氏: まず、兵力の単位は「何人」ではありません。「革新」でも終盤になると10万の兵力などが出てきますが、それは10万人の兵が集まっているという意味ではありません。兵力について言うと、例えば島津でスタートしたら九州から出て行くところで、兵力が集中するポイントが発生します。そのあたりは「革新」と変わらないと思います。

編: 前作の良かったところでは「技術」のシステムが挙げられます。本作でも盛り込まれるのでしょうか。

北見氏: 技術は今回も盛り込んでいます。技術は今回「匠の町」という施設で研究することになります。匠の町があれば技術の恩恵が得られるようになっており、匠の町が奪われれば技術はなくなってしまいます。

編: 前作では外交コマンドで従属がなく、小大名でスタートするとすぐに隣の大大名に飲み込まれることが多かったですが、今回の外交はいかがですか?

北見氏: 外交交渉は今回も同じです。あまり複雑にしすぎるとわけが分からなくなるのであえてシンプルにしています。この決定にも非常に紆余曲折がありました。結果として、今回全国のシナリオでは弱小大名でもプレイ可能ですが、群雄覇権モードはあまり弱小のところは割愛させていただいています。気軽にプレイを楽しんでいただきたい群雄覇権モードでは、プレイ時間を早く展開したいというのがありまして、一つのシナリオで登場する大名は最大で6大名に絞っています。

耐久度を持たない集落を取り合う戦いになったことで、部隊はより前線で激突することになり、面での戦い方が主流になっている。これまでにない新機軸で大いに期待している
諸勢力に依頼をたびたび行なうことによって諸勢力はより強力に成長していく。穴太衆は攻城戦用の戦法「粉砕」からより強力な「石崩し」が使えるように成長する


■ 地方の有名武将はオンラインで追加配信が予定!PK発売の予定は無し

弱小大名プレイでの全国制覇など、全国モードではおなじみの楽しみも可能だ!
前回登場した「技術」もさらに進化を遂げた

編: 気の早い話ですが、オンライン等でのコンテンツの追加配信はどのような計画がありますか?

北見氏: 追加コンテンツの詳細については現在検討中ですが、武将データのダウンロードをすることは決定しています。仮想の武将や実在の武将も含まれていまして、無料で配信される予定です。

 「信長」の新作が出る前からなのですが、地方の自治体などから「われらが郷土の武将を出してください」というお話を複数頂きました。全国的に見ればマイナーな武将なのですが、それぞれの地元では文書や伝承にて語り継がれている“名将”をぜひ登場させて頂きたいと、何戦何勝した天才軍師がいるので是非出してほしいと、お手紙を頂いたり、当社まで遠路はるばるお越しいただいたりしました。我々には歴史ゲーム制作の積み重ねがありますので、武将のデータベースや文献など資料も持っているつもりでしたが、やはりそこでは補いきれない地元の郷土史家の方からみると「なぜ出てこないのだ」という武将が存在するのです。

 また、地元にゆかりのある武将を紹介して、観光誘致を行なったり、住んでいる方に地元の歴史についての啓蒙活動をしたいということで出してくださいとのご要望をいただきました。そうした方々が持っている資料は膨大な数がありまして、貴重な資料をあちこちから送っていただきました。それらの武将を検討させていただいて、武将データとして提供することを考えています。

編: 拡張キットはどのような内容を考えていますか。

北見氏: 現状、パワーアップキットの発売予定はありません。とはいえ、前作「革新」ではPKを出さずにいたら、プレーヤーの皆さんから強い要望をいただき、「革新」発売から2年後に発売したという経緯がありましたので、あくまでも「現状」です。

編: いつものようにPC版の発売後に他のプラットフォームでも展開していくのでしょうか。

北見氏: 現時点でお話しできる段階ではないのですが、ユーザーの皆さんが望まれれば、そういった展開もあると思います。

編: 今回もPC版から発売していくことになりますが、最近の傾向を見ていると、過去にPCゲームで人気を博したタイトルでも、PCを素通りしていきなりゲーム専用機でリリースするという傾向が強まっています。そうした中で、「信長の野望」の最新作は、燦然とWindows7対応を謳ってPCで投入されることが発表されて安心しました。

北見氏: 会社の方針というわけではありませんが、私が「天道」を担当する時点でWindows版を無くすことは考えませんでした。私自身もPCで「信長の野望」や「三國志」を遊んだ上でコーエーに入社した1人なので、家庭用ゲーム機以前にPCゲームを楽しんできています。さらに、仮にPCベースでは利益が上がらないというのでしたら、開発を見直す判断もあると思うのですが、お陰様で「信長の野望」シリーズはWindows版の発売を待っていてくださるお客様がたくさんいらっしゃいますので、PCに向けて出さない理由が私の中では出てきませんでした。

編: コーエーの「信長」シリーズというと、ここ数年は「信長の野望 Online」がクローズアップされる機会が多く、「信On」を想起されるユーザーさんも多いのではないかと思います。「信長の野望」シリーズを開発しているスタッフから見て、「信長の野望 Online」はどのように映っていますか。

北見氏:「信長の野望」は、1つのIPのように捉えていますので、その名称を使っているからと言って全てを同じくくりでは考えていません。昨年発売されたDS版「国盗り頭脳バトル 信長の野望」も「信長」のタイトルを冠しているように、ジャンルが別でも「信長の野望」とつけることはあります。ゲームとしての考え方としては、MMORPGとSLGですので差がありますよね。

編: なるほど、別のタイトルなのでお互いに意識することはないということですか。

北見氏: 例えば時代考証などに関しては、お互いの情報を共有しています。今までこの武将はこうだと思って使っていたけど、最新の調査によると本当はこうではなかったらしいといったことはやっぱりあるのです。「信長の野望 Online」も長くサービスしているタイトルですので、それぞれの情報の蓄積を共有することで相乗効果を生んでいます。

編: 「信長の野望」シリーズ最新作のプロデューサーとして、「信長の野望」とはどういったエンターテイメントコンテンツだと考えていますか。

北見氏: 自分のお気に入りの戦国武将を活躍させて、日本を自分の色に塗りつぶすところが「信長」の原点だと考えています。ですので、「信長の野望」シリーズの人気は時代劇や大河ドラマなどに触れて、歴史に興味を持った方々に支えられていると思っています。今でこそ武将の表現は、セリフやイベントによってもキャラクタの個性化が図られていますが、初期の「信長の野望」では、武将はせいぜい顔のグラフィックと数種類のパラメータが提供されていた程度でした。しかし、プレイされていた方々の頭の中では、その武将達は生き生きと活躍していたのではないでしょうか。つまり、プレイヤーの方々が持っている歴史への知識と興味を土台にして、「あの武将がこうだったら」とか「あの時こうしていたら」といったイマジネーションを自由に引き出しながら楽しむ、これが「信長の野望」というコンテンツだと考えています。

編: ゲーム業界ではリバイバルが1つのトレンドになっています。「信長」シリーズのリメイクは行なわれないのでしょうか?

北見氏: 1年ほど前に「信長の野望DS 2」が出ましたが、あのベースは「武将風雲録」です。しかし、私は今の動きをリバイバルブームという言葉で捉えていいのか疑問だと思っています。軽い言い方になってしまいますが、昔面白かったゲームは今も面白いということなのではないでしょうか。例えば今10歳のお子さんはファミコン時代の名作を遊んでいないはずですが、「Newスーパーマリオブラザーズ」はDSで大ヒットしましたよね。それと同じように、リメイクしたものを売っている感覚ではなく、良いものを現代に提供していると捉えています。

編: なるほど。わざわざ「武将風雲録」という名前を使わなかった理由はなんですか。

北見氏: 「信長の野望 DS」も「信長の野望 DS 2」も形式として、過去のタイトルをベースにはしていますが、DSとして遊びやすくするためにコマンドの変更やバランス調整、新規要素の導入などをしています。ですので「DSに向けた信長の野望」ということで「信長の野望 DS」としています

編: 今後「信長の野望DS 3」が発売されることがあるとすれば、また「信長」シリーズのいずれかのリバイバルになるということでしょうか。

北見氏: 一概にそうとは言えないです。DSというプラットフォームに「信長」のコンテンツを乗せようというときに、これを持ってこようという考え方の他に、当然全く新しい「信長の野望」を提供しようという考え方もありますから、アイデア次第ですね。

編: 「信長」ファン、歴史ファンに一言お願いします。

北見氏: 発売日を延期したことについては、お待ち頂いている方には大変申し訳ありませんが、品質向上のために2週間お時間をいただきました。従来のファンの方にも楽しめるようにしてありますが、久しぶりの人や最近歴史に興味を持ってきた方にもうまく誘導できるように入れていっていますのでとにかく触ってください。「革新」の良いところは持ってきたつもりですが、点と点の戦いから面の戦いが発生しているのは触ったときに始めて分かる違いかと思いますのでぜひプレイしてみてください。

編: ありがとうございました。

「技術」は「匠の町」で開発が進められる。前作では技術の習得のために武将をアサインしておく必要があり、国力が弱い大名には非常に不利で不満だったのだが、改善されている

(C)2009 KOEI Co., Ltd. All rights reserved.

(2009年 8月 28日)

[Reported by 三浦尋一 ]