SCE Asiaプレジデント安田哲彦氏特別インタビュー
台湾ゲーム産業育成事業の抱負と真の狙いを聞く。PSP goはアジア先行発売か!?
ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)のアジア部門SCE Asiaは、6月29日、台湾経済部と合同で「新世代デジタルコンテンツ台日合作記者会」を開催し、台湾のコンシューマーゲーム産業育成のための支援事業を台湾経済部と共同で行なっていくことを発表した。その詳細については発表会レポートや経済部へのインタビュー等を通じてお伝えしたとおりである。
台湾取材の締めくくりとして最後にお届けしたいのは、アジア取材において欠くことのできないキーパーソンである SCE Asiaプレジデント 安田哲彦氏へのインタビューである。安田氏へのインタビューは2月のTaipei Game Showに続いて今年2度目となるが、今回は台湾経済部と共同発表したゲームクリエイター/コンテンツ育成事業の抱負とその狙いについて詳しく話を伺った。
また、E3で発表された新ハードPSP goのアジア展開や、7月22日から上海で開幕するChina Joyの不参加の理由といったユーザーの関心の高い時事ネタについても話を伺っているのでぜひご注目いただきたい。
■ 台湾経済部主導の人材育成プロジェクトについて
インタビューに応じていただいたSCE Asiaプレジデント安田哲彦氏 |
インタビューには安田氏のほか、多くのSCE Asiaのスタッフにご参加いただいた。安田氏から向かって左が、SCET(台湾)総経理本間和彦氏、右が企画開発部部長金澤克彦氏 |
編: 正式発表おめでとうございます。2008年1月の発表を、今回改めて具体的な形で発表したという見方をしていますが、今回なぜ経済部で再度発表を行なったのか、そのいきさつから教えてください。
安田氏: そんな意地悪なことを言う人には答えてあげません(笑)。今回の発表の主役は台湾経済部です。すべて「はい、どうぞ」と我々に持ってこられるのではなくて、この部分は国のほうでやり、この部分は我々がやり、この部分はソフトメーカーさん自身がやらなければいけない。こういったことを理解していただくために時間がかかりました。
編: 当初の発表から1年半という時間が経過していますが、当時と比べてビジネススキームに変更はあったのでしょうか。
安田氏: まったく変わりません。変わらないのだけどきっちり仕分けをするということと、予算的なことをきっちりさせました。
編: 2月の取材では、プレ講座を行なっているという表現をされていましたが、今後はプレを取ってしっかりやっていくのでしょうか。
安田氏: そうです。
編: 今回は高雄の大学とも提携して、南北で同時にやっていくところが新しいですね。
本間和彦氏: 大同大学は高雄でも授業をやっていきます。当然設備については大同大学と提携している大学と協力していきます。
編: プレミアムエージェンシーの講師やSCEからの講師も両方で教えていくわけですか。
本間氏: 内容によって南北で行なっています。
編: 現在ではテレビ会議やインターネット等を利用して遠隔地でも同時多数に対して授業を提供することが可能ですが、あえてそれをせず、わざわざ講師が台北と高雄の2箇所で少数精鋭の環境で教育を施すのはなぜですか?
本間氏: 人が行ってちゃんと授業を行なうということと、結果が重視されています。
安田氏: テレビ会議は用件は伝わるけれども、講師の温度が伝わらないよね。ソフトの制作に関しても理論理屈ではないこともあるのではないかと思います。
編: 学生の数は何名ですか。
本間氏: 200名です。
編: 今回の教育プロジェクトの実施期間は?
本間氏: 前期後期の2期で約1年間です。
編: カリキュラムはいつからスタートするのでしょうか。
本間氏: 9月の末から10月頭です。それから約1年間です。
編: カリキュラムを終えた後、学生達はその先はどうなるのですか。
安田氏: その部分に関しては、いろいろ考えていかなければいけないですよね。「その先は受け皿を用意してここで働きなさいよ」なんてものは日本でもないですからね。
編: その部分もSCEさんとしてお手伝いしていくのでしょうか。
安田氏: 必要があればですが、我々としてはまずは日本の技術を台湾にお伝えする仲介役です。我々が教えるのではなくて日本の会社が持っている技術を台湾の会社にお伝えするための役割です。
本間氏: 6月1日からワーキングホリデーの制度が日台間でも始まりました。カリキュラムの中で日本語の授業もあるので、本当にやる気のある方はそこで学んだことを使って自わから日本を初めとした海外のソフトウェアメーカーさんにエントリーすることも可能になります。
■ 人材育成プロジェクトにおけるSCEグループの役割について
金澤氏には、SCE Asiaの企画担当ということで、台湾向けの新たな企画についてお答えいただいた |
本間氏には、台湾の責任者として現地の空気感を伝えていただいた |
編: SCEグループとして台湾に呼ぶ日本のクリエイターはどういった方を予定していますか。
安田氏: できれば、あるときは山内(一典氏:ポリフォニー・デジタル代表取締役社長)のような、ゲームクリエイター志望者の憧れの的みたいな人を連れてくることもあるだろうし、具体的にこういうことをするためにはどうしたら良いのかということを具体的に教えてくれる人を連れてくることもあるだろうし、いろいろです。
金澤氏: 当然彼らと相談しながら、生徒さんのモチベーションやためになるところを見極めていって、この人を呼ぶということをやっていきたいです。現時点で誰を呼ぶというところまではまだ行っていないです。
編: 今回、受講対象となるクリエイター候補の方々はどういった人たちになるのでしょうか。
本間氏: 既に大学を卒業されている方です。一般公募で大学が選考します。モチベーションが第一に必要ですし、マウスの動かし方から教えるわけにはいきませんので、各大学が定める基準に従って選考していきます。
編: 具体的な選考基準や求められるスキルは何かありますか。
金澤氏: やはりモチベーションのところですね。絶対に作りたいという気持ちです。日本のクリエイターの先生から学ぶということで非常に多くの方の参加が見込まれています。できるだけ優秀な方に入っていただきたいです。大学側も人が応募してくれば知名度は上がりますからね。選考の時期は8月になります。もちろん、安田教授の魂の授業も受けていただきます(笑)。
編: “安田教授”の講義内容はどのようなものになりますか。
安田氏: 先ほど言ったようなテーマで、なぜ海賊版がだめなのといったことを例えば1時間ああでもないこうでもないと言いたいですね。1つだけ間違いないのはプレイステーションを発売したときから「ソフトが無ければタダの箱」と言いながらソフトメーカーさんを大事にしてずっとやってきて、アジアに来てもそうです。こちらに来てコピー退治をして、ソフトメーカーさんのソフトを1枚でも多く売ろうという努力を10数年間してきました。言葉でどんなことを言おうが行動が大事なのです。私は行動でずっとソフトメーカーさんを大事にしてきている。
しかし不幸なことにソフトメーカーさんは疑心暗鬼になってこちらから離れて自主流通をなさってみたりするなど色々あるのです。アジアは一生懸命任せていただいたソフトを大事に売ってきてそれをわかっていただいているクリエイターの方やメーカーの方がだいぶ増えてきています。今回こういうことをしている理由は言葉で言えば、「ソフトメーカーさん愛していますよ、一緒にやりましょう」ということに尽きるのです。確かに自主流通してみたら1割売り上げが多くなるかもしれないけれども、その後どうなるのですかと言えば経費的にも大変だし、アジアでソフトを売るのは大変だと思います。まとめてみんなで一緒にやっていけばできることもたくさんあるのです。私の想いとしてはそういうことですよ。ソフトメーカーさんには、我々は絶対裏切らないから一緒にやろうよというのが私の気持ちです。
編: メーカー側から見て、現在の台湾のクリエイターの方たちに足りないものとは何でしょうか。
金澤氏: PS3のコーディングにはクセがありまして、PCの言語とは違うところがありますから、そういったところはきちんと伝達しなければいけません。また、作る段になったときの気の配り方です。
編: 私は海外ゲーム市場とオンラインゲームの両方を担当しているのでよくわかるのですが、台湾や韓国などアジア地域は皆同じような成長の仕方をしています。投資する人と作りたい人が融合して、ドッとPCオンラインゲームに流れ込む。しかし、そこで成功し、いくらノウハウを蓄積しても、コンシューマーゲームへ展開しようという動きにはなかなかならない。アジアでコンシューマゲームが生まれないのはなぜだと思いますか?
安田氏: アジアのゲーム産業は並行輸入の産業です。ウチのものは拠点を置いてそこから販売していますが、並行でしか入ってこられないメーカーさんもありますよね。並行の産業というものは中々育たない。並行で持ってきているということはつまり輸入品です。自分で作ることができるものだとは到底思わない。一時はフランスのケーキがもてはやされた時期がありましたが、日本でもフランスで食べる以上においしいケーキを作る人が出てきて、わざわざフランスのものを2倍3倍の値段を出してまでは食べなくなりましたよね。
編: 能力の問題ではなく意識の問題ということですね。
安田氏: そうです。だから並行ではなく自分達で作って自分達で遊んで、自分達が作ったものを海外で売るというところまで意識改革を進めていきたいです。今まで以上にソフトに関する議論がなされてくると思います。今までそんな議論は無かったわけです。ソフトウェア産業に対する注目度や議論するための勉強なども、今まで知らなかったようなことを覚えて行動していくようになればよいのではないでしょうか。今すぐにはこういう話が出たら、出たお金だけを目的に動くような人も出てくると思うのだけど、そういう群がる人を排除して、お金目的だけという話ではない。ソフトウェア産業を育てるということは違うことなのです。
編: 10年、20年という長期スパンで見た場合、台湾のゲーム産業はどのような形になっていくと考えられますか。
安田氏: 台湾はものづくりという点ではナンバーワンになった経験がある国だから、ソフトウェア産業においても1つ2つヒットが出ればみんな後に続けという日本のような状況になってくれると良いなと思います。日本ではゲームを作るためにアメリカやヨーロッパに勉強しにいってお金や人を集めたりしてゲームを作っている。それを人任せではなく、自分で勉強して自分でアイデアを具現化して自主的に作るといったことする人が1人でも出てくれば、変わっていくのだろうと思います。
金澤氏: 個人的な目標ですが、スターを作りたいです。香港でも台湾でもシンガポールでも、こういった取り組みを始めたところから1人クリエイターのスターが生まれれば状況はガラっと変わると思うのです。作ることにあこがれる人たちがそこで増えることになります。
安田氏: カジュアルゲームでも良いし、たいそうなことがなくても楽しいものが良い。音や映像が綺麗なのも大事だけれども、ゲーム性は若干最近忘れられることがあるので、やっていて楽しいものが良いですよね。
編: それはフルプライスのパッケージタイトルにこだわるのではなく、オンライン配信のカジュアルゲームでもいいではないかという考え方ですね。
金澤氏: はい。アイデアで勝負できるようなクリエイターに個人的な考えですが育っていってくれればなと思います。業界全体として欠けていると思うのです。
編: 10年経つと魅力的なコンシューマゲームがアジア中から生まれてくるシーンが絵に浮かびます。
安田氏: そうなったら最高だね。素地を作るところで私の人生は終わってしまうので、あとはみんなが刈り取ってくれれば良いなと思います。私も早57歳。60まであと3年。葬式には来てくださいね(笑)。
■ デジタルコンテンツ制作補助事業について
安田氏は、デジタルコンテンツ制作補助事業について、8年前から準備してきたことの集大成であり、他のプラットフォームには簡単には真似のできない事業だという強烈な自負を覗かせた |
編: 一方、デジタルコンテンツの制作補助はまったく新しい話ですね。こちらはどういった枠組みで行なわれるのでしょうか。
安田氏: デジタルコンテンツ制作支援は、我々ではなく台湾政府の皆さんがお作りになる枠組みです。我々はSCEの販売会社なので、そこができる範疇というのはお手伝いということになります。主語はあくまで台湾政府です。
編: その目的はなんでしょうか?
本間氏: 台湾のメーカーさんは「自分達はこういった企画を作りたい!」というときに、さまざまな足りないものがあります。資金、ノウハウ、開発費といったものについて、開発費は政府から補助しましょうと。非常に良い企画であればSCEとしても企画の内容をサポートしたり、制作ノウハウという点で日本のクリエイターさんをご紹介して共同開発をしようかと。初めての会社では開発機材を購入することがなかなか難しい。そういった方に対するサポートを行ないます。作られる方をサポートするというのが今回の目玉なのです。
編: いわば政府主導のR&Dということになりますが、台湾にも日本と同じようにSCEさん以外にもいくつかのプラットフォーマーさんがビジネスを展開されています。そういったプラットフォーム向けのゲーム開発に対しても台湾政府から資金援助が行なわれたり、あるいはプラットフォーマーさんからの技術サポートなどが行なわれるのでしょうか。
安田氏: それはどうでしょうか。ウチのように10数年前にゼロからスタートしてずっとやり続けて正式な商売をやるというのはあまりないのです。売るだけで良い、という考え方でよいのか、売りながらどういう形で定着をさせるかということです。販売活動だけしていれば済むところと、それだけでは面白くないのでもう一歩進めましょうという活動をやっています。それがコンテンツ産業を一緒に伸ばしていきましょうということです。
昔は関税が非常に高かったため、「それでは我々商売はできない、並行業者に勝てないから辞めます」と我々が言った際に台湾政府に関税という壁を壊していただいた。「その代わりに我々ができることは何なのですか」というところで話はスタートしているのです。8年前からスタートしているというのが我々の認識です。
本間氏: 台湾政府には輸入関税を段階的に下げてもらいました。その時に「我々に何ができるか」という先方からの要求もあったのです。台湾では製造業のOEMで空洞化がおきました。大陸に工場が移ってしまったのです。そこで新しい産業を国内に育成しなければならない。その中でバイオテクノロジーやデジタルコンテンツが国の施策の中にあったのです。ソフトメーカーさんがなぜ他のプラットフォームをやらないかと聞けば、コピーがあるからです。任天堂さんもMicrosoftさんもです。PS3やPSPにはそれが無いのです。
編: つまり、SCEさんは、8年前から、台湾でプレイステーションタイトルを生むための取り組みを水面下で行なってきたということですか。
安田氏: 生まれてくるようにスタートしたのです。ゲームを作ることは人任せではできませんから、皆さん七転八倒で苦しんで色々な企画を考えたり人を集めたりお金を集めたりということです。
編: 台湾と日本のメーカーの繋ぎ込みは、今までは主に資策会が行なってきた事業ですが、今後はSCEさんを巻き込む形で、さらに一歩踏み込んだ協力を台湾のゲームメーカーに対して行なっていくということですか。
安田氏: ゲームメーカーというよりは、一般論としてクリエイターさんですね。ゲームメーカーといっても、投資家の集まりみたいな会社もあり、金の話しかしないような人たちも多い地域ですから、それではダメよと。
編: 日本も少しずつ出ていますが、特に欧米は独立系のデベロッパーが育つ土壌がありますが、台湾を含むアジア圏でも今後そういった動きがあっても良いのではないかと。
安田氏: そういうことです。
編: 枠組みとしてはかつて韓国がオンラインゲーム産業に対して行なってきた直接的、間接的な支援に近いのでしょうか。韓国では、有意な人材が作ったメーカーに対して、ビルの部屋を提供したり、インフラを提供したり、モーションキャプチャ用の施設を貸したりということを行ってきた経緯がありますよね。
安田氏: それに近いだろうね。
編: R&Dセンターというハコモノも今後完成するわけですか?
安田氏: それはできない。
本間氏: 中国語でセンターは“中心”と書くのですが、プロジェクトを運営する主体も“中心”といいまして、ハブとスポークの関係にあります。あくまでも中心に皆さんがいますよということです。そこで海外の業者さんとのコラボレーションを推進していきますという意味です。
編: SCEさんの協力体制はどういった内容になりますか。
本間氏: SCETが人的な支援ですとか、それこそ通訳から業務のいろいろなやり取りの部分ですね。日台間の法律関係のチェックのお手伝いやマッチングのお手伝いです。
安田氏: 文化の溝を埋めるということがね(笑)。非常に困難を極める課題ですね。
編: 中国大陸との文化の溝というのはなんとなく想像できますが、台湾との溝はたとえばどのようなことがありますか。
金澤氏: 話せば長くなるのですが、開発現場の文化の溝ですね。ゲーム開発はPC向けのやり方で育ってきていますので、PCとコンソールというのではまったく土壌が異なってきます。コンソールは限られたリソースや容量の中で楽しみを実現するという点で縛りが非常に多いのです。PCの場合は割りと多いところで、モジュールとモジュールが合わさる部分が結構あいまいでも良かったりしますし、オンラインゲームですから出してしまっても後から気軽に直すということがあるのです。その点、コンソールは非常にシビアです。制作のスタイルの違いですよね。
それから日々のミーティングのあり方や情報共有のあり方なども違います。我々としてはそこからきちんとノウハウを伝授していかないと完成までたどり着かないのです。週に何回定例ミーティングをやるとか、このパートとこのパートは重要なので週に何回ミーティングしろといったところから、伝えなければいけないと感じました。言葉で言っても伝わらないので教育プラス、制作の中のOJTで伝えていけたらなと思います。
■ 今後生まれる台湾産オリジナルタイトルの展望について
台湾オリジナルタイトル第1弾である「Railfan 台湾高鉄」。「Railfan」は音楽館が手がけた鉄道シミュレータであり、台湾でフルスクラッチビルドされたタイトルではない。今回のプロジェクトで誕生するのは、完全台湾オリジナルタイトルだ |
編: いま一歩、ゲームに近い部分の話を聞かせてください。今回、人材教育では、SCEが大学に対してPS3のデバッキングステーションを提供すると物質的な支援を行なっていきますが、コンテンツ制作補助についてハードウェアは提供しないのでしょうか? それから、補助を受けた台湾のメーカーさんが、今後PS3のゲームタイトルを開発する場合には、やはり欧米や日本のメーカーと同じようにパートナー契約を結んでしっかりロイヤリティをお支払いいただくという形でゲームを出していくことになるのでしょうか。
金澤氏: その点に関してはケースバイケースでして、やってみて話し合いの中で決めていきます。弊社でパブリッシングするものについてはサードパーティーの契約ではなくなります。そうなると収益の分配方法も異なってきますし、その点はオープンです。
編: とすると、状況によっては、SCEA(America)やSCEE(Europe)のように、SCET(Taiwan)にぶら下がるセカンドパーティーが誕生するかもしれませんね。
金澤氏: 現時点ではそこまでは考えていません。あくまで、完成した作品をどう扱おうかというところをまず考えたいです。SCETの下にぶら下がる組織を作ろうという意図で始めているわけではありません。
編: 「完成した作品」ということですが、制作支援では具体的な目標本数などは設定しているのですか?
安田氏: 我々としてはそういう具体的な目標はないです。大作ばかりに目を向けていないで、アイデアにも目を向けたいと思います。ダラダラ作品を作るのではなくて、短くても楽しめるゲームを志向されるのが良いと思います。
編: いずれにしても「台湾高鉄」に続く台湾オリジナルコンテンツをなんとしても作ろうということですね。
安田氏: 「台湾高鉄」は本当に我々も手探りでスタートして、とにかく最後まで完成させたものです。日本も昔は模倣文化があり、それをやっているうちに自分のものになったということがある。まずはここからスタートでいいと思うのです。ただしコピーでは良くない。コピーはただコピーするだけの話です。こういったレーシングゲームなどを作ってみて出してみたけど売れなかった。次にその原因を追究して次のものを作るということを何回か繰り返しているからこそ、日本も良い作品が増えてきたのだと思うのです。
スタートしてから何本か作って何本かが売れましたといった安易なものではなくて、たぶん何回かこけながらそれをバネにして次の作品を作っていく流れがスタートしたのです。我々はめげないでがんばってねと声をかける立場ではないかと考えています。
編: 「台湾高鉄」に続く台湾オリジナルのフルプライスのゲームコンテンツを考えた場合、どういったタイトルが生まれることを望んでいますか。
安田氏: 一生懸命探していますよね。我々の活動範囲では、台湾の良さがわからないことがあると思うのです。この前大同大学で何人かでグループを作って、「我々はこんなタイトルを作りたい!」と大きな紙に作って自分達の企画を発表しました。内容は稚拙だったにしてもみんなすごく熱気をもってやっていたのです。それを具体的に形にしてみようといったときに、やっぱり形にできないよとなるのか、とりあえずの形になるのか、どうしたらその形になるのかということを繰り返して成長していきます。まずそこからですよね。
編: 実際にプレ講座をご覧になって、台湾の方のゲーム作りに対する熱意をどのように受け止めましたか。
安田氏: すごく強いです。日本よりも強い気がします。ゲームに対する興味について、日本やアメリカなどはゲーム以外にもたくさん楽しめるものがあると思うのです。そうしたものが多すぎないところというのは非常にゲームに対する意識が強い。アジアはどこにいってもそんな気がします。中国大陸に行っても同じような印象を得るしマレーシアやインドネシアも行くようになりましたが、そこもゲームに対する情熱は強いです。
編: なるほど、2月のインタビューでは、今後は東南アジアにも注力していくということでしたが、今後、人材育成プログラムは東南アジアに波及していくのでしょうか。
安田氏: しますよ。既にシンガポールでも香港でもそういう講義を行なっています。残るはタイですね。タイは文字が難解なのできついかもしれないのだけど(笑)。マレーシアしかりインドネシアしかりそういったリクエストが出てくるのではないでしょうか。思ったよりもコンピュータに関するノウハウを持った方が増えてきていますからね。
■ 中古品問題について。「中古品はコピーと同じ」
安田氏は、SCE Asia設立以前から中古品は一貫して廃絶すべきとの主張を続けている。その背景には、著作権者に対して利益が循環されないことに対する率直な怒りがある |
編: SCE Asiaさんが推進されている人材育成プロジェクトは台湾単体ではなく、アジア全体でのプロジェクトですが、SCE Asiaさんがここ数年、本業と同時並行して人材育成に力を入れる理由はなんでしょうか?
安田氏: 自分で作ったものをコピーされたら頭にきますよね? それを自分達でお知りになっていただくということです。何が著作権なのかということを考える大きな理由になると思うのです。「コピーはダメだ」と言い続けても、「何でダメなのかわかりますか?」と聞くとあまり返事が返ってこない。だから、コピーをされたり中古でモノを売られてしまうとソフトメーカーが疲弊してしまうこともわからない。30万枚売れるはずのソフトが1万枚で終わってしまった。これでは次のソフトが作れないわけです。
次のソフトを作るためには30万枚売ってあげなければいけない。しかし、店で5,000円のソフトがあって、一方で300円のソフトがあって、デジタルだから同じように遊べてしまう。同じクオリティなら300円のほうを買って遊ぶに決まっている。そういう意味でアジア市場は終わっているのです。それではソフトウェア産業は育成できない。日本だって同じことが起こっていますよね。中古を野放しにしているから、それでゲーム産業がどうなっているかといえば、この10何年間右肩下がりではないですか。
編: つまり、人材育成プログラムに力を入れる理由は、市場の健全化のための大戦略のひとつということですか。
安田氏: ソフトウェア産業の中心にあるのは著作権です。音楽でも同じことです。自分が作った音楽を人がコピーして売ってしまったということが無いようにしないと、著作権は国が保護をしていたし、本だって値引き販売しない。レコードだってしばらくの間は2,500円という定価がついていて、10%の返品はOKといった再販制度の下で事業をかつて私はやっていました。その10%の返品を3%くらいに抑える努力をするのです。お店のフォローを毎月いって行ない、アルバイトを連れて行って何千枚もあるものを総量チェックするのです。売れないものをどんどん箱に詰めて、売れ筋のものを一生懸命補充をしてやっていくと、お店の売り上げがだんだん上がっていくのです。すると10%は返しても良いはずなのに返すものがなくなってしまうんですね。
編: 安田さんは人材育成プロジェクトを通じた啓蒙活動が進めばコピーと中古品は無くなるとお考えですか?
安田氏: 簡単ではないでしょうね。無理もないという部分もあると思うのですが、国が違えば発想も異なりますね。我々が、台湾の警察当局と一緒にコピーの摘発を開始した時も、「なにが悪いのだ!」、「良いアイデアではないか!」、「日本から来たものを安く売って客も喜んでいるし、何がいけないんだ!」と、堂々とこういった主張をされる方々がいらっしゃいました。価値観があまりにも異なるので、非常に当惑しました。
「著作権侵害ですから止めてください」と、こちらとしての正論を言っても、「客が選んで5,000円もするものを300円で売ってやっているのだ」と返されてしまうこともありました。作品を作る過程での、クリエイターやメーカーの努力、そしてユーザーに新しい作品を届けるためにも正当な売り上げと利益が必要です。コピー品にはソフトウェアメーカーの努力なんてまったく頭にないのです。そこが1番お金が掛かるところだと思うのです。
ハードの世界でも同様です。何百億円もかけて開発した商品がありました。その商品の機密を握る人材を引き抜いたら、そのメーカーは何百億を払わなくても機密が手に入ってしまう。それでモノが作られたら値段競争に勝てるわけが無い。どこの国のどんなメーカーとは言わないけれども、そんなことが実際にあったわけです。それは許せないと思うのです。
編: 安田さんから中古品の話が出たのは印象的ですが、その是非はひとまず置いておいて、安田さんが現在担当されているアジア地域ではどのような形での解決がベストだとお考えですか?
安田氏: これはSCEの考えではなくて、私個人の考え方なのだけど、中古品はコピーと同じだと思っています。中古品もやっているようなところとはあまりお付き合いしたくないです。
編: しかし、実際問題として、台北地下街などに行きますと、ゲームショップでは新品の隣で中古品が堂々と売られていますよね?
本間氏: 原価が安いのです。仕入れの仕方はパッケージからディスクを抜いた状態で1つ梱包します。別々に届けて現地で組み合わせるのです。つまり、ゲームではなく虚偽の申告を行なっているのです。通関の費用が安いですし、ちゃんとした税金を払っていない。Fedexで届くのとかに至ってはもう違法・犯罪の範疇ですよね。中国に流通している中古品は、日本の在庫が回ってくるのです。
安田氏: 日本で中古ビジネスが花盛りだった時代があったのだけど今は下火になって、中古品も余るようになってしまった。それが今いったような方法で中国大陸や台湾に流れてきているのです。
編: 私は台湾で販売されている中古品は、台湾の中で循環して、日本渡来の中古品はごく一部だと捉えていました。そうではなくほとんどが“並行輸入品”なんですね。
安田氏: そうです。ラッピングする機械まで購入してやるわけだから。ドライヤーの音がよく聞こえていましたよね。製品として売るために綺麗にシュリンクしているんですね。
編: 純粋に国内のみの流通であれば、中古品が流通しても良いという考え方ですか?
安田氏: そういう考え方もあると思うのですが、やっぱり私は賛成できない。
編: 普雷伊さんを始めとした大手ゲームショップさんに中古品の取り扱いの中止を要請したりはしないのですか?
安田氏: したいのだけど、そういうのをやっているとかやっていないとか言うと、またぶり返しそうだから(笑)。「台湾でも同じことをやってらあ」って言われちゃうからね(笑)
編: 安田さんのビジネスの範囲では、最終的には中古品もなくしたいという考えでしょうか。
安田氏: なくしていきたいですね。
本間氏: ただ、台湾で中古ビジネスが流行っているかというと流行っていません。その理由は中古の買い取り価格にバラつきが出るとユーザーのクレームがものすごいのです。台湾の人はものすごい勢いで文句を言いますから。Aという店に持っていったらいくらで、Bにもっていったらちょっと安かったというと怒鳴りこんできますから店側もあまりそういったことをやりたがらないのです。同じチェーンの中でも今日の買取金額はこれにして、明日はこうする。その情報を全店舗に通知してどこに持っていっても同じ金額で買い取れるというスキームはできないのです。日本はその点はきっちりやっていますね。
編: 自然に衰退していく産業ではないかと?
本間氏: 中古が流行るとすれば、それは高級品に限られると思います。つまり換金性目当てです。
■ アジア地域での動画配信サービスの今後の展開について
デモ出展されていたSCEIの動画配信エンジン「Broadcasting Engine」。唯一韓国で採用されており、このためPS3の動画配信サービスは韓国のみ方式がまったく異なる。今回は参考出展としており、台湾で実装されるかどうかは未定だ |
編: 今回の発表会の会場後方では、「Broadcasting Engine」と呼ばれるSCEIで開発されSCEK(Korea)でサービスされている動画配信エンジンが参考出展されていました。いよいよ台湾でも動画配信サービスが始まるのかなという感じですね。
安田氏: 台湾でも色々な動画配信サービスがあります。PS3やPSPもこれからさらに拡張をかける中で、繋がる部分があれば繋げていきたいと思います。
編: 台湾での使い方とはどのようなものになりますか?
本間氏: まだこちら(台湾)の通信キャリアの方とお話をしている段階です。
編: 確かに発表会に複数のテレコム系のメーカーさんが出席されていたのが印象的でした。
安田氏: 模索中ですね。彼らは何かのコンタクトを交わして何かをやり始めているというよりは、お話し合いの段階だと捉えていただいてよろしいのではないでしょうか。
編: 台湾で行なわれる動画配信サービスは、韓国で行なわれているようなPS3をセットトップボックスとして活用するIPTVサービスの一種という理解で良いですか?
安田氏: それも模索中です。値段だけで競争していくのか、利用方法でいろいろな機能を売って売り上げを伸ばしていくのかといったら後者なのです。値段は下げられないですから。
編: 韓国のIPTVサービスの形を踏襲しないということは、台湾では日本のように、PSN上に「ゲーム」と「ビデオ」のタブが作られるということですか?
金澤氏: そこがまさしく模索中でして、映像配信でどういうビジネスをやって成立させるかはまだ勉強中なのです。それは我々だけでなく、台湾で映像配信をネット上で行なおうと考えていらっしゃる型にとっても勉強中だと思うのです。コンテンツを配信してダウンロードして商売になるのかという疑問があるのです。例えば台湾にはiTunesすら無いのです。
安田氏: コンテンツはタダだと思っているところに金よこせと言っても払わないからね。
金澤氏: 少なくとも韓国でやっているIPTVのやり方を持ってくるだけではダメだなと思うのです。台湾の企業さんと協力すればお客さんがついてくれるかなというところの解を出そうとしています。
安田氏: ソフトがバンバン売れている地域ならば良いのですが、台湾はコピーこそなくなったとはいえ、それほど所得の高い方ばかりではないので、面白いように売れますという状況ではない。インカムもそれほど厚くなく、再投資をするだけの範囲は広くない。結構シビアな話をしないとあれもこれもやっていると潰れてしまうわけです。
編: 今回の教育プログラムの中で、今後、そうした動画配信サービス向けにアニメーションを作ることはカリキュラムに入っているのでしょうか。
本間氏: 入っていません。ゲーム内のCGや中のアニメーションを作ることはあると思います。
■ PSP Goはアジア地域が世界最速発売? PS3も値下げ、小型化の方向へ
「並行品が満載されたコンテナは見たくない」と苦笑いする安田氏。PSP goは並行品対策のために日本より早いタイミングで発売することを明言。近くアジアでの取り扱いに関して発表会を行なう予定だという |
編: 最後に、いくつか旬な話題を聞かせてください。まず、E3でPSP goが発表されました。アジア市場でどのような展開をお考えですか。
安田氏: 今日は教育プログラムの発表でしたが、次の発表会ではPSP goを出すだけではなくて、「こんな遊び方がありますよ」といったことや、コンテンツについていろいろお話すると思います。時期は8月から9月にかけてになります。
編: PSP goでアジア単独で発表会とは、ずいぶんと力が入っていますね。
本間氏: 我々はいつでも全力投球です(笑)。
安田氏: 今回は従来のPSPも同時並行して売っていくことになるわけです。今まで「明日からボタンを押せば全部変わってしまう」みたいな発言をしている人がいたかもしれないけれどもそれは間違いです。徐々にしか物事は動かない。ネットワークで遊べる機能もあります、こちらのほうがコンビニエンスですよという、基本部分はしっかり説明した上で、プラスアルファで色々な付加価値をつけていきたい。基本がなく付加価値の部分だけを宣伝をするような間違った発表の仕方をするとお客さんが混乱してしまいますからね。
編: SCE Asiaさんは、SCEグループの中でも、もっともハードの発売の早い地域として知られています。現時点ではアジアでの取り扱いは未発表ですが、巷ではPSP goは日本よりもアジアが先に売るのではないかという話も出ていますね。
安田氏: なぜそうするかというのは、並行品対策です。他で発売されてウチだけ出ないと全部舶来品がアジアを席巻してしまうのです。ですから同時発売か少し前に出したいという希望を出しています。
編: ということは、現在もっと発売時期の早い北米と同時発売も考えられますか。
安田氏: ありえます。1番最初に出すところと同時発売にしたいです。だって、いやだもん。アメリカから大量にコンテナが来るのを見るの(笑)。
本間氏: 台湾は特に日本モデルに人気があります。メイドインジャパンと勘違いしているようでして。よく聞かれるのです、「これ日本から来たの?」って(笑)。
編: 私の見込では、PSP goをアジアで発売するということは、アジア地域のPlayStation Networkのサービスの内容も抜本的に進化させる必要があるのではないかと見ています。PSP go発売以降のアジア地域でのオンラインサービスの形を教えてください。
安田氏: まさに今一生懸命考えています。こういうものでこういうことをしますということは次の記者発表で行ないます。意地悪な質問されたから意地悪で返しているわけではないのですよ。そのときはまた台湾にスイカでも食いに来てくださいよ(笑)。
編: PSP goでのアジア独自の試みは考えられていますか。
安田氏: 発表からまだそこまで時間が経っていないですからね、今一生懸命考えているところです。
本間氏: PSP goに関して日本の販売店さんはソフトが売れなくなるという見方もあるようですが、アジアのお店さんに関しては非常にウェルカムです。一緒に盛り上げていきたいとい声をいただいています。
編: 日本や欧米のように物理流通やコピー対策がしっかりしていて、パッケージが売れている地域からはネガティブな意見が多いと思いますが、アジア市場にとっては非常にウェルカムなプラットフォームになりそうですよね。
安田氏: アジアはお客さんとお店と我々の間が近いんです。だから我々の熱が伝わりやすいし、意見を貰ったら我々も真剣に考えるし、向こうに熱気を感じてもらえたら素直に感動します。世界のマーケットはドライになりすぎているのではないでしょうか。ボタンを押したら色が変わるとかそういったものではなく、血管に血が通っていくような商売をやらないとヒットなんか生まれないのです。インドあたりでテレビつけるとCMひとつ取ってみても面白いのだよね。「へえ、すげえ」って思うことがよくあります。日本でCMを見ていたってつまらないでしょう。でもインドのCMは言葉がわからなくても面白い。映画や何かはどんなものでも似ているのだけどコマーシャルが面白い。惰性で流れているような印象を受けるのだけど、血管に血を流して相手の胸倉つかんで話し合うくらいの気持ちでやっていかないとダメだと思います。
編: それからPS3に関してもE3では廉価な薄型モデルが発表されるのではないかと噂されていましたが結局出ませんでしたね。薄型化と低価格化はアジアのみならずワールドワイドの希望でもありますが、安田さんはどのようにお考えですか。
安田氏: PS3は発売してずいぶん時間が経ったので、今後シュリンクできるものはシュリンクして、価格を下げることができるものは下げていきます。しかし、まだ結構部品が高いのです。値下げまではもうちょっと時間がかかると思います。ただ、働きかけはしていきます。
■ China Joy初の出展見送りも、中国展開は「まったくあきらめていない」
晶華酒店は、SCETの事務所の目の前にある台湾有数のホテル。中山区の中心部にあり、高層階にある会議室からは、アジアで最も高い建造物であるTaipei 101を確認することができる |
編: 今年中国のゲームショウChina JoyにSCEさんが出展されないのは、中国のゲーム市場の状況を象徴する出来事だと思います。SCE Asiaでは中国に振り向けていたパワーを今後どこに割くのでしょうか。
安田氏: やはり中国大陸です。最初、韓国などは日本語がダメだというところからスタートできなかったのですが、このネットの時代になりますと国境を越えて色々な情報がいったりきたりしますよね。中国大陸でも色々な情報がいったりきたりしていて、あえてゲームはだめよといっていることの意味がだんだん無くなっていくのではないかなと思います。
編: China Joyへの出展見送りは、中国市場の進出断念を意味するわけではないのですね。
安田氏: まったくあきらめていません。しかし、マイペースの国ですし、国の事情はそれぞれ異なるわけですから。賢明な中国政府の皆さんはそろそろ開放なさるのではないかという期待はしています。このメッセージを読んでくださるとうれしいです。
編: リサーチを続けているインドについてはいかがですか。
安田氏: 話し合いを社内的にやっている段階です。この前も視察に行ったのですが、お店もまだちゃんとしていないし、インドに比べたら、中国大陸のお店のほうが良いのですよ。たぶん中国大陸の人たちは香港や台湾に見に来て、こんな商売のやり方をやっているのだと学んで帰っているのですが、インドの人たちはまだあまり学んでいないのではないかと思います。輸出するにしても関税が複雑で高いこともあり、なかなか難しいと思います。インドは、まだゲーム産業そのものが育っていないといいますか、育つ前の段階で足踏みしている印象がありますね。
編: なるほど、時期尚早だと?
安田氏: 仮にビジネスを始めてもそこそこのお店が出来上がって、試遊台があって、在庫があって、お店の人がお客さんに説明するという状況を作りあげるまで何年かはかかる気がします。私が生きている間にスタートしたいですね。(笑)。
編: そんな遠い話ではないような印象ですが(笑)、いつごろがメドでしょうか。
安田氏: やらせてよという話はしていますので、やり始めれば拠点を作って、1店舗ずつ拡大していきます。良いお店ができれば、色々な業者さんに見せてあなた達もやってみないかという話がしたいです。かつて、全部で1,000万円以上するような、照明が連動して動く業務用のカラオケを売っていたことがあったのです。お店でちゃんと設置して、歌と同時に動かすデモを、何軒かの店のオーナーを連れてきて見せたら、「これ欲しい」とその場で3台4台売れていました。そういうことからやりたいです。手間隙はかかるけど連れてきて見せて、こんな商売ですということを知って貰います。「ゲーム好きなら売ってみないか?」ということです。
編: マスに向けた商売というよりは、まずは特定の富裕層に向けた直販ビジネスからということでしょうか。
安田氏: そうです。インドではまだマスに向けて売るほどの価格帯のものではないのです。
編: 最後に一言メッセージをお願いいたします。
安田氏: ゲーム機はソフトが無ければタダの箱です。今後もソフトの拡大のためにがんばっていきますので、是非一緒にやりましょう。
本間氏: これからも面白い商品がたくさん出てきます。ユーザーの皆様にはとにかくお店に足を運んでください。
編: ありがとうございました。
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(2009年 7月 15日)