インタビュー
バンダイのメタルフィギュア、「超合金の塊」担当者インタビュー
「ドラゴンボール」、「ガンダム」で、ワールドワイドのユーザーを狙う
2016年11月8日 00:00
バンダイコレクターズ事業部では、「超合金の塊」というフィギュアシリーズを展開している。シルバーメッキのダイキャストの立像で、「ダイナミックキャラクターズ」、「藤子・F・不二雄キャラクターズ」を展開。そして9月からは「ドラゴンボールZキャラクターズ」が、11月からは「ガンダムシリーズ」が発売される。
この「超合金の塊」は独特の魅力を持った商品である。他の商品のように変形や合体、可動などのギミックはないが、「超合金」のコレクターズ事業部ならではの“金属”にとことんまでこだわり、重量感、手触り、キャラクター表現が楽しめる商品となっている。
「超合金の塊」は9月の「ドラゴンボールZキャラクターズ」からこれまでの手法を変えたという。担当の倉林宏幸氏はユニークな経歴を持ち、その経験を活かして「超合金の塊」シリーズを展開していく。今回は改めて「超合金の塊」の魅力に迫りつつ、倉林氏の本シリーズへの想いを聞いた
キャラクターの特性をきちんと捉え、楽しいシークレットカラーも用意
今回は歴代シリーズを並べてもらった。たくさんの金属製フィギュアが並んでいる姿は壮観だ。「超合金の塊」の第1の魅力はやはりそのシンプルだがキャラクター性をきちんと捉えた造形にある。
「『合金100%』、『金属の重さと冷たさ』、『メッキの輝き』……これこそが『超合金の塊』の最大のセールスポイントです。この金属の質感を前面に出し、現在の最新技術による3D造形でキャラクターを表現しています」と倉林氏は語った。
特に「ドラゴンボールZキャラクターズ」は、デフォルメ風のキャラクター造形になり顔の表情がよくわかるようになっている。戦いが激しくハードになっていく「ドラゴンボールZ」のキャラクターらしい、鋭い目をしたきつい顔立ちがきちんと造形されている。ベジータが小柄になっていたりと、キャラクター達の特徴もしっかりわかる。服のしわも造形されている。
「超合金の塊」シリーズは“シークレットカラー”が設定されており、購入時はブラインドパッケージでわからないが“当たり”だと、シルバーではなくシークレットカラーになる。「ドラゴンボールZキャラクターズ」の場合他のキャラクターはゴールドだが、「孫悟空」だけレッドメタリックになっている。これはもちろん他のキャラクターはスーパーサイヤ人、そして孫悟空は“界王拳”をイメージしているからだ。シークレットカラーがつい欲しくなってしまう仕掛けだ。
「ガンダムシリーズ」は、アニメ「機動戦士ガンダム」での大河原邦男氏の設定画を思わせるラインでの造形となっている。「ガンダム」、「シャア専用ザク」、「量産型ザク」、「グフ」と“定番”といえるラインナップに「アッガイ」が加わっているのが面白い。アッガイはずんぐりしていて、他のMSとはバランスも違い並べるとアクセントにもなっている。デザイン的にはできるだけシンプルにしながらも各MSの特徴をきちんと再現しているのが楽しい。グフはきちんと左手がフィンガーバルカンになっている。
そしてシークレットはこれまでのシリーズ以上に凝ったものとなっている。シャア専用ザクはレッドメタリック、量産型ザクはグリーンメタリック、グフはブルーメタリック、アッガイはブラウンメタリックとそれぞれのオリジナルのカラーを活かした色に彩色されているのだ。単色ではあるが、色が変わるとよりMSとしてのキャラクター性が深まるように感じる。ガンダムが金色なのも面白い。もちろんノーマルのシルバーメッキも味があるので両方揃えたくなってしまうだろう。
そして手に持ったときの“重み”もいい。「超合金の塊」は70mmほどの大きさで、手に持つとしっかりと重さが伝わってくる。「金属の塊を手に持っている」という独特の充実感がわき上がってくる。
「超合金の塊」は、ギミックはないフィギュアなのだが手に持って、ずっとその手触りや造形を楽しんでしまう。手のひらや、指の腹で金属の質感を楽しみ、目で造形をチェック、そして重みを感じる。ずっと手に持っていたくなる。さらにコレクション性の高さも魅力だろう。たくさん並べてみたくなり、そこから1つ1つ手にとって楽しみたくなる。ユニークな感触を持つ商品だと感じた。
ワールドワイドに向けたキャラクターを! 日本にメタルフィギュアの文化を!
倉林氏はフランスや中国といった海外で仕事をしたり、キャラクター娯楽施設の企画など多彩な経歴を持つ。「超合金の塊」を担当する前は幕張にある「東映ヒーローワールド」で、子供達のための施策を日夜練っていたという。商品でも「キャラウィール」や、「ハイパーヨーヨー」など、様々なジャンルをこれまで担当している。
「僕は新規事業、新ブランドの立ち上げや、既存の事業のアプローチを変えた施策などに関わることが多いです。企画の面白さ、アプローチの仕方、そういった所の経験を買われて数年ごとに新しいことをしている感じです」と倉林氏は語った
「超合金の塊」は、これまでは日本国内向けのキャラクター展開を行なっていたが、海外を大きく視野に入れたキャラクターが選定基準となり、ユーザーからの声を取り入れた方向に商品仕様も変更していったという。
変更の1つがパッケージだ。これまではブリスターケースだったが、箱形のブラインドパッケージに変更し、シークレットカラーがその名の通り箱を開けないとわからないようにした。紙にも表面処理を施し、つや消しの手触りを生み出し高級感を増している。積み上げたり並べやすくなり、箱に入れた状態でのコレクション性にも気を配っている。
商品そのものでも「ドラゴンボールZキャラクターズ」はこれまでの「超合金の塊」とは方向性を変えた、ディテール表現にこだわったものにしてキャラクター性を前面に押し出している。一方で「ガンダムシリーズ」はこれまでのフォーマットに近い造形だ。「ファーストガンダム」とよばれる、アニメ「機動戦士ガンダム」のデザインを想起させるシンプルで特徴的なデザインを採用している。
「ダイキャストでも再現可能なディテールの限界にチャレンジしています。その上で、お客様にディフォルメを楽しんでもらうように、全体のバランスは気をつけています。それが我々の腕の見せ所ですね」と倉林氏は語った。コレクションをすることでの“所有感”も大きな魅力だという。
ダイキャストというところでは“磨きの工程”も本商品の注目ポイント。「超合金の塊」シリーズは磨き工程がしっかりしているからこそ表面のメッキ処理が映えるという。バンダイは「超合金」シリーズで様々なメッキ処理にも精通する工場としっかりした関係を築いている。その“磨き”は機械での第1工程の後、1つ1つ人の手で丁寧に磨くことで実現する。手作業の品質が「超合金の塊」のメッキの美しさを生み出していると倉林氏は語った。
「超合金 ハローキティ(マジンガーZカラー)」の鏡のような表面処理なども行なっているし、「聖闘士聖衣神話」での色とりどりの聖衣の表現など、金属のメッキ処理に特徴のある商品を生み出している。「超合金の塊」はそれら金属の加工技術を前面に押し出した商品なのだ。
デザインの面白さという部分では、10月28日より開催される「魂ネイション 2016」での前売りチケット、および限定商品の「超合金の塊 マジンガーZ 超合金魂GX-01バージョン」も注目だ。背面に目立つようにねじ穴が再現されており、「マジンガーZ」ではなく、「超合金魂GX-01 マジンガーZ」のミニチュアになっている。イベントに行くようなコアな超合金ファンにはグッとくる仕掛けだ。さらに会場の限定品として「ゴールドバージョン」、「ブラックバージョン」も発売される。
現在、倉林氏は「ドラゴンボールZキャラクターズ」関連で第2弾を3月に発売すべく準備を進めているとのこと。まだまだ魅力的なキャラクターは多い。どのキャラクターが立体化されるか、発表を待ちたいところだ。倉林氏の視点はやはり“世界”だ。中国や東アジアだけでなく、北米、ヨーロッパ……世界中のユーザーにアピールできるキャラクター商品で勝負したいと考えているという。
「日本では細かい彩色と精密な造形でのミニフィギュアの市場がすでにしっかりあります。『超合金の塊』はその状況を踏まえた上で、あえて新しい市場を開拓しようとするコレクターズ事業部の挑戦のもと開発された商品です。一方、北米・ヨーロッパには無彩色の金属感を前面に出した“メタルフィギュア”という文化がある。僕はこのメタルフィギュアの文化に、『超合金の塊』はマッチすると思っています。だからこそ、“ワールドワイド”を常に考えて企画していきたいです」と倉林氏は語った。
いぶし銀に見える処理、銅版画のような質感、そしてもちろんカラーバリエーション、金属をテーマに、まだまだ無数のアプローチも考えられる。展開の1つに今後予定されているセブンイレブン限定の「超合金の塊 ガンダム」がある。これは、セブンイレブンをイメージした緑のメッキのガンダムとなる。今後も様々なカラーバリエーションも予定している。
「僕はお客様の声を活かしたいと思っています。お客様の声がこれからの商品、企画の力になります。僕の商品化のスタイルは、皆さんの声を聞いて皆さんが求めるものを実現するというものなんです。これまでのようにイベントなどで話していただくのも結構ですし、TwitterなどのSNSでも結構です。私は『超合金の塊』で日本にも欧米のようなメタルフィギュアの文化を根付かせたい。ご意見、ご要望、お待ちしています」。倉林氏は最後にこう語りかけた。
筆者にとってメタルフィギュアは“懐かしさ”を覚えるジャンルだ。子供の頃は亜鉛合金の小さなフィギュアがあったし、お土産でも定番だった。また、TRPGなどでドイツ製のメタルフィギュアのシャープな造形に感心したりもした。バンダイの「超合金の塊」はそこから遙かに進化し、キャラクター性、コレクション性の高い商品となった。そして今回話を聞くことで、ユニークなアイディアマンである倉林氏の施策で、本シリーズがどのように展開し、ユーザーを獲得していくのか大きく興味を惹かれた。注目していきたい。
[お詫びと訂正]
記事掲載当初「70cm」としていたサイズですが、「70mm」の誤りでした。お詫びしてここに訂正いたします。
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