「EA TOKYO SHOWCASE 2010」タイトルレポートその1
須田氏と三上氏による意欲作「Shadows of the DAMNED」、10年の時を経て復活する「Alice Madness Returns」など新IP続々


9月15日 開催

会場:京王プラザホテル



EAのCOOであるJohn Schappert氏

 米Electronic Arts(以下、EA)は9月15日、東京・新宿の京王プラザホテルにて、今後のEAタイトルを紹介するTOKYO SHOWCASEを開催した。イベントにはEAのCOOであるJohn Schappert氏が登壇して司会進行を務め、7つのタイトルが紹介された。イベントは全て英語で進行した、世界各国のメディアが会場を訪れていた。

 今回紹介されたタイトルの中でも最もインパクトが強いものは、グラスホッパー・マニファクチュアがデベロッパーとなる「Shadows of the DAMNED(シャドウ オブ ザ ダムド)」の発表だろう。エグゼクティブディレクター須田剛一氏、クリエイティブプロデューサー三上真司氏、サウンドディレクター山岡晃氏が登壇し、作品への意気込みを語った。

 本稿では「EA TOKYO SHOWCASE 2010」タイトルレポートその1としてこの「Shadows of the DAMNED」、「不思議の国のアリス」をモチーフにしたアクションゲーム「Alice Madness Returns」、そして「EA SPORTS 総合格闘技」の3本を紹介したい。


発表会の後に行なわれたカクテルパーティーでは「Alice Madness Returns」、「Bulletstorm」、「Create」、「Dead Space 2」、「Dead Space Extraction」、「EA SPORTS MMA」、「Medal of Honor」、「Need for Speed Hot Pursuit」といったタイトルの試遊台があった



■ EAのパブリッシングによるサイコロジカル・アクション・スリラー誕生。その名も「Shadows of the DAMNED」

須田氏は声を低くした独特の節回しで本作のタイトルを連呼した。略称は「DMD」を使って欲しいという

 「Shadows of the DAMNED」のプラットフォームはPS3、Xbox 360で発売日は2011年の予定だ。グラスホッパー・マニファクチュアで、本作のエグゼクティブディレクターを務める須田剛一氏、クリエイティブプロデューサーの三上真司氏、サウンドディレクターの山岡晃氏が登壇した。

 須田氏は「私と三上さんは、このプロジェクトを進めながらパブリッシャーを探していました。EAとならば世界中に僕たちのゲームを届けることができ、それに僕たちのクリエイティビリティーに強い興味を持ってくれたからこそEAをパブリッシャーに選びました。今日、2年間の成果をお見せできます」と語った。

 須田氏は本作のジャンルを「サイコロジカル・アクション・スリラー」と定義する。主人公はデーモンハンターを生業とする男ガルシア・ホットスパー。彼は、地獄へ連れ去られた恋人を救う旅に出ることになる。「愛のためならば男はどこにでも、たとえ地獄でもいきます」と須田氏は語る。

 三上氏は「この作品の、パンクロックの部分、パンチの効いたスタイリッシュなテイストは、須田さんがいるからこそ実現できました。全てのシーンで須田さんの持っているセンスが感じられます。須田さんならではのノリのいい部分がこの作品ではたくさん見受けられます」。三上氏の言葉を受けて須田氏は、「ゲームのコアな部分は三上さんの味が強く出ています。世界でNo1のアクションゲームを作れる三上さんならではのスリリングなアクションを見ることができます」とコメントした。

 そしてこのゲームの音楽はこの人しか作れないという紹介でサウンドディレクターの山岡晃氏が登場、「この話があったとき、凄くうれしく思いました。ダイナミックで個性的な作品で、自分の経験を最大限に生かした音作りができると思いました。このゲームは三上さん、須田さんに想像力に火を付けられて作りました。一刻も早く皆さんに届けたいと思います」と山岡氏は語った。

 この後、須田氏の合図で「Shadows of the DAMNED」でPVが流された。ギターが鳴り響く音楽に乗りながら、シーンが次々と展開する。ガルシアは骸骨を付けた巨大な銃でゾンビを蹴散らし、悲しげな目をした美女が立ち、パワフルな女性が挑むような視線を向けポーズを取る。黒い馬に乗った騎士が両手を掲げると光る槍が現われる。中世の街のような風景、地獄を思わせるおどろおどろしい場所など、様々な場所でガルシアはゾンビと戦っていく。最後に2011年夏という発売日と、PS3、Xbox 360のプラットフォームの告知をしてPVは終わった。


グラスホッパー・マニファクチュアで、本作のエグゼクティブディレクターを務める須田剛一氏、クリエイティブプロデューサーの三上真司氏、サウンドディレクターの山岡晃氏
左が主人公のガルシア・ホットスパー。骸骨のついた銃を使いこなす
気味の悪いゾンビを吹き飛ばす爽快感。激しいアクションが体験できる作品になるという
初公開となるPV。謎の美女の存在も気になる



■ 美しく成長したアリスが進む美しくグロテスクな不思議の国「Alice Madness Returns」

開発スタジオSpicy HorseのシニアクリエイティブディレクターのAmerican McGee's氏
パーティーではアリスのコンパニオンも登場。大人気だった

 「Alice Madness Returns」のプレゼンテーションを行なったのは、開発スタジオSpicy HorseのシニアクリエイティブディレクターのAmerican McGee's氏だ。「Alice Madness Returns」はXbox 360、PS3、PCで発売予定で、発売時期は未定。

 本作は2001年にPC版アクションゲームとして発売された「アリス イン ナイトメア」の続編に当たる。前作とストーリーは連続しているようだ。前作は18歳だったアリスは、今作では20歳に設定されている。アリスは火事で家族を失った痛みから抜け出せないまま、その心の闇に立ち向かうため、再び不思議の国に立ち向かう。

 American McGee's氏が作る不思議の国の世界は、美しく、ゆがんでいて、邪悪な世界だ。童話の世界を奇妙にアレンジし、独特の味をもたらしている。アリスはその奇妙な世界で、ナイフを振るい敵を血まみれにする。前作同様アリスのエプロンは敵の返り血のしぶきが飛んでいる。今作ではコショウのミルを回して、マシンガンのように炎の弾を発射する武器なども追加されている。

 筆者は「アリス イン ナイトメア」をプレイしたが、今作でも「チェシャ猫」や「帽子屋」といったキャラクターが前作のままだったのが個人的にうれしかった。10年以上前の作品の続編だが、かつてのファンなら一層楽しめそうだ。

 今回のイベントでは試遊台が出展され、いくつものステージを短い間隔で見せるデモプレイが行なわれていた。最初に出てきたのは、冬のロンドンで暗い目をして、体を引きずるように歩いていたアリス。アリスはそこから、再び不思議の国に迷い込む。

 目の前に広がるのは真っ青な空と、空に浮かぶ幾つもの巨大な岩。岩の上には大木が生えており、美しく幻想的な風景だ。紅葉した木や巨大なキノコも見える。しばらく行くと巨大なアリスの石像があり、目から涙が滝となって流れている。その涙の川でできた谷間を、アリスはジャンプしながら進んでいく。今作も、浮遊する足場を飛び移っていくような、アクションゲームのようだ。視点はアリスの後ろをカメラが追う三人称視点だ。

 場面は一転してどろどろとした溶岩が流れる危険な地域に。溶岩の上にはマンホールが浮いており、時々溶岩に吹き上げられてマンホールが浮き上がる。アリスはそのマンホールの上を飛び乗って進んでいく。このステージは下水道のような雰囲気もある。「Alice Madness Returns」の“現実”の舞台はロンドンであるという。ゲームのステージも、ロンドンの要素が盛り込まれるようだ。

 さらにチェス盤のようなタイルがはめ込まれた場所へ。ここではティーポットが金属のような足をはやし、アリスを突いてくる。また人形の首にコールタールがまとわりついたような怪物もいる。アリスはナイフを振るい、コショウのミルで敵を攻撃しながら進む。デモプレイでアリスは体を回転させた二段ジャンプや、蝶の姿に変わる残像を残して後ろに飛び退いたりと様々なアクションを披露していた。

 面白いのは、アリスの描写だ。本作のカメラは完全にアリスの後頭部を追うのではなく、不意に振り向いたときや、方向転換したとき、アリスがこちらに向かって顔を見せたり、スカートをひらめかせてステップを踏んだりする。その姿がかわいらしく、そしてりりしくかっこいいのだ。ふとしたときに見えるアリスの顔は常に緊張しており、“怖さ”も感じられる。か弱い少女のようにも、戦士のようにも見えるアリスが魅力的な作品だと感じた。


幻想的な美しさと、戦いの激しさを感じさせるスクリーンショット。右のチャシャ猫は以前の作品のデザインのままだ
りりしさとか弱さを併せ持つアリスのデザイン。不思議の国の描写にも注目したい



■ ゲーム内にも登場する吉田秀彦氏、川尻達也氏登場! 「EA SPORTS MMA」

エクゼクティブプロデューサーのDale Jackson氏

 「EA SPORTS MMA(EA SPORTS 総合格闘技)」はプラットフォームはPS3とXbox 360北米では10月19日、日本では11月11日に発売予定だ。エクゼクティブプロデューサーのDale Jackson氏によるプレゼンテーションの他、本作に登場し、パッケージの表紙にもなっている格闘家の吉田秀彦氏が登場し、さらに同じく本作に登場する川尻達也氏によるデモプレイも行なわれた。

 本作は米国やタイ、ロンドンなど世界の格闘状を再現し、実在の格闘家が戦う作品だ。日本から参戦する選手も多い。ゲームシステムとしては、「Fight Night Round 4」で使われた打撃操作スタイル「トータル・パンチ・コントロール」を継承し、2つのスティックで様々な業を繰り出して戦う。立ち技の場合、L2を押しながらスティックを操作するとキック、というようにより出せる技が増えている。

 本作では寝技の攻防戦「グラップル」、立ったまま組む「クリンチ」、そして立ち技の打撃で戦う「スタンディング」で出す技が変わってくる。選手によって得意な戦い方もあり、どういった他界をするかで攻略は全く異なってくる。ユニークなのは絞め技のシステム。スティックを回して相手を締めていくのだが、対戦相手は反対の操作をすることで技を解くことができる。技が決まるとレントゲン写真のように攻撃されている骨が明らかになり、痛そうな演出が入る。

 吉田氏はJackson氏に感想を求められると、「ヒョードル選手と一緒にパッケージの表紙が飾れるのは光栄です。実際戦ったことはないのですが、ゲームでも是非戦いたいですね」と語った。吉田氏のコメントの後、川尻氏が登壇し、Jackson氏と共にコントローラーを握り、対戦が開始された。

 川尻氏は自分のキャラクターでJackson氏に挑戦。パンチの攻防から、タックルで相手を倒し格闘に。腕を取り間接を締める。何とか逃げたJackson氏を川尻氏は逃がさず、相手を仰向けにして再び腕を攻める。一度Jackson氏は反撃に出ようとするが、川尻氏はそこを押さえ、左手を決め、勝利をもぎ取った。川尻氏はJackson氏に不適に笑いかけ「もっと練習した方がいいですよ」とコメントした。Jackson氏は川尻氏の腕を高々と挙げ、勝利をたたえた。


格闘家の吉田秀彦氏、川尻達也氏。川尻氏はJackson氏とゲーム内で戦いを繰り広げた
【スクリーンショット】
リアルに表現された格闘家達が戦いを繰り広げる。各選手のスタイル、攻防の再現度に期待したい

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(2010年 9月 16日)

[Reported by 勝田哲也 ]