BBA、オープンセミナー「期待されるソーシャルアプリ市場の成長と、その可能性」を開催
「RockYou! スピード★レーシング」と「ブラウザ三国志」の開発者が、ソーシャルゲームについて講演


12月10日開催

会場:文教学院大学



ロックユーアジア株式会社の執行役員COOの渡邉廣明氏
ONE-UP株式会社 代表取締役社長 椎葉忠志氏

 一般社団法人ブロードバンド推進協議会(BBA)は12月10日、文教学院大学にて新世代ブロードバンド研究会ゲーム&コミュニティサービスワーキンググループ3回連続オープンセミナーの第3回として「ソーシャルアプリ市場の成長と、その可能性」と題した講演会を開催した。

 講師にはロックユーアジア株式会社の執行役員COOの渡邉廣明氏と、ONE-UP株式会社の代表取締役社長 椎葉忠志氏が登壇。ロックユーアジアは、代表作「RockYou! スピード★レーシング」などのソーシャルアプリを開発し、日本のmixiを始め各国のソーシャルネットワークサービス(以下、SNS)に提供している。ONE-UPはブラウザゲームの「ブラウザ三国志」や、そのソーシャルアプリ版「ブラウザ三国志 for mixi」などの開発元として知られる。

 ソーシャルアプリの本場である北米に本社を置くソーシャルアプリメーカーと、ソーシャルアプリの業界に参入したオンラインゲーム開発会社という、立場の違う2つの視点からソーシャルアプリ市場について語るというのが、今講演の趣旨。最初に2人が講演を行ない、休憩を挟んで質疑応答とディスカッションが行なわれた。参加者は、現在ソーシャルアプリ市場への参入を考えている開発者や、SNS運営を予定している事業者など、業界のプロフェッショナルが多く、休憩時間には賑やかに名刺交換が行なわれていた。

 このレポートでは、渡邉氏、椎葉氏の講演内容と、その後に行なわれた質疑応答などについて報告する。



■ロックユーアジアのCOOが語る、ソーシャルゲームのグローバル戦略の難しさ

Mixiでサービスされている「RockYou! スピード★レーシング」
ロックユーアジア株式会社の執行役員COOの渡邉廣明氏

 渡邉氏は「ソーシャルアプリのグローバル展開と、国内最新事例」というタイトルで講演を行なった。ロックユーアジアはアメリカのロックユーと、日本のソフトバンクが合弁で作った会社で、現在は代表作の「RockYou! スピード★レーシング」など複数のソーシャルゲームを、日本、韓国、中国の大手SNSに提供している。

 講演はまず、ソーシャルアプリケーションが台頭するまでの流れを簡単に追った。ここ数年ネット中ではSNSサイトが、それまでのポータルサイトを押しのけてトラフィックランキング上位に上がって来ている。2005年頃までは、Yahoo!やMSNといったポータルがネット内の主流だったが、2008年には上位サイトのほとんどがSNSかSNS的な機能を有するものに変わった。

 2008年の資料では、ソーシャルアプリをインストールしているユーザーの数は23.3%だったが、いまは50%を越えるまでに急成長しているそうだ。SNSの使われ方としては「友達へのメッセージ」が最も多いが、「アプリをインストールする」という回答も伸びている。資料では23.3%だが「この資料は少し古いので、今はもう実際には50%を越えているのではないかと思います」(渡邉氏)と急成長が著しい。

 SNSの持つ特徴に「バイラリティ(自己増殖性)」がある。これは、消費するユーザーに知人を紹介してもらうように働きかけ、ユーザーを通じて間接的に自社のサービスを宣伝する「バイラルマーケティング」という手法だ。バイラルを有効に使ったSNSが飛躍的にユーザー数を伸ばしているのは、ローンチから2年間の間に延びた会員数を比べてみると歴然だ。Yahoo!などの大手サイトでも立ち上げ当時から2年間では会員数が500万程度であるのに比べ、RockYouは2年で5,000万を突破するくらいのユーザー数を獲得している。

 アメリカでfacebookが急激にシェアを伸ばしたのは、facebook上で動くアプリケーションを作るためのAPI(アプリケーション・プログラム・インターフェイス)を公開したことがきっかけだ。APIの公開がソーシャルアプリケーションを活性化させ、それがユーザーの獲得につながった。

 ロックユーアジアがフィールドにしている東アジアを見ると、韓国ではCyWORLDという大手SNSが2,500万の会員を抱え、中国に至っては、renren.comが6,000万人、開心網が7,000万人、5.1.comが1億5,000万人と日本の人口を超える驚異的な数の会員数を擁している。日本ではmixiの会員数1,700万に加え、来年はモバゲータウンがAPIの公開を予定しており、アジア全体でSNSとソーシャルアプリケーションが盛り上がっている。


2005年と2008年のランキングの違い。青囲まれたものがSNSサービス。増加しているのがひと目でわかるSNSで使われている主なサービスの比較
facebook急成長の要因は、アプリケーションのAPI公開が大きいローンチから2年間の会員数延びを比較したグラフ。SNSが飛躍的に伸びていることがわかる


 現在RockYouがサービスしている「RockYou! スピード★レーシング」は、車のオーナーになって、マイミクとレースをしたりツーリングを行なってコインを貯め、さらに良い車を手に入れるというゲーム。

「スピードレーシングは、ゲームとは言っていますが、基本的にはユーザーのコミュニケーションを活性化刺せるための要素です。以外と単純にできていて、説明書を読まなくてもなんとなく流れで遊べてしまう。レースゲームとしては若干物足りなさもありますが、我々はあくまでもライトにゲームを作っていこうと思っています。バイラルであったり、友人を誘う口実を以下に作るかという部分に気をつけながら作っています」(渡邉氏)。

 「RockYou! スピード★レーシング」ではツーリングでコインを貯めるための条件に、マイミクを何人誘えといったものがあったり、1人のマイミクとレースできる回数が3回と決まっているので、効率よくレースでコインを貯めようと思ったら、複数のマイミクを誘う必要があったりという形で、友達を誘う口実を作っている。また、ログインするとプレゼントがもらえるという方法で、リピーターが来る仕掛けを作っている。

 渡邉氏がソーシャルゲームらしさを感じるのは、友達を誘う仕組みを作ると、ユーザーはすぐにSNS内でツーリング仲間を募集する声かけを始めたり、知らない人間同士がバーチャルに友人になって、ツーリングのための人数を稼ぐなどの動きが見られる所だそうだ。

 また、無料のサービスを収益事業化するマネタイズの方法としては、ツーリングの友達を購入出来たり、本来なら一定時間待たないと貯まらない燃料を購入できたりといった形を取っている。mixiでの会員数が70万人程度。その中でデイリーにゲームをプレイしているアクティブユーザーは10万人前後なのだそうだ。課金率は全体の1.5~2%程度で、日本ではだいたい2,000円がアベレージとなっている。これがアメリカの場合は1人の平均が1~2ドル、中国では10円~20円というレベルなので、日本はSNSの会員数こそ他よりも少ないが、収益性では優れているという結論になる。

 ただ、ソーシャルゲームを成功させるためにはバイラルの要素が非常に重要ではあるが、実際はかなりのマーケティングプロモーションを合わせて行なわないとユーザーの獲得は難しいという。これをソーシャルゲームが生まれたアメリカで「FarmVille」や「Cafe World」というソーシャルゲームで業界トップを走るZyngaを例に取って紹介した。「FarmVille」は現在おおよそ1日40万人くらいが登録されている。その会員獲得に対して掛けている広告費は1登録で約1.80ドル程度で、12日間のキャンペーンにかけたマーケティング費用は約8億円となる。この大規模な広告費によって、1日1,000万円程度の売り上げを確保しているというわけだ。

 ロックユーアジアはライトなゲームを短期間に大量に投入するという姿勢を取っている。開発費が1,000万円を越えるものはほとんどなく、開発期間も長くて3カ月程度なのだそうだ。これは1本で1000万円の売り上げを出すアプリを作るのは現実には難しいので、100万を売り上げるアプリを10本作るという考え方だそうだ。


予想外の人気を獲得した「RockYou! スピード★レーシング」実は本命アプリだった「Super Pets!」
「RockYou! スピード★レーシング」のバイラリティ要素「RockYou! スピード★レーシング」のマネタイズ要素


 上記でも触れたように、世界のSNSは日本の数倍の会員数を抱えているので、ソーシャルゲームを開発する時に、グローバル展開を視界に入れるのは当然だろう。ただ、特に中国市場への参入にはリスクもある。

「SNSのマーケットとしては凄く魅力的なのですが、壁がかなり多いです。ユーザー数は2012年までには3億までいくだろうと予想されていますが、おそらくもっと伸びるでしょう。アプリのアクティブユーザーも、少し前までは310万人くらいだったのが、今はデイリーで1,000万人くらいになっています。市場規模も7億円弱から400億円くらいに拡大してきています。これはまだまだ伸びる可能性があります。アプリごとの課金率も上がってきていて、中国の方もお金を落とすようになってきました。単価は日本より低いのですが、人口の多さで大きな数字が期待できます」(渡邉氏)。

 そんな魅力のある中国市場だが、渡邉氏は3つのリスク要因を指摘した。

 1つ目は、海賊版の多さ。「facebookで人気のあるアプリなど、だいたい2、3カ月もすると同じようなものが動いています。これは正直な所防ぎようがなくて、コピーされるくらい人気があるんだなと自己満足するしかないです」(渡邉氏)。

 2つ目のリスクは、SNSの提供者との対立。「SNS側もアプリケーションが儲かるということがわかっているので、要は自社で作り始めるのです。オープンソーシャルといいながら、オープンになっているのは技術的な部分だけであって、必ずしもすべてオープンではない。renren.comはまだ誰でも入れるようになっていますが、開心網などに関しては審査があって、なおかつ数年後にはアプリがSNS側のものになるというめちゃくちゃな条件になっていたりするので、そこが今対立のポイントになっています」(渡邉氏)。

 3つ目のリスクは、収益の配分だ。mixiやモバゲータウンでは、デベロッパーが収益の7割、場所を提供しているSNSが3割という配分になっている。「これが中国ではまったく逆で、ひどい所だとデベロッパーが1割だと言われます。人件費が安い中国でも、データセンターを構えようとしたらそれなりのコストがかかるので、それでビジネスになるのかどうかリスキーな部分ではあります」(渡邉氏)。

 ソーシャルアプリは日本ではまだ新しいビジネスだ。アメリカのfacebookなどは課金もすべてデベロッパー側に任せていたので、自由度はあるが、ある程度体力がなければ参入できないという壁もあった。日本やアジアでは、課金や広告の部分をSNSがプログラムとして用意するというシステムを取りつつあるので、比較的参入しやすくなっている部分はあるようだ。最後に「ソーシャルゲームを作れるノウハウとスキルがあれば、好くに出も参入できる、すごくわかりやすいフィールドだと思います。皆さんもぜひご参加いただいて、この業界を盛り上げていければと思っています」(渡邉氏)という挨拶で講演を締めくくった。


東アジアの主要なSNSロックユーアジアのマイルストーン
中国市場の魅力「FarmVille」をサービスしているZyngaの広告戦略


■ 「ブラウザ三国志」をミクシでサービスするための方法論を椎葉氏が講演

「ブラウザ三国志 for Mixi」
QNE-UP株式会社代表取締役の椎葉忠志氏

 QNE-UP株式会社の代表取締役である椎葉忠志氏は「オンラインゲームとソーシャルアプリ」と題した講演を行なった。椎葉氏は、テクモで家庭用ゲームの開発に携わった後、ゲームオンでオンライン事業を手がけ、一介のGMから常務取締役オンライン事業本部長まで上り詰め、運営やユーザーサポートからマーケティングまでオンラインゲーム事業に深い造詣を持っている。ずっとゲーム畑を歩いてきた人間として、椎葉氏はオンラインゲーム事業者から見たソーシャルゲームについて論じた。

 ONE-UPが手がけているソーシャルゲームの「ブラウザ三国志 for Mixi」は、もともとブラウザで遊ぶオンラインゲームとして、ソーシャルアプリは全く視野に入れずに開発された。mixi版は現在会員数が23万、ランキングでは70位くらいで、椎葉氏によると「失敗している部類の数字だと思います」という厳しい自己評価だ。

 「ブラウザ三国志」は、ドイツ発の人気ブラウザ型シミュレーションゲーム「トラビアン」をベースに作られている。椎葉氏は「トラビアン」のトッププレーヤーで「日本語版を見て、これをもっとマネタイズできるなと思ったのです。三国志という名前を使ったことで、客層が狭くなっている部分はありますが、武将をカードにして、コレクションしたり、対戦に使ったりというオンラインゲーム的な味付けをしました。三国志という名前を使ったことで、客層が狭くなっている部分はあります。開発期間は8カ月です」(椎葉氏)。

 当初オンラインゲームとして作られたた「ブラウザ三国志」には、ソーシャルゲームとしての機能がなかった。mixiで公開した直後には、オススメに掲載されたが、それでも5,000~8,000しかユーザーが入って来なかった。その後も1日200程度とまったく会員登録が増えない状態が続く。

 椎葉氏は、ソーシャルアプリの定義を「SNS上にあって、そこにある人間関係を生かして遊ぶアプリケーション」と説明し、そのための主な機能であるInviteとActivity feedを、どのように「ブラウザ三国志」に導入したか、導入したことによって顧客数がどう変化したかをグラフに表した。

 Inviteはその名の通りマイミクを招待する機能だ。facebookの場合は、友達にプレゼントをする機能がたくさんあって、それがそのまま友達を招待することにもつながっている。Activity feedは、mixiでいうと自分のホームページのトップぺージに、ユーザーが何をしたかという情報を出す機能だ。「例えば椎葉さんの街は人口200人に達しましたよ、といった新しい情報を出してあげるのです。これがfacebookだと、その情報にコメントがつけられるのです、さらにバイラルの仕組みが上手くできていると思います」(椎葉氏)

 椎葉氏によれば最も重要なのは、人を誘うInviteの仕組みで、これをどう動かすかがソーシャルアプリの命だと言う。オンラインゲームでも“友達キャンペーン”などで招待する仕組みがあるが、オンラインゲームの場合はアカウントが取り放題なので、1人のユーザーが複数のアカウントで自作自演をしていまうため、キャンペーンがそのまま顧客数の増加につながりにくいという問題がある。ただ、オンラインゲームはユーザーがゲームをプレイし続けるライフタイムが、ソーシャルゲームと比べて長いことと、ユーザー1人当たりの課金金額が1万円平均で多いゲームだと2~3万円になるという利点がある。顧客数と獲得しやすさならソーシャルアプリに軍配が、顧客単価と継続率はオンラインゲームが有利ということになる。

 当初、奮わなかった「ブラウザ三国志 for Mixi」だが、10月にActivity feedを入れたことで瞬間的に新規のユーザー数が3倍に増えた、さらに11月に友達を紹介すると150円ぶんのボーナスをプレゼントするというInviteを実装したところ、1日の登録数が6,000~8,000に増加した。その後再びオススメに掲載された時には、1日10,000人のペースで会員数が伸びていった。いまもデイリーで5,000人程度が新規に入っているのだそうだ。アクティブなユーザー数は、サーバーの管理方法の問題で推定の数字しか出せないが23万人の会員のうち、8万~10万程度になる。

 「ブラウザ三国志」はユーザー同士の対戦があるゲームなので、あまりにもバイラルのボーナスを大きくし過ぎてしまうと、ゲームバランスが狂ってしまうという懸念から、他のソーシャルゲームほどバイラルの仕組みは強くない。それでも、対戦ゲームという人の感情を揺さぶるゲーム性と、いわゆるガチャの要素のため、課金金額は「おそらくトップレベル」(椎葉氏)という高さだ。

椎葉氏のプロフィール「ブラウザ三国志」はドイツの「トラビアン」が下敷きになっている
「ブラウザ三国志」の概要InviteとActivity feedを入れたことで飛躍的に会員数が増加した


 マネタイズについては、「日本で、ソーシャルゲーム事業を興すなら、携帯アプリ以外にはあり得ない」と稲葉氏。Mixiでも、携帯版のページビューは千数百万と伸びているが、PC版は500万程度から微減を続けている。世界市場ではPCのSNSが伸び続けているので、これは日本だけの特徴だ。ただし、どちらも広告モデルでの収益では難しいので、いかに直接課金でお金を使ってもらうかが重要になる。

 「PC版でのサービスを考える場合、ライトユーザーに向けて作るよりは、むしろライトユーザーが去った後にどのように収益を確保するかを考えたい」と椎葉氏。「ライトユーザーは、やはりライトだなということです。mixiアプリでも『脳トレ』とか『えいご漬け』のようなDSでヒットしたものを追いかけているのです。でもDSもライトユーザーを掴んだはずだったけれど、その後、ソフトが売れていない。ライトユーザーは、ゲームを続けるモチベーションが低いので、常に新しいもの、新しい価値観を定常していないといけないのです。ですので、アプリの寿命はすごく短いでしょうね」(椎葉氏)。

 渡邉氏は、ライトなゲームで回転率をよくするというビジネスモデルを提示したが、椎葉氏の考えは真逆だ。ある程度お金と時間を掛けて、しっかりとしたゲームを開発することで、客単価の高いユーザーのライフタイムを長くすれば、ページビューが少ない環境でも生き残っていけるのではないかとという考え方だ。

 ソーシャルアプリの事業計画を作る上で大きな問題になるのがサーバーの数だ。「オンラインビジネスの数字を作るときに、一番シビアなのがサーバーの話です。固定費ですから、本当にユーザーが来るのかという所を凄く追求されます。何千何百万人の会員が集まります、と企画書に書いた場合、じゃあその会員数の場合、同時接続はいくつで、サーバーは何台必要なのだという話になります。この事業計画作成の難しさが、一番のハードルかもしれないですね」(椎葉氏)。だが、ここにも携帯アプリのメリットがある。携帯アプリでは表示する情報量が少ないので、PC版よりも少ないサーバー数で運営することができるからだ。

 「ブラウザ三国志」は、アメリカの東海岸にある仮想サーバーを使っている。短時間に新規のサーバーが立てられたり、サーバー数の増減が容易であるというメリットがあるが、サーバーが不安定で「正直、この事業規模のサービスに全面利用するのはおすすめしません」(椎葉氏)とのこと。サービスは英語で行なわれているので、英語を理解できる優秀なエンジニアを確保しなければならないという問題もある。

 椎葉氏の会社では携帯アプリのサービスは行なっていないので、門外漢から見た感想としながらも「携帯事業は参入している業者が多すぎるように思います。大手のデベロッパーはほとんどすべてサービスを行なっていますし、携帯アプリに強い会社も沢山あります。これから全く新しい会社が参入するのはかなりしんどいようにも思います」(椎葉氏)と言う。また、Mixiなどが用意している、課金のためのAPIについては、「ライトなゲームは課金率が増えるでしょうが、うちのようなゲームにはあまり影響がないので、現在は考えていません」(椎葉氏)としながらも、「ロックユーアジアさんのようにユーザーを沢山持っているメーカーがMixi課金を入れて、みんなが慣れた頃に、その余りをもらいに堂々と入ろうと思っています(笑)」と、将来の可能性を示唆した。

 現在、大手のゲームメーカーではまだ本格的にPC版のソーシャルゲームに参入している所はない。だが、「Mixiアプリは、どんどんゲームらしいゲームを作らないといけない仕様だと思いますので、そこはチャンスではないかと思います」(椎葉氏)とゲームメーカーとしての意気込みを見せた。

オンラインゲームとソーシャルアプリは利益を得るモデルに差がある携帯アプリ市場はライバルが多いが、魅力的な市場でもある



■ 質疑応答では、参入を希望している事業者から質問が飛びかう

講演終了後には、質疑応答が行なわれた

 2つの講演の後は、質疑応答が行なわれ、売れるタイトルをどのように予測しているかといったダイレクトな質問も出ていた。両氏とも、確実にこれは売れるというタイトルをオリジナルで作り出すのは難しいとしながらも、「スピードレーシングが当たった理由を分析して、これから出すアプリにはその要素を上手く取り込んで行くようにしています」(渡邉氏)、「ゲームを企画するときに意識しているのは、アレンジの範囲内ですませることです。意外な成功があったものを、ほかのものにアレンジできないかと考えています」(椎葉氏)とそれぞれの開発の方向性を答えていた。

 アイテム課金を考えているという参加者からは椎葉氏に対して、「売れるアイテムを教えてくれませんか?」というこちらもダイレクトな質問があった。椎葉氏は「繰り返し使うものの売り上げが多いのがアイテム課金の特徴です」と回答。椎葉氏がゲームオン在籍時代に導入した、アイテムを景品にしたくじであるガチャは、今では多くのオンラインゲームで採用されている。このガチャは「ブラウザ三国志 for Mixi」でも収益の柱の1つになっているようだ。

 「既に友達関係にある人間以外とゲーム内でコミュニケーションを取ることは考えていますか?」という質問には、渡邉氏は、友達同士ではない人間がツーリングの条件を満たすためにマイミクになるといった関係については「単純にゲームを次のステージに進ませるためのツールくらいのドライの感覚でしょう」(渡邉氏)と説明、現在の所は今以上にコミュニケーションを図るような仕組みを入れる予定はないそうだ。「ブラウザ三国志」は、一般版の方にユーザーが短い文章を書き込めるTwitterのような一言掲示板を導入したところ「きちんと統計をとったわけではありませんが、離れていくユーザーさんが減ったかなという印象がある」(椎葉氏)とのことだった。他にも質問をしたい人は多くいたが、終了時間が迫っていたので、質疑応答は4問で終了した。

 ソーシャルゲームは日本ではまだ黎明期といっていい時期で、これからの延びしろの期待が持てるジャンルだ。ゲーム業界の中でもクラウド化の流れは、2009年の当初からずっと言われてきたことだが、それがソーシャルゲームとしていよいよ本格的にユーザーの前に姿を現してきたことになる。実際参加者の多くは、事業への参入を考えている業者で、こういった講演の結果が来年、再来年に形として表れて来ることになるだろう。


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(2009年 12月 15日)

[Reported by 石井聡]