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新世代CSのβテストがついにスタート!!
Sourceエンジン採用でどう生まれ変わったのか!?

Counter-Strike: Source

  • ジャンル:アクションシューティング
  • 開発元:Valve Software
  • 価格:未定
  • 対応OS:Windows 98/Me/2000/XP
  • 発売日:未定(βテスト中)


 今年のE3において、Valveが電撃発表した「Counter-Strike: Source(CSS)」のβテストがついに始まった。今回のベータテスト対象者は、「Half-Life 2」の購入チケット(RADEON 9800Proなどのビデオカードに同梱)を持っている人か「Counter-Strike Condition Zero」の所有者となっており、登録さえすれば誰でもベータテストに参加できるというわけではない。本稿ではCSSがβバージョンにおいてどのようなゲームになっているのか、そして将来的な展望について話を進めていきたいと思う。


■ 「Counter-Strike: Source」に引き継がれたものは

 CSSの話に移る前に、「Counter-Strike」を知らない読者のためにそのゲーム内容に簡単に触れておこう。「Counter-Strike」は今から5年前、ユーザー有志が開発する、「Half-Life」のMOD(Modificationの略。ゲームを改造するプログラム全般を指す)としてデビューしたマルチプレイ専用のFPSだ。プレーヤーは、特殊部隊(Counter-Terrorist)とTerroristという2チームに別れ、人質救出や規定エリアの爆破といったマップごとに設定された目標を巡って戦うことになる。

 当時としては画期的な「現実に存在する銃器がゲームの中に登場する」、「弾の当たり所が悪ければ一発で死亡する」、「チーム単位での対戦を前提として作られたゲームシステム」、「報奨金システムによってゲームスタート前に武器を購入する」といった現在のFPSのあらかたが搭載しているフューチャーをいち早く導入していた。このこともあって、「Counter-Strike」は瞬く間にそのユーザー数を増やしていき、「Half-Life」の開発元であるValve Softwareによってメンバーごと買い上げられ、Valve Softwareの正式なタイトルの1つとして発表され今に至るわけである。

 ちなみに、「Counter-Strike」の続編としてリリースされた「Counter-Strike Condition Zero」は、BOTと呼ばれるAIが追加されたことで1人でも「Counter-Strike」をプレイできるという言わば初心者向けのタイトルだったために、プレイ人口はあまり多くない。実際多くのプレーヤーが遊んでいるのは未だに「Counter-Strike」という状況なのである。

 実際のCSSのβテストプログラムの内容だが、「Counter-Strike」で遊べるゲーム内容と一切変わらない。AK47やM4といった銃器類、GSG9やGIGINといったキャラクタ、報奨金と武器購入というゲームシステム、すべてが「Counter-Strike」からそのまま変わっていない。

 そして、今回のβテストで遊ぶことができるのは、Counter-Strikeと同じくインターネット経由でのマルチプレイゲームだけだ。また、βテストということで実際に遊べるマップは、Counter-Strikeの初期からあるde_dustという爆弾設置マップ1つだけとなっている。

【Counter-Strike】
「Counter-Strike」でマップde_dustを遊んでいる風景。5年たった今でも稼働サーバー数世界一位を誇る人気タイトルだが、さすがにグラフィックスの古さは否めない。CSSの登場はある意味歴史の必然といえるだろう

【Counter-Strike Condition Zero】
昨年リリースされた「Counter-Strike Condition Zero」でde_dustを遊んでみる。武器モデルやキャラクタモデルが若干細かくなっているほか、BOTと呼ばれるAIプログラムが人間らしい動きをすることがウリ

【Counter-Strike: Source】
そして「Counter-Strike: Source」のde_dustの様子。キャラクタモデルや武器モデルが「Counter-Strike Condition Zero」よりも細かくなっているのがわかるだろう。また、de_dustも若干のリファインが加えられ、マップ各所に置かれている遮蔽物などの位置が異なってきている。また、ゲーム自体には関係ないが2バイト文字が使えるようになったのもCSSの特徴のひとつ

 ちなみに現在のところValve SoftwareからはCSSの将来的なシステム実装プランなどは発表されておらず、将来的に正式バージョンがどうなるのかというのは未だ不透明になっている。従ってCSSのポテンシャルは、今回のβプログラムから予測するしかないが、プランが発表されていない状態でβに突入したと言うことは、基本的なゲームシステムは「Counter-Strike」とそれほど変わらないゲームだと判断して良さそうだ。

 また、CSSの「Counter-Strike」からの数少ない変更点を挙げるとすれば、「Counter-Strike Condition Zero」と同様にキャラクタが各種グレネードを持って死んだ場合はこれを拾って使うことができる点。もう1つは「Counter-Strike」や「Counter-Strike Condition Zero」で不評だった盾(RiotShield)が消えたことぐらいだ。しかし、RiotShieldはもともとあまり使われていなかったので大きな影響はないともいえる。

 「Counter-Strike」から劇的に変わった唯一の部分を挙げるとすれば、FlashBangの効果だけだ。「Counter-Strike」ではFlashBangを食らうと画面が真っ白になるだけだったのだが、CSSのFlashBangは音まで完全に聞こえなくなる。また、食らってからしばらく立つと周囲がだんだんと見えてくるのだが、周囲の景色が残像のようにしばらく残る。「Counter-Strike」のFlashBangと比べて効果範囲、影響時間ともに強力になっている。

【FlashBang】
FlashBangを食らうと画面全体が真っ白になり、耳がキーンとなって音が聞こえなくなる。その後、5秒ほどの時間をおいてしだいに視力が回復してくるが、しばらくは視界に残像が残る


■ Sourceエンジン採用によって「Counter-Strike」はどう生まれ変わったか!?

破壊可能なオブジェクトも登場する。しかし、正確な物理パラメータを与えているわけではないので、穴を開けたり、へこませたりといったことはできない
 CSSの注目すべきポイントは、なんと言ってもCSSが「Half-Life 2」で使われているSourceエンジンで稼働しているところだろう。しかし、本家本筋の「Half-Life 2」は、延期に延期を重ねて未だに発売どころか、発売時期すら不明瞭な状態が続いている。

 CSSの方が先にβテストが始まるというのは、我々CSファンにとっては大変嬉しい誤算だったが、CSSはインターネット経由でのマルチ対戦がメインのゲームだ。シングルプレイがメインの「Half-Life 2」と比べてバランス調整に時間が掛かることを換算に入れればCSSが先行したのはある意味妥当と言えるかもしれない。

 では、CSSでは3D系のエンジンが刷新されたことでどのような点に変化が見られるのだろう。Sourceエンジンに関しては「3Dゲームファンのための『Half-Life 2』エンジン講座(前後編)」を参照してもらった方が早いが、注目すべき点はおおむね以下の要素だ。

・Havokエンジンを独自拡張した物理エンジンによるオブジェクトのリアルな挙動
・高解像度、高ポリゴンによるグラフィックスの強化
・HDR(High Dynamic Range)レンダリングによるレンズフレア等の光学表現

 大きな点はこの3つだ。では3つの注目点に関しては写真を見ながら説明をしていこう。

 まずは物理演算によるオブジェクトの挙動について。βテストでは1マップのみということもあって、物理演算処理がゲームそのものに大きな影響を及ぼすというケースはまだ見られない。また、「Half-Life 2」のリアルタイムデモで注目されたオブジェクトの重量、材質、強度といった物理パラメータの設定は最小限に留められている。

 CSSでの稼働オブジェクトは、マップ内に散らばっている空きビンやレンガ、ドラム缶といったところ。今後の稼働オブジェクト類の充実に期待したいところだ。

左の写真に写っている空きビンに向けて銃を撃ってみる。物理パラメータの設定は重量のみなので、空きビンは割れずに弾け飛ぶ

各オブジェクトには重量属性が与えられている。そのため空きビンやペットボトルのような軽い物と、エンジンや車軸のような重い物では動き方が違う

FlagGranade(Counter-StrikeではHE)を空きビンの固まりに投げつければ爆発地点から放射状に空きビンが飛び散る。写真では爆風が壁に反射し、壁を起点として放射状にビンが飛んでいる

手前側のドラム缶を撃つとドラム缶は倒れるが、奥側のドラム缶をそのまま巻き込んで3個とも倒れ込む。ただし、これらのドラム缶を上から落として、下にいる敵にダメージを与えるといったことはできない

物理演算の一例。坂の上で転がしたドラム缶は次第に坂の下へと転がっていくが、斜めに転がったため壁に激突するという一連の流れを見ることができる

 つぎにレンダリングエンジンが変わった事による画面描写の変更だ。CSSでは全体的に見てテクスチャの解像度が細かくなった事に加え、オブジェクトのポリゴン数が増えている。しかし、細かいバージョンアップを重ねたとはいえ5年も前の「Half-Life」エンジンをベースにしていた「Counter-Strike」と比べて、CSSの画像がよくなっているのは当たり前のこと。

 グレードとしてはEAの「Battlefield: Vietnam」と同レベルで、本家本元の「Half-Life 2」とは比べるまでもない。「DOOM 3」や「FarCry」が発売された今となっては、グラフィックス面での衝撃はほとんどないといっていい。

【Counter-Strike】 【CSS】
「Counter-Strike」のde_dust(左)とCSSのde_dust(右)、同じ位置からスクリーンショットを取ってみた。その違いは一目瞭然だが、配置されたオブジェクトなどが若干違うものの、マップ構造自体はまったく変わっていないことがわかる

 それよりも注目したいのはHDRレンダリングによる光の処理だろう。HDRレンダリングは、簡単に言ってしまえば「人間の目が感じるのと同じような処理をレンダリング結果に反映させる」方法。CSSでは以下の写真のような部分でHDRレンダリングが使われているのを確認できる。

白っぽい壁や床に間近でFlashLightを当てると、「Counter-Strike」(左の画面)では光りが当たっている部分が若干白くなるだけなのだが、CSS(右の画面)では光が当たった部分が白飛び(サチュレーション)を起こして真っ白になっている

暗闇に光が差し込む形になるドーム内では、舞うホコリが窓からの光を反射して周囲がきらきらと光り、プレーヤーに空気感を感じさせる。また、ホコリが光る場所と光らない場所が窓からの光の差し込み位置で分かれているのを見ることができる

現状で唯一HDRレンダリングの効果がゲームに影響を及ぼすのが、太陽を背にした場合。陽光を背にして上から下を狙うという限定的な状況でしか発生しないが、de_aztecの橋などがシチュエーションとして考えられそうだ


■ CSSはまだまだ発展途上、今後のバージョンアップに期待

 さて、実際にCSSを遊んでみての印象だが「3Dエンジンが変わっただけ」という印象しかなく、「Counter-Strike」をそのまま遊んでいるような印象を強く持った。というのも、マップ自体が「CSSの為につくられたマップ」ではなく「Counter-Strike」で使われたマップのリファインなので、そう感じてしまうのも仕方がないところ。プレイ感覚も大きくは変わらないので、焦ってベータテストに参加するほどの意味はないといえる。

 物理演算によるオブジェクトの物理挙動もHDRレンダリングによる光学描写も、あまりゲーム自体に関わってはいないのも残念な点だ。せめてHDRレンダリングに関してはもう少しゲーム要素に絡んで欲しかったのが正直なところ。たとえば、太陽で起こっていたまぶしさの要素をフラッシュライトにも適用し、フラッシュライトを敵の顔に向けたら目が眩んで一瞬景色が見えなくなるとか、暗いところから明るいところへ出る場合に一気に走り込むと、景色が白んで見えるとかそういう部分にも反映して欲しかったところだ。

 ちなみに「Counter-Strike」が世界でもっともプレイ人口の多い化け物FPSというのは周知の事実だが、3Dエンジン自体は5年前の物と言うことで、グラフィックス周りなどにガタが来ている感は否めない。しかし、多くのユーザーが遊んでいるということもあって、プレーヤーは「Counter-Strike」から離れないと言う状況が続いている。そこでValve Softwareとしてはユーザーを「Counter-Strike」からCSSに移行させたいのが本音だが、そのためにはCSSが「Counter-Strike」と比べてあらゆる面で優れたタイトルでなければならない。

 こうしたことからCSSは新要素をあまり一気に追加せず、「Counter-Strike」がSourceエンジン上で快適に動作することを重視してベータテストを進めているのだろう。物理エンジンやHDRレンダリングといった要素の演出が控えめなのもユーザーがある程度移行してからでいいだろうというスタンスなのだと推測される。そういう意味ではCSSはその全貌の半分も見せていないのだろう。

 現状クローズドβテストを実施しているCSSだが、半年、1年後、どういった形で化けるかはいまだ未知数だ。今後、ある一定の時期が来たらValve SoftwareはSteamを使ってCounter-Strikeのユーザーを強制的にCSSへと移行させるだろう。そのとき、ユーザーが残るかどうかは今のβテストの結果次第と言うことだ。

ちなみにSourceエンジンがどれぐらいのパフォーマンスをたたき出せるか実験できるよう、ビデオストレステストも同梱されている。要するにベンチマークテストであり、一定のマップを回って平均FPS値を出してくれる

(C) 2004 Valve Corporation. All rights reserved. Counter-Strike, the Counter-Strike logo, Valve, the Valve logo,Steam, the Steam logo, and Half-Life are trademarks or registered trademarks of Valve Corporation.


□「Counter-Strike」の公式ページ
http://www.counter-strike.net/
□関連情報
【7月21日】本日到着! DEMO & PATCH「Counter-Strike: Source」E3 Movie
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20040721/demo0721.htm
【5月14日】Valve、「Half-Life 2」エンジン版のカウンターストライクを公開!
「E3」2年生の「Half-Life 2」は新作映像をたっぷり公開
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20040514/valve.htm

(2004年8月30日)

[Reported by Tyokuta@ukeru.net]


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