「ポスタル」と言えば、その極端な残虐表現から惨憺たる評価を受け、それが逆に話題となったゲームだ。日本でも知名度は高く、前作である「ポスタル」の拡張パックでは秋葉原を舞台にしたマップも登場したほどだ。 「ポスタル」の続編である「ポスタル2」は、昨年の4月に発売され、さらにパワーアップした残虐表現やブラックユーモア、クォータービューからFPSへと変更されたゲームシステムなどに注目が集まった。その後、ファンからの根強い声援に応える形で発売されたのが、今回紹介する拡張キット「ポスタル2 ウィークエンド」だ。マルチプレイ機能を追加した「ポスタル2 パワーアップキット1」に続く、2本目の拡張キットとなる。この拡張キットを導入することで、題名の通り、土曜日と日曜日の週末2日間のミッションが追加され、10種類以上に及ぶお使いをこなす事ができる。
■ 残虐ゲームの最高峰と謳われた「ポスタル」の続編「ポスタル2」ってどういうゲームだ?
プレーヤーであるポスタル・デュードには、1日ごとに「お使い」が与えられる。たとえば月曜日ならば「牛乳を買って、仕事先から給料をもらってこい」というものだ。一応の目標はこのお使いを淡々とこなせばいいのだが、現実はそう簡単に運ばない。 お使い先のスーパーや図書館で長時間無駄に並ばされたり、町には通行の邪魔となるのも考えずによく意味もわからない事を抗議しているデモ隊や、点数稼ぎだけ考え誰かを捕まえようと必死な警察官などがあふれている。ポスタル2の舞台となる街「アリゾナ州パラダイス」は、そういった日々の生活においてどうにもストレスがたまってしまうような行為が盛りだくさんな街なのだ。 日常生活であれば「それもしょうがない」と我慢するしかないのだが、そこは、あくまで「ポスタル」であり「ゲーム」である。何も現実世界と同じようにストレスをため込むんでまで我慢する必要はない。わざわざ並ぶのが面倒ならば、並んでる奴等を排除してしまう。これが「ポスタル」世界での基本的な行動力学だ。
キリスト教の教会におしかけてくるビン・ラディン似のテロリストグループや、デモを起こす事で自己の欲求を満たそうとしている偽善者団体、町中でむやみに騒いでいる奴らなど、プレーヤーが気にくわないと思ったら、あらゆる銃火器をつかって殲滅してしまう。月曜日~金曜日までストレスが溜まりつづけるようなお使いをするぐらいならば、「その根源が無ければいいんだろう?」といわんばかりの暴力的なストレス発散をゲーム上で表現している。
初代ポスタルで多くの注目を集めた「ブラスバンドの行進に火炎瓶を投げ込み、あっというまに人の形をした黒焦げの物体を出現させる」といった残虐シーンも「ポスタル2」では3Dで再現。「ポスタル2」では体が炎上しながら右往左往している市民が他の市民と接触して火が燃え移り、大被害へと発展していく。助かる事も無く焼死してしまい、あたりには焼死した亡骸が転がっているという状況にもなるといった具合だ。3Dになったことにより、視点は1人称視点に変更され、よりゲームへの没入度も向上している。 また、ブラックユーモアが全面に押し出されているのも「ポスタル2」のウリだ。図書館の爆弾についての著書が並んでいる所には国際テロ組織アルカーイダの指導者にそっくりな人物が立ち読みをしていたり、「シム・ホームレス(Sym Homeless)」といったゲームのポスターが張ってあったりと、普通のゲームでは考えられないようなネタが多く仕込まれているのも「ポスタル2」の売りだ。これを探すのも面白いだろう。 しかし、発売当初はそのあまりに狙いすぎた残虐表現と、ゲーム中のローディングの多さにその評価は分かれていた。また、最近のFPSのゲームにしては珍しく、「ポスタル2」にはマルチプレイが実装されていなかったのも評判が芳しくなかった原因のひとつだ。 結局、発売当初からあがっていたマルチプレイで遊びたいというファンの要望に答え、最初の拡張キット「ポスタル2 パワーアップキット」が発売された。パワーアップキットは、ゲームモードはデスマッチ、チームデスマッチといったマルチプレイでは必須のゲームモード以外に、チームに分かれたポスタルベイブ(セクシーなポスタル特製コスチュームに身を包んだ女性)を奪い合う「スナッチモード」、マップ上に置かれたお金を拾い集める「グラブモード」などを追加する。また、この拡張キットを導入する事により英語音声で作成されていた本編を日本語音声化する事が可能となる。英語版では内容がいまいち解らなかったプレーヤーにもこれで安心して遊ぶことができるパワーアップキットであった。
■ ついに土曜日と日曜日の「お使い」が追加! ポスタルに休みはないのか!?
また日本語版では、テキストの日本語化に加え、週末用に新たに280以上もの音声をすべて日本語化し搭載しているのも特徴のひとつだ。ポスタル・デュードを含め、町のありとあらゆる人物が日本語でしゃべることになる。たとえば、ポスタルならば「今日は殺すのに良い日だ」と日本語でしゃべるといった具合だ。シナリオ部分だけでなく、街角ではくだらない冗談を言い合ってる若い女性などの会話も日本語音声なら問題なく理解する事ができる。これならば、英語では解りにくかったポスタル独特のブラックジョークの世界を存分に楽しむ事ができるだろう。 今回の拡張キットでは、オリジナル版の5日間を終え、頭部に重症(前作のラストで撃たれたのだが)を負って入院したポスタル・デュードが、病院のベッドから目が冷めるところから始まる。置いてあるお見舞いカードなどをみると、借金の滞納により生活の場としてきたトレイラーが没収され、愛犬チャンプも動物収容所で風前の灯。妻は姿を消してしまい、ポスタルは無一文という状況に追い込まれてしまった。 ここから「寝てる場合じゃない」ということで、ベッドから腰をあげたポスタルの大暴れが始まるわけだ。しかし、ここで大問題なのが頭部の怪我のためか、ポスタルが精神的発作を起こしてしまうというゲームシステム。発作を起こしたポスタルの眼から見える世界は、一般的な感性から考えれば「異様な」という言葉がぴったりくる様相で見えてしまう。 たとえば、病院を抜けるとポスタルはしきりに「腹が減ったレストランで食事をしたいぜ」と主張する(これが「お使い」のきっかけとなるわけだ)。そこで、腹を満たすために中華レストランで食事をするのだが、冒頭のムービーシーンからかなりぶっ飛んだ展開になっている。 店に着いたポスタルが、店員に「イギリス産の牛肉じゃないだろうな?」といきなりブラックジョークをかますと、厨房の中から狂牛病にやられた店員がいきなり襲ってくるのだ。おそらく店員は普通に注文を聞いたりしているだけなのだろうが、ポスタルの世界ではほとんどゾンビみたいな店員が襲ってくるように“見える”わけだ。しかし、こんなのはポスタルにとっては序の口。動物実験用に確保された猫が、反乱を起こして病院中の職員を襲っているなど、メチャクチャな世界がモニターの中には存在している。 ポスタルの行動のきっかけとなる「お使い」の内容も独特だ。たとえば、狂牛病の蔓延を防ぐために牛を処分してくれと依頼され、スレッジハンマーで牛を処分(すでにこの時点で何かがおかしい)をしていると、これに過剰反応した動物保護団体がポスタルに対してライフルなどでいきなり攻撃してくる。 「ポスタル2」のゴールド版ディスク(完成し、プレス待ち状態のディスクの事)を隠し持っている悪徳社長から取り戻してきたりなど、オリジナル版に負けないブラックユーモアあふれるなネタが大量につまっている。筆者が特に衝撃をうけたのは、街中をウロウロしている軍人が一般人を射殺して、落としたお金を懐にしまいこんで何も無かったかのように立ち去るという演出。さすがのブラックユーモアも、ここまで来ると閉口して何ともいえないレベルに到達している。 これでこそポスタルシリーズなのだと納得するのか、やりすぎだと思うのかはプレーヤーの受け取り方しだいだが、ゲーム内に描かれるブラックユーモアを全部正面から受け止めていたら遊べたものではない。ジョークはジョークとして、おおらかな気分でプレイするのが正解だろう。 さて、今回の拡張キットでは3つの武器が新たに追加されている。1つ目はブーメランマシトエという、刀にブーメランの機能がついたような武器。襲ってくる人たちの体の節々を切断するのは当然として、これを投げつけると相手をバッサバッサと切り倒し、その名の通りに手元に戻ってくる便利な武器だ。 2つ目はスレッジハンマー(鍛冶用の大型ハンマー)。使用用途を説明する必要は今更無いと思われるが、ありとあらゆる頭部を粉砕する武器で、狂牛を処分するのもこのスレッジハンマーを1度振り下ろすだけで済む。
3つ目はサイスと呼ばれる大鎌。これはイメージとしては死神が持っているあの大きな鎌と言って良いだろう。一振りするだけでありとあらゆるモノを一刀両断することが可能。追加ストーリーのほうに目が行ってしまいがちな拡張パックだが、お使いを達成するために追加された、これら3つのトンデモ武器を使いこなすのも拡張パックの楽しみだろう。
■ ウィークエンド冒頭のステージを紹介。ポスタルが眼をさますと、病院は阿鼻叫喚の世界になっていた!? それでは以下、ウィークエンド冒頭の病院ステージを紹介していきたい。ここでの目的は、金を得て病院から退院することだ。金が得られるかどうかは別として、退院するだけなら普通にいけるはずなのだが、一筋縄ではいかないのがさすが「ポスタル」といったところ。ちなみに冒頭ステージと言うことで、まだまだ残虐度もブラックユーモア度にも手加減が感じられるが、「ポスタル2」独特のストーリーが破綻しまくっているゲーム内世界を少しでもわかっていただければ幸いだ。
■ ブラックジョークが好きな人のための成人向けタイトル 今回の拡張パックではゲーム性という部分でも改良が施されている。「ポスタル2」では、新しいエリアに移るたびに長いローディングが発生していた。ステージの設計上、短時間に複数のエリアをまたぐケースも多いため、このローディングの多さには、多くの人が煩わしさや苦痛を感じたことだろう。筆者もローディングが頻繁に起こりすぎるために、最後までプレイする意欲が削がれたほどだ。しかし、今回紹介している2日間のシナリオではロードの回数が激減したうえにロード時間が短縮化され、ストレスを感じる事が格段に少なくなった。これにより煩わしさは無くなり、サクサクとプレーする事が可能になったのはうれしい変更点だ。 ちなみに気になった点として、1,024×768ドットという標準的な解像度でプレイをしていると、敵の数が多かったり、エフェクトが多くなったりすると処理落ちが酷くなり、体感FPSは10台まで下がる現象がしばしば見られた。処理落ちを気にするプレーヤーには若干辛いかもしれないだろう。 また、途中でゲーム中にしばしばプリレンダームービーが流れるのだが、そのシーンが英語のみなのも残念な点だ。非常に面白いシーンだったのでせめて字幕があれば多くの人が楽しめたはずだ。また、音声日本語化に伴いセリフが大元の英語版より長くなってしまい、セリフが中途半端に切れてしまうシーンがあったのも気になる。加えて日本語のセリフの多くに棒読みと感じられる所があり、英語版の渋さが感じられないのも残念な点であった。 さて、今回の拡張パックだが、オリジナルの「ポスタル2」だけでは遊び足りないと感じたプレーヤーにとっては、文句なしにお勧めできる内容だ。だが、残酷描写の過激度が上がった事も考慮に入れておく事が必要だろう。今回の拡張パック以前に発売された「ポスタル2 パワーアップキット1」が導入されていない場合は、週末の2日間しか日本語音声にならない。月曜からの5日間を日本語音声で楽しみたい方は「ポスタル2 パワーアップキット1」を別途、購入する必要がある。最後に、同作は18歳以上のモラルのあるゲーマーに遊んでいただきたいと、プレイしたものとして書いておきたい。
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□マイクロマウスのホームページ http://www.micromouse.co.jp/ □「ポスタル2 ウィークエンド」の公式ページ http://www.micromouse.co.jp/wgame/Postal2-WeekEnd/Postal2-WeekEnd.htm □関連情報 【2003年5月6日】本日到着! DEMO & PATCH 「Postal 2」Playable Demo http://game.watch.impress.co.jp/docs/20030415/demo0415.htm 【2003年12月10日】本日到着! DEMO & PATCH 「Postal 2: Share The Pain」Playable Demo http://game.watch.impress.co.jp/docs/20031210/demo1210.htm (2004年6月18日)
[Reported by BRZRK@ukeru.net]
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