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【連載第136回】 あの、おもちゃを徹底レポート




エネルギーの原理を理解できるアメリカの実験キット
Thames & Kosmos「Fuel Cell Car & Experiment Kit」

「Fuel Cell Car & Experiment Kit」
発売 Thames & Kosmos
価格 99.72ドル
発売日 発売中 (米ラスベガスにて購入)



 エレクトロニクスを使ったトイ“e-toy”をレポートする当連載。日本国内はもちろんのこと、海外のトイにも目を光らせている。筆者自身に加え、本誌編集スタッフが海外に出かけた際は、トイショップを丹念に周り、おそらく日本では発売されそうにない奇抜なアイテムを中心に購入し、これまでもレポートしてきた。

 今回紹介するのは、本誌スタッフがアメリカに行った折に購入してくれたトイ。アメリカンテイスト全開の大きなパッケージに、これは楽しそうだと遊び始めてみたが、その中身は予想とは大きく違って……。その実態は、これからくわしく述べていこう。


ソーラーカーを組み立ててみる

 パッケージに「Fuel Cell Car & Experiment Kit」と大きく書かれている。これがタイトルなのだろう。直訳すれば、「燃料、電池、車と実験キット」となる。クリアボディの車の写真が掲載されていることから、この車にいずれかの燃料や電池を与えて走れるようになるのだろう、と想像した。しかし、重要なのは「Fuel」でも「Cell」でもなく、「Experiment Kit」だということに気づいたのは、もっと後のことだった……。

パッケージ。アメリカ性らしく豪快さの感じられるデザインだ

 パッケージから中箱を取り出す。同時にマニュアルもポロリと外に出たが、このときは気にも留めず、パーツ類のチェックに取り掛かった。パッケージに掲載されているクリアボディの自動車。そのタイヤ。太陽光線を受けるソーラーパネル。テスター。そして注射器。えっ、ちゅうしゃき?マニュアルに軽く目を通すと、かなりの好印象。サイズはB4サイズと大きく、掲載されているイラストも文字の印刷具合もとても美しく、高品位な印象を受けた。ページ数はなんと100ページ近くある。

発泡スチロール製の中箱にところせましとパーツが埋め込まれている 核となる自動車のボディ。シンプルなクリアボディだ タイヤを設置し、配線を行なうと、グッと雰囲気が出た
ソーラーパネル。太陽光はもちろん、室内の明かりも感知する ソーラーカーのひとまずの完成形 注射器。針は付いていないが本格的なものだ
ん、これらは何に使うのか……。中には純然たるフラスコもある

 マニュアルの手順に沿って、組立作業を開始する。まずはテスターの組み立て。テスターに赤と黒のケーブルを差し込めば、オーケーという簡単なもの。テスター本体の中央にあるダイヤルを回し、ケーブルの先端を乾電池のプラスとマイナスの端子に合わせると、反応があった! モノクロ液晶パネルに4桁の数値が表示され、めまぐるしく動いている。確かに乾電池の電力を感知しているようだ。子どもの頃に行なった理科の実験を彷彿とさせ、新鮮な気分だ。

 次に自動車の組み立てを行なう。まずは前輪と後輪をはめこみ、次に透明のボンベのようなものを本体の後部にセッティング。そして最後にソーラーパネルを取り付ける。見渡すと、いかにもソーラーカーの風格があり、ワクワクしてくる。太陽に当てると、走り出すのかな?


ソーラーパネルが太陽光の強弱を見事に感知した

 今度は、自動車に先ほどのテスターをセッティングする。マニュアルにはこの状態で太陽を浴びせるようにと書いてあるので、その通りにする。仕事場のベランダに出て、春の兆しのある暖かな太陽光に、自動車をかざす。ソーラーパネルは可動式で、角度を変えて太陽光を大量に浴びるようにしたり、少めにしたり調整できるようになっている。まずは太陽光がソーラーパネルに乱反射してまぶしいくらいになるように調整。すると、接続しているテスターが激しい反応を示した。次に、ソーラーパネルが影になるように傾けると、テスター上の数字は“0”に近くなった。太陽光線の強弱までを正しく感知しているようだ。

 と、ここで気が付いた。あれ、この自動車、太陽光線をいっぱいに浴びているのに、タイヤは少しも動いていない。これって、ソーラーカーじゃなかったの? ひょっとしたら、筆者の組み立てがおかしいのかと思い、マニュアルを再度読み込んで、これまでの組立作業に誤りがないか、チェックしてみる。ふむふむ、何もないようだ。もう一度ベランダに出て太陽光線を浴びせてみたが、車輪はうんともすんとも動かない。これはマニュアルを深く読み込む必要があるようだ。

テスターで乾電池の残量を調べる。懐かしくて、ちょっと楽しい ソーラーカーに太陽光を浴びせて光量を計測する


100ページの分厚いマニュアルに目を通すと……。

 さきほども書いたが、マニュアルは100ページもある長大なもの。しかも1ページに文章がぎっしりと書き込まれている。さらにいうまでもないが、英語だ。多少の英文なら解読できる能力を持っているが、これは大変だ。しかし、読まないとどうにも先に進まないので、意を決して読んでみる。

 巻頭のグラビアは、ゴミ処理場や原子力発電所、風力発電に太陽熱発電の模様を活写。現代社会のエネルギー源を解説している。

 さらに読み進めると、分子の解説が始まった。この辺から使われてる言葉も難しくなってきた。それでもがんばって読み進めると……わかった、わかりました。これ、トイでも何でもありませんでした。純然たる実験キットでした。なるほど、だから「Experiment Kit」なのか、だから注射器が入っているのか。水に電気を通し、酸素を抽出し……と私たちが小学校高学年から中学生にかけて勉強する30種類の内容をひとまとめに体験できるキットなのでした。それらをすべて体験するには100ページの英語のマニュアルを完璧に読みこなし、さらに実験の結果を記録していく必要があるので、今回のレポートはここで打ち止め!

 かのアメリカでは、こんな真面目なアイテムがトイショップに売られていることがわかったのは収穫ではありました。

マニュアルの誌面。詰め込まれた文字とイラストを読み進めると、エネルギーの発生とその働きを実験する、真面目な科学キットであることがわかる


□Thames & Kosmosのホームページ
http://www.thamesandkosmos.com/
□製品情報
http://www.thamesandkosmos.com/products/fuelcell/fc1.html


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(2004年2月26日)

[Reported by 元宮秀介]


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