右手で弦を弾くだけで曲を奏でられるお気楽楽器 ピープル「持ったときから、弾ける、唄える。」
「持ったときから、弾ける、唄える。」 |
発売 |
ピープル |
価格 |
17,800円 |
電源 |
アルカリ単3電池×4(別売) |
発売日 |
発売中 |
「ミュージシャンのようにギターをかき鳴らして、歌を歌えたらいいなあ」と夢想している人は多いだろう。筆者もそのひとりだ。なんというか、実に気持ちよさそうなのである。あんなふうに自在にメロディを奏でて大声を張り上げたら、日々のストレスなどすぐに消えてなくなりそうだ。
だけど、楽器は習得するのが難しい。時間もかかる。そんなこんなを理由に、なかなか実行に移せていない筆者たちのような“楽器弾きたい組”をターゲットにしたアイテムがある。それが今回紹介する「持ったときから、弾ける、唄える。」だ。
いきなりだが、このアイテムの商品名「持ったときから、弾ける、唄える。」は、タイトルにしては長く、妙な印象がある。しかも、その中心となる機器の名前が、楽器と書いて「らっき」と読むんだそうである。真面目なのかふざけているのか、いまいちわかりにくい。
しかし、この大胆なネーミングにこそ、このアイテムの真価が隠されている。なんと「誰でも楽に本格的な楽器演奏を楽しめる」アイテムなのだという。それを表したのが「持ったときから、弾ける、唄える。」というタイトルであり、「らっき」という楽器名なのか。なるほど。技術協力には、かのヤマハがクレジットされている。うん、これはひょっとしたら、筆者が待ちわびていたアイテムかもしれない!
■ ながめるだけですべての機能がわかる親切志向
「持ったときから、弾ける、唄える。」をプレイするには、本体と楽曲のデータが入った対応カートリッジが最低1本必要となる。対応カートリッジは現在14種類発売されている。「アイドルセレクション」、「熱唱! 男性アーティストセレクション」、「グループサウンズベストセレクション」、「演歌の花道」……とバラエティに富んだラインナップに感心させられる。筆者は、なかから「洋楽スタンダードナンバーVol.1」をチョイス。ビートルズの「Let It Be」や、BEN E.KINGの「Stand By Me」、カーペンターズの「Top Of The World」など、特に日本人に愛されている楽曲がセレクトされている。
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対応カートリッジの一式。歌詞&コード表も付いてくる |
カートリッジのサイズは、ゲームボーイアドバンス用と比べると、ひと周りほど大きい |
箱から取り出した「らっき」は、オリジナリティを感じさせるデザインだ。ギターのスタイルを基本としながらも、琵琶のように丸みを帯びている。ボディはブルーのスケルトンと今風だが、「らっき組」と筆文字で書かれた千社札が貼られている。ひと言では形容しづらいテイストなのだが、「型にはまるな」というメッセージが込められている……気がする。
「らっき」本体をさらにくわしくチェックしていく。弦は6本。指で軽くつまはじいてみると、しっかりした手応え。玩具のギターにある安っぽさは感じさせない。これは期待ができそうだ。弦の横にはスピーカーと電源スイッチ、そしてボリュームスイッチが付いている。
続いてネックを見てみる。スタートボタンの横に並ぶのは、「曲選択」、「音色選択」、「リズム選択」の各種ボタン。さらにその付近にはジョグダイヤルも付いており、これを回転させて、曲や音色、そしてリズムを選択するのだな、とわかった。
ネックを見てみると、たくさんのボタンが付いている。「C」、「D」、「E」、「G」などと書かれており、なるほど、それぞれのコードをひとつのボタンに集約して、これを押しながら弦を弾くと、演奏ができるというわけか。ネックの側面には、さらに「♯」や「♭」などのボタンもあり、複数のボタンを同時に押すことで、「F♯」や「Dm7」などの複雑なコードも鳴らせるようになっているようだ。
こんなふうに本体をざっと眺めるだけで、それぞれのスイッチやボタンの機能と使い方が判明してしまった。これならタイトルの「持ったときから、弾ける、唄える。」は、伊達ではなさそうだ。
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ギターというよりも琵琶に近い。だから千社札が貼ってあるのだろうか |
弦にご注目を。ラインが太く、少々乱暴に弾いても柔軟に対応し、厚い音を出す |
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ネックにはコードが簡略化されたボタンにくわえ、テンポやキーを変えるスイッチが付いている |
ネックの上部にもコードボタンが付いており、「D♯m7」のような複雑なコードはこれらを使う |
■ 気持ちよくミュージシャンになりきれる
「らっき」のプレイ方法は、大きくわけて2種類ある。「カラオケ演奏モード」は付属のカートリッジによって奏でられる伴奏を聴きながら弦を弾くと、自動的に曲に合った音が鳴る、というもの。コードのボタンを押す必要もない。弦をタイミングよく弾く必要もない。激しくかき鳴らしてもいいし、のんびりと弾いてもいい。気のむくままに弾きながら、大きな声で歌を歌い、ひたすら気持ちよくなるモードだ。
一方の「自由演奏モード」は、コードのボタンを押して、一歩進んだギターの演奏を楽しめる。「カラオケ演奏モード」に慣れたら挑戦する中級者向けのモードだ。
最初はもちろん「カラオケ演奏モード」からプレイしてみる。別売のカートリッジ「洋楽スタンダードナンバーVol.1」を本体にセットし、ビートルズの「Let It Be」を選曲。「スタートボタン」を押すと、男性の声で「ワン、ツー、スリー、フォー」とカウントが読み上げられ、演奏が始まった。「タン、タ、タ、タン、タン、タン」とあの有名なピアノによるイントロがスピーカーから鳴り響く。
さてギターのパートだ、と弦に指先を当てて、一気に下に降ろすと、軽い衝撃が走った。「ジャージャージャジャン」。ギターの音がとてもリアルなのだ。伴奏のピアノやドラムの音色はやや軽めに設定されているが、ギターの音色はとても真に迫っている。伴奏を聴きながらリズムを取ったら、今度は積極的に弦を弾いていく。指をそろえて弦の上をなでるだけの単調な動作なのだが、奏でられる音は伴奏に合わせてどんどん変化し、よく知った「Let It Be」のメロディーをつむぎ出す。
しばらく続けていると、自分は指を上下に振っているだけ、なんていう現実は忘れて、ギタリストの気分になってきた。オルガンがフューチャーされた間奏では、あの有名なギターソロもあり、自分はジョージ・ハリスンではないかとの錯覚に襲われた。そのうちに「しんぼうたまらん」状態になってきて、声を出して唄い始めた。今度はポール・マッカトニーだ!!
……はあ、はあ、ちょっと一息つこう。演奏する前は、指を上下に振り下ろすだけの動作なんて格好悪いな、と思っていたのだが、ギターの分厚い音色が伴奏にマッチングするのを聴くにつれ、気分がどんどん高まってしまった。「おろ、これは……」と感じたあとは、ひたすら気持ちよくなっていくばかり。ギタープレイはやはり大変な快楽があるのだな、と擬似ながらも納得させられた。
弦を弾くタイミングは、基本的には自由だが、曲自体のリズムに合わせた方がいいようだ。カートリッジに付属している歌詞&コード表を見れば、弦を弾く最適なタイミングが書いてある。うまくリズムを取れない、伴奏に重ねられない場合は、この表を参考にして弾くといいようだ。
勢いに乗って、ボブ・ディランの「Blow The Wind」やイーグルスの「Hotel California」も弾く。ああっ、楽しい。
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「カラオケ演奏モード」は、ただただ弦をかき鳴らすだけでオーケーだ |
「自由演奏モード」では、コードを自分を押さえながら演奏をする |
■ 音色もリズムも自在に変更できる
つぎに「自由演奏モード」にチャレンジしてよう。カートリッジに頼らず、自分の力でコードボタンを押さえながら演奏するモードだが、サポート機能もちゃんとある。リズムによる伴奏を流し、それにあわせて演奏することができるのだ。
用意されたリズムは「8ビート」や「16ビート」などの基本的なものから、「ロックンロール」、「カントリーポップ」、「バラード」、「ヒップホップ」と多岐に渡り、さらには「ボサノバ」、「タンゴ」、「レゲエ」といわゆるポップスの枠に収まらない楽曲のものも収録されている。
これにくわえて、ギターの音色を変更する機能もある。基本は「スチールギター」なのだが、「三味線」、「バンジョー」、「琴」、「シタール」など世界の弦楽器の音色を網羅しているのだ。これだけでもユニークなのだが、特筆すべきはその音色。基本のギターの音も厚みと迫力があり、十分に聴かせられるものだったが、三味線やバンジョー、琴などの音もそれに劣らず美しい。「『Hotel California』を三味線で弾くとどうなる?」と冗談半分で試しても、曲を弾いていくうちに「いや、実際に弾くと本当にこんな雰囲気になるのかもしれない」と思えるのほど説得力がある。
ボタン式に簡略化されているとはいえ、右手で弦をかき鳴らし、左手でコードを押さえるのは、さすがに難しい。少し慣れたと安心しても、もう一度弾くうまくできなかったりする。ボタン式のコードでこれだ。本物の弦ならこの何倍も、いや何十倍も難しいに違いない、と先ほどまでの夢から覚め、厳しい現実を突きつけられたりもする。
だけど、気を取り直して練習を重ね、難しいパートのコードを完璧に押さえ、オリジナルの楽曲さながらの演奏ができたときなどは、そんな気分もふっ飛んでしまう。なんて現金な! と我ながらあきれもするが、そんなふうに楽しいアイテムなのです。
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歌詞&コード表の誌面。ここに書かれているタイミングでコードをチェンジするとベストな演奏が行なえる |
パッケージには運搬用のソフトケースも付属している |
すっかり堪能したが、願わくば本体のデザインをもう少しだけ格好よくしてほしい。ユーモアとスタイルが一体になったフェルナンデスの「ぞうさん」並みになれば、友人宅だろうが、宴会だろうが、どこへでも持ち歩きたいくらいなのになあ。
□ピープルのホームページ
http://www.people-kk.co.jp/
□製品情報
http://www.people-kk.co.jp/showroom/rakki/rakki_top.html
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(2004年2月12日)
[Reported by 元宮秀介]
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