この夏人気を博した映画「パイレーツ・オブ・カリビアン」の影響かどうかは知らないが、どうも今年は「海賊」の年らしい。以前レビューした「ポートロイヤル」、その名もズバリのRPG「Pirates of the Caribbean」(Sea Dogs II)、そしてこの「トロピコ2」と、どれもカリブの海賊に焦点を当てたゲームとして相次いで発売されている。特に「トロピコ2」は、“南海の島の大統領”という役どころを演じた前作「トロピコ」の続編でありながら、「南の島」という場所だけが同じであとはまったく違うテーマ、ということで、前作をやり尽くしたプレーヤーにとっても、その内容が気になるところだろう。
■ 今はプレシデンテ、昔は海賊王が君臨した、カリブの島!? 「トロピコ2」は、「カリブ海の海賊王」を目指す1人プレイ専用のストラテジーゲームだ。では、「海賊船団を率いて、カリブ海を荒らし回る」のが目的かといえば、さにあらず。確かに海賊船による襲撃はゲーム中の重要な要素ではあるのだが、船を指揮するのはあくまでプレーヤーが雇った船長。プレーヤー自身は、サブタイトルにもあるとおり、カリブ海のどこかヒミツの場所にある海賊島を発展させて、海賊の楽園を築くのが目標なのである。海賊行為は、その目標を達成する手段のひとつでしかない。 プレーヤーには最初に、小さな島といくつかの施設が与えられる。あとは、自分の腕次第。施設を作り、その運営をしつつ、次へのステップとなる資金や人材(新規の海賊や捕虜)を獲得するための海賊船を送り出し、その資源をまた島に投下する。最終的には、海賊たちにとって自分を守ってくれる「庇護者」となり、かつ自由気ままに生きられる「解放感」ある島を目指す。その下で働く捕虜たちにとっては、どのみち逃げられないと観念する「恐怖」とおとなしく働く「規律」ある島、この「島を支配する雰囲気」の調整を考えながら、自分なりの「楽園」を構築していくわけだ。 ゲームの最終目的は、キャンペーンやシングルプレイのシナリオによって「財産をためる」、「特定の施設を築く」、「人口を一定以上にする」などと異なるし、シングルプレイの「サンドボックス」モード(プレーヤーが自由に条件設定できるプレイ)であれば、プレイ期間(ゲーム時間の10~30年の間で決められる)終了後、所定の得点計算によって金・銀・銅メダルが授与される、という仕組みになっている。 しかし、この最終判定は言ってみれば目安でしかない。多くのストラテジーゲームと同様、このゲームの楽しみも「島が発展する、その過程」、言い換えればゲーム中に登場する船長や海賊たち、捕虜たちの行動をどうやって統制し、自分の趣味に合った島を作り上げていくか、というその1点にあるのだから。 とはいえ、「何をすればいいのかわからない」という人は、「チュートリアル」を一通りプレイしてゲームの操作をおぼえたら、キャンペーンのシナリオを最初から3つまで、こなしてみよう。そこまでプレイすれば、ゲームのおおよその進め方、施設相互の関係とその建設の条件や順序がわかってくるはず。その後は、キャンペーンを進めるもよし、サンドボックスで自分なりの夢の島を築くもよし、だ。
■ キャンペーン・エピソード「ジャマイカのラム酒」から――
Smitty(以下「S」):へい、引き続き、あっし、一の子分のSmittyがいろいろお相手させていただきやすぜ、親分。 親:しっかし、このジャマイカってのは、見たところまた、何にもねぇ島だなぁ、おい。 S:なんでも親分の信頼する船長Henry Morganさんが、新しくイギリスが獲得したこの島を「オレたちの親分に統治させてみろ。いい島にしてやるぜ」とイギリス政府に掛け合ったんだそうで。 親:Morganのやつぁ、いい漢(ヤツ)なんだけどな、おりゃ、いまひとつ「政府」ってやつは信用できねぇ。ま、何年この島にいられんのかしらねぇが、その間はせいぜい稼がせてもらうとすっかよ、なぁSの字。 S:まずは宮殿に行きやすか。宮殿って言っても、政府の役人が捕虜を使って急遽作った代物らしいっすが。あ、こりゃまた、掘っ立て小屋のような――。 親:まぁいいって。いずれ豪勢なのに建て直してやるからよ。で、政府とやらはほかに何をくれたんだ? S:製材所1つに、穀物畑(農場)が2つ、ってとこで。島に残った捕虜が23人収容所に入ってまさ。あとは親分が連れてきた海賊衆が、Morgan船長と親分の古い親友・Charlotte de Berry船長の2人を入れて17人ですぜ。 親:じゃ、やることぁ決まってらぁ。いつものように、まず木材の確保だ。どんなものを建てるにしても、木材がいるからなぁ。最初は伐採所を作らせろや。当面、捕虜どもの処遇は考えなくていいから、こき使え。 S:役人が気を利かしたのか、配給テントだけじゃなくて捕虜が休息できる飯場まで作ってったようで。これなら捕虜たちは十分生きていけやすぜ。 親:オレに言わせりゃ、「捕虜は生かさず殺さず」。これで問題ねぇのよ。だからよ、配給テントの状況だけはときどき確認しとけや。 S:テントで配ってるまずいスープが足りなくなったら、捕虜たちが騒ぎ始て面倒起こしやすしね。穀物畑2つあれば当分はもつでしょうが、いずれ追加で穀物畑を建てる場所を確認しといたほうがいいですかね!? 親:あぁそういうこった。鉄鉱石の出そうな場所や、バナナとパパイヤ、タバコ、サトウキビの作れそうな場所も調べとけよ。物事はよ、何でも最初が肝心なんだぜ。最初にうまくやっときゃ、あとで生きてくるのよ。 S:さすがは親分、だてにいくつも島を渡り歩いちゃいねぇ。 親:ほんとはCharlotteやMorganみたいに、海原に出たいんだけどなぁ。どうもおりゃ、修羅場に弱いタイプらしくてよ。 S:親分は、あのMorgan船長にも一目置かれてるお方じゃありやせんか。「あそこまで島の差配ができるやつは、そうはいねぇ」ってね。
親:ま、みんなに違う取り柄があるってこたぁな。 ■ オカの海賊は楽しめ! 捕虜は従順に働くべし!!
S:1658年11月11日でさ。島に着いたのが1657年3月1日だから、1年半ほどたちやしたぜ。 親:ようやくMorganを出航させられたなぁ。 S:船は最初から1隻ありやすがね。船に乗る海賊衆も揃ってるし。 親:食料もおめぇの言ったとおり、すぐに船に積み込むための保存食工場を作ったしな。問題は、武器のカトラスを作るのに、意外と手間取っちまったことだな。 S:鉄鉱石を掘り出す鉄鉱山、鉱石から銑鉄を作る溶鉱炉、銑鉄を鍛えてカトラスを作る鍛冶屋、これを順に建てるのが、何とも面倒な話で。 親:そうはいっても、カトラスは海賊の魂なんでよ、剣なしで出航させるわけにもいかめぇ。 S:その間、不満ばかり言いやがる連中を抑えとくのも大変でしたぜ。醸造所でビールを作って、海賊の溜まり場で売ったり、マッサージ屋や闘犬場を作ったり。連中、船に乗ってないと、要求ばかりうるせぇったら。 親:これから船をバシバシ出航させりゃいいのよ。それに一仕事してきた連中には、それなりに報いてやんねぇとな。連中を存分に楽しませて、ついでに連中の分け前をこっちの懐に回収できりゃ、一石二鳥とはこのこった。 S:親分の深い考えには、まったく感服しやすぜ。にしても、Morgan船長の船、無事に帰ってくりゃいいですが――。 親:お前、Morganの腕を信じられねぇのかよ。そんなやつぁ、絞首台で吊すぞ! S:滅相もない!! 信じてやすぜ、もちろん!! なにせカリブにその名をとどろかす、Morgan船長でさ。それに、あの絞首台は言うこときかねぇ捕虜を吊すもんでしょ。 親:実際に吊す必要はねぇのよ。あそこに建てておけば、通りかかった捕虜の連中がビビりやがるだろ? それで変な気を起こさず、せっせと働いてくれりゃ、目的達成って寸法よ。 S:そういや、政府がときどき新しい捕虜を送り込んで来るんで、捕虜はもう41人にもなりやした。 親:見所のあるやつぁ、捕虜でも解放して海賊にしてやっとけよ。 S:へい。親分の言いつけどおり、すでに3人ほど海賊に引き上げやしたぜ。 親:捕虜ばっかり増えるのは考えもんだからな。この先施設が増えりゃ、監守役も増やさねぇと。監守がいねぇと、捕虜どもが働かねぇから生産性が落ちちまう。 S:そういや、ずっと1人残って収容所暮らしをしていた船大工が、艇庫を建てたんでようやく働きに出たようで。 親:なんだ、熟練労働者って言うんだったか、扱いづらくって面倒くせぇ。ほかの捕虜どもはどんな仕事に割り当てられても文句いわねぇのに、連中だけは自分の仕事場がなけりゃ働かねぇしよ。 S:そうはいっても、この先、特定の熟練労働者がいないと建てられない施設もありやすし、人の手当てはしていかないと。
親:そうだな。ま、Morganに言って、必要な人材は外から調達させりゃいいんだけどな。 ■ 海賊稼業も、所詮は博打――船を失わば、博打もできず
親:ガタガタすんな! 宮殿の床が減る!! S:しかし親分、de Berry艦長も行方不明らしいんですぜ――。 親:だから、心配なんていらねぇってんだよ。あのCharlotteが簡単に死ぬわけねーだろ! そのうち「久しぶり」っと戻ってくるさ。 S:古い付き合いの親分がそう言うんなら……。それにしても、せっかく島で新造した最初の船White Girl、彼女も3年半ほどの命でしたなぁ。Morgan船長の船は6年経ってもまだバリバリの現役なのに。 親:まぁ、スノー型は安いし、正面切っての戦い以外なら、使い勝手はいいんだけどな。どうにも船が小さいから、ちょっとしたトラブルでも沈みやすいのが玉に瑕だな。 S:13回の航海で5,000枚近い金貨を奪って来やしたから、効率が悪いなんて言ったら、彼女に申し訳がたちやせんね。 親:葉巻職人やら熟練のコックやら大砲技師やら、ずいぶんいろんな職種の熟練労働者連中を連れてきてくれたしな。よく働いてくれたさ。一緒に海の藻屑となった船員どもも、彼女には感謝して沈んでいっただろうよ。 S:(しんみり)……まぁ、襲撃や喧嘩で死んで、うちの島の墓地に埋められた海賊仲間は、そのあと事と次第では、白骨死体のままよみがえらされ、運び屋として未来永劫働かされかねんし。それに比べりゃ、海の底のほうが安息の地かもしれやせん。 親:ありゃああれで、食事もしなけりゃ文句も言わねぇ、使い手のある連中なんだぜ。さすがは元オレの子分ども、ってとこだな。 S:はぁ、まぁ……。いろんな熟練労働者のおかげで、いろんな施設が作れるようになりやしたしね。そこで働く捕虜は、何人いても困らないわけで。 親:そういやこないだ、新しい船着き場のほうに作った海賊の溜まり場から、給仕が1人逃げだそうとしやがったっけな。 S:その場に居合わせた船員が処理して、事なきを得やしたがね。あぁいう不届きな捕虜どもがつるむと、暴動になりかねねぇんで。 親:な~に、ちっとばかし恐怖の締め付けが足りなかったのよ。海賊どものたむろする界隈と捕虜どもがせっせと働く場所、この2つを切り離す、というオレの考えは間違ってねぇさ。 S:そうですね。親分の深いお情けで、不満を持つ海賊たちは増えてないし、捕虜どももほとんどはおまんま食えるだけで満足してまさぁ。……ところで親分、次の船はどうするんで? 親:カネと木材もまだ有り余ってるわけじゃねぇから、同じスノー型の帆船を作っとけ。出来上がるころにゃ、Charlotteも戻ってくるだろ――。
■ 島は栄えて、万骨枯れ――てたまるか! 次だ、次!!
S:早いもんで、島に来てから8年経ちやした。イギリス政府から来たのは、紙切れ1枚。「街が大きくなってきたんで、以後は本国の役人が直接統治する」って言う話で。Morganさんもさすがに「オレたちの楽園を作るのは、いよいよこれからじゃねぇか!」と怒ってやしたぜ。 親:海賊どもにもようやく家を作る土地をくれてやったし、捕虜どもにだって神サマとやらとのふれあいを許して、この島で一生を終わる諦めを与えてやろうっていう寛大さを見せたとたん、このザマだ。 S:ホントに。島の西側に、今じゃ船着き場2つと展望台もできたし、オレたち海賊にとってはオカでも安心感と解放感に浸りきれる場所になって。8年前はただのジャングルだったとは、とても思えやせんぜ。 親:だろ? ペーペーから船長まで、誰でも楽しめるようにたくさん施設を作ってよ。ひときわ文句のうるせえインテリ海賊どもにだって、今じゃ高めの博打も打てりゃ、飲んで寝泊まりする立派な宿屋まである、優雅に遊べる場所にしてやって。MorganやCharlotteあたりは、街の向こうの静かな場所に、屋敷まで構えたんだぜ。 S:対照的に、この島の最初の船着き場から東側一帯は、相変わらず畑ばかりで。捕虜もいつの間にやら160人にもなってやすが。半分は畑や工場仕事、半分は店舗で海賊たちの世話、といったところでさ。 親:本当はな、捕虜どもが歩くルート上に海賊の屋敷街があると理想的なんだよ。特に海賊どもが遊ぶ地域の捕虜は、その解放感にかぶれて、どうしても逃げたい誘惑にかられがちだからな。ま、それでもオレの宮殿が島の東端からにらみをきかしているし、要所要所には見張り台や墓地を置いてあるから、捕虜どもには恐怖と規律が行き渡ってるだろうよ。 S:いやまったく。いつぞや以来、1人の捕虜も逃げだそうとしてねぇし。やっぱり親分は史上最高の海賊王でさ。――で、どうなさるんで? 政府のいいなりに島を明け渡しやすかい? 親:そうさな、実のところ、オレ自身の収支はそう悪くもねぇんだ。……今だから教えてやるが、島の奥に隠し金庫があってな。今度の政府の態度の裏には、どうもこのカネのことをかぎつけた気配もあるのさ。で、そこにためてたカネは、金貨1,500枚近くになるのよ。これだけありゃ、次の仕事の元手ぐらいにゃなるだろう。 S:今度は「政府ヌキで」といきたいとこで。 親:ま、政府の海軍に追い回されるだけの人生、ってのもゴメンだがな(笑)。 Charlotte:親分! そろそろ出航しないとヤバイわよ!! S:お、これはCharlotte船長。今度は、どちらへ? 親:バカかおめぇは。オレが行くのは「新天地」に決まってるじゃねぇか。行きたくねぇなら、置いてっちまうぞ――。 S:そんな! お供させてくださいよぅ……。
■ 殺伐さをいとわない街作り“箱庭ゲー”ファンなら、堪能できる内容 という具合に、「トロピコ2」の世界では、海賊といってもシビアに生死を賭ける海の男ではなく、海賊産業の経営者ばりの強欲プレイが主になっていく。もちろんプレイ中、海賊にも捕虜にも死人はたくさん出て、前作のような表向きだけでも平和~な情勢にはならないし、17世紀当時の歴史状況が再現されているがゆえに、特に一部、昨今の日本では容認されない行動内容が含まれている。それでもなお、ゲームの中にどこか南の島特有ののんびりムードを感じてしまうのは、演出がうまいのか? それとも、筆者を含む日本人独特の「南の島」や「カリブ海」への憧れの強さゆえ、なんだろうか!? ゲームシステムという点からみれば、各施設や船、そこで働く人々、が持つ各種パラメータの絡み具合はよくバランスが取れているようだ。ゲーム中の各キャラクタが一定の個性を持って行動するのも、うまくゲームの深みを増す方向に作用しており、街作りが一息ついたらゲームの進行速度を遅くして、島で暮らす人々の考えや台詞を眺める、といった箱庭的楽しみも味わえる。総合的に見れば、上記の内容面について拒絶反応を起こさず、いわゆる街作りゲームが好きな人なら、前作同様、「なじみのない状況下」での街作りを十二分に堪能できるだろう。 ただ、ストラテジーゲーム特有の、システム的な限界は、やはり打破できないまま残っている。つまり、パラメータの依存関係がある程度読み切れるようになったプレーヤーにとって、あとはシナリオ条件(たとえば大国との関係)などで厳しく制約されない限り、ゲームが急に簡単になってしまう(=飽きが早くなる)、という点だ。 残念ながら、特にシングルプレイ専用のストラテジーで、この問題を打破する仕組みを作るのは(制作予算の面を含めて)容易なことではないのは筆者も承知しているが、それでもひとつの解決法として、シナリオが進むにつれ、パラメータの関係性がひとつの説得力をもって変化していくという手法が使えるのではないか、と提起しておきたい。 このゲームに関して具体的にいえば、海賊の時代に幕を下ろしたのは、海賊たち自身の「変貌」がひとつの原因となったという点をうまくシステム上で表現できないか、ということだ。次の「トロピコ」がどんなテーマを扱うにせよ、この難題を、少し突き詰めて考えてもらいたい。 (C) 2003 Pop Top. Tropico 2, Tropico 2 logo, Pop Top and the Pop Top logo are trademarks of Pop Top, all rights reserved. Developed by Frog City. Frog City and the Frog City logo are trademarks of Frog City. Gathering, the Gathering logo, Take 2 Interactive Software and the Take 2 logo are all trademarks of Take 2 Interactive Software. All other trademarks are properties of their respective owners. Published by Gathering. All rights reserved.
□メディアクエストのホームページ http://www.kids-station.com/game/index.html □関連情報 【2003年2月19日】「Tropico 2: Pirate Cove」Beta Demo http://game.watch.impress.co.jp/docs/20030219/demo0219.htm 【2003年9月10日】メディアクエスト、「トロピコ2~海賊の島~ 日本語版」を11月13日に発売 http://game.watch.impress.co.jp/docs/20030910/tropico.htm (2003年11月11日)
[Reported by culi]
また、弊誌に掲載された写真、文章の無許諾での転載、使用に関しましては一切お断わりいたします ウォッチ編集部内GAME Watch担当game-watch@impress.co.jp Copyright (c) 2002 Impress Corporation All rights reserved. |
|