★ PCゲームレビュー★


都市間の相互利用も可能に!
都市育成シミュレーションの決定版

シムシティ 4


 プレーヤーが市長となって都市を育成する人気シリーズの最新作「シムシティ 4」(日本語版)がついに登場した。基本となっていると都市育成のゲームシステムは既存作品と同様で、土地マップの上に住宅地区、商業地区、工業地区を設置してそれらを道路で繋ぎ、電気と水を供給すると住民がぞくぞくと引っ越してくるというもの。

 それら住民の暮らしを満足させ、各地区を拡大することで人口が増えていき、増えた収入によって様々な効果を持つ建物を建て、さらに都市を大きくしていくのが目的である。都市を育成して円滑に治めること自体がゲーム目的であるため、自分の満足がいく街づくりができるまでエンドレスにプレイをしてしまうのも特徴だ。市長として、時に大胆な、時に細やかな配慮で都市を育成していく。


■ 都市を育成するゲーム「シムシティ 4」

隙のない緻密なグラフィックが箱庭心を煽ってくれる。俯瞰した画面は、実施のアメリカの都市を見下ろしているようだ
昼から夜にかけて街の明かりも変化する。神様モードでのツールで昼にしっぱなし、夜にしっぱなしも可能
市長モードで都市を育成していく。都市の状況は画面右下のインジケーターでシムピープル風に各項目の度合い変化がわかるようになっている
 今回の新作では、進化したグラフィックやゲームシステムなど、目玉はいろいろ挙げられるが、シムシティファンにとって一番の大きな変更点は、複数の都市を育成してそれらを自分の手で相互に利用できることだ。これまでの作品では、ひとつの都市の中で、その都市だけを育成させていったわけだが、「シムシティ4」では、隣の都市との交流が住民や都市間取引といった数字の上でのものだけでなく、実際の生活や産業の発展の上でもダイナミックに繋げられる。プレーヤーが育成した数々のマップを交通機関などで繋げることによって都市同士の特徴をお互いに生かすことができるのだ。

 たとえば、住宅の多い都市マップと工業の多い都市マップを交通機関などで繋げれば、それは大きな範囲での住宅地と工業地になり、片方の都市から片方の都市へと通勤させることができる。商業都市と工業都市でなら互いに経済を発展させることができる。単一の都市マップ内だけでなく、複数の都市が存在する地域マップ自体を、ひとつの大きな都市地域として育成できるわけだ。

 また、こういった大規模でダイナミックな都市の動きを堪能できるのに対し、都市の中の住宅地にマイ・シムと呼ばれる人間を生活させることもできる。シムシティの中に、特定のシムを暮らさせてその生活ぶりを観察するというシステムで、彼らの生活や日々の感想を見ることで、自分が育成中の都市に暮らすとどんな生活ができるのかを知ることができる。箱庭度の高い細やかなグラフィックと小さなシムの生活とが相まって、都市育成をミクロの視点から堪能することができるというわけだ。ちなみに、このマイ・シムには「シムピープル」のキャラクタデータも利用できる。自分のお気に入りのシムをシムシティの世界でも生活させられるのが楽しい。

 「シムシティ 4」は、マップ内での都市計画、都市の中に暮らすシムたちの生活向上、地域マップでの都市間の相互活性、といいう3つの視点から都市育成というものをとことん楽しめるように作られている。シミュレーションゲームは数あれど、これまでのシリーズ作品を遥かに上回るシミュレート度で凌駕しており、中毒性という意味でも同じシムワールドの「シムピープル」に負けない力を持っている。都市を広げるために四苦八苦しながら、少しずつコツやツボや自分だけのセオリーを見つけていき、そしてその結果を楽しむ。「シムシティ4」はそんなシミュレーションゲームの醍醐味を存分に味わえる都市育成ゲームである。

災害も健在。神様モードのツールでいつでも好きなときに大規模災害を起こせるほか、火事や事故などの小さな災害は突発的にやってくる これまで以上にシビアになった都市運営と財政。下手に街を広げようとすると赤字になるし、広げないままでも赤字になるしで難しい 病院や教育などは人口に対して適正な量のサービスを行なわないと住民からブーイングが出るし、かといって足りなくても文句がくるしで頭を悩ますことになる


都市マップが集合した地域マップ。隣り合った都市や交通で接続した都市同士は、経済的に住民の暮らし的にも影響しあい、地域マップ全体で大都市として発展していく 足りない収入を補うために、カジノや軍事基地建設などの様々なデメリットがある取引をしてその場をしのいだりもする 「?」ツールを使うと、都市の中の事細かな部分までチェックできるので、箱庭マニア大満足。住民の裕福度や通勤距離など大事なデータも満載



■ バランスをとりながら都市を育成

都市内のニュースは、画面最下部のニュースウィンドウに随時表示される。悪いニュースは赤で、良いニュースは緑で表示され一目でわかる
都市を育成するに当たって、各項目のアドバイザーから注意やアドバイスがいれられる。アドバイスなのリンクをクリックすれば目的の情報にひとっとび
電気や水道が通ってない、職がない、道路に接していないといった緊急の困りごとがある住居は、アイコンの形でマップに表示される。至急対策が求められる
 「シムシティ 4」で基本となっているのは、都市に設置する住宅・商業・工業の3つの地域だ。住宅はシム達(シムシティの市民はシムと呼ばれる)が暮らす場所、工業地区はシムの勤め先で製品製造の場所、商業地区は物の売買をする都市の経済を担当の場所となっている。

 住宅と住民がいないと工場は動かないし、工場でモノを造らなくては商業もなりたたない。3つの地域どれが欠けても都市としての発展は望めないのだ。ゲームになれた上級者になると住宅都市・工業都市・商業都市を作ってその3つをつなげるということもできるが、まずは同一マップ内での都市育成からチャレンジしていくことになる。

 これらの地区はマップ上にクリック&ドラッグで範囲を設定して設置する。発電所を作って電力を、貯水塔などから水道管を敷いて水を供給し、地区と地区の間にはシム達が移動できるように道路を敷けば、自動的に住民や企業などが引越してきて、設置した各地区にだんだんと建物が建っていくのである。

 シムの家や企業などが立ち並び始めても、市長にはまだまだすることが山盛りだ。シムたちの教育度を上げるために学校を作ったり、地域防犯のために警察や消防署を作ったり、都市としての機能を保つために様々な努力をしていかなくてはならない。病院、ゴミ処理、さらなる交通機関などなど少ない税収をなんとかやりくりしつつ、都市としての体裁を整えていく。

 そして、シム達の生活レベルをあげるためには様々な建物とその維持費もかかってくる。しかも、単に学校や警察を置けばいいというわけでなく、住民のニーズにそった量のサービスをしなくてはならないのだ。警察を置いて地区の防犯を上げようとしても、もし住民の数に対して警官が多すぎる(予算がありすぎる)場合は、警官たちの横暴に住民から文句が出てしまう。住民の数の変動と共に細やかな予算調整をして、じっくりと都市を育てなくてはならない。

 都市は成長していても停滞していても生活レベル維持のための予算がかかり、何とかやりくりしながらも、さらに対処しなくてはならない問題もでてくる。シム達は通勤時間の長さ、公害、自分達の娯楽、交通量など、これでもかというほどの条件に生活や暮らしぶりを左右されてしまうのだ。油断なく余ったお金を溜め込んでおきいざという時に使ったり、債権を発行して借金を背負いながらも都市拡大に努めたり、地区の設置といった土木面以外に、お金の面でも市長は悩ませられる。都市の整備と財政、そのほかもろもろ全部を市長の手でこなさなくてはならないのが、シムシティのシリーズに共通する部分だ。

働き先がなかったり、税金が高かったり、生活環境が悪かったりで住民がいなくなった家はボロボロで灰色のグラフィックになってしまう 左の画面を少しズームアウトした画面。ここまで引いても車や住民が道を歩いている様子が描画される。ハイスペックなマシンが必須 都市マップを最大限にズームアウトした画面。左二つの画面と見比べてみてもらうとその緻密さがわかるだろう。リアル3Dでないことがかえってリアルに見せている


 そして、市長の都市拡大問題をさらに複雑にしているのは、裕福度や教育度といった住民自身の条件や、幸福度や地価といった各地区での環境、そして税収や各地区の需要と供給バランスなどだ。住民達の教育度や裕福度によって地区に建つ建物が異なり、工業地区や商業地区での発展にも関わってくる。

 幸福度や教育度が高くて公害のない街ならばハイテク産業がたくさん入ってきて裕福な住民も増えるが、そうでない場合は貧乏な住人が公害の多い工業地区に鬱々と通勤する世界になるわけだ。かといって最初からハイテク産業を呼び込めるほどの力は都市にないわけで、そこまで持っていくというのが一苦労なのである。

 いかに幸せで教育度の高い環境にして住民を繋ぎとめるか、いかに彼らが働くのにふさわしい職場を用意するのか。いかに彼らを無駄なく働かせて工業地区や商業地区を育てていくのか。大きな都市に成長させるためには、そうしたことまでを考えるのが難しくとも必須となってくるのだ。

 そういった都市の成長には様々な行動の取捨選択が迫られる。たとえば、工業が発展すれば徐々に大気汚染などの公害が出始めるのだが、それを減らそうとすればお金のかかる施設や都市条例が必要となる。あちらを削ろうとすると、こちらが飛び出るといった具合で、とにかく相反する様々な要因をバランスをとりつつ取捨選択していくのが市長の腕の見せ所となっている。

グラフィックにあわせて災害もパワーアップ。これは街中に火山噴火を起こしたところ。流れ出るマグマによって建物が破壊される 手塩にかけた都市の建物を粉々にしていく、破壊規模が大きい竜巻。シムシティ3000での竜巻などと比べるとやはり迫力がある 街を破壊するロボットが襲来! どこかで見たことがあるようなデザインのロボットが、建物を踏みしめながら練り歩く


前作と違い、今回のランドマークは都市に影響を与える。が、それだけにお金も維持費もかかるようになっている。画面はホワイトハウス 前作に引き続き登場したカリフォルニアの小都市、ウォルナットクリークの商業ビル、カリフォルニア・プラザ。日本人にはわかりづらい建物チョイス ドイツの赤の庁舎。観光地としての側面もあるランドマークに人が集まっている様子が、ズームインした画面だと良くわかる



■ シミュレート度・難易度共にパワーアップ

 今回の「シムシティ 4」では、プレイしていてつまづくことが多いかもしれない。まず、序盤のゲームバランスが絶妙で、難易度が高い。単純な都市計画や短気な進行では街を発展させづらく、すぐに赤字に転落してしまう。その上、街の規模が予算に見合わない大きさになると人口に伴う出費によってわずかだった黒字税収があっという間に食い尽くされてしまう。

 ある程度の安定した収入が得られるようになっても、そこから街の規模をさらに大きくするのは困難を極めるのだ。たとえ序盤で一気に地区範囲を広げてみても、後々、住民の幸福度などが原因で人口はじりじりと減っていき、結局は都市の拡大に失敗してしまう。いかに赤字を抑えつつ、住宅・商業・工業の各地区の需要と供給、幸福度と住民の定住度、そしてその維持をしていくかがゲームの肝となっている。

 「シムシティ 4」は、一見、これまでのシリーズ作品となんら変わらないようなルールと見た目であるのに、中身と都市要素のシミュレート具合、それらがゲームへと昇華されている度合いは大幅にパワーアップしている。プレイすればするほど、あちらを出せばこちらが引っ込むという具合の都市内要素のシミュレーションに、飲み込まれていくようにプレイ続けてしまった。

とにかく練りこまれたゲームバランス、互いに影響しあうことで複雑なプレイ感を増している都市の成長要因、都市間での交流とそれを利用した大きな範囲での都市育成、くせになる音楽、そして究極までに箱庭度を上げたグラフィック、と褒めるポイントを挙げていくときりがない。

 大幅にグレードアップしたグラフィックのため、かなりマシンパワーが必要なのだが、それだけのことはあるゲームである。前述のように、様々な成長要因が互いに影響しあっているため、都市を大きくするという点では従来のシリーズ作品よりも難易度が上がっている。だがそれだけに、完璧な、そして自己満足な大規模都市を目指してのコツやセオリーを探る楽しみが満載であり、都市育成と共にプレーヤーも成長していけるような、そんなゲームになっている。

住民数とベッドの数のバランスがくずれてストライキが起こった診療所。外で医者や看護士がプラカードを持っているのまで表示される 住民の教育度が上がると、工業でもハイテク産業などが登場する。クリーンでお金になるが、そこに通う住民の生活も維持しなくてはならず大変 都市にお金がない赤字経営な時期には、軍事基地やミサイル基地などを立てて収入を得られるが、地価が下がるなどのデメリットも大きい


各地区の需要は細かなグラフデータでもチェックできる。裕福度や業種に分かれて表示され、それぞれに必要とされる産業や住宅に注意しなくてはならない 都市には様々な条例が用意されており、毎月一定額を払うことで様々な効果がもたらされる。だが、これにもメリット・デメリットがあり難しい 都市の育成は焦らずまったりが吉。最初のうちは時間の流れを遅くして、建物ができていく様子などもじっくり堪能してほしい


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【シムシティ 4】
  • CPU:Pentium III 700MHz以上(Pentium 4 1GHz以上を推奨)
  • メモリ:128MB以上(256MB以上を推奨)
  • HDD:1.2GB以上
  • ビデオカード:VRAM 16MB以上(32MB以上を推奨)


□「シムシティ4」公式ホームページ
http://japan.ea.com/simcity4/
□関連情報
【2002年11月28日】EAスクウェア、「シムシティ4」の発表会を開催 独自仕様の完全日本語版を初公開
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20021128/simcity4.htm
【2002年11月15日】EA、「シムシティ4」を1月16日発売 完全日本語版を北米とほぼ同時発売
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20021115/simcity4.htm
【2002年5月24日】Electronic Entertainment Expo 2002現地レポート
「SimCity4」、「The Sims Online」、「PS2版The Sims」シムシリーズは怒涛の3連発展示
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20020524/sim.htm
【2002年5月10日】米Electronic Arts、「SimCity 4」を正式アナウンス
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20020510/simcity4.htm

(2003年1月24日)

[Reported by 西尾ゆき]


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