プレーヤーが市長となって都市を育成する人気シリーズの最新作「シムシティ 4」(日本語版)がついに登場した。基本となっていると都市育成のゲームシステムは既存作品と同様で、土地マップの上に住宅地区、商業地区、工業地区を設置してそれらを道路で繋ぎ、電気と水を供給すると住民がぞくぞくと引っ越してくるというもの。 それら住民の暮らしを満足させ、各地区を拡大することで人口が増えていき、増えた収入によって様々な効果を持つ建物を建て、さらに都市を大きくしていくのが目的である。都市を育成して円滑に治めること自体がゲーム目的であるため、自分の満足がいく街づくりができるまでエンドレスにプレイをしてしまうのも特徴だ。市長として、時に大胆な、時に細やかな配慮で都市を育成していく。
■ 都市を育成するゲーム「シムシティ 4」
たとえば、住宅の多い都市マップと工業の多い都市マップを交通機関などで繋げれば、それは大きな範囲での住宅地と工業地になり、片方の都市から片方の都市へと通勤させることができる。商業都市と工業都市でなら互いに経済を発展させることができる。単一の都市マップ内だけでなく、複数の都市が存在する地域マップ自体を、ひとつの大きな都市地域として育成できるわけだ。 また、こういった大規模でダイナミックな都市の動きを堪能できるのに対し、都市の中の住宅地にマイ・シムと呼ばれる人間を生活させることもできる。シムシティの中に、特定のシムを暮らさせてその生活ぶりを観察するというシステムで、彼らの生活や日々の感想を見ることで、自分が育成中の都市に暮らすとどんな生活ができるのかを知ることができる。箱庭度の高い細やかなグラフィックと小さなシムの生活とが相まって、都市育成をミクロの視点から堪能することができるというわけだ。ちなみに、このマイ・シムには「シムピープル」のキャラクタデータも利用できる。自分のお気に入りのシムをシムシティの世界でも生活させられるのが楽しい。
「シムシティ 4」は、マップ内での都市計画、都市の中に暮らすシムたちの生活向上、地域マップでの都市間の相互活性、といいう3つの視点から都市育成というものをとことん楽しめるように作られている。シミュレーションゲームは数あれど、これまでのシリーズ作品を遥かに上回るシミュレート度で凌駕しており、中毒性という意味でも同じシムワールドの「シムピープル」に負けない力を持っている。都市を広げるために四苦八苦しながら、少しずつコツやツボや自分だけのセオリーを見つけていき、そしてその結果を楽しむ。「シムシティ4」はそんなシミュレーションゲームの醍醐味を存分に味わえる都市育成ゲームである。
■ バランスをとりながら都市を育成
住宅と住民がいないと工場は動かないし、工場でモノを造らなくては商業もなりたたない。3つの地域どれが欠けても都市としての発展は望めないのだ。ゲームになれた上級者になると住宅都市・工業都市・商業都市を作ってその3つをつなげるということもできるが、まずは同一マップ内での都市育成からチャレンジしていくことになる。 これらの地区はマップ上にクリック&ドラッグで範囲を設定して設置する。発電所を作って電力を、貯水塔などから水道管を敷いて水を供給し、地区と地区の間にはシム達が移動できるように道路を敷けば、自動的に住民や企業などが引越してきて、設置した各地区にだんだんと建物が建っていくのである。 シムの家や企業などが立ち並び始めても、市長にはまだまだすることが山盛りだ。シムたちの教育度を上げるために学校を作ったり、地域防犯のために警察や消防署を作ったり、都市としての機能を保つために様々な努力をしていかなくてはならない。病院、ゴミ処理、さらなる交通機関などなど少ない税収をなんとかやりくりしつつ、都市としての体裁を整えていく。 そして、シム達の生活レベルをあげるためには様々な建物とその維持費もかかってくる。しかも、単に学校や警察を置けばいいというわけでなく、住民のニーズにそった量のサービスをしなくてはならないのだ。警察を置いて地区の防犯を上げようとしても、もし住民の数に対して警官が多すぎる(予算がありすぎる)場合は、警官たちの横暴に住民から文句が出てしまう。住民の数の変動と共に細やかな予算調整をして、じっくりと都市を育てなくてはならない。
都市は成長していても停滞していても生活レベル維持のための予算がかかり、何とかやりくりしながらも、さらに対処しなくてはならない問題もでてくる。シム達は通勤時間の長さ、公害、自分達の娯楽、交通量など、これでもかというほどの条件に生活や暮らしぶりを左右されてしまうのだ。油断なく余ったお金を溜め込んでおきいざという時に使ったり、債権を発行して借金を背負いながらも都市拡大に努めたり、地区の設置といった土木面以外に、お金の面でも市長は悩ませられる。都市の整備と財政、そのほかもろもろ全部を市長の手でこなさなくてはならないのが、シムシティのシリーズに共通する部分だ。
そして、市長の都市拡大問題をさらに複雑にしているのは、裕福度や教育度といった住民自身の条件や、幸福度や地価といった各地区での環境、そして税収や各地区の需要と供給バランスなどだ。住民達の教育度や裕福度によって地区に建つ建物が異なり、工業地区や商業地区での発展にも関わってくる。 幸福度や教育度が高くて公害のない街ならばハイテク産業がたくさん入ってきて裕福な住民も増えるが、そうでない場合は貧乏な住人が公害の多い工業地区に鬱々と通勤する世界になるわけだ。かといって最初からハイテク産業を呼び込めるほどの力は都市にないわけで、そこまで持っていくというのが一苦労なのである。 いかに幸せで教育度の高い環境にして住民を繋ぎとめるか、いかに彼らが働くのにふさわしい職場を用意するのか。いかに彼らを無駄なく働かせて工業地区や商業地区を育てていくのか。大きな都市に成長させるためには、そうしたことまでを考えるのが難しくとも必須となってくるのだ。 そういった都市の成長には様々な行動の取捨選択が迫られる。たとえば、工業が発展すれば徐々に大気汚染などの公害が出始めるのだが、それを減らそうとすればお金のかかる施設や都市条例が必要となる。あちらを削ろうとすると、こちらが飛び出るといった具合で、とにかく相反する様々な要因をバランスをとりつつ取捨選択していくのが市長の腕の見せ所となっている。
■ シミュレート度・難易度共にパワーアップ 今回の「シムシティ 4」では、プレイしていてつまづくことが多いかもしれない。まず、序盤のゲームバランスが絶妙で、難易度が高い。単純な都市計画や短気な進行では街を発展させづらく、すぐに赤字に転落してしまう。その上、街の規模が予算に見合わない大きさになると人口に伴う出費によってわずかだった黒字税収があっという間に食い尽くされてしまう。 ある程度の安定した収入が得られるようになっても、そこから街の規模をさらに大きくするのは困難を極めるのだ。たとえ序盤で一気に地区範囲を広げてみても、後々、住民の幸福度などが原因で人口はじりじりと減っていき、結局は都市の拡大に失敗してしまう。いかに赤字を抑えつつ、住宅・商業・工業の各地区の需要と供給、幸福度と住民の定住度、そしてその維持をしていくかがゲームの肝となっている。 「シムシティ 4」は、一見、これまでのシリーズ作品となんら変わらないようなルールと見た目であるのに、中身と都市要素のシミュレート具合、それらがゲームへと昇華されている度合いは大幅にパワーアップしている。プレイすればするほど、あちらを出せばこちらが引っ込むという具合の都市内要素のシミュレーションに、飲み込まれていくようにプレイ続けてしまった。 とにかく練りこまれたゲームバランス、互いに影響しあうことで複雑なプレイ感を増している都市の成長要因、都市間での交流とそれを利用した大きな範囲での都市育成、くせになる音楽、そして究極までに箱庭度を上げたグラフィック、と褒めるポイントを挙げていくときりがない。
大幅にグレードアップしたグラフィックのため、かなりマシンパワーが必要なのだが、それだけのことはあるゲームである。前述のように、様々な成長要因が互いに影響しあっているため、都市を大きくするという点では従来のシリーズ作品よりも難易度が上がっている。だがそれだけに、完璧な、そして自己満足な大規模都市を目指してのコツやセオリーを探る楽しみが満載であり、都市育成と共にプレーヤーも成長していけるような、そんなゲームになっている。
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□「シムシティ4」公式ホームページ http://japan.ea.com/simcity4/ □関連情報 【2002年11月28日】EAスクウェア、「シムシティ4」の発表会を開催 独自仕様の完全日本語版を初公開 http://game.watch.impress.co.jp/docs/20021128/simcity4.htm 【2002年11月15日】EA、「シムシティ4」を1月16日発売 完全日本語版を北米とほぼ同時発売 http://game.watch.impress.co.jp/docs/20021115/simcity4.htm 【2002年5月24日】Electronic Entertainment Expo 2002現地レポート 「SimCity4」、「The Sims Online」、「PS2版The Sims」シムシリーズは怒涛の3連発展示 http://game.watch.impress.co.jp/docs/20020524/sim.htm 【2002年5月10日】米Electronic Arts、「SimCity 4」を正式アナウンス http://game.watch.impress.co.jp/docs/20020510/simcity4.htm (2003年1月24日)
[Reported by 西尾ゆき]
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