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【連載第65回】 あの、おもちゃを徹底レポート




熱烈な支持を受け、あの名作Toyが20数年ぶりに復活!
「学研電子ブロック EX-SYSTEM EX-150」

「学研電子ブロック EX-SYSTEM EX-150」
発売 学研
価格 9,800円
電源 単3電池×4
発売日 発売中


日本中の男の子が欲しがった幻のアイテム「電子ブロック」

 「欲しくて欲しくて欲しかったんだけれど、高くて買ってもらえなかったんだよなあ……」。「電子ブロック」にまつわる共通の思い出。20数年前、日本全国のあらゆる町で、誰もが同じ体験をした。

 「電子ブロック」は、'76年に学研から発売された電気実験キット。トランジスタや抵抗などが組み込まれたブロックを並べると、「時限ブザー」や「騒音レベルメーター」、「ワイヤレスマイク」など、様々な機器になる画期的なアイテムだった。子供たちの学習用に開発されたのだが、作れるものの中には「うそ発見機」や「運動神経測定機」など何とも怪しげなものもあり、科学に興味があろうとなかろうと、あらゆる子供たちの興味を惹き付けていたのだった。

 そんな魅力的な「電子ブロック」だが、ひとつだけ問題があった。内容ゆえか値段が高すぎたのだ。「EX-150」は、当時の価格で13,000円! 最も少ない「EX-15」でも、4,300円もしたのだ。当時の感覚でいえば、貯金をしようともなかなか追いつかない価格だった、と記憶している。もちろん大ヒット商品となったのだが、筆者を含め周囲では誰も持っていなかった。学研の「科学」に掲載されている広告をじっと眺めては、「欲しいなあ」とため息を漏らすばかり。ごくたまに「持っている人がいる」と聞くと、自転車に乗ってどこであろうと出かけた。そんな数少ないチャンスでも、子供の乱雑な扱いのため、ブロックが1つ無くなっていたりしていて、満足に遊んだ思い出がないのだ。

 そんな「電子ブロック」が復刻されたのだから、話題は沸騰した。学研の「大人の科学シリーズ」の1アイテムという位置づけだが、売れ行きは別格のようだ。4月末の発売では、店頭に並ぶやいなや数日で完売となった。通信販売を行なっている学研の公式サイトでも次に手にいれられるのは「7月入荷分」というのだから、静かに熱く盛り上がっている様子が十分過ぎるほど伺える。かくいう筆者も復刻版を手にしたときは、さすがに心が震えた。

「電子ブロック」本体。子供向け玩具とは思えないほどの高級感を感じさせる パッケージ。「復刻版」などの文字が加えられているが、オリジナルに忠実にデザインされている


当時の最高機種をマニュアルもそのままに復刻!

 今回、復刻されたアイテムは、かつてフラグシップモデルとして位置づけられていた「EX-150」。46ものブロックが同梱され、150種類の回路を作ることが可能だ。同梱されているのは、「電子ブロック本体」、「ブロック」を中心に、「マイクロホン・アンテナ線」、「イヤホン」、「 60cmコード・テスター棒」といったパーツ類。

 感心させられたのは、マニュアル。当時の紙面を完全に復刻しているのだ。大きめのルビも、時代を感じさせるイラストも、わずかに適当なところがある説明文も、いい味を出している。唯一現在の編集が施された前書きには「当時のままに復刻してあります。(中略)今の時代に合わない内容、表現も一部にあります。すべて、当時の雰囲気をいかすためです」とあり、その心意気に感激させられる。

様々なパーツが組み込まれたブロック。キットには46個、入っている イヤフォンやテスターなどのパーツ類。回路によっては、これらを使用する
完全に再現されたマニュアル。合計160ページ マニュアルの冒頭にある本体の解説ページ


 それにしても150種類の回路を作れるというのは圧巻だ。マニュアルをめくっていくと、「ダイオード検波ラジオ」、「時限ブザー」、「トランジスタ検波1石ラジオ」、「エレクトロニックオートバイ」、「騒音レベルメーター」、「電子クラクション」、「モールス練習機」、「簡易水質計」、「無線電信機(A波)」、「マイクミキシングつきラジオ」、「高周波増幅1石+ICアンプラジオ」……と、用途も内容も様々な回路が目に飛び込んでくるのだ。当時、手にした子供が受けた興奮たるや、すごいものがあっただろう。

「うそ発見機」の組み立て図。この通りにブロックを並べればよい こちらは「脈拍計」。脈拍に比例して、VUメーターの針が揺れる



ブロックの並べかたによって、様々な機器になる

 電子ブロック本体を簡単に解説しておこう。本体の下部、透明のケースに覆われている場所が、ブロック・スペース。マニュアルに従って、ここにブロックを並べていく。上部の最も左にあるツマミが、ダイヤルだ。ラジオやマイクを組み立てたときは、これで同調を取る。その右隣にあるツマミは、ボリュームだ。アンプの音量調整や可変抵抗の役目を担う。その上にあるのはcds。回路によって発光する。最も右にあるのが、アンプとスピーカーだ。

 ブロックにも触れておこう。スケルトン・グリーンの本体に、トップには内蔵されているパーツを示す記号が描かれている。下から中を覗くと、パーツがハンダづけされている。46種類あるブロックは、「トランジスタ」、「抵抗」、「コンデンサ」、「コイル」、「トランス」、「ダイオード」に分類される。

「電子ブロック」本体の上部。ダイヤルやVUメーターなど、アナログ式の計器がズラリ 本体の上部。ブロックを並べるスペースは、普段はアクリルカバーで保護されている
ブロック。機能がひと目でわかるように、記号が刻まれている 下から覗くと、パーツがハンダ付けされているのが見える


 机の上に並べた本体とブロックを眺めていると、あれもこれも作りたい、と気分が高まってくるが、筆者は初心者にも等しいので、マニュアルの最初にある「電気回路と電流」にトライしてみることにする。マニュアル通りにブロックを並べると、豆電球が光る、というものだ。

 使用するブロックは8個とあって、作業はすぐに終わった。電源スイッチを押すと、ブロックの中の豆電球が輝き始めた。冷静に考えてみれば、単に電球がついただけのこと。なのに、なぜこんなにも感激が味わえるのだろうか。自分の手で回路を組み立てたからだろうか。それとも昔の夢を叶えられたからだろうか。あるいは豆電球が光るという素朴なギミックに、彼方へと去ってしまった「'70年代」の香りを感じられたからだろうか。いずれにしろ、楽しくなってきた!

回路ナンバー「1」の「電気回路と電流」。ブロックを正しく並べると豆電球が光る 「エレクトロニックバード」。音声を聞かせられないのが残念なほどにきれいな音が鳴る



鳥の鳴き声、ラジオ、うそ発見器。作るほどに楽しさが広がる

 次は「電子ブロック」が小鳥の鳴き声を発するという「エレクトロニックバード」を作ってみた。使用ブロックの数は一気に増えて、32個。こうなると完成まで時間がかかるようになってくる。作業で最も難しいところは、ブロック選びだ。似たような記号が多く、またブロックの総数も多いため、目当てのモノを探り当てるのに、意外と時間が必要となるのだ。

 すべてのブロックを並べ終え、電源スイッチをオンにすると、「ギュウウウウウウ、ジザアアァァァ……」と耳障りなノイズが響いてきた。うーん、小鳥の声と解釈することはできなくもないけれど、あまりにダミ声すぎやしないかい!? と改めてブロックの配列を確認してみると、1個欠けていたのがわかった。あわてて修正すると、「ピュウ~ピッピッ」という小鳥の声が耳に心地よく響いてきた。ブロック1つで、こんなにも変わるものなのか! と気分はすっかり小学生モードになっていく。

 ラジオにも挑戦してみた。ラジオは使用するパーツ別に複数の種類のものを作れるのだが、最も強力そうな「高周波増幅1石+ICアンプラジオ(トランス負荷)」を選んだ。ブロックの数は25個。並べ終えたあと、電源を入れると、「ザッザッ……」とラジオ特有のノイズが聞こえてきた。

 ダイヤルを回していくと、かすかに音楽が聞こえてくる。ダイヤルを細かく調整すると、チューニングがピタリと合い、「ギュウイイイイイン」と、ギターが鳴り響いた。どうやらセッション曲のようで、ドラムやベースが激しくからんでくる。表示が一切ないため、何の電波なのか、どの局なのか不明なのだけれど、音質は非常にクリア。ギターもドラムも鮮やかにクッキリと聴こえる。正直、ラジオとはいえ、音質は甘いだろうとタカをくくっていただけに、ちょっとしたショックを覚えた。

「高周波増幅1石+ICアンプラジオ(トランス負荷)」の配置。とてもいい音で鳴る 「うそ発見機」。指先から発せられた汗をテスターが感知する


 最後は、子供のころから体験してみたくてしょうがなかった「うそ発見機」を作ってみた。ブロックは18個と少なめだが、イヤホンとテスターを使用する。仕組みは、人間がうそをつくときの発汗を利用し、テスターをつまんだ指先から汗を感知したら、イヤホンに流れているノイズが変調する、というものだ。汗を感知するシステムとは、意外と本格的。

 どんな結果になるだろうかと勇んで挑んだら……いまいち感知できなかった。仕事場のスタッフに協力を仰いで参加してもらったが、残念ながら、こちらも目覚しい結果が得られなかった。感度が悪いのか、それとも我々がうそをつくのが平気なほどに図太く成長してしまったのか……理由は不明だが、少年時代に試していたら、面白いようにうそが発覚していただろうなぁと思われる。うーむ、残念。

 感想は、今さら多くを語る必要はないだろう。とても堪能できた。当時は価格の高さがやはり気になっていたものだが、この完成度の高さと遊びがいの深さはダテじゃない。

 電子回路を作っていく面白さはもちろんのこと、ブロックを淡々と並べていると、少年時代の思い出が次々に蘇ってきて、ゆったりと充実した時間を過ごすことができた。もしこれが「21世紀版電子ブロック」などとしてアレンジを施されていたら、ここまで楽しむことはできなかったかもしれない。完全な復刻を企画し、実現した学研に拍手を贈りたい。

□学研のホームページ
http://www.gakken.co.jp/
□「学研電子ブロック EX-SYSTEM EX-150」のページ
http://kids.gakken.co.jp/kit/otona/7/
□大人の科学シリーズのページ
http://kids.gakken.co.jp/kit/otona/


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(2002年5月16日)

[Reported by 元宮秀介 (ワンナップ)]


ウォッチ編集部内GAME Watch担当 game-watch@impress.co.jp

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