【特別インタビュー】

「決戦」シリーズに込められた
シブサワ流エンターテインメントの姿とは?
シブサワ・コウ特別インタビュー 【後編】

【シブサワ・コウ氏】

 後編では、「決戦II」プロデューサー、シブサワ・コウ氏に「決戦」シリーズの陣頭指揮を執るまでに至ったきっかけや、次回作の話、他ハードへの興味など、「決戦II」周辺に関するお話を伺った。


■ 「決戦」シリーズに携わることになったきっかけ

 今回の「決戦II」で、「決戦」シリーズは2作目になりますが、このシリーズの陣頭指揮を執ろうと思った理由といいますか、きっかけは何でしょうか?

シブサワ・コウ氏 私(襟川陽一)がコーエー会長になったときに時間に余裕が出てきたのと、ちょうどその頃にプレイステーション 2が登場しまして、しかも、ずば抜けたコンピュータグラフィックス性能を備えている。ひょっとするとこのマシンを使って、前々から夢に描いていたことが実現できるかなと思ったことがきっかけになりました。

 その夢とはいつ頃から考えていたことなのですか?

シブサワ・コウ氏 20年間もシミュレーションゲームの制作に携わってきましたから、実際に大規模な戦闘が表現できたらどんなに凄いだろうなということは、ずっと昔から考えていました。これまでは駒と駒とぶつかり合うような、非常にシンボライズ化された表現でしか大規模戦闘を扱えなかったわけです。

 もし、多人数の歩兵や騎馬兵が実際に戦っている様子が表現できたら、どんなにか楽しく、リアリティの高い戦闘が実現できるだろうと考えました。しかし、現実的には、プレイステーションでも格闘アクションなどを見ればわかりますが、キャラクターが激しい動きをする場合は、1対1か、せいぜい2対2が限界で、とても100人などは不可能でした。ところが、プレイステーション 2はそれができそうなスペックを備えていました。すると、俄然やりたくなりまして、時間もあるということで、どんどん傾斜していったわけです。

「決戦II」で名実共に、ついに実現した大規模戦闘の模様。見て回るだけでもいいし、実際に操作してもいい。この自由度の高さが嬉しいところ

 次回作「決戦III」もシブサワ・コウさんがプロデュースされるのでしょうか?

シブサワ・コウ氏 プロデュースします。いま少しずつですが動き始めています。内容はまだ発表できる段階ではありませんが、ひとつの要素としてはインターネットを使った対戦プレイを盛り込むつもりです。

 サーバー専用型ではなく、ロビーサーバーを用意して、そこで出会ったプレーヤーと1対1の対戦を楽しむような形を考えています。もちろん、シングルプレイも遊べます。「決戦」のテーマは大規模戦闘にありますから、「決戦II」規模の大規模戦闘が1対1で対戦できるようにするつもりです。協力プレイではなく、1対1の対戦にします。

 プレイステーション 2が出て、ご自分でゲームを作ってみたくなったということですが、「信長の野望」「三国志」で陣頭指揮を執るつもりはないのですか?

シブサワ・コウ氏 いまはもう「信長の野望」も「三国志」もキチッとチームができて、それぞれ長い歴史と伝統がありますので、信長、三国志は彼らに頑張ってもらって、私はゼネラルプロデューサーとして、大局的な指揮を執るだけに留めておくつもりです。  直接的に細かい仕様にまで入っていくのは「決戦」シリーズだけです。やはり、私は大規模戦闘をインタラクティブで楽しめる世界、しかもそこに映像表現を取り入れて、もっとリアリティのある新しいエンターテインメントの世界を作り出していきたいです。

 「信長の野望」「三国志」をプレイしたユーザーの中には、ちょっと物足りないかな、もう少し細かいところまで指示を出したいな、と考える人もいるのではないかと思いますが、そのあたりの難易度的な面も含めて、どのようにお考えですか?

シブサワ・コウ氏 劉備(りゅうび)でプレイしていくと、だんだん内容が戦術的、戦略的に深くなっていくようにしています。当然、難易度も上がっていきます。中には相当頭を使わないと勝てないようなマップも含まれています。30ステージをクリアするのに、普通の人で30~40時間、うまい人でもだいたい20時間ぐらいはかかるかと思います。前作の3倍ですね。

 その一方で、初心者のユーザーには、迷わず遊べる工夫を施しています。たとえば、今回「決戦II」の最初の戦闘「徐州の戦い」は全編チュートリアルになっています。美三娘(びさんじょう)というガイド役の女傑がいるんですが、彼女の指示通りにキーを操作していけば、ステージが終わる頃にはキー操作がわかる。マニュアルを読まなくても自然と覚えられるようになっています。
戦闘の合間には、国家の基本方針を定める「政略」イベントが発生する。提案の選択によって、戦力に変化が加えられるが、劉備軍と曹操軍の戦力差はかけ離れているので、どれを選んでも不利な状況に変わりはない


■ 「ゲームと映画の融合」がシブサワ流エンターテインメント

 突然ですが、シブサワ・コウさんの頭の中にあるゲームエンターテイメントとは、黒澤明監督の映画をゲーム化するといったイメージでしょうか?

シブサワ・コウ氏 いやいや、黒澤監督のほうがずっと上ですし、またあれをゲーム化できるようなものでもありません。

 ただ、映画とゲームを融合していくことによって、よりダイナミックでエンターテイメント性の高い世界が表現できるのではないかとは思っています。映画の世界で活躍されている方々に、ゲームの世界で参加していただくことによってもっとゲームをおもしろくしたい。たとえば、俳優さんはもちろんですが、監督さんですとか音響さんですとか。とにかく、映画の世界では当たり前に行なわれていることをゲームの中に取り込んで、融合させていく。そうすることによって、また新しい世界が開けるのではないかと思っています。

 贅沢なことをいいますと、もっと大きな解像度で遊ぶことができれば、もっとダイナミックになったのではないかと思うのですが、そうなるとプラットフォームはPC、Xboxと絞られてきますが、他ハードへの興味はおありですか?

シブサワ・コウ氏 そうですねぇ。確かに群れ制御の人数を増やして、もっと広い戦場で戦わせてみたいとは思います。ただ、PCではスペック的に難しいと思います。Xboxは、まだ研究中でどこまで仕様を盛り込めるのかわかりません。公称としてはプレイステーション 2の3倍の性能を持つと言われていますので、「決戦II」並みか、もしくはそれ以上のものができるかもしれませんね。

 これは個人的な質問なのですが、シブサワ・コウさんは馬が大好きなのではないかと密かに思ったりしています。騎馬に対する特別な想いとかあったりするのでしょうか?

シブサワ・コウ氏 ウチも「Winning Post」シリーズを初め、馬が活躍するゲームをたくさん出してますからね(笑)。確かに馬は好きです。北海道の牧場で馬の澄んだ目を見ると感激します。それになにより馬が走る姿は美しいですからね。「決戦II」の騎馬の動きにも注目してみてください。

騎馬の豪快な動きその壱。これは乱戦中の部隊に集合をかけ、部隊整列後、突撃を行なっているシーン。敵部隊が集中している地点に突っ込ませるのがポイント

騎馬の豪快な動きその弐。選ばれし英傑のみが使用できる特技“単騎駆け”。単騎で敵陣をずたずたにできる気分爽快な特技だ。これも実際にプレーヤーが操作できる。画面の武将は趙雲(ちょううん)だ。

 「決戦II」では、シブサワ・コウさんがやりたかったことはすべて実現できたと考えていいのでしょうか。また、一番注目してもらいたいところはどの辺でしょうか?

シブサワ・コウ氏 私がやりたいことはほとんどできました。注目してもらいたいのは、群れ制御エンジンに直接プレーヤーが介入していけるというところですね。ダイナミックな戦闘とドラマティックなストーリーをたっぷり楽しんでいただきたいと思っています。

 これから挑戦していきたい部分はどの辺にあるのでしょうか

シブサワ・コウ氏 ゲームと映画の融合をもっともっと深めていきたいです。具体的には映像表現とゲームシステムをもっと密接に関連づけたい。「決戦II」ですと、政略や軍議のシーンなどにプレーヤーが介入できますが、フルボイス、フルアニメーションにすることで、プレーヤーはあたかもその場にいるような感覚が味わえるようになっています。次回作では、こういった場面をもっともっと増やしていきたいですね。

 最後に「決戦II」はどういったユーザー層に遊んでもらいたいとお考えですか

シブサワ・コウ氏 すべてのゲームユーザーに幅広く楽しんでもらいたいと考えております。前作はだいたい25才ぐらいをターゲットにしていましたが、今回もその辺は同じです。プレイステーション2のユーザーは、意外と年齢層が高かったりしますが、その一方で、(もっぱらDVDを観るために使っていて)ゲームはあまりやらないという新しいタイプのユーザーもいらっしゃるみたいなので、「決戦II」はそういった方にぜひ楽しんでもらいたい作品です。あとは、昔はよくゲームで遊んだけど最近はやらなくなったという方にも、新しい感動があると思います。

 「決戦II」では、映像だけでも120分入っています。しかも、ムービーとゲームがシステムとして密接に組み合わされています。ぜひこの辺のおもしろさを試していただけたらなと思っております。

【美三娘(びさんじょう) 対 虎稚(こち)】
三国志といえば、ご存じ一騎討ち。というわけで、一騎討ちシーンを連続画面でご紹介。「決戦II」では、一騎討ちは自動発生ではなく、プレーヤー自ら仕掛けられるようになっている。余談だが、女性武将の一騎討ちでは、胸の動きに注目! 「決戦II」に密かに搭載された制御エンジン「“ムネ”制御エンジン」によって再現されたリアルな動き、というか揺れをこっそり堪能しよう

【孫麗(そんれい) 対 蔡文姫(さいぶんき)】
孫権の妹孫麗(そんれい)と、辺境より来る妖術師蔡文姫(さいぶんき)との一戦。「決戦II」の一騎討ちパターンは、十数種類用意されているとのことで、さらに特定の武将のみで見られる特殊なパターンもあるという。これもそのひとつ

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□関連情報
【3月26日】シブサワ・コウ特別インタビュー 【前編】
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20010326/kessen1.htm
□関連情報
【3月19日】最新スクリーンショット集 「決戦II」
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20010319/kessen.htm

(2001年3月27日)

[Reported by 中村聖司]


ウォッチ編集部内GAME Watch担当 game-watch@impress.co.jp

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