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南部ゴシックの不快で魅力的な世界。「South of Midnight」プレビュー
アメリカ南部の神話を辿るユニークなアクションアドベンチャー
2025年2月12日 01:00
- 【South of Midnight】
- 4月8日 発売予定
- 価格:
- 通常版:5,390円
- Premium Edition:7,040円
4月8日発売の「South of Midnight」はアメリカ最南部のディープサウスを舞台とするアクションアドベンチャー。対応プラットフォームはXbox Series X|SとPC、開発はCompulsion Gamesが務める。Xbox Game Pass対応。
本作の特徴は、南部アメリカの伝承などに登場するクリーチャーがゲーム内に出現すること。また、南部ゴシックと呼ばれるジャンルの物語として定義されているのも特徴の1つと言える。
南部ゴシックとは、アメリカ南部の文化的な雰囲気や、社会問題の掘り下げなどが盛り込まれた物語のジャンルの1つ。人種差別や貧困など、人が読んでいて不快感を引き起こす類のテーマを意図的に取り上げる事が多いのも南部ゴシックの特徴の1つとされる。
ゲームでの例としては、「バイオハザード 7 レジデントイービル」や「レッド・デッド・リデンプション2」などのタイトルにも南部ゴシックの要素が取り入れられているとされている。
「South of Midnight」の主人公は、19歳の黒人の女の子、ヘーゼル。プレーヤーはヘーゼルとなって、南部ゴシックの記憶の世界で母を救い、故郷を守るべく、魔法の力を使って伝承上のクリーチャーたちと対峙していくことになる。
今回はメディア向けに公開されたプレビュービルドを遊ぶ機会が得られたので、実際に触れて操作してみた感触などについて紹介していきたい。プレビュービルドでは、数あるエピソードの内、Chapter3のみがプレイ可能だった。
軽快な操作が楽しいフィールドアクション
Chapterがスタートすると、ナレーションとともに、版画調の挿絵が入った絵本のようなビジュアルで、概要が語られる。故郷のプロスペロが災害に襲われてしまったので、自分の家を探す旅に出たヘーゼル。ここで彼女は故郷の伝説のウィーバー(織り手)「Mahalia」(マヘリア)の存在を知る事になる。
本作は三人称視点の3Dアクション。ビジュアルは、アメリカ南部の深い森、どこまでも続く湿地帯のイメージが中心。ストップモーションアニメが画作りのベースとなっており、ファンタジックな趣が強い。
Chapter3がスタートすると、森の中に色鮮やかな花や、多くの木々が立ち並ぶ。ちょっと森を歩いているといきなり戦闘シーンとなる。敵となるのは「HAINT」と呼ばれる悪霊だ。ヘーゼルは魔法を駆使してこのHAINTたちを倒しながら、物語を進めていく事となる。
本作における魔法の世界観は全体的に織り物にちなんだものとなっているのが、本作ならではの独特の感性が味わえるポイントだろう。例えば、魔法を使う人たちの事を魔法使いとは呼ばず、ウィーバー(織り手)と表現しているほか、魔法で使用する器具は全て織り物にちなんだ物ばかり。HAINTが出現する経緯も、「グランドタペストリーが人々の悲しみによって傷つけられると、その糸が傷つく。傷ついた糸がスティグマ(日本語では差別や偏見と訳される)となり、ウィーバーにしか見えない恐ろしい生き物、HAINTSを生み出す」とある。
このように独特の世界観や雰囲気が随所に感じられる本作だが、操作やアクション自体は非常にオーソドックスだ。アナログスティックによる移動や視点変更、Aボタンのジャンプ操作、Lスティック押下によるダッシュなど。Rスティック押下では、次に向かうべき場所が白い糸のようなビジュアルで示される。
加えて、今回のChapter3では、ヘーゼルは新たな移動スキルとして、Aボタン2度押しによる「DOUBLE JUMP」(2段ジャンプ)や、Bボタン長押しで、グライダーのように空中を滑空して飛距離を伸ばすことができる「GLIDE」、壁をダッシュできる「WALLRUN」のスキルが獲得できた。また、特定の場所でLBボタンを押す事で、過去に存在していたオブジェクトを一時的に復元できる魔法も利用できる。
いずれのスキルも操作性は良好な上に、あまり精密さは必要としないため、かなり軽快にアクションが楽しめる。こうしたアクションは比較的得意ではない筆者だが、どのスキルも1度教わっただけで軽快に楽しむことができた。
特に壁をスピーディーに走り抜けるWALLRUNはかなり気持ちいい。また、戦闘の難易度調整についても、デフォルトのバランス、簡単設定のイージー、物語重視のストーリー、より難度の高いアドバンスド、その他項目を調整できるカスタムと豊富に用意されているので、ストーリーメインで楽しみたい場合には、イージーやストーリーを選ぶことで、バトルで詰まるような事はなさそうだし、バトルをガッツリ遊びたければアドバンスドやカスタムで好みの難度に調整でき、幅広い層が楽しめる印象だ。
シビアな駆け引きが重要な悪霊「HAINTS」たちとのバトル!
本作のバトルは要所で発生し、敵となるHAINTたちを倒し、最後に残った「結び目」を「ほどく」(Unravel)ことで解放され、敵は消滅することとなる。複数の敵が同時に出現するが、全ての「結び目」をほどく必要はないようで、主要な1つの「結び目」以外はほどかなくても一定時間で消失した。
通常の移動操作に加えて、短い距離をダッシュで移動するドッジで敵の攻撃を回避し、手持ちのフックを使って発動できる通常攻撃のウィーブ(Weave)でダメージを与えて相手を削る。攻撃ボタンの長押しでチャージし、遠くの敵にもダメージを与えられる「Amplified Rend」や、ドッジの後に攻撃操作することで、より高いダメージを与えられる「Rending Step」などのスキルもある。さらにはRTトリガーを使った遠距離攻撃「Standard Push」のほか、敵を引き寄せる「Standard Pull」はLTトリガーで発動する。
バトルの感触としては、イージーモードにした場合でも、なかなか骨のある戦いだったという印象だ。考えなしで闇雲に攻撃ボタンを連打するだけでは勝てない。HAINTSたちはつかず離れずで動き回り、こちらが接近すると攻撃を仕掛けてくるため、敵の攻撃を予測して回避してから、こちらの攻撃を合わせるようなアクションが重要となる。
操作感は悪くなく、多くの人がスピーディーなアクションバトルを楽しめる作りになっている印象だ。HAINTSによっては、強力な攻撃が発動する前に赤色のビジュアルで危険を知らせてくれる。その場合は、ダッシュで回避をすればOKだ。
後はHAINTSたちそれぞれの特性をきちんと理解して戦うのが重要な要素となりそうだ。HAINTの中には一定量のダメージを受けると、色が黄色に変化して、爆発攻撃を行なって大ダメージを与えてくる物もいる。こうした敵の特性を理解して立ち回る事で、より戦闘に勝利しやすくなるだろう。
本作には特にレベルや経験値といった概念はないが、Chapter3開始時に獲得していた戦闘スキルに加えて、敵を倒した時やフィールド移動時に見つかるスキルポイントを貯める事で、スキルをアップグレードする機能が用意されている。
今回のプレビュービルドで確認できたスキルは、空中にいる時に発動する事で、地面に衝撃を与えて周囲の敵に範囲攻撃できる「Aerial Rend」、ほどくアクションの時に衝撃を起こして周囲の敵にダメージを与えられる「Weaver's Blitz」があり、これらは新たなスキルとして追加される。
加えて現在取得している3つのスキルをさらに強化する事も可能だ。通常攻撃(Weave)を強化する「Stigma Bane」、Standard Pushを強化する「Scourged Push」、Standard Pullを強化する「From Thread to Hook」だ。
今回のプレビュービルドで獲得できるスキルポイントの量だと、これら5つの強化のうち1つ、または2つまで選択して強化が可能だった。もちろんChapter3に来るまでにポイントを貯めたり、以降のChapterでポイントを貯めればより多くのスキルが解放できそうだ。
スキルポイントは、本筋の道から外れた場所に隠されている事が多いため、本筋を追いすぎずに、フィールドをくまなく探して回ることでより多くのスキルポイントが獲得できる。また、「Health Filament」と書かれた緑色のオブジェクトもあり、こちらは取得すると体力が回復できる効果に加えて、3つ獲得することで体力の最大値が上昇する。
加えて、フィールド上には古びた建物に貼られた昔の張り紙などがあり、アクセスすることで、当時の社会情勢などが確認できる。こうやって獲得した情報は「LORE(伝承)」に追加され、後からでも内容が確認できる。こうしたやり込み要素などもあるので、フィールドをくまなく歩き回って色々チェックしたくなる仕掛けも用意されている点は魅力的だ。
伝承の巨木のトラウマを解消せよ!巨大なナマズなども登場
続いて、本作の見どころのひとつとなっているストーリーについて述べたい。Chapter3では、森の奥に進む道中は伝説のウィーバー(織り手)、マヘリアの幽霊の後を追いながら、物語を進めていくことになる。水辺にたどりつくと、そこで巨大なナマズが登場し、母の行方を一緒に探してくれるという。
ただしナマズと共に行動するためには、ナマズを捕まえている巨大な樹木のクリーチャー「Benjy」を解放する必要があるという。そこで「魔法のボトル」を使って、フィールド内に散りばめられたBenjyの古い痛みを回収して、Benjyの古傷を癒すように依頼される。
ここでChapter3開始以後、幽霊やナマズなどのクリーチャー以外では初となる人間と遭遇する。その男の名前が「Rhubarb」で、実は彼こそBenjyの弟なのだ。そして、後から知る事実だが、Benjyの心の傷を作った張本人でもあったのだ。彼から魔法のボトルを託され、ヘーゼルはBenjyを癒すための探索の旅に出る事になる。
道中でヘーゼルは、Benjyが周囲の人たちと生まれつき何か(はっきりとは示されない)が違うという理由でいじめられ、仲間外れになっていた事を知る。そして、そんな兄に対してRhubarbが厳しく当たり続け、最終的にはBenjyを騙して木の中に閉じ込めて殺してしまったという衝撃の事実を知る事となる。
そしてそのことに同情した「木」の大地の魔法によって、Benjyは巨大な木になったという経緯が語られる。最終的にBenjyに刻まれた古傷を回復させることで、Benjyは癒され、捕まえていたナマズを解放してくれる。無事解放されたナマズの背に乗り、ヘーゼルは更に森の奥へと旅を続けることになる。
本作には登場するキャラクターや、アイテム、Chapter内で新たに登場した事象やクリーチャーなどが紹介された「LORE」が用意されている。Benjyに関する紹介文についても確認したが、上記で触れた以上の事についてははっきりしなかった。
時代背景を鑑みた時に、周囲から迫害されてしまう生まれつきの理由とは何だったのだろうか? 実の弟であるRhubarbが殺さざるをえないくらいに周囲から圧力を受けるほどの理由とは何なのか? この辺りを推察しながらゲームを楽しむのも本作の醍醐味の1つと言える。
理由はどうあれ、巨大な樹木のクリーチャーへと変化したBenjyは、今では沼地で自然に囲まれて、生前は感じた事のないような動物たちからの感謝を楽しんでおり、枝からは巨大な桃を落とすのだという。フィールド内ではたまに巨大な桃を見かけるが、これはBenjyの木に実った物だったようだ。
LOREを確認すると、他の情報も確認できる。例えばヘーゼルの父であるトレイはヘーゼルが4歳の時に他界してしまっている。また母のレイシーはソーシャルワーカーで生計を立てているが、彼女の内面の問題も本作の今後の展開に大きく影響していきそうだ。
不思議な世界観とダークなエピソードが魅力の1本
今回プレイしたのはChapter3のみではあるがアクションゲームとして見ると、かなりシンプルで遊びやすい。それでいてスキルなどは豊富に用意されており、操作部分は軽快に楽しめるだろう。
一方で、ストーリーはアメリカ南部の偏見や差別といったダークな内容が主題となっている事もあり、語られるエピソードはChapter3やLOREで見る限りではかなりドロドロとしている印象だ。嫌な雰囲気が常につきまとうような、それでいてどこか魅力的な、そんな内容が好きな人にとっては注目のタイトルだし、難易度調整もあるので、物語を中心にチェックしたい人にとっても楽しめる内容なのは間違いなさそうだ。
クリーチャーデザインを含めた個性的なビジュアル、南部ゴシックに焦点を当てたエピソード構成など、凝った作りが「South of Midnight」の特徴だろう。これまでになかった舞台設定とストーリーが楽しめる、ユニークなアクションアドベンチャーと言えるのではないだろうか。