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【夏休み特別企画】大人でもわかる「刀剣乱舞-ONLINE-」解説講座
「刀剣乱舞」はなぜ女性にウケるのか? 自身もハマった女性ライターが解説!
(2015/8/12 00:00)
2015年1月にサービスが開始されて以降、特に女性を中心に大人気のブラウザゲーム「刀剣乱舞-ONLINE-」。その人気ぶりは「刀剣」ブームなる現象をも引き起こしていますが、「流行ってるよね」程度の認識で、なぜここまで人気があるのかまでは知らない読者も多いのではないでしょうか?
今回は夏休み特別企画ということで、最近「刀剣乱舞-ONLINE-」にハマりっぱなしというライターの高橋友子さんが、男性と女性の脳機能の違いにも踏み込んだ独自目線で、「なぜ『刀剣乱舞-ONLINE-』は女性に人気があるのか?」を解説します。
著者紹介:高橋友子
大学ゼミで少女漫画について研究したことをきっかけに、少女漫画コラムの執筆をはじめる。少女漫画と少年漫画がどう違うのかを脳科学や心理学を絡めて解読している。最近は乙女ゲームにはまって引きこもり中。
なぜ「刀剣乱舞-ONLINE-」は女性に人気があるのか?
今年の夏はいろいろおかしい。この猛暑もそうだが、夏休みにあわせて水戸の徳川ミュージアムでは燭台切光忠、東京国立博物館で厚藤四郎、名古屋の徳川美術館で鯰尾藤四郎の展示が決まった。その他にも全国で次々と名剣・名刀の臨時公開が決定されている。言わずと知れた、ブラウザゲーム「刀剣乱舞-ONLINE-」のブームによるものだ。
これまで刀剣に見向きもしなかった女子たちがいきなり熱く燃え上がり、聖地巡礼と称してナマの刀剣を追いかけている。筆者も含め、「刀剣乱舞-ONLINE-」のなにがそんなに彼女たちの心を掴んで止まないのだろうか。
「刀剣乱舞-ONLINE-」のゲームシステムの流れをおさらい
ゲームの構成は、戦闘や製造によって「刀剣男士」を手に入れる、手に入れた刀剣男士を結成して出陣する、戦闘で怪我をすれば手入して直してあげるといった流れが中心になる。また刀装といって刀剣男士に装備する兵隊を製造することもできる。刀剣を作る鍛刀や刀装、手入れに必要な資材は、木炭、玉鋼、冷却剤、砥石だ。
なおプレーヤーは「審神者(さにわ)」とされているが、ゲーム上には登場しない。そのためキャラクターに声をかけられたり、ゲーム中に話題に上ることはない。
また刀剣男士は着の身着のままで戦うことができるが、あまり無茶な戦わせかたをすると疲労してやる気がなくなってくる。「任務」は、達成すると勝手にマークがつくので、それをクリックするだけ。単発の主要任務と、毎日コツコツ消化する日課任務がある。
戦闘のやりかたも簡単だ。戦闘には、出陣、演習、遠征がある。これらの合戦場に行くとまず索敵をして、敵の陣形を調査する。索敵が成功すれば敵陣形が判明した上で、「雁行陣」、「逆行陣」、「横隊陣」、「方陣」、「魚鱗陣」、「鶴翼陣」の6つの陣形から自身の陣形を選ぶ。このとき、敵陣形がわかっていれば、どの陣形が有利で、どの陣形が不利かを教えてくれるのだ。敵の戦力が大幅に上回っていなければ、たいてい索敵は成功するので、有利な陣形を選べばよい。
簡単だからおもしろい? 脳機能に適したハマるツボ
となると湧いてくる疑問は「そんなに簡単なのにおもしろいの?」ということだろう。異論を覚悟でいえば、「簡単だからおもしろい」のである!
何万年もアフリカの大地で狩猟に明け暮れていた男性たちにとっては、大物を捕まえて家に持って帰るのが生きるために必要な能力だった。そのため戦略や方向感覚などはとても大切なのだそうだ。自分の支配する土地が増えれば狩猟も楽だ。「陣地取り」は男性にとって生き残るのに必要な能力だった。
しかし女の脳みそは、「陣地取り」にあまり興味がない。仲間同士でぺちゃくちゃやりながら木の実を取ったり子育てをしたりしていたからで、人と心地よくコミュニケーションを取るほうが大切だ。赤ん坊や隣人がどんな気分なのかを見極めるほうが、敵を倒す戦略を練るよりも生きるために必要なのである。
女性にとって1番大切なのは「相手に共感すること」だ。「刀剣乱舞-ONLINE-」はそういう「女性脳」のためにカスタマイズされている。刀剣男士を育てるためには出陣させる必要があるが、女たちは細かな戦略にはあんまり興味がないので、そこは思いっきり省略されている。
その代わり、女たちにとって大切なのはストーリーだ。これがないと何に共感していいのかわからない。だから彼らが戦う理由が設定されている。「刀剣を擬人化してみましたっ! てへ」なのではなく、刀剣がイケメンになっている理由がちゃんとあるのである。
そのストーリーとは、「西暦2205年、『歴史修正主義者』が過去に干渉し、歴史改変をもくろんでいた。それに対抗するべく、審神者は刀剣から生み出された付喪神である『刀剣男士』を各時代へ送り込んだ――」というもの。ゲームでは、その刀剣男士たちと歴史修正主義者たちの戦いを描いているのだ。それはいかにも正当な感じだし、決して「侵略」のためではないのがポイントだ。なぜなら女は陣地取りに興味がないから。
そして刀剣男士たちはアンニュイなことを言うやつが多い。「俺は偽物なんかじゃない……!」とか「記憶がなくても……昨日がなくても……何とかなる」といったセリフだ。多くの女はアンニュイなイケメンが好きなのだ。共感しやすいし、構ってあげたくなるし、自分が必要じゃないかと思えるからだ。そしてこういう、女心を痺れさせるセリフをイケメン刀剣男士たちがバンバン喋るのである。
余談だが私の好きな刀剣男士は、見た目は骨喰藤四郎と鯰尾藤四郎だが、どちらも脇差なので華奢な少年風である。また加洲清光もいい。「修理してくれるってことは……まだ愛されてるのかな……」とか「こんなにボロボロじゃあ……愛されっこないよな……」とかかわいらしいことをいっぱい言うので、彼が出てくるだけで痺れふぐ状態である。
刀剣男士との距離感もGood。内番の着替えも萌えポイント!
なお、「刀剣乱舞-ONLINE-」はいわゆる乙女ゲームではないので、ゲーム中に「甘い口説き文句」が一切出てこない。プレーヤーである審神者がゲームに登場しないのだから当たり前なのだが、刀剣男士たちは審神者に話しかけることすらない。ゲーム内で審神者の文字は登場せず、プレーヤーは、神のような空気のような存在なのである。これがまたいい。
男性たちは、「女を落とす口説き文句」とか「壁ドン」とか、「これさえやれば女は落ちる」みたいなのがあると思いがちだが、そんなことはない。女が萌えるのは「ストーリー」である。「刀剣乱舞-ONLINE-」は、甘い口説き文句も壁ドンもない。あるのは、男子たちの過去を彷彿とさせるような意味深なセリフだけだ。
そして、「相手を理解したい」、「共感したい」という女の脳みそは、刀剣男士たちの「意外な」姿にも心を奪われる。「内番」というコマンドでは、男子たちに馬当番、畑当番、手合せの3つのどれかを任命できる。
その内番を任命されると、男子たちはジャージ姿や作務衣といったラフな格好に着替えてくるのだ。これがまたかわいい。普段、アンニュイなことを言ったり、真剣に打ち合っている男子たちが、内番となるとまさかのジャージ姿である。この内番姿も審神者たちの萌えポイントなのだ。ツンデレのギャップ萌えみたいなものだろうか。
このように、「刀剣乱舞-ONLINE-」の作業自体はたいへん簡便だが、遊んでいる女子たちの脳みそはツボを押さえられまくった結果、フル活動しているのである。このゲームのヒットの理由から、女性ファン心理を少しでも捉えていただければ幸いである。