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“Head of Xbox”Phil Spencer氏が語るMicrosoftエコシステムの未来
すべてのPCにゲームを! Xbox Live SDKやID@XboxのWindows 10への提供を発表
(2015/3/5 13:45)
GDCは会期3日目を迎え、通常セッションがスタートし、Epic GamesのTim Sweeny氏や、idからOculusに所属を変えて初の登壇となるJohn Carmack氏など、ゲーム業界のスターが続々登壇し、GDCらしい活況を呈した1日となった。
世界のゲーム産業の一翼を担うMicrosoftは、GDCではダイヤモンドスポンサーとして、1つのセッションルームを独占し、3日間に渡って16のセッションを行なう。その初日のトップバッターとなったのが、Head of XboxとしてXbox事業の全権を握るPhil Spencer氏。Spencer氏は1月のWindows 10の発表会にも登壇し、Windows 10のゲームOSとしてのビジョンを見せてくれた。そして今回は、GDCということでデベロッパー向けの各種提供プログラムが披露された。その内容はメディア/ゲーマー向けというよりは、デベロッパー向けだったが、1月の発表会では知らされなかった、いくつかの新情報も明らかになったので詳しく紹介したい。
今回、Spencer氏は、Xbox事業のトップでありながら、Windows 10関連の情報ばかりを1時間にわたって話し続けた。Xbox One関連はE3やGDC直後に開催されるPAX Eastに取っておくというところもあるのだろうが、長いGDCの歴史でも、Xboxのトップが、Windowsばかり語るという事態は初めてだ。これはいかにMicrosoftがWindows 10に対してゲームOSとして力を注いでいるか、そしてまたWindows 10がXbox事業の切り札として考えられているかが伝わってくる。
Spencer氏は、15年前にXboxが誕生してから絶え間なくゲームやデバイス、ビジネスモデルが多様化していったかという話から語り始め、PS4やPS Vitaというライバルプラットフォームでもヒットしている「Minecraft」を例に挙げながら、多くのゲームファンは、様々なデバイス、サービス、プラットフォームでゲームを遊ぶ時代になっており、プラットフォーマーとしては、その状況に対していかに柔軟に対応し、いかに素早く魅力的なコンテンツを提供するかが重要だとした。
Microsoftとして、そのソリューションのひとつがWindows 10となる。Windows 10は単一のコアで提供されるOSであり、単一のアプリケーションプラットフォーム(Windows Universal App Platform)、単一のゲームソーシャルネットワーク(Xbox Live)、単一のストア(Windows Store)で提供されるOSでもある。PCのみならず、タブレット、スマートフォン、TVといった様々なデバイスで統一されたサービス、コンテンツを提供することが最終的な目標となる。それと同時にWindows 10はWindows史上もっともリッチなゲーム性能を備え、ゲーマーにとってベストなゲームOSになるという。
それを実現するためのプラットフォームとして、Spencer氏はWindows Universal App Platformを発表した。これを利用することで、PC、スマートフォン、タブレットはもちろんのこと、Xbox One、Surface Hubといった機能特化型のデバイス、そしてHolo Lens、IoT(家電等に組み込むデバイス)など今後本格展開を目指すハードウェア群に対しても、同じアプリケーションを提供することができる。クロスプラットフォーム、クロスデバイス展開が非常に容易になるわけだ。
もちろんプラットフォームだけではなく、開発環境も提供する。Xbox Live機能をフル活用するための開発キット「Xbox Live SDK」をWindows 10向けに提供し、さらにインディーデベロッパー向けにはID@XboxのプログラムをWindows 10にも適用する。Xbox OneでもWindows 10でも共通のゲーム用APIが利用できるため、Xbox One/Windows 10向けのマルチプラットフォーム展開が容易になる。ゲームの販売は、Windows Storeを利用し、Xbox One、Windows 10いずれかで購入すれば両方のデバイスで利用可能になるクロスバイにも対応する。
Spencer氏は、ひとしきりアナウンスを終えると、Windows 10向けに開発を進めているタイトルを紹介した。最初のタイトルは「Pinball FX」。Xbox 360とWindows 8向けに展開されたピンボールゲームを、改めてXbox One/Windows 10向けのクロスバイ対応タイトルとしてリリースする。
お次はWindows 10の魅力のひとつである最新グラフィックスAPI「Direct X12」を使った最新PCゲーム「Unreal Tournament」。ゲームエンジンはEpic謹製のUnreal Engine 4を採用。このエンジンは、すでに「Fable Legends」でも採用されており、MicrosoftとEpic Gamesは蜜月関係にある。「Unreal Tournament」はWindows 10向けのPCゲームとして発表され、Xbox One向けについては発表されなかった。
3つ目は「GIGANTIC」。こちらもWindows 10およびXbox Oneのマルチプラットフォーム展開で、新たなIPとなる。基本的なゲーム性は、5対5で争われるTPSスタイルのMOBA系ストラテジーゲームで、「Fable Legends」同様にXbox Liveを介してクロスデバイスでのオンラインプレイをサポートする。タイトルの由来となっている巨大なモンスターと、キャラクターやエフェクトを含め独特のセルシェーダーで描かれる世界観が特徴となっている。どちらのプラットフォームでも快適に遊べるようにキーボード/マウスとゲームコントローラーの両方に最適化されている。
そしてSpencer氏は「重要なアナウンスを行なう」と切り出し、今年1月にWindows 10のカンファレンスでサプライズ発表されたMicrosoftのAR/VRデバイス「Holo Lends」向けのゲーム開発を行なうことを表明。しかもそれは1stパーティー独占ではなく、サードパーティやID@Xboxプログラムを利用するインディーデベロッパーにもHoloLends用のAPIを開放するという。HoloLendsは、まだ機能や性能の面など謎の多いデバイスだが、PCゲームにおけるOculus RIFT、PS4におけるProject Morpheusへの強力な対抗馬となりそうだ。
そしてまた、共通化するのはツールやソフトだけではない。Windows 10デバイスで快適にXboxタイトルが遊べるように、Xbox Oneコントローラーをワイヤレスで繋ぐための「Wireless Adapter」を発表した。これでXbox Oneコントローラーのみならず、多くのXbox OneデバイスをWindows 10でも利用できるようになる。アッサリした発表だったが、Xbox 360の時代はPCとあまり互換性がなかったことを考えると、これはかなりインパクトの大きな発表だ。
今回のSpencer氏の発表はまさにビジョンの提示で、具体的な内容についてはすべて後のセッションに譲る形になっていたが、非常に興奮度の高いないようだったといえる。たとえば、今回のWindows 10におけるゲーム向けの施策の結果、Microsoftのゲーム向けオンラインサービスXbox Liveは、10億単位のユーザーを新たに抱え、単一の規模としては世界最大のゲームコミュニティサービスが誕生することになる。これはXboxユーザーにとっても、Windowsユーザーにとっても非常にエキサイティングな発表だと思われる。その他のMicrosoftセッションの内容は別稿にて順次カバーしていく予定なのでどうぞお楽しみに。