【特別企画】
10年の時を経て、フルHD&フルボイス化された「魔法使いの夜」体験版先行プレイレポート
背景やエフェクトなど多彩な演出が詰まったビジュアルノベルに
2022年11月3日 21:00
- 【魔法使いの夜】
- 12月8日 発売予定
- 価格:
- 7,700円(初回限定版)
- 6,600円(通常版)
- 7,150円(デジタルデラックス版、PS4のみ)
アニプレックスは、12月8日に発売するビジュアルノベル「魔法使いの夜」の体験版先行試遊会を開催した。本作は、2012年にPC向けタイトルとしてリリース済みではあるが、このたびプレイステーション 4とNintendo Switchへ移植されることとなり、フルHD化&フルボイス化が行なわれて発売される。
TYPE-MOONが開発を行なうタイトルとなっており、シナリオを担当するのは「Fate/stay night」や「Fate/Grand Order」の総監督などでおなじみの奈須きのこ氏。キャラクターデザインを担当するのは同じく「Fate/Grand Order」で一部のキャラクターデザインを手掛けるほか、同シリーズに数多く携わるこやまひろかず氏で、原作のスタッフが集結している。2021年にはTYPE-MOONにおける代表作の1つ「月姫」がPS4およびSwitch向けに発売され大きな話題を呼んだが、同ブランドから2012年に発売された「魔法使いの夜」が現行機向けに改めてリリースされる形となる。
今作ではストーリーやシステムへの変更は行なわずキャラクターの立ち絵や背景を鮮やかに一新。原作版では声が用意されていなかったキャラクターについてもボイスが追加され、フルボイスで物語が描かれる。なお、楽曲に関してはアレンジが施されている。
今回一足早くプレイできたのは、11月3日に配信される体験版と同じバージョンのPS4版。プレイを始めても、とりたてて詳しい説明は行なわれずに物語の一部分が語られるという構成になっている。なので、ここで簡単にストーリーと主要な登場人物を紹介しておこう。
舞台となるのは、華やかさと活力に満ちた1980年代。田舎から都会に出てきた少年は、現代に生きる2人の魔女とすれ違う。少年はごく自然に暮らしてきて、彼女は凛々しく胸を張って、少女は眠るように隠れ住んで……。三者三様の星の巡りは、交わる事なんてもってのほか。何もかもが違う3人の共同生活が始まるのは、あと、もうちょっと先の話――
体験版は、青子が学校から屋敷に帰ってきたシーンから始まる。帰宅後、徹夜で仕込んだ“見張り塔”と呼ばれるものが上手くいかずに壊れていたことを見つけ、その足で居間に来て紅茶を入れたのだが、そのまま寝落ちしてしまう。ふと目を覚ますと、目の前には一緒に住むもう1人の魔女・有珠が本を読んでいるのを目にする。彼女に事の経緯と、失敗した理由を話す青子。それをひとしきり聞いてから、現代に隠れ住む魔女としては中途半端だと、有珠は無言で青子を責める。それに対して出した青子の返事は……。
ここでは、青子が学校生活を送りつつも魔法使いになるべく日々を過ごしている様子が語られている。そんな本作はビジュアルノベルという立ち位置ではあるが、全編を通して選択肢が登場せず、文章をジックリと読み進めていくスタイル。
あわせて、キャラクターが立ち上がる時であればその人物を下から上になぞるよう画面がスクロールしたり、ドアを開ければ効果音と共にその方向へと画面が遷移するなど、まさにオーディオ&ビジュアルを体感しながらノベルを堪能するという形に仕上がっている。台詞もフルボイス化されており、小説やライトノベルのような書籍を読むことでは味わえない臨場感を得られるのは、まさにゲームならでは。
オートプレイにしてしまえば、最初から最後まで何者にも邪魔されることなく浸ることができるのも便利で、部屋を真っ暗にしてプロジェクターなどで壁に映し出せば、ある意味映画のように楽しめそうとも思った。
続いてのパートは、草十郎の視点で物語が進む。屋敷からアルバイト先へと向かうと、街中で偶然に同級生の金鹿と出会う。悩みがあるなら聞くと言われた草十郎は、屋敷で青い鳥に突かれることを打ち明ける。その話は、気づけば町には鳥が少ないという話題になり、2人はバイトが始まるまで話し込むのだった……。
このパートは、草十郎と金鹿との関係が描かれる。男子には辛辣に当たる金鹿が、草十郎にはそれなりの態度で接していることから、今後の物語にいろいろと絡んできそうと感じたが、果たして?
体験版の3パート目は、屋敷の庭が荒れ放題になっていることに業を煮やした草十郎が、雑草の撤去に取りかかる様が描かれる。まったく手伝う気のない青子と有珠の視点から語られるのだが、草十郎の驚くべき手際の良さに、2人とも驚くばかり。そして物語は、ついに魔女の活動する夜へと移っていく。
掃除のシーンなどは、通常のビジュアルノベルであれば背景画面は変わらずにテキストだけが流れていきそうだが、本作では庭を行き来する草十郎と増えていくゴミ袋、そして綺麗になった庭が時系列で描かれていくので、時間経過をリアルで感じられるのがナイスな点だろう。
体験版最後の舞台は、三咲町と三咲丘の境目にある森の中。真夜中に有珠がそこを訪れると、この世に合ってはならない者、2体の口裂け男と出会う。1体は逃走し、もう1体は彼女に襲いかかってくる。しかし、いつもと変わらない平静さを保ちながら有珠は、その2体を簡単に葬り去り、再び静かになった森を後にするのだった。
これまでの日常シーンから一変し、深夜の森に現れた2体の口裂け男と有珠との戦いが描かれる体験版のラスト。各場面のエフェクトもダイナミックに動くため、読んでいるだけのはずなのに、まるでアニメーションを見ているように感じさせてくれる。筆者としてもオカルト話は大好物なので、こうなると俄然前のめりになってしまうことも含めて、非常に盛り上がったラストパートだったと言えた。
この後、いよいよ本編が始まるのだが、体験版でプレイできるのはここまで。ちなみにNintendo Switch版ではこの後、自動的に予約購入画面へと遷移するので、興味を持った人がそのままポチッとできてしまう嬉しい仕様となっている。
今回は、演出面をメインにしたプレイレポートとして紹介していった。現時点で各機種共に体験版のダウンロードが可能になっているので、詳細な内容が気になった人は、早速プレイして己の目で確かめてほしい。
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