日本ファルコム最新作である「ぐるみん」は、同社の「ツヴァイ」からの流れを汲んだコミカルな世界観をモチーフにした3DアクションRPGだ。元気な女の子“パリン”が伝説の武器ドリルを手に、縦横無尽の大活躍をする。 ファルコムの作品には珍しく本作は声優を起用している。声により演出が強められたムービーシーンでのユニークなドラマも要注目だ。ビギナーモードを搭載しているため、アクションが苦手なプレーヤーも楽しめる。もちろん、腕に自信のあるプレーヤーならば、やりこみプレイも可能だ。
■オバケの世界で元気なパリンが大冒険!
しかし、ティースは鉱山の街。住人は鉱山夫ばかりで、子供の姿はない。ちょっとがっかりしたパリンは街の片隅で犬のうなり声を聞く。小さな女の子が、犬に吠えられている! 必殺のキックで犬を撃退したパリンに女の子は自分の名前をピノと名乗る。「この街にも、ちっちゃな子、いるじゃない」と喜ぶパリン。しかし、ピノの姿が街の他の住人に見えないことに気がつく。実はピノはオバケで、子供しかその姿は見えないのだ。 「まあいいわ、せっかくだから友達になりましょう」こうしてパリンとピノは友達となった。パリンはピノの兄プクに妹を助けてくれたお礼として、オバケの世界へ案内される。オバケの世界では、個性的なオバケ達がパリンを歓迎してくれた。ダンスが大好きなポコ、フランスかぶれのピエール……こうしてパリンはたくさんの友達を持つことができた。 そんなある日、オバケの世界に異変が起こる。あたらしくこの世界に来た「ファントム」と名乗るオバケ達が、パリンの友達をさらっていってしまったのだ。パリンは友達を助けるため、オバケの世界に伝わる伝説の武器「ドリル」を手にする。こうしてパリンの大冒険がはじまるのだ……。 本作はかわいいパリンがドリルというちょっと凶悪な武器を振り回す爽快な3DアクションRPGだ。アクションの楽しさを説明するのは次項に譲るとして、ここでは本作の“センス”と“音楽”について語ってみたい。 オープニングムービーから、ゲームのスタートまでに感じられるのは、本作のセンスの良さだ。ティム・バートンの「ナイトメア・ビフォア・クリスマス」をちょっとだけ彷彿とさせる、シンプルなオバケ達のデザインは独特の雰囲気を持っている。ムービーだけではなく、キャラクタの仕草、カメラワークなどからも、ただ「かわいい」だけではなく、芯の通った統一感のあるデザインセンスを感じさせるものがある。 本作のセンスの良さは、特に“音”に顕著な感じがした。筆者は音楽方面にはちょっと疎いのだが、ポコのヒップホップ系のダンス、メニュー画面のグラフィックイコライザーなど、視覚的な部分でもさまざまなところに“音楽”へのこだわりが前面に押し出されている。また、足音や、ドリルの音などにも効果音も非常に多彩なものが用意されており、注意して聞いていると驚かされること必至だ。 もちろん、音楽そのものからはそれ以上のこだわりが伝わってくる。ギターやドラムをきかせたBGMは、ポップで聴き応えがある。それでいながら「イース」シリーズに代表されるポップンロール系のサウンドも多用されていて、楽曲ごとにさまざまなイメージがちりばめられている。新しい魅力と、ファルコムファンに喜ばれる“伝統的”な魅力の両面を持つ音楽なのだ。ひょっとしたら、声優を起用したのも、本作の“音”へのこだわりからかもしれない。本作は音に非常に魅力を持たせている、耳でも楽しめる作品といえるだろう。 こだわった音に補強されて、本作は楽しいアクションを実現させている。“ドリル”というユニークな武器を使うアクションは、独特の感触をプレーヤーにもたらしてくれる。
■痛快ドリルアクションを満喫しよう!
基本的な操作に使用するのはカーソルキーの他、ダッシュ、ジャンプ、攻撃の3つのボタン。さらに、カメラの回転や、サブメニュー、ロックオン対象へのカメラ移動といったボタンを使う。キーボードの他、マウスでもプレイ可能だが、やはりジョイパッドの使用が直感的な操作もできるため有効だろう。詳細なキーコンフィグがあるため、プレーヤーの好みに合わせて自由に設定できる。 ドリルは攻撃ボタン連打で連続攻撃、溜めることでパリンが両足を踏ん張り、回転するドリルを押しつける攻撃になる。ゲージを完全に溜めるとドリルごと前進する突進攻撃になるのだが、この時、ロックオンに関係なく向いている方向に突進してしまうのでちょっと使いにくい。敵に近づき、敵の背後からドリルを押しつけるという攻撃が有効に感じた。 このため攻撃を使うことで、道をふさぐ岩や、亀裂の入った壁を壊すことができる。場合によっては敵のトラップや神殿の柱も壊すことができ、「破壊しまくり」という、正義の味方としては問題かもしれないが、ちょっと乱暴な爽快感を満喫できることができる。「これも壊れるかな?」という期待が、かなりの確率でかなえられるのだ。気がつくとさまざまなものにわくわくしながらドリルを押しつけているだろう。ものを壊すとアイテムの購入に役立つお金が手にはいるのもこの行為の楽しさを補強してくれる。 ため攻撃以上に強力な攻撃方法としてはコマンド入力式の必殺技がある。最初に覚えるのは、レバー一回転というか、親指の腹で方向ボタンをぐりっとひねってから攻撃ボタンを押すと繰り出せるものだ。パリンが回転して全方位に攻撃を繰り出す非常に爽快な技で、敵に囲まれそうになったときに、ぶんぶんドリルを振り回すパリンを見ているのはそれだけで楽しい。ゲームが進むことでコマンド技は増えていくようだが、この「一回転コマンド」が基本になるようだ。ゲームが進むと、遠距離にエネルギー波を発射する技などもある。 ジャンプに関しては、水面に浮かんでいる足場を飛んでいくなど、アクションゲームでおなじみのトラップを突破するのに重宝する。3Dゲームは、オブジェクトの距離がわかりにくかったり、カメラが壁にめり込みそうになってキャラクタによりすぎてしまいまわりが見えなくなってしまうという、構造的な弱点があるが、本作でもこういった問題を解決しているとは言い難い。 しかし、水に落ちてしまうとダメージを受けてしまう場合なども、これを無効化する装備などがあり、難易度を下げることで操作に対するちょっとした不具合に対応しているように感じた。足場から落ちてしまいそうなときは、自動的にパリンが壁面につかまってくれるのだ。小さな手足で必死につかまっているパリンの姿は非常に可愛らしい。また、イージーモードではジャンプに補正もかかる。さまざまな部分で視点の不具合を補ってくれている。 ジャンプと攻撃を組み合わせると、空中の敵を攻撃し続け、足場のないところを進むことができる。この攻撃は非常に爽快だ。通常こういった操作はシビアになりがちだが、「攻撃、ジャンプ、攻撃」とボタンを押すだけで、入力タイミングも比較的遅めでもチャンと対応してくれる。簡単な操作で、かっこいいアクションが可能となっているのである。
■待ち受けるさまざまなステージ
オバケの悲しみをはらすためには、パリンがステージを走破し、さらわれたオバケや、奪われたオバケ達の持ち物を取り返さなくてはならない。そうすることでオバケ達の心は晴れ、次のステージへの道が開かれるのだ。 “ポテト遺跡”は最初に挑戦することになるダンジョン。崩れ掛けた遺跡は、柱や壁をガンガン壊すことができる。最初のステージはあちこちに操作を助けるためのヘルプメニューと、それを実践させるための仕掛けがあり、練習要素の強いステージとなっている。本作では、テーマごとに多数のダンジョンで構成されており、例えば、ポテト遺跡は入り口である「ナニナノ聖堂」の他に、「メートル回廊」、「センチホール」といった場所がある。奧に行くごとに難易度は上がってくる。 “ラディスの森”は鬱蒼と茂った深い森の迷宮。巨大な木の形をしたファントムや、ドングリの形をしたファントムなど敵の多彩なダンジョンである。全体的に薄暗い雰囲気だが、滝がある場所などは開けていてきれいな場所もある。入り口になぞなぞが仕掛けてあるステージが多いのも特徴だ。 “スピナ洞窟”はトラップが多いステージ。特に毒ガスを吹き出す植物には注意が必要だ。水のダメージを防ぐゴーグル、ガスのダメージを防ぐガスマスクのふたつは必ず持っていきたいし、後述する“強化”も必要になってくる。 これらのダンジョンは一度クリアした後も何度でも挑戦できる。ステージには敵の数やお金が入っているツボの数、さらにはゲームオーバーになったかどうかなどで評価されるシステムがあり、いい成績を記録すると「メダル」がもらえる。このメダルはアイテムやお金と交換できるのだ。 ゲームを進めると巨大なボスとの対決がある。最初に戦うことになるのは、強固な鎧に身を包んだ「ボブー」というファントム。ため攻撃を当てることで鎧を吹き飛ばすことができる。鎧を脱がしてはじめて有効な攻撃を当てることができるのだ。しかし、鎧が脱げてもボブーの大きな体はそれだけで恐ろしい凶器だ。体当たりの他、エネルギー波などにも注意しておきたい。 パリンはボスを倒すことで最大HPが増えるアイテムを入手できるが、ボブーとの最初の対決の時は体力も低く、ゲームにも慣れていないためか、筆者には他のボスより強く感じた。気合いをいれて挑んでいただきたい。
■パリンの強化と、ユニークなミニゲーム
剣や兜など“装備”をしているファントムを倒すことで、「がらくた」が入手できる。このがらくたは装備の強化が行なえる。ダメージ軽減などの効果もあるので、積極的に入手していきたい。 ステージを優秀な成績でクリアした場合に得られるメダルは、コレクターであるおじいさんに交換をしてもらえる。銀や銅のメダルはお金に換金されるだけだが、金メダルを集めればユニークなアイテムを入手できる。やりこんで多くの金メダルを入手したくなってしまう要素だ。最初に購入できる「おさるの帽子」はお金を多く入手できるほか、強化することでダメージ軽減などの効果がある。他のアイテムも強力な効果が期待できそうだ。 本作では「ミニゲーム」もいくつか収録されている。現在はふたつが明らかになっているが、何故か両方とも“モグラ”がらみ。モグラのオバケは土を掘り、岩を砕くことに誇りを持っているらしく、ドリルを持つパリンにライバル心を燃やしている。 ひとつ目のミニゲームは、岩こわし。ステージ上につぎつぎ落下してくる岩を壊し、ライバルのモグラより多く壊すことを目指すゲームだ。筆者は個人的にこのゲームが大好きである。たくさんの岩を思う存分ドリルで破壊する爽快感を楽しめるゲームで、最も本作らしいミニゲームといえるだろう。 ふたつめのミニゲームはモグラ叩き。ステージ上を移動するモグラをドリルでひっぱたくという、こちらもちょっと乱暴なゲーム。ここではコマンド技やタメ撃ちよりも、連打が有効なようで、モグラの針路を見極めるのが大事。そこを待ちかまえてボカスカ叩くのだ。 最後にプレイ中に気づいたいくつかの不満点を挙げておきたい。さまざまな要素とスタッフのこだわりがあって非常に楽しい本作だが、キャラクタの表現を豊かにするために、ちょっと大きなサイズをとっているためか、敵の位置が見えにくくなる場合があるなど、カメラワークの不備を少し感じてしまう部分もあった。コマンド式必殺技も一回転コマンドな為、攻撃方向を定めるのが困難で、力押しになってしまう場合がある。アクションRPGとしては、すこし大味な印象を受けてしまう。 しかし、この大味さこそがパリンのキャラクタ性であり、ゲームの楽しさにつながっている部分もある。敵が見えなくなっても、技を出していればいつの間にか敵を蹴散らしているし、地形から落下しても、腹が立つほどダメージを受けたりするようなシビアさはない。1ドットが重要なアクションゲームではなく、豪快なドリル攻撃を楽しむ作品なのだ。初心者向けの配慮もあり、簡単な操作で楽しいアクションが体験できる本作。特にこのユニークな世界観は多くの人に触れてもらいたいと思う。
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□日本ファルコムのホームページ
(2004年12月22日)
[Reported by 勝田哲也]
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