★ PCゲームレビュー★ |
「和」の要素を加え、ユニークな変化を迎えたブリタニア
ウルティマオンライン 武刀の天地 |
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■UOの中に取り入れられた日本色
誠島にあるムーンゲート。新BGMの琴の音と桜がプレーヤーを迎えてくれる |
■新職業「侍」、「忍者」
「武刀の天地」で追加されたふたつの職業、侍と忍者。UOはいわゆる「クラス制」ではなく、各キャラクタのスキル構成で職業が決まる「スキル制」MMORPGの元祖である。今回、「武士道」と「忍術」という2系統のスキルが追加された。これらを駆使することで、侍や忍者風の活躍が可能になるわけである。
前回の追加パック「正邪の大陸」では、パラディンとネクロマンサーが追加された。その際、ふたつの職業の特性をプレーヤーに見せるため、新キャラクタを作るとシナリオ仕立ての初期クエストを体験する事ができた。クエストは簡単ながらも凝っており、UOの世界で両者がどのような存在であるかを教えてくれた。
今回も新キャラクタを選択し、職業パターンを選ぶときに侍か忍者を選ぶことで新しいクエストを体験することができる。特に侍は「哲学」というところにまで踏み込んでいて、興味深い。
一例を挙げると、「病気がちで貧乏な女性が、それでもなけなしの私財を野良猫を養うために浪費してしまっている。侍としてのあなたは、彼女に施しを与えるか、それとも彼女の目を覚まさせるためにあえて心を鬼にして野良猫を斬るか?」こんな問題を与えられる。プレーヤーは侍として、この問いに行動をもって答えねばならない。
他にもいくつかのクエストはどれも「試練」の要素が入っていて、制作者の侍へのこだわりが感じられて楽しい。対する忍者はというと、「スニークアクション」的な要素を混ぜ込んであって、ドキドキさせられる。
ふたつのクエストは短いながらも凝っていて、本作を購入した人達には是非プレイしてもらいたい。もし、サーバーにキャラクタの空きスロットがないという人は、他のサーバーにキャラクタを作って体験するのも良いだろう。
ゲーム的な説明をすれば、「武士道」は近接戦闘、特に戦士向きに有利なスキルがそろっている。“ライトニングストライク”や、“モメンタムストライク”など強力な攻撃を繰り出すことができるほか、ドラゴンのブレスまで刀で弾き返す“イベーション”、敵の攻撃を防御することで有利になる“カウンターアタック”などがあり、パラディン以上に前衛向きの性能を備えている。
また、近接武器にはそれぞれマナ(MP)を消費して繰り出す必殺技が用意されているが、太刀など侍が使う武器には武士道のスキルが必要な攻撃があり、武器に惚れたプレーヤーが、その武器を効果的に使うためにも上げてみたくなるスキルである。武士道が高くなると、従来のキャラクタとは違い、刀で防御ができるようになるのも魅力的だ。今までのキャラクタは攻撃重視の両手持ち武器か、防御重視の片手武器と盾、という組み合わせだったが、新しいバランスの前衛キャラクタが生まれることとなる。
近接戦闘重視の武士道とは違い、「忍術」は多彩な要素を持ったスキル。“キ(気)アタック”や“フォーカスアタック”など強力な攻撃ができるものもあるが、身を隠したステルス状態から使用する“サプライズアタック”など、実に忍者らしい相手の不意を突くものも用意されている。分身ができる“ミラーイメージ”、数秒してから大きなダメージを与えるという“デスストライク”などもあり、忍者気分にひたれること請け合いだ。
忍者が使う“アニマルフォーム”は魔法使いの呪文“ポリモーフ”とは違い、変身した動物の能力を引き継ぐことができる。蛇に変身して敵を攻撃すると、相手に毒を与えることができるのだ。さらに変身してから分身するなど、視覚的にも非常に面白い行動が可能になっている。
分身は一撃を受けると煙となって消えてしまう。この描写は少年漫画の「NARUTO」のようで、スタッフが参考にした資料が昔の映画や小説だけではなく、非常に広いことを感じさせてニヤリとさせられる。
忍者に関しては侍の鎧以上に小道具にこだわりが見て取れる。姿を消すために使う煙玉の他、前述した忍者ベルトに収納できる手裏剣、吹き矢まで用意されている。手裏剣は、はじめて使うとその威力の低さに誰もがびっくりするはずだ。筆者は忍術を覚えたてのプレーヤーに頼んで敵に投げてもらったのだが、兎すら殺すことができなかったのを見て呆然とさせられた。忍者ベルトの中には10個までしか収納ができず、アニメや漫画の忍者のように連射もできない。
ところが、あるプレーヤーの店で「毒を塗った手裏剣」を見つけ、使ってみたところ筆者の中でまったく評価が逆転した。離れた位置から、遠距離武器で敵に毒を与えることができる。これは今までの遠距離用武器、弓ではできないことだった。手裏剣は本作では切り札的に使う武器だったのである! この手裏剣の使用例は、史実というか、大変リアルな使い方だ。本来、致命傷を与えることの難しい投擲武器である手裏剣は、相手の隙を作るか、こうして毒を塗ることではじめて効果的な武器となる。本作は、その「リアルさ」を取り入れているのだ。
手裏剣の命中率は忍術スキルに左右される。忍者は他にハイドやステルスといったスキルも要求される、スキル構成が難しい職業だ。プレーヤー間で理想的な忍者になるためのさまざまな議論がかわされそうである。
ふたつの新しいスキルは、モンスター相手にはもちろん、対人戦でも効果的に働いてくれそうだ。正面の戦士は武士道スキルで防御力と攻撃力を高め、忍術スキルを持つキャラクタはその隠密性で攪乱などゲリラ戦法を狙う、そんな戦いが予想できる。今まで以上に多彩なスキルを持ったキャラクタによる力の比べあいが楽しめそうだ。また、PKたちの「トレンド」も気になるところである。
UOではプレーヤーキャラクタは基本的に非常に限られたスキル値しか持たず、その数値をやりくりして、理想的なプレイスタイルに近づける。いくら時間をかけても万能キャラクタを作ることはできない。プレーヤーは今まで以上に広い選択肢を与えられたことになるが、器用貧乏になる可能性も高い。この新しい要素で、ユニークなスキル構成、プレイスタイルが生まれることに期待したい。それらをうまく使うことで、ギルド戦・個人戦もより激しくなるだろう。
■新世界名所巡り
新世界「徳之島」には前述の誠島の他に、勇島、誉島がある。「ヨモツの坑道」や「ファンダンサー道場」といった大きなダンジョンの他にもさまざまな名所があり、探索が非常に楽しいところだ。島の各所に地蔵や、何故か黄金の甲虫の象があったりする。廃墟にも刀かけがあったり、ちゃんと徳之島らしい小物が配置されており、今までの世界と微妙に違う雰囲気を持っていて新鮮な驚きがある。
ただし、成長途上のキャラクタによる観光には注意と覚悟が必要だ。徳之島には普通に歩いているフィールドにも強い新モンスターがうようよいる。乗り物に乗っていつでも逃げられるように心構えをしておき、できれば育ったキャラクタで仲間と一緒に探索したい。何よりも、ユニークな風景を仲間と分け合うということは、探索の楽しさを何倍にもしてくれるだろう。
モンスターは日本の民話からとられているものも多いが、独特のモデリングをしている。しかも、ほとんどすべてが強い。地獄の番人の姿をした「ヨモツウォーリア」はその冷たい笑い声でキャラクタを凍結させ、「レブナントライオン」は猛毒を持ち、比較的弱い「カッパ」でさえ身体を切ると猛烈な酸の血を振りまく。
「ツキウルフ」はかすめただけで大ダメージをおわせる攻撃をしてくるしで、とても1人では太刀打ちできそうにない強敵が、普通に地上を闊歩している。さらに、忍者が潜んでいることもあり、何もいないと安心をしていると不意打ちを食らってしまうこともある。本当に油断ができない場所なのだ。
ヨモツウォーリアクラスの敵ならば、包帯戦士が2人で治療をしあえば足を止めて戦えるので、ぜひとも仲間とパーティーを組み、探索することをオススメしたい。筆者は実はこのレビューのためにUOを再開した「出戻り組」なのだが、仲間に背中を預けて戦う久し振りの感触に非常に興奮させられた。強敵に囲まれて復活できなくなりそうな危機感や、撃破したときの爽快感、地上の敵は仲間と協力することで打開策が見えてくるくらいのバランスの敵も多い。雑談をしながら、しかし油断はせずに探索してもらいたい。
この新世界は、過去に追加された、イルシェナーや、マラスと異なり、旧世界同様船で海にこぎ出せるのが特徴だ。船でしか行けない島を探索するのもオススメである。ただし、海域によってはクラーケンがいるので注意が必要。筆者の時は魔法を使うルーンビートルが船に飛び乗ってきて、やられてしまうというアクシデントもあった。
ファンダンサー道場、ヨモツ坑道は、現在レアアイテム狙いのプレーヤー達がひしめいている。人口密度が高いため、ラグもひどくなり、「どうしてもレアが欲しい」というプレーヤーは、他のプレーヤーに負けない狡猾さと図太さを発揮させて突っ込む必要がある。特にファンダンサー道場は、要所要所、ドラゴンテイマー達によって占拠されているので、トラブルを起こさないように注意したい。
制作者側が用意した名所だけではなく、プレーヤー達が造った家をチェックするのも本作の大きな楽しみである。11月3日、サービス開始と同時に家の解禁がはじまり、またたくまにプレーヤーの手によって建設可能の土地は家の土台で埋め尽くされてしまった。もはや定番となったこの光景に賛否はあると思うが、その土台を転売にかけず、きちんと凝った家を建てているプレーヤーも多く、彼らの「作品」をチェックするのは非常に面白い。
特に今作によって和風の家を建てることができるようになり、家の中に枯山水の庭園を置いたり、囲炉裏のある民家風にしたりと、今まで以上にプレーヤーの趣味がはっきり出てくるところがユニークだ。従来のアイテムもうまく組み合わせ、さまざまなオリジナリティあふれる家が建てられつつある。「離れ小島」に家を獲得したプレーヤーも多く出現した。船に乗ったときは、これらの島を訪ねてみることもオススメしたい。
日本風のさまざまなアイテム、新ルールを得て、UOはより大きな自由度を持った作品に生まれ変わったということを筆者は実感した。個人的な話をすれば、武士道の導入によって、戦士にこだわりを持っていた筆者はプレーヤーキャラクタへのイメージが広がり、どういったスキル構成にするかで現在頭を悩ましており、この煩悶の感触にも強い懐かしさを覚えている。
筆者のまわりにも、一端この世界から離れていた友人達が戻りつつあり、こころなしかブリタニアが活気を取り戻したかのような雰囲気を感じている。コアなプレーヤー達は、新要素によってプレイの幅を広げ、アイテムの情報や、戦術などを議論しているだろう。他のMMORPGを体験してから、UOに戻ってきた人達、新しくこの世界を訪れた人々、ずっとプレイを続けている人達、彼らがこれからどんな世界を作り出していくか、これから住人の1人として興味を持ってみていきたいと思う。
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□エレクトロニック・アーツのホームページ
http://www.japan.ea.com/
□「ウルティマ オンライン」のページ
http://www.jp.uo.com/
□「ウルティマ オンライン 武刀の天地」のオフィシャルサイト
http://www.jp.uo.com/uose.html
□関連情報
【10月14日】「ウルティマ オンライン武刀の天地」開発者インタビュー
UOの世界にアレンジした「日本の封建社会」を楽しんでほしい
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20041014/uoi.htm
【10月13日】紅の忍者装束で藤崎奈々子さん登場!
EA「ウルティマオンライン 武刀の天地」
7周年記念プレス発表会を“増上寺”で開催
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20041013/but.htm
【7月28日】エレクトロニック・アーツ、期間限定で1,000円オフ
「ウルティマ オンライン 武刀の天地 準備キャンペーン」
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20040728/uo.htm
【7月17日】UO、第6番目の拡張パックは和風テイストを満載した
「ウルティマオンライン 武刀の天地」
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20040717/uose.htm
(2004年11月15日)
[Reported by 勝田哲也]
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