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【連載第111回】 あの、おもちゃを徹底レポート




使い古しのCD-Rで録音再生が楽しめる!
学研「ベルリーナー式円盤蓄音機」

学習研究社「ベルリーナー式円盤蓄音機」
発売 学研
価格 3,980円
電源 単2アルカリ電池×2(別売)
発売日 発売中



 先週に引き続き、学研(学習研究社)の「大人の科学」シリーズの中から、e-Toyテイストを感じさせるアイテムをレポートしたい。今回は「ベルリーナー式円盤蓄音機」だ。

 ベルリーナーとは、この蓄音機を作り出した発明家の名前。不勉強にも筆者はこの人を知らなかったのだが、蓄音機の開発において、あのエジソンと競い合った最大のライバルらしい。円筒型の蓄音機を作ったエジソンに対して、ベルリーナーは円盤型の蓄音機を開発し、圧倒的な成功を収めたという。カンのいい方はすでにお気づきだろうが、このベルリーナーの蓄音機こそが、のちのレコードプレーヤーの元祖なのだ。

 非常に興味深い話だが、筆者はそうした背景よりも、この「ベルリーナー式円盤蓄音機」の機能に目を奪われていた。なんと!! 使い終わったCD-RディスクやCD-ROM、カップ麺のフタをメディアとして利用し、録音と再生ができるというのだ。書き損じたCD-Rディスクは、まさに不要の長物。それを再利用して実験が楽しめるだなんて、目のつけどころが素晴しい。


親切設計で組み立ては快適

 「ベルリーナー式円盤蓄音機」は、組み立て式のキットだ。箱を開けてみると、中からパーツが山のようにワンサカと出てくる。テーブルを埋め尽くさんばかりの数にゲンナリしたが、実際に組み立てていくうちに、さほど苦には感じないことに気づいた。複雑な組み立てをできるだけ簡単に進められるような工夫が、隋所に施されているのだ。

 例えば、パーツ。これだけ数が多ければ、作業に混乱が生じそうなものだが、そうはならない。関連するパーツが小袋で分けられていて、作業が進むたびに、ひとつずつ開けていく仕組みになっているためだ。目の前にあるパーツは“常に必要のあるもの”なのだ。

 また設計図も秀逸。図版が非常に見やすく、しかもネジを締める力の強弱にまで言及されているので、作業に一切の迷いが生じなかった。これだけ快適だと、次第に作業が楽しく感じられるようになってくる。パーツの仮組み、ネジ締め、配線。ひとつひとつの作業をこなすたびに、学研の「科学」のふろくを夢中になって組み立てていた子供のころのワクワク感が蘇ってきた。

 作業に要する時間は「1~2時間」と明記されていたが、実際にはぜんぶで1時間もかからなかった。おかげで、短いながらも充実した時間を過ごすことができた。

パッケージ。「大人の科学」シリーズの9作目にあたる 本体はモーターなどを除いて組み立て式になっている 設計図がわかりやすいので、イライラさせられることもなく、純粋に組み立ての醍醐味を味わえる


針は洋裁針、スピーカーは紙コップ。ホントに大丈夫?

 「ベルリーナー式円盤蓄音機」は、大きくふたつのパーツから成り立っている。針とスピーカーからなるピックアップ部と、ターンテーブルからなる本体部分だ。針は、ごく普通の洋裁用のもの。マイクとスピーカーを兼ねるコーンは、紙コップ。土台部分はモーターを使ってはいるが、ごくごくシンプルな構造。これで本当に録音や再生ができるのだろうか?

 ところが完成形は、そんな不安を吹き飛ばす見事な出来栄えだった。どこから見ても、クラシカルなレコードプレーヤー。インテリアとしても、十分に活用できそうな雰囲気だ。

ピックアップ部。ちなみにコーンは、カップ麺の容器と同じ素材 本体の裏側。単2電池とモーターでターンテーブルを回転させる 針の寿命は録音再生10回程度。スペアも用意されている



なるほど。これは確かにレコードプレーヤーのルーツだ

 いよいよ録音と再生を試してみよう。メディアは前述した通り、CD-ROMディスクやプラスチックの板を利用する。

 ターンテーブルにCD-ROMディスクをセットする。次にピックアップアームを動かして、ディスクの右脇に針が触れるように降ろす。……なんて、専門用語を羅列して細かく描写してはいるが、何のことはない。レコードプレーヤーに針を下ろすのとまったく同じ動作だ。「ベルリーナー式円盤蓄音機」が、レコードプレーヤーのルーツであることが実感できた。

 操作の鍵となるのが、針の上にある重りだ。ふたつある重りは、ひとつが可動式になっていて、重量の調整が行なえる。ふたつの重りを重ねると、針はディスクの盤面に深く食い込んで、溝を掘り、音声を記録していく。重りをひとつにすれば軽く浮き上がり、針は溝にある音声情報を読み取って、コーンから再生する。

 重りをふたつにしてから、電源スイッチを入れて、ターンテーブルを回転させる。針がディスクの表面をどんどん削っていく! あわててコーンに口を近づけて、「イ・ン・プ・レ・ス・ゲー・ム・ウォッ・チ」と大声を出して、録音を始める。録音時間は、約1分~1分半とのこと。時間ギリギリまで録音をしてみた。

これが「重りがふたつ」の状態。これで録音が可能になる 重りをひとつにすると、針は溝の情報を読むようになる
録音開始。コーンに向かって大きく発声する 針がディスクの盤面に溝を刻み、音を録音していく


 次は再生だ。ディスクの内周まで進んだ針を持ち上げ、アームを右側に戻す。慎重に操作して、ディスク上に刻まれた溝の上に針を降ろす。再びターンテーブルを回してみると……ん、んん!?「ィ……ン……プ……レ……ス」と非常にかすかな音量だが、確かに再生されている。機材は安価。機構はシンプルの極み。なのに、ちゃんとした録音と再生ができるとは!

 感激もつかの間、今度はもっと大きなボリュームで再生してみたくなり、先ほど以上の大声を出したり、メディアをプラ板やDVD-Rディスクに変えたりと、いろいろ試してみたが、いい結果は得られなかった。う~ん、残念。アームの角度やネジの締め具合を調整すると変わるのだろうか。

 だけど、面白さはいっこうに色あせない。だって、使い古しのディスクやプラ板を使って、音を録音できるんだもの。いやはや、驚きものである。

録音や再生を終えたら、アームを手動でスタート位置に戻す プラ板でも録音と再生が可能だ ムービー
「01v.mpg」 MPEG 1.83MB


□学研のホームページ
http://kids.gakken.co.jp/
□「ベルリーナー式円盤蓄音機」のページ
http://kids.gakken.co.jp/kit/otona/kuwa9.html


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(2003年5月8日)

[Reported by 元宮秀介]


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