★interview★

「テイルズ オブ デスティニー2」
プロデューサー・吉積 信氏に聞く
  • ジャンル:運命を解き放つRPG
  • 発売元:株式会社ナムコ
  • 価格:6,800円
  • プラットフォーム:プレイステーション 2
  • 発売日:発売中(11月28日発売)

【吉積 信氏】
株式会社ナムコ CTクリエイターグループ プロデューサー
 ついに発売された「テイルズ オブ デスティニー2」。ジャンルに記されているとおり、主人公カイルが自らの運命を切り開き、ヒロイン・リアラが「運命を解き放つ」ために前に進む、そんな冒険ロマンあふれる作品に仕上がっている。

 なぜ「テイルズ オブ~」シリーズの中で「デスティニー」が続編候補に選ばれたのか?  今作と前作の違いは何か? そんな疑問を株式会社ナムコ CTクリエイターグループ プロデューサー 吉積 信氏にぶつけてみた。



■ みんなの思いとか技術といったものを
受け継いでいきながら成長していく主人公・カイル

本作の主人公・カイル

---まず最初にお伺いしますが、なぜ「デスティニー」の続編がこの時期に登場することになったんですか?

吉積 シリーズそれぞれ別の世界を描いていましたが、「デスティニー」の開発直後にスタッフの方からこの世界観やキャラクタを使って続編を作りたいという意向はあったんですね。「エターニア」を作るときにも、新規のプロダクツを作るか、続編ものにするかということで、結局「エターニア」にしましたが、もともと「デスティニー」の続編コンセプトはあったんですね。「デスティニー」の世界観は、「天地戦争」があって、その前の彗星の衝突があって……といった歴史からみてもしっかりしたものがあったので、「エターニア」が終わった後、ぜひ続編を作ってみようということになりました。

---「エターニア」と同時に「デスティニー」の続編もプランがあったと?

吉積 そうですね。「デスティニー」が終わった当時、ディレクターは豊田(氏)が担当していましたが、彼としては新しい世界を描きたいという意向が強かったので「エターニア」にシフトしていったんです。でも、「デスティニー」の続編プランもしっかりしたものがありましたので、次はそれを生かしたものを作ろうということでこちらになりました。出来上がってみると練りこまれていて、「なるほどこれは」とプレイしたユーザーの方にも納得していただけるものになっていると思います。かなりスタッフの思い入れが深いものになっていますね。

---まさに「王道」のにおいがぷんぷんするストーリーになっていると思いましたが。

吉積 うん。王道というか、「RPGで描くのに適したテーマ」と思うんですよ。テーマの持ち方はいろいろあると思うんですが、「デスティニー」というタイトルから来る、「自分の運命は可変なのか、自分で切り開くものなのか」、「運命は与えられるものなのか」ということを含めて語っているんですが、非常に大きなテーマですけれども、その部分を語っているという意味では「王道」ですよね。

---のっけから「冒険」というキーワードがぽんぽんと散見されるあたりが……(笑)。

吉積 そうですね。カイルは非常に主人公らしい主人公、RPG的に正しい上昇志向を持った主人公というあたりがいいですね(笑)。それから、前作の主人公、スタンとルーティの息子ということで、そういった意味では環境も上昇志向になりやすい(笑)。「世界を救うんだ!」というまっすぐなものを持ってますので、描きやすかったですね。

---主人公を含め、性格を含めたメインキャラクタの布陣はもともとの構想からあったものなんでしょうか? ロニは主人公と友達関係じゃないですか。そういったキャラがメインにくるというのは珍しいんじゃないかと思ったんですが?

カイルはリアラと出会う。リアラはカイルを英雄とは認めなかったが……

吉積 そうですね。彼は兄貴分というか友達というか。今回は「英雄を目指していく」という冒険譚というべきストーリーですが、カイルが成長するにあたって、いろんな人からいろんなものを受け継いだり教えてもらったりするんですよ。例えば、映画の「インディ-ジョーンズ」や「スター・ウォーズ」なんかもそうですが「お父さん(師匠)から受け継ぐもの」ってあるじゃないですか。そういったものが冒険譚に必要なんじゃないかと思うんです。「自分をサポートしてくれる人物から受け継いでいくもの」それを描きたかったんですよ。

 カイルはいろんな人のサポートを受けて自分の力で成長していく。そのサポートする人物はどういう設定がいいかな、ということで、例えば、身近にいてサポートしてくれる人物(ロニ)、突然現れた仮面の騎士(ジューダス)、という風に作っていきました。そういった中でカイルが成長する姿を描いたほうが、みんなの思いとか技術とか、そういったものを受け継いでいきながら成長していく主人公像を描きたかったというわけです。

 ジューダスなんて非常にわかりやすい存在で、自分の正体は明かしませんが、「おまえに必要なことはこれだ」というように、ポイントポイントでしかいわないけれども、少しずつ大切なことを教えていく。そしてカイルもだんだん気づいていくという過程を描きたかったんですよね。



■ 町が見えてくるとうれしい、ちょうどいいバランス

---続編ということで、続編からプレイするユーザーに対して、プレイしている間に、ざっくりとですが自分の置かれている立場や前作までのストーリーなど、かなり重要な情報がわかりやすく盛り込まれている気がしましたが?

吉積 そうですね。そういう意味では「リアルに」描いてあると思いますね。「英雄の息子だったら周囲からこういう風に扱われているだろう」とか、「こう思われているだろう」とか。その部分は現代的に、リアルに描いてあると思います。ドキュメンタリータッチで進みますよね。

 逆に、リアラやジューダスはすごくファンタジックな登場の仕方をするじゃないですか。「なぜ?」とかは抜きにしていきなりそこに登場する。まさにヘビーファンタジックといいますか。その対比も面白いところで、ファンタジックなところとドキュメンタリータッチなところがうまく融合しているところが、シナリオライターや世界観設定のスタッフの力量が感じられるところだと思いますよ。

---出会いとか登場の部分は妙にファンタジックですが、そのあとがリアルだというか。言葉もセリフというより、生々しい「しゃべり」といった感じのテキストですよね?

吉積 その辺はアニメっぽいつくりをしているのかな。本を読む、ということではなくて……ときどきお約束の説明っぽいセリフもありますが、それ以外の人と人との話のセリフの選びかたはリアルに感じてもらえると思いますね。登場人物も前作ではフィリアとかウッドロウとか、主人公とはすっかり身分の違う人がいっぱいいたので、どちらかというと浮世離れしたしゃべり方をすることが多かったじゃないですか。その不整合感がおもしろかったりしたんですが、今回はどちらかというと、ラフなしゃべり方というか……

---かしこまらないというか、ぶっちゃけたトークが多いですよね。

吉積 ですよね。そういった語り口が今の年代にしっくりくるんじゃないかなと思いますね。シナリオを担当したスタッフも若いんですけど……。

---逆に読んでいると「妙に照れくさいな」、というセリフも中にはありますよね。

吉積 あれもかなり計算しているんじゃないかと思いますよ。かなり計算したうえで「けっ」とか「恥ずかしいな」と思うところもわざと入れたりする。それが最後になって効いてくるんですけどね(笑)。

---トータルのクリアタイムはどれぐらいを想定して制作されてますか?

吉積 いろいろなことをあまりせずに、メインストリートを中心にちょいちょい寄り道しながらいくと、35~40時間ぐらいでしょうかね。例えば称号を集めたり、武器を集めたり、料理に凝ったり、リファインに凝ると無限に時間がかかると思いますね。スクリーンチャットを全部聞くだけでも相当かかると思いますよ。300ぐらいあるはずなんですけれども。例えば、あるイベントの真っ最中にほかの場所に行こうとすると、「寄り道してるんじゃねえよ」みたいなことを言われるんですが、それが全員分用意されているわけですね(笑)。そういうところを探して聞いてもらえればうれしいですね。

町から町までの距離がちょうどいい感じ

---移動速度も速くなっているのにけっこうかかるんですね?

吉積 もっと短いかと思っていたんですが、とんでもなかったですね(笑)。移動速度は設定で変更できるんですが、走ることも可能なので速くなっているはずですね。そうそう、今回一番遊んでいてうれしかったところが、町が見えてくるとうれしいことなんですよ。「ああ、町だ……」と思えるんですよ。RPGで「ああよかった、町がある」と思ってもらえるのがいいバランスだと思いますんで。町でいろんなことを聞いたり語ったりするのが楽しいんですよ。

 それから、後半1/3ぐらいまでくると、ボス戦が楽しくなってくるんですよ。それまではわりと普通にやってても勝てるんですけれど、そこからは工夫しないと倒すまでに時間がかかる。この工夫が楽しいんですよ。戦うために条件が必要になってきたりしますから。「回復晶術なしで」とか。晶術を使ってもいいんですけれども、使うと敵がキレて、「そんなもの使ってきやがって!」とかいって必殺の攻撃を出してきたりしますから(笑)。だから、「この相手には晶術はなしで、アイテムで回復すればいいんだな」とか、「逆にこの相手にはアイテムはなしで、晶術で乗り切らないとダメなんだ」という戦闘が増えてきます。それから、メンバーの組み方によっても楽に倒せるときがあったりするんですよ。そのあたりいろいろ工夫してもらえればと思います。



■ システムは凝っているけどオートで遊んでも大丈夫
凝った作りの戦闘システム

---今回戦闘システムもかなり手が入っていますよね? 「マニュアル読まないと……」って気になっちゃったりするほど。

吉積 ほんと凝ってるよね。いろんなことができますから。エンチャントとかスロットは、わからなくても先に進めるようにできてます。でも理解できれば楽になる。だから気になる人は気にすればいいし、ならない人はそのまま進めてもらって大丈夫です。私も途中から戦闘はオートにしてプレイしてましたけど、それでもぜんぜん大丈夫。ボス戦は危なくなったら途中で回復させたりしましたけどね。戦闘シーンが苦手だな、という人はオートにしてもらって大丈夫ですよ。普通にストーリーだけで進めてもいいし、スクリーンチャットを全部聞くというだけでも楽しいし。長く遊べるように作ってありますから。

---スピリッツゲージはどういった発想から導入されたんですか?

吉積 今までのシリーズだと、HPとTP(テクニカルポイント)だけで、いくつかのボタンを押しているだけで攻撃していけばいいことになっていたんですよね。でも、戦い続けていると疲れてくるじゃないですか。精神的にも。だから「攻め疲れしてくる」ところを表現したかったんです。SPはリアルタイムに変化していくので、なくなったら回復すればいいんです。戦闘が終われば次の戦闘時には満タンになってますからね。

 これが思った以上に理にかなってますね。ずーっと戦闘していると、精神的な負担を感じさせます。自分が疲れてくると、仲間が前に出てきて助けてくれる。そのとき下がって回復して……というように戦略が重要になってくるので面白い。パーティメンバーを全員オートにしてもSPを意識して動きますよ。AIは今回かなり賢いです。

---AIは以前のシリーズからかなり賢くなってますよね。

吉積 カイルを前に出して、残りを女の子だけのパーティ、俗に言う「ハーレム」状態で戦ってみたとき、彼女たちを後ろに配置していても、カイルが攻め疲れると彼女たちもひとりひとり前に出てきますからね。

グラフィックのパワーアップもあり、迫力も十分

---通常攻撃、特技、奥義とキャンセルの種類が増えて、コンボはつなぎやすいイメージがありますが?

吉積 今回、連打系の特技は少なくなってますね、そういえば。コンボの上限は低いところにおいてます。最大でも200HITぐらいじゃないかな。今までみたいに999HITまではいかないと思います。あんまり戦闘を作業にしないように、という調整ですね。でも、やりこみ要素としてコンボの上限を追求してもらうのもひとつの楽しみなので、ぜひがんばってもらいたいですね。

---ミニゲームはどうなってますか?

吉積 最終的にかなりの数が入ってますね。最後の大変な時期にかなり入りました。おなじみのクイズも初級から全問正解するのにかなりかかってみたりしますよ。問題が固定じゃないんで……。あ、それから、レースゲームの称号も凝ってますよ。カイルが「マッハ青年」、リアラが「マッハ少女」とか。ゲームに参加するキャラクタによって称号が変わるんで、がんばって集めてほしいですね。ゲームもキャラクタによって難易度が変わってくるので、楽しんでもらえると思いますよ。

---称号集めも大変そうですね。いつ手に入るかわからない。ゲームを進めていると勝手に称号が手に入ってるじゃないですか。

吉積 スクリーンチャットを見ないと手に入らない称号とかもあるし。条件はいっぱいありますよ。バトルグレードが+いくつ以上になったらもらえるとか。称号集めが一番大変かな。リファインも大変かもしれないけれど、法則を覚えれば……時間かければなんとかなります。



■ どんなプレイスタイルでも合うように工夫して作っています
やさしいテイストのグラフィック

---PS2にプラットフォームが変わって、制作側の立場としてどう変わりました?

吉積 表現能力が高くなったので、やらなければならないことは増えましたね。MAP画面などでも拡大縮小を使ったので、拡大してもヘンにならないように緻密かつ大きな絵を用意したりとか。戦闘シーンもかなり気を使ってキレイにしましたね。

 ただ、これだけやってもまだ「これが出来なかったな」とか、「ここまでやりたかったな」といった次への課題は残りましたね。能力が高いといってももちろん制限はあるので、その中でパフォーマンスを追求していくと切り捨てなければならないこともありますよ。

---MAP画面もきれいになりましたよね。アクションシーンが入ったりとか。

吉積 MAPに関しては、色使いが変わったからかな。今回そういったものも入れていこうと。同じネタは1回だけですが、いろいろバリエーションをつけてありますよ。パズル面のようなところでもいろいろ用意してますし。縄はしごを使った仕掛けとか。飽きさせませんよ(笑)。そういった昔ながらのゲーム性といったものをちりばめてあります。知恵試しというか。あれってできないと打ちひしがれるんですけどね(笑)。知能指数が低いんじゃないかって(笑)。

---今回もいのまたむつみ先生がデザインに参加されてますが?

吉積 今回も予想以上のいいキャラクタを描いていただきましたね。今回、前作と主人公たちのいる時代が違うんで、衣装に関しては(先生のほうで)テイストを変えてもらったと思います。さまざまな時代を生きてきたキャラクタがいますんで、ご自分が描きやすく、かつ差別化もされている。特に、個人的にはナナリーとハロルドはいい絵になったと思います。ジューダスは本人も描きたかったんじゃないですかね。

今作もとにかくよくしゃべる

---かなりしゃべるイメージがありますが、セリフの収録は大変だったのでは?

吉積 今回は今までと違って、声優さんに台本どおり、順番に収録してもらったんです。そうしたほうが感情移入もしやすいし、イメージも描きやすいんじゃないかと。その代わりスケジュール確保は大変でした。皆さんにいろいろ苦労かけましたが、その分いいものができあがったと思います。

---最後に、読者の方々にメッセージをいただけますか?

吉積 どんなプレイスタイルでも合うように工夫して作っていますので、楽しんでいただきたいということと、長く遊べるように作っていますので、長く楽しんでもらいたいな、と思います。

---ありがとうございました。



(C)いのまたむつみ (C)NAMCO LTD.

□ナムコのホームページ
http://www.namco.co.jp/
□テイルズチャンネルのホームページ
http://www.namco.co.jp/home/cs/lineup/taleschannel/index.html
□製品情報
http://www.namco.co.jp/home/cs/ps2/talesofdestiny2/index.html
□関連記事
【11月28日】PS2ゲームレビュー
「テイルズ オブ デスティニー2」
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20021128/tod2.htm

(2002年12月4日)

[Reported by 佐伯憲司]


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