★ PCゲームファーストインプレッション★


絶妙なバランスとテンポの良さを兼ね備えた
ファルコム異端のダンジョンRPG

ダイナソア~リザレクション~

  • ジャンル:ダンジョンRPG
  • 開発/発売元:日本ファルコム
  • 価格:7,980円(ファルコム通販価格)
  • 対応OS:Windows 98/Me/2000/XP
  • 発売日:12月19日


 日本ファルコムが12月19日に発売を予定している「ダイナソア~リザレクション~」。「イース I・II」に続く「エターナル化」第2弾タイトルである。ようやくマスターに近いバージョンが編集部に届いたので、同社自ら「異端児」と呼ぶ同作の魅力について簡単にご紹介していきたい。


■ エターナル化第2弾「ダイナソア~リザレクション~」

 日本ファルコムが昨年から着手し始めた自社タイトルのエターナル化の試み。エターナル化とは、同社の名作を永久不変の存在として、往年のゲームファンはもちろんのこと、新規ゲームユーザーにも広く楽しんでもらおうという老舗ならではの試みである。

 こうした旧作のリメイクの動きは、いまや同社のみならず、PC-8801、ファミコン、MSXといったゲーム業界の勃興期を経たメーカーはどこもやっている。ただ、ゲームの場合、書籍や映画などと異なり、改訂における一定のルールが事実上存在しないから、そのクオリティは千差万別である。

 比較的新しいゲームエンジンをかぶせたもの、現代風にバランスをチューニングしたもの、シナリオを新しく付け足したもの、仕様そのものを変えてしまったもの、あるいはそのすべてを含むもの。各社とも多種多様で、それはそれでおもしろいが、根っからのゲーム好きのエンドユーザーとしては、そろそろハード、ソフトの両面でバシッと統一してほしいという気もする。

 話が脱線するが、今ではリメイクではなく、当時のプログラムをエミュレートしたものも豊富に存在する。そうした作品を実際にプレイすると実感するのは、頭に描いていた理想のゲーム像と、実際のゲーム内容のギャップの大きさである。インターフェイスやビジュアルの荒さなど、昔ならではの辛い部分に直面し、とてもじゃないが最後までやる気にならない。十数年ぶりの再会のときめきは数分で消え失せ、「あれあれ、こんなもんだったけ」と正直がっかりさせられることも多い。

 そうした意味で「うまいリメイク」、「永久に残りうるリメイク」というのは、そうしたギャップを綺麗に埋め、現代のゲームに慣れきったユーザーに対していかに軟着陸させて、その作品が持つ魅力そのものに到達させられるかということだと思う。「ダイナソア~リザレクション~」もその視点で見ていくつもりである。

【オープニングムービー】
3分以上にも渡って繰り広げられる壮大なプロローグムービー。主人公アッシュの壮絶な過去を振り返りつつ、ザムハンへたどり着くまでのシナリオが描かれる


■ 日本ファルコムの代表作「ダイナソア」とは!?

どこまでも続く広大なダンジョン。序盤こそ単純だが、物語が進んでいくにつれて徐々に広く、深くなっていく
 「ダイナソア~リザレクション~」の元になっている「ダイナソア」は。'90年にPC-9801向けにリリースされたRPG。ゲームジャンルは、「Wizardry」から始まった俗にいうダンジョンRPGで、一人称視点で広大な迷宮を探索していくというゲームだ。

 ダンジョンRPGの醍醐味は、1パーティーがやっと通れるほどの狭い通路をずんずん進み、広大なダンジョンに秘められた謎をひとつひとつ解き明かしていくところにある。完全手作業でのマッピング、隅々まで探索しないと見落としてしまう限られた情報、回転トビラや一方通行、鍵付きのトビラといったイヤらしい仕掛け、連戦に次ぐ連戦を強いられる高いエンカウント率など、同作にはダンジョンRPGのピュアな醍醐味が存分に詰め込まれている。

 が、こうしたウリは裏を返せば、それだけダンジョンRPGの敷居の高さを表していることにもなる。なにしろ、視界は限られ、NPCの姿は見えず、壁とトビラだけで構成されたシンプルきわまりない世界だ。ダンジョンRPG未体験者にとっては、どこが魅力なのかまったくわからないのではないかという気がする。

 ダンジョンRPGの魅力は、マッピングを必要とする上質のゲームブックにも似た、脳内に完全に記憶されたダンジョンを思うがままに移動する感覚と、視覚が制限されることによる絶えず追いつめられたような感覚、ダンジョン奥地でのもはや後戻りはできないという悲壮感など、他のジャンルのゲームでは味わえない独自のリアル感にある。こうした特殊性から、ダンジョンRPGのモチーフとして、くだけた雰囲気のものは存在し得ない。実際、これまでにないし、これからも出ることはないだろう。

 その点、「ダイナソア」はダンジョンRPGのシステムにぴったりマッチした世界観になっている。主人公アッシュをはじめ、パーティーを組むことになる登場キャラクタたちはすべて悲惨な過去を引きずり、思い思いの期待を胸に、救いを求めてゲームの舞台である「ザムハン」の地にやってきている。

 そんな人々の期待とは裏腹に、ザムハンは忌まわしい呪縛に取り憑かれている。主人公アッシュは、戦地の和平を期に、「白い蝶」に導かれるままザムハンの地を訪れ、そこで町の長老に「使命」を託される。その使命を果たさない限り、その呪縛から逃れることはできないという。暗い過去を持つ5人の仲間による呪縛解放の旅、これが「ダイナソア」だ。

【導入シーン】
街に入るとまず長老に会うように促される。長老からは丘の上にそびえる古城の調査を依頼される

【登場キャラクタ】
登場キャラクタはあまり多くないぶん、ひとりひとりが重要人物といっても過言ではない。行けるところはすべて足を踏み入れ、しっかり話を聞いておこう


■ 磨かれたフィールド画面、良質なサウンド、インターフェイス

非常に便利な魔法「空間感知」。一度使うと手放せなくなる
オプションはゲーム開始前に設定しておく。ウィンドウ表示にも対応しているのがありがたい
 さて、今回のエターナル化に伴い、一番力が入れられたのがビジュアルとサウンドだ。疑似3Dだったフィールド画面がフルポリゴンで描かれ、少なくとも見るに耐えるものに仕上がっている。クオリティは可もなく不可もなくといった感じで、最新テクノロジーを投入するといった技術的な努力よりも、原作のイメージを崩さない方向に力が入れられているようだ。

 この点については、おそらく元「ダイナソア」プレーヤーにとっては、「最適な」もしくは「許容しうる」進化なのだろうが、客観的に見てもう少し磨いても良かったのではないかという気がする。たとえばフィールドの3D表現にしても、バンプマッピングやバイリニアフィルタリングなど、導入すればもっと美しい表現になる手頃な3Dテクノロジーはいくらでもあったはず。解像度も可変にしてくれても良かった気がする。必要スペックには3Dビデオカードが必須とは書いてないから、おそらくそのあたりの兼ね合いで、導入が見送られたものと見られるが、個人的にはもうひと磨きしてほしかった。

 一方、サウンドは100点満点。原作のFM音源独特のにがりを取り払ったピュアなファンタジーサウンドが素晴らしい。視聴版を聞けばわかるように、同作はもともと「イース」に勝るとも劣らない名曲揃いなので、この磨き込みはさすがファルコムといった感じだ。リファインの方向性も余計なアレンジなどは加えておらず非常に素直で、聞けば聞くほど好きになっていく。原作のサウンドが好きだった人はそれだけで買う価値があるのではないだろうか。

 それから意外と大規模な変更が加えられているのがインターフェイス。まず第一にマップの一部が右上に表示されるようになり、トビラや曲がり角を見落とすということがまずなくなったのがありがたい。一度に見えるエリアはわずかだが、あるのとないのではダンジョン探索のしやすさが格段に違う。

 なお、マップ表示は移動済み箇所と未移動箇所が色分け表示されるようになり、すでに行った場所、まだ行ってない場所が明確にわかるようになった。これは、魔法や巻物を使うことで表示可能な大型マップにも適用され、非常に便利だ。ということで、実は完全手作業でのマッピングというのは必要なくなっている。

 ゲームの操作は、マウス、キーボード、ゲームパッドの3種類に対応。ダンジョンRPGはアクション性は皆無なので、どれで操作してもあまりかわらない。好みで選ぶといいだろう。個人的には比較的自由な体勢でプレイできるゲームパッドがお勧めだ。


■ 絶妙なバランス調整とテンポの良さがたまらない

ダンジョンでは大量のモンスターと連戦に次ぐ連戦を強いられる。この追いつめられる感覚がたまらない
モンスターは宝箱を落とすことも。宝箱にはトラップが仕掛けられているが、シーフのワッツがいれば比較的安全に開けられる
 さて、最後は実際に序盤をプレイしてみた感想を述べてみたい。プレイして1時間ほどで強く実感したのは、とにかくテンポのいいゲーム展開だ。

 バックグラウンドストーリーはオープニングムービー内に網羅され、ゲームスタート後は短いテキストでテンポ良く物語が展開していく。手法は昔のままで、突然読み込みが発生してムービーが流れたり、見ず知らずの人物が登場して長文のテキストを読まされることもない。

 戦闘シーンは、カード表示された複数のモンスターを相手に戦っていくというものだが、これもまたシンプルながら奥深く、テンポ良く消化していける。同作の戦闘シーンは、カード表示というオリジナル要素を最大限に活かしたシステムがウリで、出現するたびに並び方が違ったり、ターゲットロストしてしまうシャッフルすような動き、新しいカードが配られたかのような動きなど、シンプルながら新鮮なおもしろさがある。

 こうしたこのシンプルさが逆にプレーヤーの興味をひき、ゲーム世界へぐいぐい引き込んでいく。このスタイルは、現代の情報過多のゲームに対する強烈なアンチテーゼともいえる。ともあれ、同作の昔のスタイルをそのまま踏襲したシンプルなゲームスタイルは大正解だろう。

 もうひとつ魅力として指摘できそうなのは、ゲームバランスの良さだろうか。すでに記事でも何度か触れてきたように、主人公アッシュは腕の立つ傭兵なので、序盤の敵は文字通り一刀両断で倒していく。ダンジョンをずんずん進み、敵が出てはバッタバッタと薙ぎ倒していく。この感覚が非常に心地よい。

 ところが、途中から旅に加わる仲間たちは、特に序盤のうちは戦闘要因としてははなはだ心許ない能力しか備えていない。メンバーを死なせないようにアッシュをパーティーの盾として機能させつつ、その影で近い将来しっかりと役立てるように積極的に攻撃に参加させ技術レベルを磨いていく。こうした過程は夢中になるほどおもしろい。

 もうひとつ具体例を紹介すると、同作では場所を問わず「休息」することによって、一定のHPとTPが回復するシステムを採用している。これにより、こまめに休息を重ねれば謎を解き明かすまでずっとダンジョンに潜り続けることができるわけだが、その都度エンカウント判定が行なわれるため、運が悪いと回復するつもりが、消耗率のほうが高くなってくる。

 そうしたときの戦術、たとえば攻撃はアッシュひとりにまかせ、ほかは隊列を後ろに下げて防御に専念させてHPとTPを温存するといった、細かい部分での駆け引きが非常におもしろい。RPGにおけるゲームバランスとはひとえに個々の戦闘に存在するわけだから、序盤からこうした深い駆け引きが楽しめるのは、優秀なRPGの証拠だろう。

 次のエリアに進むと敵も一段と強くなり、技術レベルの上がったメンバーが新しい技術(魔法や必殺技)を覚え、戦術もどんどん多彩になっていく。効率的に敵を倒し、先へ進み続けるためにはその都度戦術も練り直さねばならない。この連続的に試行錯誤を強いるシステムそのものが作品の魅力に深く結びついている。

 こうした作品の魅力は残念ながら、ゲーム画面やムービーを見るだけではまったくわからない。磨き抜かれたゲームバランスとテンポのいいゲーム展開に支えられつつ、存分にゲーム世界に浸り切る。「久々に良質のシングルプレイRPGに出会いました」というのがプレイしてみての私の正直な感想だ。

【ダンジョン】
ダンジョンにはさまざまな謎が隠されている。ヒントはわずかだが、意地悪なものは少ない

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【ダイナソア~リザレクション~】
  • CPU:Pentium II 400MHz以上
  • メモリ:64MB以上
  • HDD:800MB以上


□日本ファルコムのホームページ
http://www.falcom.co.jp/
□「ダイナソア~リザレクション~」のホームページ
http://www.falcom.co.jp/dino/index.html
□関連情報
【2002年9月24日】日本ファルコム、「ダイナソア~リザレクション~」を発表
3Dグラフィック採用のファンタジーRPG
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20020924/falcom.htm
【2002年10月11日】日本ファルコム、「ダイナソア~リザレクション~」の6大特典を初公開
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20021011/falcom.htm
【2002年10月24日】日本ファルコム、「ダイナソア」の予約受付を開始 公式サイトも同時オープン
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20021024/dino.htm
【2002年11月8日】「ダイナソア~リザレクション~」プロモーションムービー
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20021108/demo1108.htm
【2002年11月21日】日本ファルコム、「ダイナソア~リザレクション~」
無料デモCDを11月20日より配布中
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20021121/falcom.htm

(2002年11月28日)

[Reported by 中村聖司]


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