まるで人間のように感情をあらわにしたり恋愛したりする“シム”達を操作する、人生シミュレーションゲーム「The Sims(日本語版名:シムピープル)」。箱庭的世界の中にいるシム達を幸せに生活させるのが目的のゲームなのだが、仕事やシム同士の近所づきあい、家庭の維持や恋愛あれこれなど、現実世界と同じような困難や喜びがシム達を待ち受けているのが特徴。ゲーム全体を覆うユーモラスな雰囲気も人気の秘密だ。 これまでに、近所づきあいやデートなどをクローズアップしたデータ拡張パックが発売されてきたが、「The Sims Vacation」ではシム達をバケーションに連れ出せる。家族で出かける山や海には一体何が待ち受けているのか!? |
■ 人生シミュレーション「The Sims」とは?
「The Sims」はゲームの中のキャラクタ達の生活を手助けして、彼らの人生を幸せなものにする育成+日常生活シミュレーションゲームである。簡単に言えばゲームの中のキャラクタを世話して育成、観察するというゲームなのだが、これまでの育成ものと大きく違うのが、人間の生活というものを徹底的にシミュレートしている点。育成の対象であるシム達は、食事もするし、恋愛もするし、トイレも入るし、ご近所づきあいもするといった具合で、俗っぽい部分まで含めて人間そのものをうまくゲーム化しているのが特徴なのだ。
ゲームは現実世界と本当に良く似たサイクルで進んでいく。朝起きたシム達は、通勤前に身支度をして仕事に出かけていく。帰ってきたら、仕事のための勉強をしたり、訪ねてきた近所のシムと食事をしたりといった近所づきあいをする。そして体力が落ちてきた夜になるとベッドで休むのである。
シム達には「体力」、「空腹」、「楽しさ」、「社交」、「衛生」、「便意」といった本能パラメータが全部で8つ用意されており、これらが十分ケアされていると、シムの機嫌が良くなり、日々を楽しく明るく暮らしていく。反対に、これらのパラメータが下がったままだと、シムの機嫌は悪くなり、下手をすると働きにもいけず、出前ピザで空腹をしのぎながら、家の外に出ることなく死んでしまったりする。
「パラメータを好調に維持する=シム達が楽しく暮らす」のがゲームの目的であり、そのために、たとえば、トイレに行って「便意」をすっきりさせたり、お風呂に入って「衛生」を回復したり、恋人といちゃついて「社交」を回復させるのだ。
生活感あふれるゲーム性が魅力。シム同士が同じ食卓に着くと会話を始めたり、とてもリアル | 恋人とホットバスで入浴。大人向けのゲームなので、情熱的なチューなどのアクションもある | 恋人が他の男にプレゼントを渡すのを見て逆上したシム。相手の男を平手打ち |
シムはある程度まで、欲求に従った行動を自分で取るのだが、それほど効率が良くないため、しっかりと働いて豊かな生活を送るためにはプレーヤーの細やかな指示が必要だ。シムやアイテムをクリックする事でポップアップするメニューから行動を選び、タイミングよく「料理をして朝食をとりなさい」、「尋ねてきた近所の人に挨拶しなさい」、「仕事に出かけなさい」といった日常のあれこれを指図していく。
シムの行動を放任すると、お金がなくなって飢え死にしたり、ゴミを片さずに汚いままの家で床寝したりと、どんどんすさんでいってしまう。シムたちが心地よく暮らせるように、彼らの稼いだ金で家具や家などの生活の場を整え、食事をさせて働きに出し、そして夜は寝かせるのだ。シムの生活をお助けして彼らの人生を良い方向に導く。それが「The Sims」という人生シミュレーションである。
愛し合うシム同士は赤ちゃんをもうけられる。夜泣きなどを克服すれば、可愛らしい子供シムに成長 | デート編の拡張パックを入れると、ダウンタウンのレストランで恋人と食事を楽しめる | プレーヤーの心がけ次第でシムがとことん不幸になることも。火事やお漏らしで阿鼻叫喚の図 |
プレイスタイルはまさに自由そのままで、シムに感情移入して自らの分身として幸せな生活を送らせるもよし、キャラクタをたててストーリーを想像しながらプレイしてもよし、ゲームの趣旨とは反対にとことんシムたちをいじめて鬼畜なシチュエーションを作ってもよし、とまあ色々な遊び方ができるゲームだ。
家を自分でデザインできるため、箱庭的・ドールハウス的な楽しみも大きい。キャラクタのスキンや洋服、オブジェクトのデザインを公開ツールで自作することもできる。アクション性も皆無で、マウス1本でのんびりとプレイできるので、普段はゲームに手を出さない人にも魅力的な一本だ。
さて前置きが長くなってしまったが、今回紹介するのは、この「The Sims」の拡張パックで、シム達が家族でバケーションを楽しめるようになるセット「The Sims Vacation」である。「The Sims」単体だとシムの行動範囲は自分の持ち家だけに限られるが、このバケーション編の拡張パックがあれば、海や山などのある新たなマップに遊びに行ける。家の外の世界では何ができるのか? そのあたりを詳しく紹介していこう。
シム以外にもいい味だしているNPCキャラ達。画面は寝ているシムを起こす迷惑なピエロ | シム対シムのつきあいがゲームを深める。プールで死んだ仲間の墓を見て嘆き悲しむ隣人達 | 汚くしすぎた家にゴキブリが大発生。シムに指示をだしてスプレーをかけまくる |
■ 夢のアイランドへ家族でバカンスに出かけよう!
バケーション編である拡張パック「The Sims Vacation」を導入すると、シム達は、普段暮らしているのとは別の地域である「バケーション・アイランド」を利用できるようになる。バケーション編でのポイントは、シム達が家からでかけてよその土地に行ける点と、リゾートならではのアイテムや洋服などが追加された点だ。
旅行を申し込むと、その家に同居している家族シムも、バケーション・アイランドへと出かけられる。家族でバカンスに向かうのだ。もちろん、結婚前の恋人をバケーションに誘う事もできる。
バケーション・アイランドは数々の宿泊施設や遊び場所が揃ったリゾートエリアであり、普段はセコセコと働いているシム達が羽を伸ばして、ゆっくりできる場所だ。前回のデート編が恋人達のための拡張セットなら、今回は家族のための拡張セット。通勤や学校で、普段は一緒に過ごしにくい子供達ともゆっくりと遊べ、新たに追加されたオブジェクトの中でも、そういった子供と親とが一緒に遊べる施設やアイテムが目立つ。
シムが自宅の電話からハイヤーを申し込むと、迎えの車が来て早速バケーション・アイランドへと出発する。画面が切り替わってバケーション・アイランドのマップが表示され、好きな場所をクリックして休日を過ごすところを選ぶことになる。このリゾートエリアには、海、山、森と、およそバカンスを楽しむには最適なシチュエーションが数多く揃っており、キャンプ場でのテント暮らしから海岸沿いのチープなホテル、ロマンチックな雪山のコテージなどで休暇を満喫できる。
前回のデート編では、ダウンタウンのベッドで休んでも体力を回復できないのが問題だったが、今回のバケーション編では、宿泊施設で自宅同様にお風呂やベッドを利用する事ができる。つまり、旅行の間でもシムたちの気分を良好に保ちやすく、長い時間、家以外の場所で遊ばせられるわけだ。
お泊りは、宿泊施設のフロントデスクをクリックしてチェックインし、翌日の昼前後に再びフロントデスクでチェックアウトすればOK。ホテルやロッジなどの施設を利用して、ゆっくり休める。泊まる場所を確保したら、いよいよ休暇の始まりだ。エリアによって、遊び場所はバラエティに富んでおり、雪山で子供と雪合戦に興じられるかと思うと、海辺ではビーチバレーが楽しめ、アミューズメントコーナーで賞品コインを集めたりできる。賞品コインを集めるとお土産屋でいろいろな品と交換できるのだが、金属探知機の宝捜しや釣りなどでも土産物はゲットでき、ついついシム達に宝捜しをさせてしまった。
バケーション・アイランド全体図。北側に山が、南側に海が、そして真ん中に森がある | 暖炉の前で子供達と食事。リゾートでは着ぐるみが歩いており、家族を楽しませる | 電話で呼んだバケーション・アイランド・ツアーの車で家やリゾート間を移動する |
外で雪合戦。リゾートで知り合ったよその家族と対戦する事もできる | ロッジらしい装飾品やインテリアが素敵。雪山か海か森かで、かなり雰囲気が変わる | 海辺のホテルでブッフェを食す。ホテルに泊まったり食事したりするには当然お金がかかる |
アーチェリーで遊ぶ。同じアトラクションや施設を使うと、シム同士は会話する | 雪が積もる中、池で釣りをする。釣竿はもちろん有料だ。現実同様に何でもお金がかかる | 陽気なアミューズメント施設もあり。うまくプレイすれば賞品コインがもらえる |
■ プレーヤーをもリフレッシュさせるバケーション
この拡張セットには、シム達がいつもとは違ったエリアでの日々を経験できる以外にも、もう一つ楽しみがある。前作のデート編同様に、自分でもリゾートを建設できるのだ。バケーション・アイランドの空いている土地、もしくは既存のホテルなどをとり壊した土地に、自分で好きなように建物やアイテムを設置することができる。
既存のリゾートでは、ホテル施設しかない、もしくはアミューズメントは充実してるけど洋服屋がない、といったものがあるため、自分のプレイを満足させるべく、ショッピングモールを完備したホテルを作ったり、とことん豪華な会員制風の高級リゾートを演出したりと夢が膨らむ。今回は、防寒服が追加されているので、ダウンジャケットやセーターなどを着用した、雪山リゾート風の光景が見られるのも楽しい。思うがままのリゾート地を作り上げるのに、しばらく建設のほうに夢中になってしまった。
ずうっとシムピープルをプレイしていると、手取り足取りシムたちに指示をだし続け、朝起きて通勤するという同じ日々の繰り返しにモチベーションが下がる時がある。そういった時こそ、バケーション編やデート編の拡張パックを利用して家の外に出るのが重要だ。シムは新しい土地で新しい隣人と出会い、新たな人間関係を築けるし、プレーヤーはシム育成のあくせくから開放される。
単にデータの増加というだけでなく、新たなプレイエリアが追加できるというのが最大のポイントだ。前回のデート編では連れて行けなかった家族と行動できるのも嬉しい。単調になりがちな長期プレイに新鮮さを取り戻せる、ゲームの中のシム共々、プレーヤーのリフレッシュをも促すバケーションなのである。
ツアーの車で海辺のリゾートに着くと、いきなり水着姿になっていて驚いたりも | 夜の海辺リゾートの様子。ちょっと安っぽくモーテル風なのも雰囲気がでている | ダブルベッドが二つならんでいるのがアメリカーン。夜も自宅同様にぐっすり休める |
ツアーディレクター。バケーションに関しての色々な質問に答えてくれる | ボードウォークにあるアミューズメント施設。ボールが当たらないと、シムはくやしがる | ホットタブの雪山ロッジバージョン。ホットタブ同様にいちゃいちゃできる |
海から山に着たので着替えを物色中。ダウンジャケットやセーターなどがある | ホテルのフロントデスク。シムにチェックインを指示すると、宿泊者名簿にサインする | 絵葉書を贈れば隣人との友好度がアップ! お土産を買って帰ることもできる |
■ 「The Sims」これまでの拡張セット
すでにできあがっているリゾートに手を加える事も可能。満足の行くまで改造だ |
ちなみにこれまで発売された「The Sims」と拡張セット(カッコ内は日本語版名)の種類は以下の通りだ。
・「The Sims」(シムピープル)
本体ソフト
・「The Sims Livin' Large」(ハッピーライフ データセット)
様々なアイテムや職業、新しい家の材料などが追加できる拡張セット
・「The Sims House Party」(パーティーフィーバー データセット)
ご近所づきあいを重視した拡張セット。家でパーティを開けるようになった
・「The Sims Hot Date」(ラブラブデート データセット)
デートに重点をおいた拡張セット。ダウンタウンに恋人と出かけられる
・「The Sims Vacation」
家族でバケーションに出かけられる拡張セット
今回、直輸入版(US版)の拡張セット(The Sims Vacation)を、日本語版の「シムピープル」に重ねてインストールして無理にプレイしてみたが、ゲーム自体を動かす事はできたものの、一部日本語メッセージがおかしくなったり、画面のグラフィックが化けたりした。当然とはいえ、英語版使用者には英語版の拡張パックを、日本語版使用者には日本語版の拡張パックを強くお勧めしておく。
海辺のビーチバレー。ネットを借りると、自動的に周りのシムが参加してくれる | 自分でホテルを作れるのも楽しみのひとつ。見目良く、使いやすい施設を目指す | お土産物屋では、アミューズメント施設で手に入れた賞品コインを使える |
夜のキャンプ場。テントやイグルー(エスキモーの家)は直接借りられる | こんな大きなアイテムも追加。雪でできた滑り台で大人も子供も楽しめる | アウトドアといえばバーベキュー。ゲームの中とはいえ野外料理はおいしそう |
(c)2002 Electronic Arts Inc. All rights reserved
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■ 今週の気になる直輸入ソフト
今週は、秋葉原のLaOXゲーム館では、すでにUK版が発売されている「Warrior Kings」のUS版パッケージ(5,000円)やサッカーのクラブチーム経営ゲーム「Gianluca Vialli's European Manager(5,040円)」、「Half Life」セットもの(4,560円)などが店頭に並んでいた。
また、PC Watchなどですでに報道されているように、秋葉原のT-ZONE本店が5月31日に現在の建物から撤退してパソコン用パーツの新店舗を開くことになった。秋葉原で(というか日本で)数少ない、直輸入ゲームソフトの売り場だっただけに寂しいかぎり。海外ゲームは通販などでも手軽に購入できるが、店頭でパッケージを見て確認できる機会が減るのは残念である。
先々週にうっかり紹介し忘れていたのが、アメコミ調ムキムキヒーロー達が暴れるタクティカルRPG「Freedom Force」がすでに発売されている。“Patriot City”を侵入者達から守るために戦うヒーロー隊を操作して、ミッションをクリアしていくアクションRPGなのだが、それぞれのヒーローが「For Freedom!」といった決めセリフを叫んだり、バックグラウンドが設定されていたりと、徹底して“ヒーロー”という要素をフィーチャーしたゲームだ。ヒーローをカスタマイズできるなど、ユニークな点も多い。
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こちらもヒーローもの。サム・ライミ監督、トビー・マグワイア主演の映画「Spider-Man」も話題なアメコミのヒーロー、スパイダーマンのゲームだ。「Force Freedom」とは異なって、ヒーローものとしては正統派(!?)な3Dアクションゲームで、スパイダーマンといえばのクモの糸やジャンプ技などを駆使しながら悪を討つ内容となっている。人気キャラクタだけにこれまで何度もゲーム化されているが、既発の作品よりぐっとダイナミックなグラフィックになっている。
(2001年4月24日)
[Reported by 西尾ゆき]
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