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【連載第61回】 あの、おもちゃを徹底レポート




大空をゆったりと飛翔する飛行船のラジコンが登場!
タカラ「ドリームフォース02 SKYSHIP」

「ドリームフォース02 SKYSHIP」
発売 タカラ
価格 6,980円 (ヘリウムガス 3,000円)
電源 アルカリ単3電池×4
発売日 4月25日全国発売


 ロボットから飛行船へ……。
 タカラの「ドリームフォース」といえば、缶チューハイのCMに登場したロボットのラジコンで知られているが、第2弾はうって変わって「飛行船」となった。
 この商品に対する同社の意気込みは並々ならぬものがあるようで、取扱説明書には代表取締役社長・佐藤慶太氏のメッセージが1ページに渡って寄せられているほど。最も印象的な部分を紹介すると……「夢のない大人が子どもたちに夢を語ることはできません。だからこそ、もう一度、楽しかった夢の世界を、イマジネーションを広げる空想の世界を思い出して欲しいのです」。不況だ、社会不安だで、元気のない大人たちへのエール。「ドリームフォース02 SKYSHIP」には、そんな想いが込められているのだという。

 筆者は、はじめはこの一文を目にしておらず、「SKYSHIP」をたっぷりと遊んだ後で読みんだのだけれど、伝えようとしていることがよくわかった。「SKYSHIP」を遊んでいると、不思議と晴れやかな気持ちになれるのだ。

全長は約90センチとビッグサイズ。内蔵したヘリウムガスの効果で浮遊する コントローラ。レバーもなく独自の操作だが、わかりやすく、すぐに慣れる



軽くて素朴なパーツを慎重に組み合わせる

 機体のデザインは3種類あったのだが「グラーフ・ツェッペリン2世号」をチョイスし、さっそく組み立てることにした。箱に収められたパーツを取り出し、テーブルの上に並べると、ちょっとした驚きを覚えた。飛行船の気球部分に当たる「エンベロープ」は、ビニール(エバール)製。安定板はスチロール製。プラパーツも薄めで、組み立てには接着剤ではなく、両面テープを使用するのだ。値段を考えると、安っぽいのでは……。しばしの思考の末、なるほど、と納得。すべては「浮遊」のためなのだ。要は飛行船を浮き上がらせるべく、総重量を限界まで軽くする必要があり、これらはそのために選択された素材、というわけだ。

 組み立て作業は、決して簡単とはいえない。軽さを追求した素材のため、下手をすれば壊れそうな繊細さだし、何より「空を飛ぶトイ」なのだ。少しの間違いがあろうものなら、落下の憂き目にあいそうで、気持ちも引き締まる。
 作業を進めていると、普段とは違った感慨が沸いてきた。最近のトイは可能な限り簡単に作れるように配慮されていて、いかにも「組み立て」という作業なのだが、「SKYSHIP」の場合は違う。素朴なパーツを大切に扱いながら、時には「これでいいの?」と頭を悩まなければならない難しさがあり、まさに「工作」をしているようなのだ。そうそう、昔の飛行機のキットも同じようにパーツが華奢で、苦労しながら作ったなあ、といくつもの思い出が頭をよぎる。

 作業のポイントとなるのは、4種類の安定板。一見するとみな同じに映るのだが、上部垂直安定板、左右水平安定板、下部垂直安定板の3種類があり、それぞれ本体の正しい位置に貼らなくてはならない。誤ると、とんでもない飛び方をしてしまいそうで、取扱説明書を何度も確認しながら作業を進める。

後部の安定板。本体には両面テープで接着。4基の羽で安定した飛行を実現する ゴンドラには、プロペラをはじめとする移動に関わる機構が内蔵されている



ヘリウムガスを注入し、充電を終えて……準備はオーケーだ

 開始から1時間後に、キットの中身をすべて組み終える。ただし、作業は終わりではない。ペラペラでビニール然としたエンベロープにヘリウムガスを注入するのだ。「デカイ」と評した「ヘリウムガス」の箱の中には、銀色のパックが入っている。この先端をハサミでカットし、ポンプを設置。今度はポンプのノズルを、エンベロープの最後部に突き刺す。ポンプのグリップをポンピングすると、パックのヘリウムガスが、エンベロープに送り込まれていく。飛行船を浮かせるには、エンベロープに70リットルのガスが注入されている必要があり、ポンピングの回数にすると150から160回分となる。単調な作業だなあ、と思っていたけれど、100回を超えるころからエンベロープが膨れ上がり、飛行船らしくなってきたので、とたんに楽しくなってくる。
 160回目のポンピングを終えると、目の前には飛行船があった。ホンの数分前はペシャンコだったのに、今では堂々たる「グラーフ・ツェッペリン2世号」になっているのだ。全長は約90センチ! このデカさにもシビれされられる。しばし、感激に浸っていると、あることに気づいた。

 「この飛行船、浮いていない!!!」

 「SKYSHIP」を持ち上げると一瞬だけ上昇するが、数秒後には急速に下降してしまうのだ。検討の結果、ヘリウムガスが微妙に足りないのだと判断し、もう一度ポンプをセッティング。10回ほどポンピングをすると、飛行船はグーンと浮かび上がり、仕事場の天井にくっついた。ひと安心だ。ただし、これでは上昇の操作が楽しめないので、付属の重りを取り付け、重量を微調整する。自然に浮かび上がるが、天井にはたどり着かず、中空を漂っている、という按配に調整することができた。
 飛行船の動作に必要な電力は、コントローラから供給する。コントローラから伸びるコードを、飛行船のゴンドラの下部に取り付ければ充電開始。10分間の充電で、15分間の飛行が可能となる。

最後部にボンベを差込み、ヘリウムガスを注入する。次第に膨らむ様が楽しい パックには、約100リットルのヘリウムガスが入っている。とにかく大きい。写真は編集部員が箱を持ったところ 充電は、コントローラから。ケーブルでゴンドラとつないで、10分程度



のんびりとしたその姿に、心もなごんでいく

自動車や飛行機、ロボットなど既存のラジコンとはまるで異なる面白さがある
 さあ、運転だ。飛行船は、むやみに浮かび上がらないように、付属の係留マストにくくりつけてある。飛行船の先端と係留マストを結びつけるワイヤを外し、コントローラを握る。「SKYSHIP」は、空中に静止している。

 この「SKYSHIP」の魅力のひとつは、実際の飛行船の操作をそのまま再現していることだ。2基あるプロペラの向きを、上と下、正面の3方向に変える。左と右のプロペラをそれぞれ回転させる。あるいは逆に回転させる。これらの組み合わせで、自由に飛びまわれるのだ。
 高く飛ばすには、プロペラを上に向けて、左右のプロペラを回転させればオーケーだ。コントローラを操作すると、間髪いれずにプロペラが回転し、「SKYSHIP」がフワッーと上昇していく。
 天井に接触しそうになるまえに、プロペラの回転を一度止め、向きを正面に変える。そしてあらためて回転させると、今度は前進をはじめる。右へ旋回する場合は、左のプロペラだけを回転させる。左への旋回は、右のプロペラだ。後退させるときは、プロペラを逆に回転させる。

 操作への反応は、良好だ。飛行船だけにキビキビとは言えないが、イメージ通りに飛び回らせることができる。
 仕事場を飛び回る「SKYSHIP」の様子は、のんびりとしていながらも、飛行船独自の勇壮さがにじんでいて、ずっと眺めていようとも、まるで飽きない。
 操作もマスターし、充分に遊んだつもりなのだけど、なかなかコントローラから手を離すことができない。「SKYSHIP」を操作していると、どんどんと気持ちよくなってくるのだ。自動車やロボットのラジコンを操作していると、気分は次第にハイになっていくが、「SKYSHIP」はその正反対とでも言おうか。宙に浮かび、ゆったりと動いている様子を見ていると、心がジンワリと溶けていくような感覚があるのだ。あくまで室内限定とのことだが、晴れた日に河川敷などで飛ばすことができたら、それはそれは楽しいだろうなあ (じつは室内といえどもクーラーの風にさえ影響を受けてしまうのだが……) 。

 飛行船のラジコン、と聞いてはじめはその目新しさに惹かれていたのだが、特有の操作も面白く、受ける感動も新しく、独特な魅力に引き込まれてしまった。これはよいです。「ドリームフォース」シリーズは、前回のロボット、そして今回の飛行船ともに傑作で、早くも次なる展開が気にかかる。期待していますよ、タカラさん!!

□タカラのホームページ
http://www.takaratoys.co.jp/
□「SKYSHIP」のページ
http://www.takaratoys.co.jp/skyship/


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(2002年4月4日)

[Reported by 元宮秀介 (ワンナップ)]


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