とっつきにくそうなゲームシステムと2D画面とで、日本ではまるっきりブレイクしないままのターン制ファンタジーストラテジー「Heroes of Might&Magic」シリーズ。一見地味なゲームなのだが、噛めば噛むほど旨みが広がる良作で、こなれたゲームシステムと妙に格調高い音楽、カラフルな色使いがプレイを盛り上げる。最新作「Heroes of Might&Magic IV」でも繰り返し長く遊べるスルメゲーム感は健在だ。 |
■ 今では珍しいターン制ファンタジーストラテジー
「Heroes of Might&Magic IV(以下「Heroes4」)」はターン制のファンタジーストラテジーだ。有名RPGシリーズの「Might&Magic」の名は付いているが、ストーリーラインや世界設定に多少関連があるだけで、ゲームとしては完全に独立している。
「Heroes4」は、1ターンごとに増える資源で城の建物を増やして兵を雇い、ヒーローユニットを成長させながらマップの未知な部分を探索し、ターンを重ねていった最後にはマップ内の他種族を滅ぼすのが目的のゲームだ。城で雇った部隊をすごろくのコマのように動かして、敵や資源の前に立ちはだかるクリ―チャーと戦っていく。すべての兵力と城を失ったら負けとなる。
ゲームの中心となるのは、城で雇った兵士やヒーローで作られる部隊で、これらを動かす事で、敵と戦ったり、資源を占領したりしていく。もうひとつ、城の中に建物を増やしていくこともポイントで、中世のお城のように城内には建物が建てられ、兵士を雇うための建物、ヒーロー用のスペルを増やす建物などを増やしていく。
「Aという建物を建てるにはBという建物とこれこれの資源が必要」という風に、建設条件も設定されているため、資源を建物に使うか、兵士を雇うのに使うかのバランスが問題だ。また、城の建物は1種類につき1個しか建てられないので、雇える兵士の数もおのずと限られてくるのだが、いくつもの城を占領すれば、それだけ同じ建物をたくさん持つことになり、たくさんの兵士を集めた強力な部隊でマップ内を探索できるようになる。
1つの部隊には最大8種類の兵士を参加させることができる。兵士はプレーヤーがゲームスタート時に選んだ種族によって、個性的なクリ―チャーや兵隊を作成することができる。自分が選んだ種族にかかわらず、占領した城ならばどんな種族の城であっても自分の兵士にできるので、異なる種族の強い兵士を集めた部隊も作れるわけだ。
マップ上での冒険、城の建物の建設、そして戦闘がこのゲームを構成する要素である。
これがプレイ中に一番長く見ることになるマップ画面。フィールド上にあるアイテムや資源などを歩き回って手に入れる | 戦闘は部隊vs部隊。どちらかが全滅するか逃げ出すかまで順繰り攻撃しあう | 城の中に建物を建てて雇える兵士の種類を増やしたり、ヒーローが覚えるスペルが手に入る魔法ギルドを建てたりする |
■ ユニット人数が重要な部隊vs部隊の戦い
戦闘は必ず1部隊vs1部隊で行なわれ、部隊のコマ同士がマップ上でぶつかることで戦闘画面に切り替わる。戦闘はラウンド制で、スピード値の高い兵士から順番に攻撃しあう。画面写真を見ていただくとわかるが、戦闘画面では、各兵士は種類ごとに表示されていて、例えば城で弓兵を50人雇ったのであれば、一つの弓兵ユニットの頭のところに50という人数を表す数字がくっついている。戦闘の結果、頭の数字が0になってしまうとユニットは消滅してしまう。
各兵士1体あたりの生産コストは千差万別で、生産コストが高い代わりに1体当たりの戦闘能力も高くなる。たとえば、ドラゴン1匹vs農民1人では性能がまるで違うため、弱いほうの農民が必ず負ける。しかし、ドラゴン1匹vs農民500人では、多くのダメージが与えられる農民500人の方が勝つのである。人数がたくさんいるということは、それだけ攻撃力が増し、部隊が滅ぶ危険も減るということなので、なるべく多くの兵士を引き連れて敵と戦ったほうが有利になる。「人数で押せ」がHeroesシリーズの鉄則だ。
攻撃には直接攻撃、遠距離攻撃のほか、兵士それぞれに設けられた特殊攻撃やヒーローの攻撃魔法などがある。遠距離攻撃では、その兵士から見た視線のラインで、最初に見えているユニットしか飛び道具で攻撃できない。また、各兵士ユニットは1ラウンドに移動できる距離が決まっている。なので、遠距離攻撃を持たない兵士は、敵の弓兵に手が届くところに移動するまでプスプス攻撃されっぱなしになる。だがその一方で、遠距離攻撃のユニットは総じて直接攻撃に弱いなど、どう兵士を動かせば得策なのか考える余地があり、そこにフォーメーションや戦略が生きてくる。
たくさんの兵士をかき集め、攻撃方法のバランスを考えながら部隊を作成し、そして敵と戦っていく。戦闘前は部隊の作成で、戦闘中は各兵士の動きかたや攻撃のタイミングなどで頭を使わさせられるのである。
兵士がスピード値の高いものから順繰りに攻撃しあう戦闘画面。攻城戦では城門や城壁で苦労する | 戦闘中、ヒーローユニットの唱える呪文は強い助けになる。しかし、対応するスキルがないと魔法は使えない | 海を船で移動中にも戦闘が行なわれる。海上での戦闘は、地上での戦闘とはちょっとちがった背景画面に |
■ 6つの種族とバラエティに富んだ兵士
「Heroes4」には6つの種族があり、それぞれの種族に対応したタイプの城でバラエティに富んだ兵士達8種類を雇える。ただし、兵士を雇うための建物は5つしか建てられない。強い兵士を雇うための建物はそれだけ資源もかかるので、どのタイミングでどの建物を建てるかが腕の見せ所だ。バラバラの種類の城を複数持って、バラバラの種族の兵士を雇うことも可能だが、なるべくならば同一種族の城をたくさん持って、1種類の兵士を人数多く雇ったほうが戦闘では有利だ。種族によって建物の種類や建設に必要な資源が変わるし、兵士ごとの特殊能力も異なるので、それぞれの種族の特性を生かした攻略が大事である。また、城以外でも各種族の特性と同じ系統のクリ―チャーが何種類かおり、これらを仲間にすることもできる。
■ ヒーローユニットを育てる楽しさ
部隊には特殊な能力を持った特別な“ヒーロー”ユニットを参加させられる。一般兵士が何人もいるのに対して、ヒーローは一人で単一ユニットとして表示される。ヒーローは戦闘を経ることで成長させる事ができ、レベルアップで身に付いたスキルによって、自分自身の戦闘能力アップはもちろんのこと、所属する部隊の兵士の戦闘能力アップや城での生産力アップといった特典がつくようになる。
ヒーローユニットはそのスキルによって、部隊内の攻撃力を上げたり、魔法を使ったりできるが、レベルが低いうちは戦力としてはものたりない存在だ。そのため部隊編成は、ヒーローの能力に頼らない、バランスの良い内容であることが求められる。肉弾戦の能力にすぐれたヒーローや魔法に長けたヒーローがいても、その特典を生かせる兵士ユニットがあってこそのヒーローなのだ。
ヒーローは種族によって職業が決まっているのだが(6種族で計11種類)、特定のスキルをレベルアップしていくことで、上級職業に変化する。例えば、ナイトがタクティクスとコンバットスキルを成長させていくと“ジェネラル”になったり、ネクロマンサーがスカウトとデスマジックを極めると“ニンジャ”になる、といった具合だ。上級職には様々な特典があるので、狙ってスキルを成長させていきたい。
もう一つ忘れてはならないのが、ヒーローにだけは装備画面が設けられていて、手に入ったアイテムを体のあちこちに装備する事で、ヒーロー自身の能力がぐんとアップする。こういったアイテムは、ヒーロー同士でやり取りする事ができるので、装備しきれない品は他のヒーローに渡したり、融通がきくようになっている。
ヒーローが成長する事でレベルアップしていく戦闘スキル。戦闘スキルが成長すると、部隊全体の攻撃力向上の効果をもたらしてくれる | ヒーローは体の各部分に色々な効果を持つアイテムを装備する事ができる | キャンペーンによってはヒーローだけでクリ―チャーに立ち向かうようなシチュエーションも |
■ 一見地味な本作の内に秘めたるおもしろさとは?
アクションゲームをはじめ、激しい動きのあるゲームが好まれている昨今、「Heroes4」のような動きの少ない画面は、なんだかつまらなそうに見えてしまうかもしれない。だが、実際に遊んでみると、よく練られたゲームシステムやバランス、ユーザーのプレイアビリティを追及したメニュー構成が心地よく、一度、大まかなルールを覚えてしまえば、プレイをすぐには止められない魔力を持っている。とにかく繰り返し遊んでしまうのだ。
このゲームのどこが一番面白いのかというと、自分のヒーローと部隊を徐々に強くしながら戦闘に勝つことにある。少ない資源をやりくりして少しずつ貯めた戦力で、戦力が拮抗する敵部隊をうまく相手にするのがたまらなくおもしろいのだ。余裕がないギリギリの状態の場合などは、本当に1ターンの差、一歩の差で勝敗が決まってくるので、自分の頭脳で乗り切った戦闘は非常に爽快感があるのだ。種族ごとの魔法や兵士を生かした戦いができた時、それがHeroes最大の喜びの瞬間だ。
強いヒーローと大量の兵士で作ったとことん強い部隊で敵を蹴散らすのも、別の爽快感が得られる。たとえば、900人近い弓兵で敵ユニットを一斉射で屠ったりした時など、思わず鼻で「ふっ」といってしまうような意地悪な喜びが湧き上がる。Heroesをプレイすることがあったら、ぜひ、この数で押す弱い者いじめの喜びも味わってみるべきだ。
シリーズの過去作と比べると、3Dになったことで各種シーンでのとことんゴージャスな雰囲気が多少失われた気がするし(ちょっとスカスカした感じ)、戦闘画面の3D化も慣れるまで距離感がなかなかつかめなかった。ヒーローが戦闘に直接参加したり、部隊はヒーローが率いる必要がなくなったり、街の建物や兵士のアップグレードがなくなったりなどの変更点にシリーズ通してのファンは戸惑うかもしれない。だが、この作品はHeroesシリーズ初体験の人にとっては、煩雑な部分が減った分、過去作よりもずっと親しみやすく遊びやすくなっている。
また、キャラバンの登場によって兵士を自由に迅速移動させることができる。これまでのように兵士供給用に作ったヒーローを使って手動で部隊を前線に輸送する必要がなくなったわけだ。そのほかマーケットボタンがあるので、いつでも資源やお金を取引できる。さらにユーザーフレンドリーとなったゲームシステムなども含め、過去作のファンにもぜひプレイしてもらいたい点は数多くあるのだ。
大作キャンペーンが6つに大量のシングルマップ、数で押しにくくなった攻城戦や、ヒーロー達のクラスチェンジなど、余分なものはそぎ落としつつも、さらに増えた戦略要素は、長く長く遊ぶに十分な内容を持っている。リアルタイムストラテジー全盛の世の中だが、アクション制を廃したターン制だからこその熟考と戦略立ての喜びは、リアルタイムストラテジーではなかなか味わえないものだ。じっくり、まったりと、ぜひプレイしてみてほしい。
城で兵士達を雇う。どの兵士を雇えるようにするかで臨機応変に戦略を変えていく | マップ上にはアイテムや資源の他にも、ヒーローのスキルを上げてくれるような特殊建物もある | あまった資源はお金に変換。画面右側にあるメニューからいつでもマーケットで取引ができる |
左から「Heroes1」、「Heroes2」、「Heroes3」のゲーム画面。見比べると「Heroes4」で3Dになった時の変化がよくわかるだろう |
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■ 今週の気になる直輸入ソフト
先週、先々週が新作ラッシュだったが、今週は比較的少なかった。LaOXゲーム館では「Battle Realms」、「The Settlers IV」、「SHOGUN TOTAL WAR」がセットになった「RTS trilogy(6,250円)」が、T-ZONE本店では「Train Simulator」のアドオンで世界の速い列車を集めた「High Speed Trains(4,500円)」などが店頭に並べられていた。
また、今週は上記で「Heroes Might&Magic IV」を紹介したが、過去作をプレイしたい人は、Heroes1~3とHeroes2のエキスパンションがセットになった「Heroes of Might&Magic Millenium Edition(3,600円~5,980円)」や、Heroes3とすべてのエキスパンションがセットになった「Heroes of Might&Magic 3 Complete(5,600円)」などがあるので、入手されたし。また、Heroes3をベースにした単発シナリオシリーズの「Heroes Chronicles」も何本か発売されている。
感情を持ち、食事やお風呂を必要とするゲームの中のリアルなキャラクタ達を助けて彼らを生活させる、人生シミュレーションゲーム「The Sims(シムピープル)」の拡張セット。前回の拡張パック「The Sims? Hot Date Expansion Pack (シムピープル ラブラブデート! データセット)」のダウンタウンに続いて、シム達がバケーションを楽しめる新エリアや、125以上もの新しいアイテムが追加されている。「The Sims」所持者は必携の一本。完全日本語版がエレクトロニック・アーツ・スクウェアから7月4日発売予定となっている。
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おもちゃの兵隊“Army Men”を題材にしたゲームシリーズにリアルタイムストラテジーが登場。資源を集め、兵士を生産しながら敵軍を攻める……と書くとオーソドックスなRTSだが、おもちゃの兵隊が主人公ということで戦場は家の台所や庭先。庭にミニチュアの兵隊達が並んでいる様子は、Army Menがあまり身近でない日本人には微笑ましい光景だ。資源の採取元も家庭でよく見かけるような生活用品や廃品だったりと、プレイしているだけで楽しそうな雰囲気。おもちゃの視点から家の中を見られるという楽しみもある。
(c) 2002 The 3DO Company. All Rights Reserved.
(2001年4月17日)
[Reported by 西尾ゆき]
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