「Disciples」は日本ではあまり知られていないタイトルだが、「Heroes of Might&Magic」の独擅場だったターン制ファンタジーストラテジーの世界に、果敢に切り込んでいった秀作だ。ヒーローユニットを動かしてマップのあちこちを占領しながら自分の城をアップグレードしていき、敵の領主を倒すのが目的のゲームで、第2作目である「Dark Prophecy」ではグラフィックもさらにグレードアップし、重厚な世界観をかもし出してる。 |
■ ユニットを成長させながら侵攻するストラテジー
美しいゲームフィールド。黒く覆われた場所にユニットを進めて視界を広げていく |
プレーヤーは、まずヒーローが率いる部隊に戦闘用のユニットを雇い、その部隊をマップ上でコマのように動かして、それまでふさがっていた視界を開き、敵ヒーローとの戦闘や中立の村の占領などを行なっていく。
ユニットは戦闘系、魔法系、援護系など様々なのだがいずれも戦闘で一定の経験値を得るとレベルアップし、様々なクラスへと進化していく。例えば、人間族のThe EmpireのAcolyteは、部隊全体を回復できるClericと、一つのユニットを大量回復できるPriestとのどちらかに進化させることができる。もちろん、進化は一段階ではなくて、枝分かれしながら2~5段階も成長させていく事ができるのだ。
ひとりの領主につきひとつの城が与えられ、建て増ししていく事で強力なユニットに進化させられるようになる | ユニットやヒーロー、アイテムは右クリックすると情報ウィンドウが開くようになっている | 城での軍隊画面。ここでユニットを雇ってヒーローの部隊に配置する |
戦闘もターン制。順番に攻撃しあっていくので、どのタイミングでアイテムや回復能力を使用するかがポイント |
また、通常ユニットのほかにも、建物を建てる事で雇えるようになる特殊ユニットもいる。初めから強力な巨大ユニットは部隊の制限人数を圧迫するため、ひとつのヒーローユニットで複数の弱いユニットをじっくり育てていくか、巨大ユニットを含んだ少数精鋭のヒーローユニットをたくさん作っていくかなど、悩ませられる。
マップ内には敵の領主が操作する敵ヒーローユニットがいるほか、要所要所には中立のモンスターが立っており、それらと戦う事で経験値を獲得でき、自分のユニットたちの成長の足しにすることができる。進化させられるのは実際に戦闘で戦って経験値を得たユニットのみなので、敵や中立モンスターといかに効率よく戦闘を繰り返すかが重要だ。
マップ上には、戦闘中に使用できるさまざまなアイテムが入手できるお店や中立の村や資源などがあるので、各ヒーローたちを動かして中立の村を占領してユニットの回復や蘇生が行なえる場所にしたり、資源のある場所を占領して自分の収入を増やしたりする。そういった資源やお金を利用して、自分の城のアップグレードやヒーローのためのスペル研究をしていく。城の外の敵を蹴散らし、領主として城や村の増築を行ないつつ、いかにヒーローとユニットを育て上げて強力な部隊を作るのかが、このゲームのポイントになっている。
定期的に建物をアップグレードしておかないと、条件を満たしたユニットがいても進化できなくなってしまう。常に一歩先を読んでゲームを進める必要がある | 資材を投入してスペルを開発研究すれば、ヒーローユニットが呪文を唱えられるようになる | シナリオやキャンペーンでは、合間にキャラクタたちの談話が挟まったりしてストーリーを盛り上げる |
マップ上にはアイテムを売買できるお店も存在する | フィールド上には宝箱や金袋が落ちていて、アイテムやお金が手に入る | 召喚魔法で呼び出したLiving Armor(左奥の巨人)。召喚ユニットで敵の戦力を減らしてからヒーロー部隊で突撃だ |
■ アイテムを装備できるヒーローユニット
ヒーローの種類は5種類。実際に敵と戦うのは上から3つのヒーローになる |
マップフィールド上で魔法を唱える。ダメージ魔法から回復、召喚魔法まで様々なものが用意されている |
戦闘向けのヒーローは、ほかの通常ユニットと同じように兵士として戦闘に参加するのだが、そのほかにも、手に持っている回復ポーションなどのアイテムを使ったり、特殊な効果を持ったアイテムを装備する事で戦闘をより有利に進めることができる。
ただし、アイテムを装備するためには、アイテムに対応したスキルを習得している必要がある。しかも、アイテムの使用は両手に1個ずつ、つまり戦闘中は2個のアイテムしかつかえない上、1個につきターンを1回消費するので、ここぞというタイミングで使用しなくてはならない。相手の出方を予想して、一手前に仲間を回復したりするのだが、これが上手くはまると「ふっ、そうくると思ったさ」という感じでニヤリとできる。
もうひとつヒーローで重要なのは、部隊に参加できるユニットの数がヒーローユニットのリーダーシップ値に左右されるところ。部隊メンバーの構成スロットは6マス分用意されているのだが、ヒーローのリーダーシップ値が3の場合は、ヒーロー以外に3マス分しかユニットを参加させることができない。強力なユニットは例外なく2マス分を占めるため、どんなユニットで部隊を構成するのかが腕の見せ所になる。
また、ヒーローは城で研究開発した呪文を使えるのもポイントだ。ただし、「Heroes of Might&Magic」とは異なって、魔法はフィールドマップ上でのみ有効なので、戦闘をしかけるユニットがきまったらそばに進み、戦闘を始める前に呪文をかけるという具合になっている。スペルは種族によって異なるが、敵部隊全体に効果を及ぼす攻撃魔法や自分のユニットを回復する魔法などがあり、召喚魔法は数ターン限定の味方モンスターを呼べるのだが、単に味方の部隊が増えるというより、出す場所によって、戦う前の体力削りや半死半生で逃げかかっている敵ヒーローの追い討ちなど使い道が広い。城でスペルを開発すればすぐにその場でヒーローが魔法を唱えられるようになるため、早めにスペル開発を行なっておいたほうがいいだろう。
アイテムを装備するスキルは結構細かく分かれていて、せっかく手に入ったのに装備できないということがしばしばあった | どのユニットを雇うか悩ましいところ。強力なユニットはそれだけマス目を消費する | ヒーローはレベルアップすると新たなスキルを習得する。成長がゆっくりなためスキル選びは慎重に行なおう |
■ 位置によって攻撃可能かどうかが左右される戦闘
戦闘はヒーローを含むユニット隊同士の1対1の対決だ。マップ上でモンスターユニットや敵のユニット隊とぶつかると自動的に戦闘が始まる。戦闘画面は部隊のメンバー同士が向き合うドラマチックなグラフィックで、ここでユニット隊同士が交互に攻撃をしていき、こちらの攻撃、あちらの攻撃というふうに、順番に互いの攻撃を繰り返す事になる。
ユニットはそれぞれに能力が異なるが、肉弾戦ユニットであれば攻撃のみ、魔法使いユニットであれば魔法攻撃のみ、というふうにユニット1種類につき1つのアクションしかない。たとえば、仲間を回復できるAcolyteは、回復行為しかできないので、味方のHPが満タンの場合は防御しているしかないし、例えば最前線にいたとしても、敵を攻撃する事はできない。1つのユニットは1つのアクションしか持たないので戦闘ルールが単純化されており、このため実に遊びやすい。また、部隊に参加できる枠が限られているため、どのユニットをどれくらい部隊にいれるか考えるところが、カードデッキを組むような楽しさが生まれるのだ。
また、戦闘フィールドでは立ち位置によって攻撃できるできないが決まり、直接攻撃しかもたないユニットだと自分の前か1マス斜め前にいるモンスターを倒さない限り反対側にいるユニットは攻撃でないようになっている。そのため、ユニットによって異なる攻撃範囲をしっかり把握した攻撃が大事だし、ターン制の戦闘のため、例えば全体魔法を使う敵ユニットからつぶしていくなど、単に剣を振るっているだけではない戦略が必要とされるのだ。
戦闘がはじまった場所を反映した背景グラフィックが美しい戦闘シーン。ユニットが死亡しても、他のユニットが生きていれば逃げることができ、村や城で蘇生後、再攻勢に乗り出せる |
■ その他のユニークなシステム
最初にタイプを選んで、次にゲームの難易度を調整する |
・Warrior Lord……LV4までしかスペルが研究できないが、ターンごとに自軍ユニットのHPが15%ずつ回復する
・Mage Lord……すべてのスペルを研究する事ができる
・Guildmaster……LV4までしかスペルが研究できないが、Thiefユニットの行動力が増し、村の拡張は通常の半分の金額で行なえる
また、ゲームのマップ内には魔法を研究するために必要な鉱石を産出する場所が点在しているのだが、これを自分のものにするには自分の領土エリア内にある必要がある。自分の城のまわりや、占領した村のまわりには自動的に陣地が広がるのだが、これ以外にもピンポイントで一定の土地を支配する方法があるのが、このゲームのユニークなところだ。
各種族には1種類ずつ特定のヒーローユニットがいて、このユニットが任意の土地にロッドを突き刺すと、その周囲は小さい範囲内ながらも支配下におかれるのである。他の領主のユニットが建てたロッドも、この特殊ヒーローユニットが壊せる仕組みになっている。だが、ロッドを打ち込めるユニット自体はとても弱いので、その周りは他の戦闘に適したヒーローユニットでフォローしながら進軍していく事になる。
資源のある場所にロッドを建てると占領でき、土地がその種族を象徴する地面で覆われる。結果、次のターンから少しずつ資源が城に送られてくることになる |
■ 凝ったグラフィックとユニットの進化が魅力
じっくりチマチマ遊べるのが魅力の本作だが、プレイしているとややユニットのバランスが悪い印象を受ける。人間族のThe Empireで初めにプレイしていたのだが、別の種族にチャレンジすると、回復役のユニットいないのに戸惑った。というのも、Disciples2では原則的に戦闘終了後もユニットの減ったヒットポイントは回復しないため、回復役のユニットがいない部隊の場合はいちいち近くの村か城に戻らなくてはならないのだ。回復手段が限られるため、行きつ戻りつする事が多く、テンポよくゲームが進められないときがあった。また、ヒーローユニットの成長具合がかなりゆっくりなため、1回のゲームであまり色々なスキルをつけられないのがやや不満だった。
しかし、「Disciples2」は、単純でわかりやすい戦闘、じりじりとマップを占領下においていく喜びなど、ストラテジーとしての良い部分も多分に持っている。特に、ユニットが進化する瞬間が幸せ。ユニットは進化によって大幅に能力アップするため、戦闘が終わって一段階上のユニットのグラフィックに変わった瞬間はなんともいえない喜びがある。ちょっとずつ大切にそだてたユニットが一瞬にして強いユニットに変化するのが爽快なのだ。
細かく描き込まれたグラフィックもいい。ストラテジーはユニットが小さくなりがちなものだが、「Disciles2」のユニットは大胆な大きさで、それぞれが固有のアクションを起こす戦闘画面は迫力があってゴージャス。最終的なユニット数はかなりの数にのぼるのだが、ひとつひとつのユニットが凝ったデザインで描写されていて見ているだけでもうっとりしてしまう。
フィールドマップも建物やユニットが質感よく、細かく描写されているため、いかにも箱庭的な雰囲気をかもし出していて好ましい。多少細かい部分での不満はあったが、重厚で美しいグラフィックとユニットを連れ歩いて戦闘で成長させられる楽しさは抜群の出来なので、ぜひDemoからチャレンジしてみてほしい。
巨大ユニットがぐりぐり動き、派手な3Dエフェクトともに強力な攻撃を仕掛ける戦闘シーン。お互いレベルが上がってくると一発のダメージも大きくなってくるため、わずかなコマンドミスが致命傷に繋がってしまう |
(c) 2001 Strategy First Inc. All rights reserved. Disciples II: Dark Prophecy is a trademark of Strategy First. All rights reserved. All other trademarks and copyrights are the properties of their respective owners.
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■ 今週の気になる直輸入ソフト
前回、LaOXゲーム館に入荷していたことを報告した「Star Trek: Bridge Commander」だが、今週はOverTopやほかの店でも確認できた。また先週は店頭で見つけられなかった「NASCAR Racing 2002 Season」もたくさん再入荷されていた。また、「B-17 Flying Fortress "The Mighty 8th"」、「European Air War」、「Falcon 4.0」がセットになっている「Totally Flying」も販売されていた。
LaOXゲーム館では先日日本語版が発売された「GOLF RESORT Tycoon」の続編「GOLF Resort Tycoon II」が、また、T-ZONE本店ではUK版の「Warrior Kings」が店頭に並んでいた。直輸入ソフトはUS版パッケージがまだ出ていない時期にUK版で先に入荷されることもあるので、気になるソフトは公式サイトで発売日をチェックして、こまめに店頭に通うようにしよう。
NASCARはアメリカでとても人気のあるモータースポーツで、市販車ボディのレーシングカーが時速300キロ以上のスピードでオーバルコースをかっ飛ばしていくカーレース。「NASCAR Racing 2002 Season」は、そのNASCARを題材にしたこれまた人気のシリーズ作品で、すでに発売済みのNASCAR Racing4に2002年版のデータを乗せたもの。手軽にデイズ・オブ・サンダー気分を味わえるゲームだ。
(c)2002 Sierra Entertainment, Inc.,
ダイナミックな戦闘シーンに目を見張らされるリアルタイムストラテジー。中世ファンタジー世界を舞台に、内政に励みながら大量のユニットに隊列を組ませて敵勢力と戦っていく。フル3DはもはやRTS標準になりつつある印象だ。
(c)2001 Black Cactus, Microids, All rights Reserved.
18世紀から19世紀はじめにかけてを舞台にした、海洋リアルタイムストラテジー。13種ある帆船を操ってで史実に即した100以上ものシナリオや6つのキャンペーンを戦っていく。マルチプレイは16人まで対応している。
(c)2002 TAKE2 INTERACTIVE -All Rights Reserved.
Activision Valueシリーズの箱庭系経営シミュレーション、GOLF Resort Tycoonの続編だ。ゴルフコースを造成したりホテルを建てたりしながらゴルフ場を経営して自分だけの5つ星リゾートを目指すゲーム。自分の作ったコースで実際にゴルフをプレイできるのもポイントだ。
(c)2002 Activision Value Publishing, Inc. All Rights Reserved.
(2001年3月13日)
[Reported by 西尾ゆき]
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