昨年はリチャード・ギャリオット氏との提携などで一躍その名を知られるようになった韓国のゲームメーカーNC soft。その同社の代表作として知られるMMORPG「リネージュ Lineage the Blood Pledge」が、いよいよ2月12日から日本サーバーでの完全日本語版の正式サービスを開始する。これまでの無料ベータテストに引き続いてゲーム本体は無料、プレイへの課金は月1,400円と決定された。テスト開始から4ヶ月でのべ15万人分の登録を記録したというこのゲーム、どの辺に魅力があるのかを探ってみよう。 |
■ Lineageってどんなゲーム?
大きな街には大勢の参加プレーヤーが集う、日本語が通るゲームなので違和感がない |
「リネージュ」は乱暴な言い方をすると「数千人規模になったDiablo風アクションRPG」といった感じのMMORPGだ。画面はクォータービューで、プレーヤーはクリックひとつの簡単操作でキャラクタに移動や戦闘をさせ、パーティを組んでダンジョンを探索したり、プレーヤー同士が作る「血盟」というチームに所属して城を奪い合う大規模な戦争をしたりといった、戦闘を中心とした冒険を楽しむことができる。昨年の12月には「エピソード9 ハイネ」が導入され、湖に浮かぶ美しい城ハイネ城や水中都市エヴァなどを含んだ新エリアが追加されたばかりである。
リネージュ世界には大きな大陸がひとつといくつかの島が存在し、そこに街やダンジョンが点在している。街から街にはワープさせてくれるNPCがいるほか、船で移動したり、陸続きの街は合間にモンスターのいるフィールドがあるものの、徒歩で移動することもできる。
ゲームを始めると、プレーヤーはクラスごとに特定エリアに出現し、そこでゲームの基礎部分に慣れながら、次のステップに移るべく少しずつ行動範囲を広げていくことになる。特に、ナイトを選んだ場合の初心者エリア「隠された渓谷」は、LV13までしかいられないものの、ほどほどの強さの敵がたくさんいるのと、シルバーナイトの村という、大き目の村と無料ワープで行き来できるので、初リネージュな人にはお勧めだ。
街の中は安全だが、一歩外に出ると、そこにはモンスターたちが至る所でさまよっている。向こうから攻撃してくるのもいれば、こちらから攻撃しない限り安全なものもいる。攻撃は、カーソルを合わせてクリックするだけ。その後、ボタンを押しっぱなしにしていれば、武器を振り続けてくれるので簡単だ。
モンスターを倒すと、自動的にアイテムやお金が持ち物に入り、それを貯めることで、さらに強力なアイテムを購入したり、他の街へワープする足しにしたりできる。また、モンスターの中には特殊な材料を落とすものがおり、そういったものを集めて街の商人のところにもっていくと、お金とアイテムと引き変えに、特別な防具を作ってもらえたりもする。
街の外にモンスターを倒しに。パーティだとダメージを一番与えた人にアイテムなどがいってしまう | 街での買い物風景。ほしいものの個数をプラスしたらBUYの文字を押すだけ | 友人に向けてゲーム内で郵便を出すこともできる |
■ プレイスタイルが異なる4つのクラス
各クラスはLV15になると特定のNPCから試練を授けてもらえる。クリアすると、クラスに見合った装備品を与えられる |
魔法は、ナイト以外のクラスが覚えられる。ただし、クラスによって魔法を覚える頻度が異なり、具体的にはウィザードはLV4ごとにひとつ、エルフはLV8ごとにひとつ、君主はLV10ごとにひとつとなっている。ウィザードのエキスパート性が際立っている感じだ。
呪文の種類と高度さは10段階まであり、簡単な3段階までのものまでは街のNPCにお金を払って教えてもらえるが、それ以降は敵が落とす魔法書を属性に合った寺院にもっていって覚えなくてはならない。また、10段階まで覚えられるのはウィザードのみとなっている。
■ 仲間が集まる血盟同士での戦い
リネージュの世界の中には何カ所かプレーヤー用の城が存在し、占領することでさまざまな特典を受けられる。例えば、城下町の店に税金(消費税のようなもの)をかけ、そこを利用するプレーヤー達からお金を徴収するといったことができるのだ。
リネージュの重要な要素である「血盟」とは、この城を占領するために必要な団体で、君主クラス(職業として選べる)のプレーヤーを中心にしたギルドのようなものだ。血盟の仲間同士で協力し合って冒険したり、もしくは、もっと大きな団体となってリネージュの世界内にある「城」を占領するのである。
城には一定時間ごとに攻撃を仕掛けられるタイミングが設けてあり、攻める側は宣戦布告をして、その時間帯に攻め入ることができる。より多くの利権を求めて攻めてくる他の血盟のことを考えると、城の守り手は気が抜けないのだ。
リネージュにはPK(プレーヤーキラー)が可能なエリアと街中のように対人への攻撃が不可なエリアも存在している。街から一歩外に出たエリア「Normal Zone」ではPKが行えてしまうし、また、「Combat Zone」のようにキャラクタへの評価変化なしに対人戦を行なえるエリアも存在する。
街の周り、街から街への街道筋などは危険を全く感じないが、場所によってはもちろんPKが出現するわけで、この辺は初心者、上級者のみならずともドキドキな部分だ。ただし、PKやMPK(モンスターPK)に身ぐるみはがされるのはイヤだという向きは、最近設置されたNon-PKサーバーが利用できる。
街などにあるアジト用の家を競り落とせば、血盟のメンバーで共同で使用することができる | プレーヤー城の内部にある豪華なインテリア。ここを独占できるのはひとつの血盟だけだ | 城の庭の真ん中にあるガーディアンタワー、戦争中ではないためまわりの花壇がのどかな雰囲気 |
■ クラスに関係なくペットを連れ歩ける
ところでリネージュらしい要素といえば、ゲーム中によく見かけられるペット犬の存在も忘れてはならない。これは、クラスに関係なしにテイミングできるもので、ビーグル、シェパード、ウルフ、ドーベルマンをペット犬にできる。体力を減らして肉を与えることで手なづけるのだが、犬の首輪(アミュレット)という形で、権利をやりとりできるため、それさえ持っていれば、好きなときに都市にある犬小屋から引き出せる。キャラクタのカリスマの値が高ければ3匹の犬を連れての冒険も楽しめる。
犬は結構使い道が多く、散らばったアイテムを一括で集めたり、ポーションをもたせて飲ませたりもできるほか、シェパードなどはかなり攻撃力も高いため、すべてのプレーヤーの心強い味方になる。
犬のように小屋に預けたりはできないが、魔法にはテイムモンスターやサモンモンスターといった、モンスターをペット状態にして使う呪文もある。一定時間後に消えてしまうが犬のように肉を与えなくていいし、余計な愛情はかけずに使い捨てできるのが便利だ。
犬小屋の前はペットを引き出すプレーヤーと引き出された犬とで、いつもにぎやか | ペットのシェパードを犬小屋から引き出したところ。いろいろな命令が出せる | 街中でもモンスターを連れたプレーヤーを良く見かけることができる |
■ Lineageのどこが良くて、どこが不満なのか
プレイして思ったのは、とにかく操作がシンプルなこと。アイテムや魔法は画面右下のF1からF8までにわりふれるショートカットアイコンに好きなように設置できるし、戦闘はクリックするだけだしで、何も考えずにプレイし続けられるのが嬉しい。
クラスも4つしかないので、これ! と決め打ちをしやすく、1サーバーにつき3キャラクタまで作成できるため、いろいろ試してみることができる。最近のネットゲームは種族やクラス、そしてそれに付随するスキルが複雑に絡み合ってることが多いので、このへんがシンプルなのは親しみやすい。
装備品はゲーム内で数字的な情報ウィンドウが開かないのでどれが強いのかわからず戸惑うことも多かったが、公式サイトにはダメージ数値なども含めて、細かなアイテム情報が満載されていた。モンスターやアイテム情報なども掲載されているので、適宜、あんちょこのように確認できた。
一方、不満に思う点は、とにかくキャラクタの移動速度が遅いことと、移動のアニメーションがガクガクすることだ。グラフィックは良く描き込まれているし、それぞれの土地にあった美しい2D風景が広がっているのだが、キャラクタが動くたびにそれがガクガクするのだ。歩くことしかできないイライラも、移動時のガクガクも無理に慣れるしかないのだが、やはり最近のゲームに比べるとゲームエンジンの古さを感じてしまう。
ただ、ガクガクアニメーションはともかくとして、移動スピードが遅い点に関しては、このくらいのほうが「全くのゲーム初心者がゲームについていきやすい」という利点はあるのかもしれない。
戦闘でも戸惑うことがあった。ゲーム序盤は剣一振りの差で生きるか死ぬかの分かれ目になることが多いのに、キャラクタとモンスターとの位置関係などによって追尾が甘く、一度スタートさせた戦闘がそのままスムーズに続けられない時があり、慣れるまでかなりストレスがたまる。
また、もうひとつ不満だったのは血盟への参加のしにくさ。大きな血盟に参加したくても、どこでその情報を手に入れればいいのかわかりづらく、加盟も君主を目の前にしないとできないということで、なかなか目的の血盟に参加しづらい。血盟探しはファンサイトを巡ったりすればいいのだが、こういった情報には「ウルティマオンライン」の公式ギルドサイトのようなものがほしいところ。これからのリネージュ公式サイトの充実に期待したい。
荷物は町にいる倉庫屋に。血盟に参加していれば、血盟員で共用できる倉庫を利用できる | 街の建物は通常は外壁しか見えないが、中に入ると細かい部分まで堪能できる | 湖に浮かぶハイネ城の外門。建物や繁みの裏側に回ると、グラフィックが自動的に半透過になる |
特定のアイテムを集めて持っていけば、街の職人が特殊な防具を作成してくれる | アイテムは武器なら武器屋、防具なら防具屋といった具合に売れる先が限定されている | スライムレース屋。100Gでチケットを買ってお目当てのスライムを応援する |
■ Lineageを今プレイする意味はどこにあるのか?
リネージュはプレーヤーへの親切さが目立っていて、オンラインヘルプやツールチップ、すっきりと整理されたメニュー類などが、わかりやすく工夫されている。アイテムウィンドウや装備ウィンドウなどもすっきりと見やすくていい。また、しゃべるのも移動するのも戦うのも全部クリック、アイテムや魔法などのアイコン類は全部ダブルクリックというのも簡潔で遊びやすかった。
そういう意味では、「Ultima Online」や「EverQuest」といった、ビッグだが内容が細分化していく一方のゲームに入る前に、遊びやすいリネージュは良い入門編になるだろうし、レベルが上がった以降も、血盟と城盗り合戦という部分で飽きるまでプレイし続けられる。幸い、必要マシンスペックもMMORPGにしてはそれほど高くないので、ノートPCにインストールして遊ぶのもいいかもしれない。
「ファンタシースターオンライン」といった最先端のネットゲームなどと比べると、発表されてから長いだけあって、グラフィック、ゲームシステム共に古くさい。だが、ゲーム内容と目的がシンプルでわかりやすく、血盟システムによって人間同士のつながり・争いを恒常的に体験できるといったあたりは、これからネットゲームに入ってくる人たちにもお勧めできる部分だ。そして、既存のMMORPGに疲れてしまっている人には、ソロでもパーティでも団体でも、それぞれに楽しみが得られるリネージュは、ガクガクと移動スピードに慣れさえすれば、ホッと一息つけるゲームになるのではないだろうか。
なお、正式サービス開始に伴って二つのキャンペーンも行われる。ひとつは、5月31日までに新規登録すると15日間無料プレイが行なえるというもの。もうひとつは、1月23日から2月11日までに正式登録をしたユーザーの中から抽選で5,000名にリネージュオリジナルWebMoney(2,000円分。有効期限は2002年7月31日)がプレゼントされるというものだ。リネージュが気になる人は、期間中に正式登録すると得をするかもしれない。
あちこちをさ迷っているとさまざまな地形や施設があり、次はどんな風景に出会えるのかと期待する |
(c)2002 NC Japan K.K. All rights Reserved.
|
■ 今週の気になる直輸入ソフト(番外編)
今回は気になる直輸入ソフトが店頭で見つけられなかったので、リネージュに関連した話題を。
私が初めてLineageをプレイしたのは、ちょうど「Ultima Online」発売の熱狂が一段落したあと、第2のUOを探してあれこれネットを徘徊していた時だった。その頃に目に付いたMMORPGといえば「リネージュ(Lineage)」とSierra-On Lineの「The Realm(アニメタッチのMMORPG)」、「LIFESTORM(Shockwave版)」ぐらい。
まだまだMMORPGと呼べるものが少ない時期だったため、リネージュは日本のゲーマーの間ではちょっとした話題になっていて、ベータテストゲーム内では英語とハングルと日本語が入り乱れた、不思議な雰囲気になっていた。
私も喜び勇んでプレイした覚えがあるのだが、その時は、キャラクタの移動時のガクガクっぷり、移動が歩きのみといった点が気にいらず、すぐにゲームをやめてしまった。当時のリネージュは、すでに今の形にかなり近いものだった記憶がある。キャラクタグラフィックも現在のものとほぼ同じで、夜間キャンドルを点灯するとまわりが明るくなるとか、ちっちゃな緑色のゴブリンとか、今回ウン年ぶりに再会したにもかかわらず「変わってないなぁ~」というのが第一印象だった。
だが、色々と遊びやすくなっていたのには驚かされた。ビジュアル的にわかりやすいメニューアイコンやクリックするとぱっと開くウィンドウもよいし、コマンドメニューがウィンドウ内のワンクリックメニューに変換されてるのもよかった。
これからのリネージュで気になる要素といえば、リチャード・ギャリオット氏がどうからんでくるかではないだろうか。リネージュ自体は、韓国サーバーでは火山地帯を主題にしたエピソード10が追加されており、今年いっぱいをかけてゲームシステム・グラフィック部分での大幅アップグレードが予定されている。また、エピソード11、12の導入でいったんストーリー的には完結し、その後ロード・ブリティッシュをからめた「The Age of Lord British 」がローンチする予定だ。これまでにリネージュが培ってきたオンラインゲームでのノウハウと、リチャード・ギャリオット氏参入で氏のゲーム観がどう融合されるのか楽しみである。
Lineage2に関してはすでにフル3Dグラフィックのものになるということが明らかにされており、一部インタビュー記事では3Dグラフィックの街中スクリーンショットなども公開されている。Lineage2は今年下半期のクローズドベータテストと2003年のサービス開始を目指している。
(2001年2月6日)
[Reported by 西尾ゆき]
GAME Watchホームページ |