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【連載第5回】 気になる海外ゲームをピックアップ


西尾ゆきの海外ゲームレポート

あのFPSの元祖が生まれ変わって登場!
シングルは今年のベスト3に入る出来映え
「Return to Castle Wolfenstein」

 これはPCゲームのみならずすべてのプラットフォームで言えることだが、各ゲームジャンルにはそれぞれ元祖と呼べるソフトがある。リアルタイムストラテジーならば「War Craft」。アドベンチャーならば「Mystery House」。3D MMORPGならば「Meridian59」。そしてFPSならば「Wolfenstein 3-D」。11月の末に、このFPSの元祖をモチーフにした新作が発売された。
 リアルな3Dグラフィックのステージに大量のモンスター。そして武器を構えた一人称視点のプレーヤー。FPS(First Person Shooter)と呼ばれるそのスタイルを確立したid Softwareの「Wolfenstein 3-D」が「Return to Castle Wolfenstein」となり、装いも新たに戻ってきた。新たなWolfensteinはどんな衝撃と感動を与えてくれるのだろうか……? 国内でも12月21日にP&Aから7,800円で発売されるが、一足先に米国版が手に入ったのでご紹介しよう。

ドイツ第三帝国闇の心臓部Wolfenstein城へ侵入し、ヒムラーの野望をうち砕け

これが最終目的地となるWolfenstein城
 「Return to Castle Wolfenstein」の舞台となるのは第二次世界大戦中のドイツ。プレーヤーはアメリカの諜報員となり、ナチスのSS隊長兼ゲシュタポ長官のヒムラーによって人体実験が行なわれているという噂のあるWolfenstein城へ侵入し、ナチス兵もろとも人造人間兵器の野望を粉砕していくことになる

 シングルプレイでは、続々と現れる敵を倒してミッションをクリアしなければならない。一方のマルチプレイでは、連合国側・枢軸国側のどちらかの兵士になり、4つのクラスにわかれたキャラクタを選んで、チームメイトと協力し合いながら敵チームと争うことになる。

 既存のFPSと比べて異色なのは、シングルプレイとマルチプレイを別々の開発会社が担当していること。シングルとマルチをすっぱり割り切って考えているのだ。シングルではストーリー性とシチュエーション性の強いミッションを、マルチでは役割分担がはっきりしたチーム戦を楽しむことができる。

 これだけFPS全盛の時代にあると、さすがに初代Wolfensteinのような衝撃はないかもしれないが、そこには「旧タイトルのリメイク」という言葉から感じる、しょぼくれ感や物悲しさはまったくない。「Quake III」エンジンを使用した美しい3Dグラフィック、はっきり性格の異なるシングルとマルチ、それぞれの楽しさを追求したゲーム性と、どれをとっても近年まれに見る秀作だ。

マシンガンを撃っているシーンだが、手元が振動でぶれているのがわかるだろうか ダメージマッピングも実装している。弾は頭に当たるとダメージが大きい ヨーロッパの街並みを再現した通路の狭いマップ。雪の感じが良く出ている

ミッションとミッションの間にはムービーが挿入される。キャラクタがしゃべる時、口だけでなくあごも動くので妙にリアル

緊張の連続から恐怖のどん底まで、幅広いシングルミッション

 シングルプレイは27のレベルから構成された全7ミッションをクリアしていき、ストーリーを進めていく。プレーヤーは第二次大戦下のアメリカ軍の諜報員ウィリアム・J・ブラスゴヴィッチとなってナチスの陰謀を阻止しなくてはならない。このゲームのストーリーが紹介されるとき、ヒムラーの人体実験にばかり焦点があてられやすいが、実際には、兵器工場に侵入したり、アンテナ施設を爆破したり、街中のナチス将校を暗殺してまわったりと、とにかくこれでもかというくらい内容豊富である。

 ミッション内容はバラエティに富んでいて、それぞれにプレイの性質が異なるため飽きがこない。あるミッションでは、敵に警報を鳴らさせないため、狙撃ライフルで隠れしのびながらジリジリと進んでいくし、あるミッションではアンデッド相手の激しいガンファイトを楽しめるといった具合だ。

 どのミッション、どのレベルもよく練りこまれていて、プレイしていて常に緊張感があった。たとえば、「バイオハザード」のようにアンデッドと戦うミッション2。それまでは壁を背に慎重に進んでいたのが、その背中側の壁が突如崩れてアンデッドが飛び出してきたりする。出てくるアンデッドも盾で銃弾を跳ね返しながら近寄ってきたりと手強い。何より、通り過ぎたと思って安心していた背中側から敵が現れる恐怖は、軍事施設に忍び込むミッションでの緊張感とは、また一味違うのだ。夜中にプレイしていたのだが、あまりの恐怖に泣きながら駆け出すことしばしだった。

 また、トラム(ロープウェイ)やトロッコに乗って移動しながら戦闘を行なう場面もあり、足がすくむような渓谷を見ながらのダイナミックな戦い、いかにもヨーロッパな石造りの狭い街並みの中での戦い、雪の降る地で大きなダムを横断といったように本当にいろいろなシチュエーションでの戦闘を楽しむことができる。

 その他のミッションでも、ナチスの兵器工場でミサイルを爆破したり、アンテナ設備を破壊したりといった第二次大戦らしいものから、ナチスのバイオ技術で作り上げられた人造人間兵器が登場するものまであり、進めば進むほど新たな展開が開けて夢中になった。

一般市民や味方を殺してしまうとその場でゲームオーバーに 敵に見つからないように静かに狙撃。サイレンサーつきの武器が役に立つ ドアを開けた途端に敵兵が勢いよく飛び込んでくることも

キャットウォーク越しに敵兵と撃ちあうことも。どこから攻撃されるかわからず油断がならない 敵キャラクタのバリエーションも豊富。あるミッションでは空いっぱいに落下傘部隊が降りてくることも トラムとトラム駅との銃撃戦。谷底に落ちるともちろん死亡してしまう

弾光が煌めく迫力のガンアクション

 第二次大戦が舞台となれば注目したい使用武器だが、MP40やThompsonなどの実在のものを中心に揃えられている。シングルとマルチでは使用できる武器が異なり、シングルでは重火器を持っていても軽快に駆け出せるが、マルチではキャラクタによって扱える武器が異なるし、重火器をを持っていると歩みが遅くなる。

 プレイしていた中ではスナイパーライフルが楽しかった。スナイパーモードにして照準をのぞいている時は、何秒間か揺れの激しい時間が設けられていて、ゲージが消えると揺れも収まり、そこで初めて正確に狙撃をすることができるというシステムになっている。標的射撃をやっていた経験があるのだが、体の微量な揺れで照準がユラユラするあたりとか、構えが落ち着いてきて、息を吐いた瞬間にすうっと引き金を引く辺りとかが、とてもリアルに感じた。

 撃つ行為、撃たれる感触をリアルに感じるというのは、それだけプレイの臨場感が増すということだ。銃弾一発死ほどシビアになりすぎず、しかしそれなりの緊張感が追求されており、ゲーム性とリアル性のバランスどりがとても良い。

 また、敵の弾丸の軌跡は光って表示されるため、激しい銃撃戦になると、その辺の空間一杯に弾の軌跡が見えて身のすくむような思いをするし、盾持ちアンデッドに銃を撃ちこむと跳弾でこちらがダメージを受けたりもする。プレイ中は常に、自分が予想できる緊張感と、自分の予想を越えた緊張感とがブレンドされ、気持ちを盛り上げてくれる。シングルプレイに関しては、ここ2~3年に発売されたFPSの中ではダントツの出来だと断言しよう。

武器のラインナップはナイフ系、ピストル系、マシンガン系といったように既存のFPSに準じているが、それぞれに衝撃やブレ、銃声などの細かい設定がなされている

敵もリアルな人間から、非現実的なアンデッドや人造人間兵器まで様々。飛び跳ねながらプラズマ攻撃をしてきたりするクリーチャーもいる

役割の決まったキャラクタでチーム対戦のマルチプレイ

 一方のマルチプレイは、孤独な戦いを強いられるシングルプレイとはうってかわって、がらりと雰囲気の異なるチーム戦が楽しめる。デスマッチやcoopはなく、プレーヤーは必ず枢軸国軍か連合国軍に別れてプレイするようになっている。プレーヤーは下記の4つのクラスから一つを選び、自分の特性を生かした戦いをして、チームに貢献しなくてはならないのだ。

 Soldier(兵士)……すべての銃火器を扱える戦闘のエキスパート。ロケットランチャーも扱える
 Engineer(工兵)……ダイナマイトを仕掛けたり解体したりできる。また基地に備え付けのMG42を修理できる
 Medic(衛生兵)……仲間のHPが回復する体力パックを運べる。また半死半生の仲間に注射を打って生き返らせる
 Lieutenant(副官)……仲間に弾薬を配ることができ、広範囲への爆撃指令ができる

マップごとに勝利条件が決められているので、ゲームに参加する前に熟読する必要がある
貨車の中を仲間と共に進む。マップを把握していないうちは他のプレーヤーの行動を観察
ゲームが始まり、チームメイトと共に出撃する瞬間にワクワクする
 既存のFPSと異なって、Return to Castle Wolfensteinでは、マップ上にアイテムや補充用の弾薬は落ちていない。それらはMedicやLieutenantによって補給されるのだ。また、死亡した場合は30秒~40秒おきに復活タイミングが設けられており、衛生兵が助けられる状態ならばそのままで、ダメージが大きくて完全に死亡した場合は、その自動復活時間に自陣地で復活することになる。

 マルチプレイでは、マップとチームによって勝利条件が異なってくる。あるマップでは枢軸国軍のほうが守りで、連合国軍が攻め、あるマップでは両者共に守るべき施設があったり、あるマップでは枢軸国側の金塊を奪って運ぶと勝利といった具合だ。

 制限時間内に敵の陣地側の施設を爆破すれば勝利(もしくは守りきる)というのが多いのだが、敵地に侵入するためにはダイナマイトで爆破しなくてはならない扉があったり、狙撃兵が潜みやすいタワーがあったり、マップ構成が非常に凝っていて、繰り返しプレイしていても飽きない。

 また、マルチの大人数プレイはまさに戦場といった雰囲気で、緊迫した「Medic! Medic!」といった叫びや爆撃の音と衝撃、銃声やガラスの割れる音、そして基地内のラジオからながれるクラシック。ゲーム性は失わず、しかも、自分が第2次大戦の真っ只中にいるような気分にさせてくれる。

 たった一人でギリギリとプレイしていたシングルと異なり、マルチプレイは多人数プレイでの爽快感に溢れている。少人数でプレイするよりも10vs10といった大人数での戦いの方がよりマップや駆け引きも楽しめるだろう。

 たとえば、兵士だとマシンガン片手に特攻しても良し、ロケットランチャーで狙撃兵を殺しても良しという感じなので、その場の状況を見極めながら戦略を素早く練って行動する必要がある。協力し合いながら、敵地に侵入してダイナマイトを仕掛けたり、要となる場所でスナイパーライフルを構えて仲間を援護したり、マップやクラスによって自分のやりたいこと、やるべきことが広がるのが魅力である。

 ゲーム進行もとにかくスピーディーで、サーバーから参加するとすぐに進行中のゲームに参加でき、抜ける時もあっさりと抜けることができる。チーム戦ではあるが、団体行動に縛られることはなく、その場の状況で臨機応変に仲間を援護したり、自分が突入したりできるのでストレスがなかった。

 Return to Castle Wolfensteinは、シングルはシングルの、マルチはチーム戦の魅力を追求しきった今年一押しのFPSである。

ゲーム序盤でのゲートの支配権をめぐる激しい攻防。門の向こうの相手に手榴弾を投げまくる 陣地に備え付けのMG42は弾数制限がないので、上手く利用すると強力だが、動けない分、狙われやすい 高低差の激しいマップもあり、どこから敵が来るか緊張させられる

(c)2001 id Software, Inc. All Rights Reserved. Return to Castle Wolfenstein, Wolfenstein 3D, Quake, Quake III Arena, the id Software name, and the id logo are either registered trademarks or trademarks of id Software, Inc. in the United States and/or other countries. Activision is a registered trademark of Activision, Inc. All other trademarks and trade names are properties of their respective owners.

【Return to Castle Wolfenstein】
  • ジャンル:アクションシューティング
  • 開発元:Gray Matter StudiosNerve Software
  • 発売元:Activision
  • 価格::50ドル前後(実売8,160円~8,400円)
  • 対応OS:Windows 95/98/Me/XP/NT/2000
  • CPU:Pentium II 400MHz以上(同 550MHz以上を推奨)
  • メモリ:128MB以上
  • HDD:800MB以上
  • ビデオメモリ:16MB以上



今週の気になる直輸入ソフト 番外編パート2

チンピラが暗黒街のボス(Kingpin)に成り上がるサクセスストーリーを描いた異色作「Kingpin」
 今回、店頭で見かけた気になるゲームソフトは「Return to Castle Wolfenstein」のみだったので、それに関連した話題を少々。Return to Castle Wolfensteinはシングルとマルチが別の開発元になっていることは先述したとおり。このうち、シングル部分を開発したGray Matter Studiosは、元Xatrix Entertainmentを中心に興された会社だ。Xatrixといえば「Kingpin」や「Redneck Rampage」などを開発したメーカーで、RtCWのシングルプレイのクオリティの高さは、Kingpinを思い浮かべると、なるほどとうなずける。

 実はGray Matter StudiosとXatrix Entertainmentは、まるっきり同じ住所、同じ電話番号だったりする。つまり、会社の看板を架け替えただけといった形なのだ。Gray Matterのサイトにもあるように、何人かの人員は去ったものの、ほとんどのメンバーは変わらずに在籍しており、Kingpinなどを制作した開発力は健在のようである。

 一方、マルチ部分の開発を担当したNerve Softwareも2001年にできたばかりの比較的新しい会社で、開発陣にはRogue Entertainmentで「American McGee's Alice」の制作に関わっていた人間が多いようだ。こちらの会社がシングルプレイを担当していても面白かったかもしれない。

 いずれにせよ、こういったやや小規模で元気のいいディベロッパーがたくさん存在するアメリカの環境はかなり羨ましい。Gray MatterもNerveもすでに新作の開発に着手しているので、次に何が出てくるか楽しみである。

□Gray Matter Studiosのホームページ(英文)
http://www.gmistudios.com/
□Nerve Softwareのホームページ(英文)
http://www.nervesoftware.com/
□Activisionのホームページ(英文)
http://www.activision.com/
□「Return to Castle Wolfenstein」の公式ページ(英文)
http://www.activision.com/games/wolfenstein/
□「Return to Castle Wolfenstein」の公式ページ(日本語)
http://www.panda.co.jp/wolfenstein/
□関連情報
【10月31日】本日到着! DEMO & PATCH 「Return to Castle Wolfenstein」Multiplay Demo
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20010917/demo0917.htm

(2001年12月4日)

[Reported by 西尾ゆき]


ウォッチ編集部内GAME Watch担当 game-watch@impress.co.jp

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