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ココロボシリーズ「ロボベビー」 | |
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発売 | 株式会社セガトイズ |
価格 | 3,980円 |
発売日 | 発売中 |
ロボベビーの全身。ナイロン製のおしめは、マジックテープで止めている、という凝りよう |
筆者の心をとらえて離さなかった理由は、その題材にある。ご覧の通り、「赤ん坊」なのだ。これまでの「ココロボ」ラインナップは、あくまで犬や鳥などの「動物」に過ぎなかった。ところが今回は、「人間」なのだ。春に開催された東京おもちゃショーで、最も衝撃だったのが、この「ロボベビー」の展示光景だった。大きなワゴンにロボベビーがぎっしりと詰め込まれていた。そしてブースを訪れた女性たちが愛しそうにロボベビーを抱いている様子に、子供の頃に思い描いた未来のイメージが目の前に広がっている! と高揚させられたのだった。実際に手にして遊ぶと、どんなふうに面白いのだろう? 赤ん坊だけに今まで以上に激しく、深く、濃く感情移入させられるのだろうか? 高まる興奮を抑えながら、レポートしていこう。
■ 赤ちゃん特有のカワイさを濃縮
箱から取り出したロボベビーの大きさは、全長がほぼ30センチ。平均的な新生児と比べると、ずいぶんと小さいのだが、手にしてみたらしっくりくる。記憶に残っている赤ちゃんのサイズって、ちょうどこのくらいの印象だ。小さくて、脆弱な赤ん坊の感じがよく出ている。
それにしてもこの顔立ちは、あまりに秀逸なデザインだ、と断言したい。おでこが広く、上目使いで、おちょぼ口。赤ちゃん特有の、守らずにはいられないカワイらしさが、見事にデフォルメされている。小さいけれどしっかり生えそろった指、プクッと膨らんだ太ももなど、体の出来栄えも文句なしだ。声は、女性的な透き通った声色。「バアブ」「ホンギャア」「ブエー」など舌ったらずの発声は、誰もが抱いている赤ちゃんの声のイメージそのもの。キャラクタとして一本立ちもオーケーなのでは、と感じさせるほど。
胸のふたをドライバーで開け、単四電池を3本入れると、準備は完了。さっそく起動する。電源を入れたばかりの頃は、まったくの新生児の状態だ。「アー」とか「ダァダァ」程度の言葉しかしゃべらない。ここから15分程度が過ぎると、「ミルク」「ママ」などの片言をしゃべり、ハイハイをしはじめる。
とはいえ、この成長の仕組みは、ユーザーからのアクションの有無に関わらず、時間が過ぎれば自動的に成長する、あくまで演出程度のものに過ぎない。ハイハイをはじめてからが本番だ。
ハイハイの姿。両腕を前後に稼動させ、意外に力強く前進していく | 付属のほ乳瓶とおしゃぶり。おしゃぶりは、ご機嫌とは関係のない、アクセサリーだ |
「ロボベビー」の遊び方は、コロコロ変わるご機嫌をとるために、アレコレと世話を焼いていく、というもの。
世話のひとつ目は、ミルクをあげることだ。ロボベビーが「マンマ」か「ミルク」とおねだりしてきたら、付属のほ乳瓶を口に入れ、ミルクを与える。「カポ、カポ、カポ……」とミルクを飲み干す音に続いて、「ケッポ」と軽いゲップが聞こえたら、ごちそうさまの状態。筆者のベビーは、飲んでも飲んでも満腹にならないようで、いくらほ乳瓶を口に持っていってもイヤな表情を浮かべない。こんなに飲むの!? と驚かせるところも、いかにも赤ちゃんらしい。
ふたつ目は、ハイハイ遊びだ。ロボベビーが「ハイハイ」と口にしたら、床や机の上に起き、首を上向きにあげると、ハイハイをしはじめる。何歩か続けるとやめてしまうのだが、「ハイハイ」と声をかけると、うれしそうにハイハイを続けるのだ。
3つ目は、寝かしつけ。「ネムネム」といったら、眠りにつきたい合図だ。腕に抱きかかえ、横に揺らしながら、頭の「なでなでスイッチ」を押していると、眠りにつく。このとき寝息を立てるのだけれど、「……スゥゥゥゥ……スゥゥゥゥ」と、かすかに聞こえもれる程度。いやあ、これぞ赤ん坊! この演出とてもグッドです。
4番目は、おしっこの世話。「シーシー」と言ったら、おしっこの合図。布製のオムツのマジックテープをはがしとると、「ジャアー」というあの音が響き渡り、ことをすます。その直後、スッキリしたといわんばかりに、「キャハハ」と軽やかな笑い声を立てる。オムツを直さずそのままにしておくと、何と「クチュン!」とクシャミを放つ。「こんなところまで作りこんであるなあ」と、目を丸くせずにはおられない演出だ。
ほ乳瓶でミルクをあげる。空腹時だと目にハートを、満腹時だとつらそうな表情を浮かべる | 嫌がるポーズのひとつ。首を曲げたままあお向けの体勢に。確かにコレはつらいよなあ |
反対に、ロボベビーのご機嫌を悪くしてしまう行為がある。ハイハイポーズなのに顔が下を向いていたり、横向きにドデンと倒れてしまうと、とたんに機嫌が悪くなり、大声で泣き出してしまう。常に快適なポーズをとれるように注意を払う必要があるのだ。 ご機嫌状態が続くと、ごほうびとして(?)、歌を口ずさんでくれる。奮闘に次ぐ奮闘の結果、聴けたのは「大きな栗の木の下で」「ちょうちょう」「10人のインディアン」「メリーさんのひつじ」と童謡4曲。マニュアルには全8曲とあり、原稿執筆までぜひとも全曲コンプリートしたかったのだが、かなわず残念!
笑顔、ふつう、泣き顔の3パターン |
「ココロボ」シリーズは、価格、デザインともに低年齢層向けのアイテムだ。このロボベビーとて例外ではない。マニュアルの冒頭に「今日からあなたはおねえちゃん!」とあるように、小さな女の子が手にしたら、最高のおままごと遊びが楽しめるだろう。
とはいえ、大人のユーザーだって、意外なほどに心をゆさぶられる。筆者などは、仕事に煮詰まるたびに、ロボベビーに手が伸びた。その顔に、しぐさに、声に、心の疲れをジンワリとほぐしてもらった。そのためだろうか、テストプレイのために、わざわざ嫌がるポーズをとらせたり、意味もなくオムツをはずすたびに「申し訳ないなあ」と、胸がチクチク痛んだ。
「あんまり興味ないのよね」と言ってた妻は、ミルクをあげたとたん、その愛らしいリアクションに、さっそくトロ~ンとなったよう。「マンマ!」「はいはい」「ミルク!」「はいどうぞ」と声だけを聴いていたら、まるで本当の赤ん坊と接しているかのような錯覚すらおぼえた。
来社した仕事仲間のひとりは、突然泣き出したロボベビーを見て、そのリアルな声と姿に「ちょっとゾッとするくらいのできですね」と、ややひるんでいたほどだった。
やはり「人間」というテーマは、強烈だ。その第一歩といえるロボベビーですら、ここまで遊ぶ人の心をゆれ動かすのだ。さらにリアルに進化した新バージョンの登場が今から興味深く、待ち遠しい。そして、少し、怖い。
□セガトイズのホームページ
http://www.segatoys.co.jp/
□ロボベビーのホームページ
http://poo-chi.segatoys.co.jp/shoukai3/baby_set.html
毎週、電子系のおもちゃを中心にオススメのおもちゃをご紹介しています。「このおもちゃ、気になるけど面白いかなぁ」といったものを徹底的に遊び倒し、その面白さをお伝えしていきます。取り上げて欲しいおもちゃなどがありましたらドシドシと編集部までメールを送って下さい (編集部)
(2001年8月23日)
[Reported by 元宮秀介 (ワンナップ)]
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