佐藤カフジのVR GAMING TODAY!
ハイエンドVRシステム「HTC Vive」レビュー(コンテンツ編)
VRの“VRそのものの驚き”の先にある、普遍的な面白さを探る
2016年5月17日 00:00
部屋全体をVR空間と化す「ルームスケールVR」と、Steam公式による強力なコンテンツ配信力を強みとするHTC Vive。バンダイナムコエンターテインメントとナムコが4月15日にオープンしたVRエンターテインメント研究施設「VR ZONE Project i Can」にも導入されるなど、法人による活用も進む本製品だが、やはり、ゲームユーザーとしてはこの高価なシステムを自宅に所有する価値のありやなしやが一番気になるところだと思う。
前回はHTC Viveのハードウェアレビューをお届けしたが、HTC ViveのVRシステムとしての能力は、エンスージアスト層の期待に充分に応えるものだし、驚きもいっぱいだ。しかし、どんなハードウェアも、そこに魂を吹き込むのはコンテンツ。遊びがいのあるコンテンツがなければ、どんな優れたシステムも宝の持ちぐされだ。
今回はそのコンテンツ面にフォーカスし、HTC Viveおよびその公式コンテンツ配信システムであるSteamを通じ、どんな遊びが実現されているか、課題は何かというところを明らかにしていきたい。
「VRそのものの感動」を超えた、普遍的なおもしさを探す
個人的な感想から入ると、HTC Viveが我が家に届いてしばらくの間は、何をやっても面白いという状態だった。HMDに映像が出るだけで、別世界の風景に入り込むだけで、Viveコントローラーが思い通りに動くだけで、もう楽しいという感じだ。これはVRが与えてくれるプレゼンス(実在感)自体が新鮮で、新技術が見せてくれる新しい領域そのものが、興味の対象として強烈だったからにほかならない。
しかし、そんな“魔法の時間”は、いつまでも続かない。HTC Viveを手に入れて数週間が経過すると“VRそのものの感動”にすっかり慣れてしまった筆者は、それと平行して、VRならではの負の側面も強く感じるようになってきた。
「HMDを長時間かぶると顔面の圧迫が感じられてきつい」とか、「ハンドコントローラーを使ったプレイは身体的に疲れる」とか、「VRを使用中は現実と完全に切り離されて、お茶を飲むとかちょっとした中断も難しい」などだ。筆者と同様にゲームユーザーとしてViveを所有した人は、ほとんどがこのような負の側面に気づくことになったと思う。
そこで結局大事だとわかるのは、コンテンツそのものが“VRならではの魅力に溢れ”、“純粋にゲームや体験として深みがある”ことである。VRならではの面白さがなければ、もっと楽な四角い画面でやれば良いし、深みがないゲームは、四角い画面でも遊ぼうとは思わない。Steamでは既に200タイトルほどのVive対応コンテンツが配信されているが、そういう厳しい目でみればまさに玉石混交、当たり外れが激しい印象である。
Vive、Oculus Riftを含むVRゲームの世界には、まだまだ真のビッグタイトルというものが存在しない。四角い画面で遊ぶ「グランドセフトオートV」とか「The Witcher 3」とか、「Fallout 4」とか「DARK SOULS III」とかのほうが、ゲームとしてはよっぽど楽しいし、長い時間楽しめるケースがほとんどだ。そこで、やはりゲーマーがViveのようなVRシステムを手に入れる価値を与えてくれるのは、上述のようにVRならではの魅力とゲームとしての深みが両立したタイトルの存在、と言えるだろう。
“VRならでは”のショウケース「The Lab」
上述したVRゲームに必要な価値のうち、“VRならではの魅力”にクローズアップしたコンテンツが、Valveによる「The Lab」という無料コンテンツだ。HTC Viveのデモアプリなのだから当然とはいえ、ルームスケールVRとViveコントローラーを使った、様々なエクスペリエンスが収録されている。
例えば、フォトグラメトリー技術で制作された実写さながらの山岳地帯を一望できるアクティビティでは、最先端VRによる「異世界への没入」という感覚を確かめられるし、両手を使って弓をひき、体感型のタワーディフェンスを行なうアクティビティでは、練習するごとに精度が高まっていく、スポーツ的な面白さを確認できる。犬型ボットと戯れるアクティビティでは、バーチャルキャラクターに強烈なプレゼンスを感じる面白さもある。
だが、どの面白さも極めてプリミティブなものだ。収録されたどのアクティビティも“ゲームとしての深み”までは踏み込んでおらず、ゲーマー的な感想としては「ひととおり、一回やれば充分」という印象。だが、Steamで配信されているVive対応コンテンツは、このレベルでとどまっているものが多いことも事実である。“VR自体が面白い”という期間を過ぎると、あっという間に夢から醒める。
では、ゲームとしての深みというものは、VRゲームにおいてはどういう形で実現されるのだろうか。体験の種類ごとに、代表的なタイトルをピックアップして見てみよう。
コックピットでの乗り物体験
様々な乗り物のコックピットで、操縦者となる体験。VRはこの方面に非常に相性が良い。またこのジャンルはVR専用にデザインされたものでなく、既存のゲームが新たにVRをサポートすることで、そのまま快適に遊べるようになるという面でもベストマッチングだ。既存のゲーム資産が流用できるので、ゲームとしての深みを充分にもったタイトルにも期待できる。
その点でいうと、先行してOculus Riftに対応していたレースシム「Project Cars」が5月13日のアップデートでHTC Viveにも対応したことは、全てのレースゲームファンにとってこの上ない朗報だ。先にRift対応を果たしていたこともあって、Vive向けのVR対応も完璧。全てのUIがVR内で操作できることはもちろん、Viveのスタンディングおよびルームスケールの両モードに対応。ゲーム内ではVRオプションとして車中視点の位置・スケール調整機能もついており、プレーヤーそれぞれの完璧な状態でプレイできるのが素晴らしい。
本作はもともとグラフィックスもオーディオも最高級であるため、VRに対応した瞬間から、最も優れたVRゲームのひとつになったことは間違いない。Viveでのプレイでは、Rift DK2で感じられたような解像度の不足感はほぼ感じられず、コーナーの先を見通したドライビングが容易にできる。かなりリアル路線のドライビングモデルを搭載する作品であるため、思い通りに運転できるまではVR酔いを感じることもあるが、もともと本作をやりこんでいる筆者は全く酔うことなく、数時間連続でプレイできる。
レースゲームをVRでプレイすることの価値は極めて高い。広大な視野角とリアルスケールの立体視で得られる車中視点の圧倒的な臨場感は、ただ雰囲気が良いだけでなく、車体のモーメントを正確に捉える上でも役立つ。車体と4つのタイヤが、まるで自分の手足の延長になったかのような感覚だ。コーナーの先を見ながらのコーナリングでワンランク上の走りを楽しめるし、サイド・バイ・サイドで迫るライバル車との距離感もバッチリ捉えられるため、20台以上で出走するレースがさらに楽しくなる。もはや四角い画面でプレイすることなどできないレベルだ。ドライビングシート+ハンコンでのプレイが最高なのは勿論だが、コントローラー操作でもこのあたりの良さは充分に楽しめる。
Steamには他にも定番のレースシム・ドライビングシム「Assetto Corsa」、「Euro Truck Simulator」などがあるが、それらのタイトルも「Project Cars」に倣ってVR対応を進めて欲しいところだ。
早々にVive対応を果たした銀河冒険ゲーム「Elite Dangerous」も、VRとの相性の良さを証明する1本だ。本作は宇宙船を操縦して銀河をあまねく冒険し、各星系の受給ギャップを活かした交易や、戦闘による海賊行為、あるいはバウンティハンターといった様々なミッションを通じてお金を稼ぎ、より良い船を購入しては行動範囲を広げていくゲーム。アクション寄りの「EVE Online」というイメージが近いかもしれない。
本作ではゲーム中の99%の時間をコックピット視点で過ごすこともあり、Viveでプレイする価値が非常に高い。特に素晴らしいのは、VRのおかげで複雑なインターフェイス操作が一気に簡便になることだ。本作のフラットスクリーンでのプレイでは、コックピットの左右にある各種情報パネルを操作するのに、ボタンと十字パッドを組み合わせた複雑な操作を必要とする。ところがVRでは、操作したいパネルを見るだけでアクティブにできるのである。操作スピードも、快適さも圧倒的に向上する。
その上、VRならではの非常に広い視界、真上や背後まで見渡せる自由度のおかげで、敵船とのドッグファイトで相手を見逃しにくくなるなど、プレイ上の実益も多い。しかも、コックピット内環境の圧倒的な臨場感による没入感。一度VRでプレイしはじめると、四角い画面で遊ぶのがアホらしくなるほどの威力である。ゲームとしての深みも圧倒的であり、筆者は本作を3時間、4時間連続でプレイしてしまったほどだ。宇宙空間という環境と、宇宙船ならではの安定した動きのおかげで、酔いにくいというのも大事なポイントだろう。
既存ゲームのVR展開でいえば、本格フライトシミュレーターの「DCS World」が早々にViveへ対応していることも押さえておきたい。本作は動作がもともとかなり重い作品で、筆者のGTX 980マシンでもViveに必要な90fps動作を充分に発揮することができないのが難点だ。結果として、操作による応答が読みづらくなり、少々酔いやすい。今後の最適化に期待したい。
一方、初めからVRゲームとしてデザインされたフライトコンバットゲーム「Toy Plane Heroes」。こちらはラジコンサイズの飛行機に自分視点で搭乗し、室内環境でのドッグファイトやレースを楽しむというものだ。動作は非常に軽いのだが、問題は飛行機としての挙動が極めて簡略化されている結果、動きが機敏すぎてゲロゲロに酔ってしまうこと。夢中にドッグファイトをして10分も経過すると、真っ直ぐ立つのも難しいくらいフラフラになっている塩梅だ。これを踏まえて考えると、コックピット型VRゲームは比較的リアル挙動のほうが相性が良いのかもしれない。
現実を離れ、異世界体験を楽しむ
ViveのようなVRシステムには、HMDをかぶるだけで現実と切り離された別世界へ連れて行ってくれる、という素晴らしさがある。Steamではこの利点にフォーカスしたコンテンツも数多い。
例えばVive同梱コンテンツとして配信されている「The Blu」だ。このコンテンツはゲームではないが、ひとたびHMDをかぶると、現実には見ることのできない美しき深海風景を、様々に楽しませてくれるというものになっている。インタラクティブ性はないに等しく、ゲーマーとしては、上述の「The Lab」と同じく、一度見れば充分、という印象ではある。
そういった異世界体験にしっかりとゲーム性を加えたという意味では、同じくVive同梱タイトルである「Job Simulator」は秀逸だ。本作では人工知能が全ての仕事をするようになった未来、人間の暇つぶしのために設計された“お仕事ごっこ”という体裁で、異世界の職業体験を楽しむことができる。オフィスワークやキッチンのシェフ、コンビニのレジ担当、車の修理工場といった4つのアクティビティが、ユーモアたっぷりの形で再現されている。
とはいっても、あくまでも“お仕事ごっこ”。基本的には指定された順番でオブジェクトを組み合わせたり、装置に突っ込むといったシンプルなインタラクションでゲームが進行する。最初の1時間は非常に面白いが、ゲーマーが満足するようなチャレンジングな問題解決の面白さは薄く、2時間程度も遊んでいると、ゲーム的な深みという面で物足りなさを感じ始める傾向はある。
異世界体験の面白さやインパクト自体でいうと、やはりホラー系のコンテンツは相性が良い。相性がよすぎてHMDをかぶるのを拒否しそうになるほどだ。例えば現時点で数少ないホラーコンテンツである「The Visitor」。プレーヤーはベッドに寝ているという視点で始まり、動くことはできない。インタラクティビティはゼロだが、薄暗い部屋の置くから聞こえる何らかの足音や、ポルターガイストのような物音といった、不気味な音響で、次第に恐怖感が煽られていく。気が付くと、壁にかかった絵画が不気味にこちらを見ていたり……、最後には正体不明のクリーチャーが、暗がりからプレーヤーに近づいてきて……。
ああもう、途中でHMDを外さないでいるのが難しいほどだ。それでも刮目してしまう誘引力が、VRホラーコンテンツにはある。四角い画面で見るホラー映画なんて、これに比べればなんでもない。まさに“怖いもの見たさ”。Steamでもホラー系のVRコンテンツが更に拡充していくことを期待していきたい。できればゲーム性込みで。
ゲームらしい達成感を与えてくれる、VRでの冒険や戦闘
ゲーマー的な関心として中心にあるのは、やはり冒険や戦闘を楽しむ、アクションやアドベンチャーゲームとしての面白さだろう。四角い画面の世界でも中核をなすこのジャンルは、VRでもやはりメインストリームになりそうな気配がある。
代表格は「Hover Junkers」。本作はルームスケールVRとViveコントローラーをフル活用するFPSで、移動型プラットフォームに乗ったプレーヤー同士で銃撃戦をやるという、マルチプレイ専用のゲームだ。武器の切り替えやプラットフォームの移動など操作内容が多く、慣れるまで操作が非常に難しいということと、マルチプレイ専用ゆえに、そもそもオンラインに他の人がいないと遊べないという重大な弱点を除けば、ゲームとしても良く出来ている。
様々なジャンクを使って自分のプラットフォームに壁を張り、防御を強化。プラットフォームを移動しつつ索敵、有利な位置から攻撃を加える。そしてもちろん、Viveコントローラーを銃にみなすことによる体感的な銃撃の気持ちよさ。これらの要素が組み合わさることで、繰り返しプレイすることによるプレイスキルの向上の余地が大きく確保されているのが大きい。まあ、長時間プレイするとヘトヘトに疲れるのではあるが。
銃を撃つ気持ちよさに特化したアプローチのタイトルも多い。中でもWAVE制で押し寄せるゾンビをひたすら撃ちまくるゲーム「Zombie Traing Simulator」は非常に爽快感の強いゲームだ。数十体単位で現われる大量のゾンビをものすごいペースで撃ち倒していくのだが、肉片を投げてゾンビを誘導し、まとめて倒すなどプレイテクニックも多彩。KILL数に応じて各種ハンドガン、ショットガン、マシンガンとアンロックされていく新武器が、それぞれ“撃ち応え”に大きな違いがあるのもゲームの攻略性に深みを与えている。やられてもやられてもめげずに次をプレイしたくなる、シンプルながら非常に秀逸なゲームだ。
違った形で攻略の面白さを備えているのが、現時点で体験版が配信されている「Budget Cuts」だ。こちらは潜入型のスパイアクションで、敵に発見されたらその場でゲームオーバーというルールが特徴。敵の巡回ルートを把握し、その背後をとりつつ移動するというのを、VRならではの立体感で楽しむことができる。
本作の戦闘は派手ではないが、非常に高い緊張感がある。発見されたら終わりなので、常に全方位を確認しつつ、敵の索敵網の死角に移動し続けるというのが1点。そして、敵を倒すために使えるのが、ステージ内の限られた場所で拾える投げナイフがメインであるというのがもうひとつ。投げナイフを長距離で命中させるスキルを磨くもよし、絶対に命中できる距離に移動してから戦うのもよし。いずれにしてもワンミスが命取りになるため、ステージ構成を深く理解するまで繰り返しチャレンジするというところにゲーム的な面白さが集約されている。製品版が出たら是非プレイしたい1本だ。
上述のタイトルよりもぐっとRPG寄りにデザインされた「Vanishing Realms」も良いゲームだ。本作は、いわばVR版「ダンジョンマスター」のようなタイトル。ミステリーと危険にあふれたダンジョン内を、自分視点とViveコントローラーによる体感操作で探検していくというものだ。
剣や盾、あるいは弓を使った体感型の近接戦闘は身体的にも面白く、全編にほどよい恐怖感や緊張感がある。謎解きや探索による達成のバランスもよい。どうやったら先に進めるだろうか……と詰まってしまった時、正面だけでなく上や下、様々な方向に視線をやることでヒントを得、ハッと解法に気がつく瞬間は、やはりゲーム的な面白さとして心地の良いものだ。1時間ほどでひととおりの謎を解きラスボスの撃破まで行ける程度のボリュームだがVRゲームとしては妥当だろう。本作を第1章として、新しいエピソードが続々とリリースされることを期待したい。
やればやるほどうまくなるスポーツ体験
ゲーム的な面白さにはいくつもの種類があるが、筆者が特に大事だと思うのは、繰り返し挑戦することでプレーヤー自身のスキルが向上していく、という部分だ。上達を実感できた瞬間、心地よい達成感が生まれ、そこでさらに上を目指す気持ちが、繰り返してのプレイを促してくれる。
という面でいうと、Viveコントローラーのようなハンドデバイスを使ったVRゲームは宝の山かもしれない。プレーヤー自身の肉体的な動作と完全にリンクするハンドコントローラーは、そのままプレーヤー自身のスキル向上を実感させる機会を、ほぼ無限に提供してくれるからだ。
例えば上述の「Hover Junker」のようなゲームでは、そもそも銃撃をきちんと当てるという部分に、ほとんど無限のスキル向上の余地がある。この部分の面白さにフォーカスするジャンルといえば、やはりスポーツ系ゲームだろう。コントローラーでプレイする従来のスポーツゲームと違い、VRのスポーツゲームは、ラケットやバットを正確に振るという部分だけで膨大なリプレイ余地がある。
例えば、筆者がおもわず2時間連続でプレイしてしまった「#Selfie Tennis」だ。このタイトルは、名前のとおり1人でプレイするテニス。テニスラケットと化したViveコントローラーでテニスボールを打つと、プレーヤーはコートの反対側に瞬間移動する。すると、さきほど自分が打ったボールが自分に向かってくるので、打ち返し、これを繰り返して一人でラリーを繰り返すというものだ。
筆者が学生時代にバドミントンをしていたというのもあるが、「ラケットでボールを打つ」という行為そのものが、Viveコントローラーを通しても同様に、奥深くスキルフルな体験であるということを「#Selfie Tennis」で実感することができる。速いボール、遅いボール、高いボール、低いボール。いろんな種類のボールを打っては、打ち返す。そうして、自分自身の反応や動体視力、体の動きがどんどん洗練されていく感覚がどうにも面白い。汗だくになるまで遊んでしまった。
同様に、「VR Baseball Home Run Derby」もつい長く遊んでしまうタイトル。ピッチングマシーンから放られるボールをバットで打ち返し、ホームランの数を競うだけのゲームだ。従来の四角い画面とコントローラー操作なら面白くなる余地はゼロだが、VRでプレイすることで一気に深みが増す。バットをふり、ボールを真芯に捉えるためには、しっかりと球筋を見極め、スポーツ的に適切なフォームでバットを振る必要があるのだ。これも、やればやるほど上手くなっていく実感があって、面白い。これも、筆者のスポーツ経験(小学生時代は野球部だった)が影響しているかもしれない。
一方、「Cloudlands : VR Minigolf」、「Minigolf VR」といったミニゴルフをテーマにしたVRゲームは、筆者にとってはいまひとつの印象だ。現実にミニゴルフを真剣にやった経験がないことが強く影響しているかもしれないが、パターを振ってボールがどこに転がるかを緻密に制御するのは難しく、全ホールをひととおりクリアして惨憺たるスコアを残してからは、再度プレイする意欲がなくなってしまった。
このようにスポーツ系のVRゲームは、プレーヤー自身のスポーツ経験に基づく好みが強く影響してくる印象だ。自分の趣味に合致するコンテンツさえあれば、繰り返しプレイして、体を動かしてストレス解消するのにもってこい。日頃椅子に座りっぱなしのゲーマーにとっては、ちょっとしたフィットネスとしても有効だろう。実際、筆者お気に入りの「#Selfie Tennis」は非常に運動量が多く、30分ほどで汗だくになれる。磨いたスキルを試したいので、マルチプレイ対応版も欲しいところだ。
まだまだ物足りない。面白いVRゲームを探すにはどうすればよい?
ここまでHTC Viveで楽しめる体験の種類別に、各タイトルから得られる面白さがどういったものかをご紹介してきた。体験の種類としては他にも「Fantastic Contraption」や「Tilt Brush」、「Mod Box」といったクリエイション系のタイトルもあるが、ゲーマー的な関心からは少し離れる話題となるので、今回は割愛しておこう。VR×コンテンツクリエイションというテーマについては、またいずれ機会を見つけて取り上げてみたい。
こうして4月にリリースされたHTC Vive対応コンテンツのSteamラインナップを総覧してみると、VRに懐疑的なゲーマーにHTC Viveを買わせてでもプレイさせたい「これ!」というタイトルは、「Project Cars」のようなレースシム(筆者の個人的にはこれ1本で1年は遊べる勢い)を除いてはまだ現われていないというのが正直な感想だ。無理に買わせても、VRそのものの感動が薄れてきた瞬間の反応が少々怖い。
とはいっても、VRならではの魅力とゲーム的な深みを備えた作品はジワジワと現われてきており、既にViveを入手したゲーマーにとって、状況は日を追うごとに良い物になってきている。それと同時に、玉石入り混じって多数のタイトルが出続けている現状、新たに遊ぶタイトルの目星を付けるのがどんどん難しくなってきている。
というのも、まだまだ市場が薄いVRゲームの世界では、フラットスクリーンゲーミングの世界のように大手メーカーの肝いりでプロモーションされるビッグタイトルや、無数のプレーヤーが秀逸な無名タイトルを“発掘”し、大きな評判となるような環境がないためである。
そんな環境の中でも、なんとか秀逸な新タイトルを見つけていく方法はあるだろうか。ひとつの助けとなるのは、Steamの検索機能だ。ストアページから検索画面を開き、「HTC Vive」のチェックボックスを入れれば、200にも及ぶVive対応ゲームを総覧できる。そして「並べ替え」で「ユーザーレビュー」を選択。すると、評判のよいものからずらりとタイトルが並ぶ格好になる。
Viveを手にしているユーザーがまだ比較的少ないため、ユーザーレビューによる並び替えの精度はまだ低いものの、リストトップに出てくるゲームはおおむね、どれも満足できる内容がある(今回紹介したタイトルも多く含まれている)。
そういった配信プラットフォームの利便性も含めて考えれば、HTC Vive×Steamという組み合わせは、ゲーマーにとって理想的であることは間違いない。あとはさらなるコンテンツの拡充をまつのみ。現状のラインナップで考えれば、HTC Vive×Steam自体がまだ“アーリーアクセス”な感はあるものの、この黎明期と言える時期に、玉石混交の実験的要素の強いVRゲームを遊びつくせる部分、筆者は大いに満足を感じている。