【連載第38回】あなたとわたしのPCゲーミングライフ!!


佐藤カフジの「PCゲーミング道場」


史上最強のハンコン「T500RS」はPCでどこまで使えるのか!?
~臨場感あるドライビング環境を目指して~


色々な意味で業界の「最先端」を走る、PCゲーミングの世界。当連載では、「PCゲームをもっと楽しく!」をコンセプ トに、古今東西のPCゲームシーンを盛り上げてくれるデバイスや各種ソフトウェアに注目。単なる製品の紹介にとどまらず、競合製品との比較や、新たな活用法、果ては改造まで、様々なアプローチでゲーマーの皆さんに有益な情報をご提供していきたい。



■ 総重量12kgのハンコン「T500 RS」をPCで使いまくりたい!

「T500 RS」パッケージ。でかい!

 ストイックな喜びとピーキーな興奮を与えてくれるレースゲーム、ドライビングシム。最近の大型タイトルはコンシューマーゲーム機とのマルチプラットフォームが多いためPCゲームの独壇場とはいかなくなったが、パワフルなPCならではのより高画質・高いフレームレートでの極上のドライビング体験は健在だ。

 そして、より贅沢なドライビング環境の構築のお供に欠かせないハンドルコントローラー。ロジクールやSaitek、Thrustmaster、あるいはFantecなどなどいくつかのメーカーが凌ぎを削って新製品を投入しているジャンルだが、ここに最強の選択肢がひとつ、登場している。

 それがこの度ご紹介する、Thrustmasterの「T500 RS」だ。実車と同じ直径30cmのステアリングホイール、ダブルベルトドライブによる超強力なフォースフィードバックエンジンに、ポジションチェンジ可能なフルメタルのペダルユニット。その総重量は12kg!

 そんな「T500 RS」は元々、プレイステーション 3「グランツーリスモ 5」公式ハンドルコントローラーとして設計・開発された製品だ。「GT5」プロデューサーの山内一典氏の肝入りで仕様が決められたというから、本製品のこだわり抜いた仕様にも納得できるというもの。

 国内ではMSY株式会社が正式代理店として販売しており、価格は税込で62,790円。同じくハイエンド級の最新ハンドルコントローラー、ロジクールの「G27」が2個買えてしまうというお値段だ。それほど高価な製品でありながら「T500 RS」は、MSYによれば現在第三次予約まで完了・次回入荷は未定という品薄ぶり。プレイステーション 3のドライビングシムファンが本製品を血眼になって入手しようと先を争っている構図だ。

 そんな「T500 RS」、Thrustmaster製品ということで期待通りPCでの使用にも対応している。これは最近プレイシートまで導入したプロPCドライバー(無免許)を自称する私が見過ごすわけにはいかないと、在庫僅少のなか無理をいってサンプル機を貸しだしていただくことができた。早速、PCでの使い心地を検証してみよう! まずは環境づくりだ!

 ちなみに、今回ご紹介するプレイ環境は、4月29日から秋葉原で開催される「第3回 秋葉原PCゲームフェスタ」の初日、29日15:00からの1Fステージイベントにて、私佐藤カフジ自らが実演し、来場の皆さんにも体験していただく予定だ。ぜひご注目を!



■ 多数のボタンを装備しものすごい重量感。PCでも問題なく使える!

【Thrustmaster T500 RS】

メーカー:Thrustmaster
発売元:MSY
価格:62,790円

「T500 RS」のハンドル
「G27」との比較
ペダル部。フルメタルで非常に重い!

 さて、早速「T500 RS」の外観からご紹介していこう。本製品はステアリングホイールとペダルユニットのセット製品で、最初にビックリするのがその重さ。ステアリングホイール部だけで4.6kg、ペダルユニットに至っては7.3kgと、ズッシリどころじゃない重さである。

 この重さには2つの理由がある。まずステアリングホイールのフォースフィードバックエンジン。ここに3000 RPM/65Wの大出力モーターを動力とした、大型デュアルベルトシステムが内蔵されているのだ。最大トルクは150mN・m、このステアリングホイールが簡単に持ち上がって自走してしまうほどのパワーだ。

 ペダルユニットの重さの理由はまさしく「フルメタルだから」。スチール製のフレームにアルミ製のフットペダル部、さらにペダルの配置をF1タイプとGT&ラリータイプで入れ替え可能となっており、そのために「底板」となるべき2辺が確保されている。この重量のおかげでただ床に置くだけでも相当の安定感だ。

 PS3準拠製品ということでボタン数はかなり多い。ハンドル部に十字ボタン+ボタン9個、本体下部にボタン2個、パドルシフトを含めれば13の使用可能なボタンが配置されている。よくあるのがPCに繋いでみたら一部のボタンが使えませんでした、ということだが、ThrustmasterサイトからダウンロードできるWindows用ドライバーを導入すれば全部使えるのでご安心を。

 高級ハンドルコントローラーらしく各部の質感も高い。ステアリング部はグリップ感・吸水性抜群のラバー製。「G27」のような本革製のステアリングに比べ、キュッと吸いつくのような感触があり、グリップ度はかなり高いものになっているのだ。

 ひとつ注意したいのは、ハンドルの背部に配置されたパドルシフト。一般的なハンドルコントローラーと違って固定式となっており、ハンドルの回転に追従しない。このため45度以上の大きな切り角を維持している最中のシフト操作は難しくなっている。この点は車種・ゲーム内容によって有利・不利が分かれるところだ。

 PC用ドライバーを導入して「T500 RS」を接続すると、Windows 7では「Thrustmaster T500 RS Racing Wheel」というデバイスとして認識される。コントロールパネルではハンドルのロックトゥロック角度を40°から最大1,080°まで設定できるほか、ペダルユニットの軸設定からフォースフィードバックのパワー設定まで、ひととおり必要な内容がしっかりと網羅されている。間違いなくPCで使えるハンコンだ。


ハンドル部には多数のボタンを装備。パドルシフトは固定式
ペダルユニットはポジションチェンジが可能
付属工具で簡単に作業できる。ペダル部は細かい位置調整も可能
ThrustmasterのサイトからPC用のドライバーを入手・導入することでフル機能が利用可能になる



■ 「T500 RS」&「PLAYSEATS EVOLUTION」で最強のプレイ環境を作る!

リビング兼仕事部屋の片隅にこんな環境
ハンドルは標準の固定具でがっちり固定できる

 というわけで早速ゲーム環境を構築しよう。ハンコンが重くてでかいので設置するのも一苦労だが、今回はプレイシートも使用するつもりなので色々と覚悟済み。このセットアップにかかる労力を楽しむくらいの遊び心でいざ、開始だ。

 使用するプレイシートは、セクトインターナショナルから販売されている「PLAYSEATS EVOLUTION」だ。筆者宅ではこれにロジクール「G27」と液晶テレビを組み合わせてドライビング専用環境を部屋の片隅に作っているのだが、今回は「G27」を「T500 RS」に換装する。

 当初心配されたのは、ハンドルユニットおよびペダルユニットの固定具仕様の違いによる装着不可という可能性。これはハンドル部については問題なく、「T500 RS」付属の固定具でそのままがっちりと固定することができた。問題があったのはペダルユニットだ。

 プレイシートのペダル配置用ベースがペダルユニットの形状に合っていないので、観念してプレイシートのほうを分解。ペダル配置用のベースを取り外して、邪魔にならないようパイプを短くして、「T500 RS」のペダルユニットを床に直置き。あとはハンドルの高さを調整して……よし、ちゃんと足が届く。なかなかうまく配置できたと思うが、どうだろう?

 そうこうしている間、環境構築に1時間以上かかってしまったが、これにて準備はオッケー。「T500 RS」の圧倒的な重量から心配されたハンドルのグラつきもほぼなく、プレイシートとの相性はなかなかGOODだ。よし、遊ぶぞ~。


ペダルは、プレイシート側のベースを外すことで無理やり配置。重量があるのでどっしり安定感
というわけでプレイ環境が完成。ネジやら工具やら散らかってますがけっこうしっくり来てます



■ タイムアタックで使い勝手&パフォーマンスを計ってみる!

 こうしてまずは、PC用レースシムとしても完成度の高いコードマスターズの2タイトル、「F1 2010」と「DiRT 2」をプレイ。いずれも「T500 RS」の全機能がきちんと使え、フォースフィードバックもバリバリ働いて全く問題なしだ。


・F1ゲームはパドルシフトの使い方にコツが必要

「F1 2010」
ゲーム内のホイール設定はこんな感じ。デッドゾーンは0でOK

 まずレースゲームの定番中の定番タイトル「F1 2010」(コードマスターズ)。「T500 RS」ではロック・トゥ・ロック角度を最大1,080°に設定できるが、ステアリングの切り替えしが超高速に行なわれるF1のドライビングでは240°くらいが適切。「T500 RS」側でその設定をしておき、「F1 2010」側でステアリングのデッドゾーンを0%に、リニアリティを100%に設定。こうすると「T500 RS」の精度を100%引き出すことができる。

 アブダビGPの使用コース、ヤス・マリーナサーキットで試走。このコースは長大なストレートに高速・低速の多数のコーナーが配置されていてハンコンのパフォーマンスを測るのにうってつけだ。「T500 RS」の強力なフォースフィードバックで路面情報がガンガン伝わってくる。が、正直なところ伝わってきすぎるのでFFB強度を少し下げるのがオススメ。

 問題は終盤近くにある高速コーナーから低速コーナーへ続く一連の区間だ。この区間では高速コーナーへの入りで2速から一気に6速まで加速し、大きくステアリングを切りながらまた減速して2速へシフトチェンジする。ここで「T500 RS」の固定パドルシフトがあだとなって、旋回減速中にシフトダウンができない! という状況に陥ってしまった。

 しかしこれはある程度対策ができる。低速コーナーへ向かう区間で早めに旋回して進路を定めてしまい、あとはゆるくステアリングを切りながら減速していけばいいのだ。切り角が45°程度以下なら問題なくパドルシフトにアクセスできる。若干ライン取りが変わることで前後の走行経路に変更が必要だが、ほとんどタイムロスにはならない。

 むしろ、「T500 RS」のステアリングが持つ非常な正確さが助けになり、各コーナーの最適なハンドルの切り角を1発で出すことができるシーンが多く、非常に快適に走行することができた。精度の低いハンコンではちょくちょく修正舵が必要になりタイムロスにつながるため、これは大きなアドバンテージだ。




・ラリーゲームには「T500 RS」の精度が効く!!

「DiRT 2」
ボタンが沢山あるのであらかたハンドル部にコマンドを割り振れる

 次に全く別タイプのドライビングが要求されるラリーゲーム「DiRT2」(コードマスターズ)をテスト。こちらも「F1 2010」と同じく「T500 RS」の全機能が使え、フォースフィードバックによる路面情報の伝わり方も最高だ。特にラリーゲームでは、タイヤが地面を捉えているか空転しているかを体感で知ることはとても重要で、ドライビングの臨場感にも関わってくる。

 ロックトゥロック角度は、F1よりもやや大きい280°に設定。オフロードラリーでは大きく舵を切るのはカウンターを当てる瞬間くらいで、たいていはニュートラルポジション付近を微調整しながら、ほとんどアクセルワークだけで曲がる特性があるからだ。優先すべきは精度というわけ。

 以前より繰り返しタイムアタックしているお気に入りのクロアチアコースで早速試走。問題はブレーキ、アクセルの精度だ。これが悪いハンコンでは、タイヤが空転しはじめるギリギリを掴むことができず、コーナーリングで大きなロスを産み出してしまう。しかしそこは「T500 RS」、ストロークの長いフットペダルのおかげで非常に細かく出力をコントロールできる。

 このコースでのこれまでの自己ベストは3:01.22だが、多少練習しただけでこれにかなり近いタイムを出せた。練習不足による細かいミスもあるなか、区間によっては自己ベストを上回るペースで走れたというのは、やはり「T500 RS」の入力精度に負うところが大きい。30cm径の大きなステアリングは、高速コーナーでの正確な舵取りを可能にしてくれたのだ。

 「F1 2010」で問題になった固定パドルシフトも、こちらでは問題にならなかった。シフトチェンジをするタイミングがほぼ、トラクションを維持したままの減速中または加速中という、ステアリングを切らない条件下にあるからだ。「T500 RS」の仕様は、ラリーゲームと大いに相性が良い。




■ これだ! 「Test Drive Unlimited 2」でのんびりクルージングという遊び

「TDU2」。こんな車で街を流したいなあ~
安い車でも、「T500 RS」のおかげで優雅にクルージングを楽しめた

 「T500 RS」の最大ロック・トゥ・ロック角度1080°。つまり3回転。レース仕様車ではなく、公道を上品に走るクルマのための設定。これを活用できるシーンはあるだろうか。

 そこで意識に上った格好のタイトルが、ATARIの「Test Drive Unlimited 2」だ。ハワイとイビサの公道を、あこがれのクルマに乗ってクルージング。ライバル達とレースを繰り返して賞金を稼ぎ、さらにビッグになっていこうぜ! というカーライフシミュレーター。現在は英語版のみリリース中で、対応機種はPC/PS3/Xbox 360。それぞれ5月26日にサイバーフロントより日本語版が発売予定だ。

 この最新タイトルで「T500 RS」を使い、公道仕様車でハワイをのんびりクルージング……。なんとも素晴らしそうではないか。というわけで早速、PC版で試乗してみた。

 しかしちょっとした障害が発生。でたばかり&アップデートで改善中のタイトルということもあって、「T500 RS」をつないだ状態でキー設定を行なうとフリーズするという問題に直面してしまったのだ。フリーズした状態で「T500 RS」をUSB端子から外す・戻すという操作をすると復帰することが判明。なんとか事無きを得た。

 気をとりなおしてドライビングを楽しもう。「T500 RS」のロック・トゥ・ロック角度を大きめに設定。ドライバ側でフォースフィードバックを最小にしてスムーズに回転できるようにする。そしてゆったりと加速して、法定速度でハンドルをクルクル回しながらドライビング。大きなステアリングホイールのおかげもあって、なんとも優雅な気分。

 さらに臨場感を高めるため、フットペダルのポジションをGTカータイプにできることも、他のハンコンにマネできない部分だ。レースに挑むときはロック・トゥ・ロック角度を狭めてレース仕様ステアリングに変更、なんて遊び方ができるのもいい。「T500 RS」の最適な使用シーンを求めた筆者が「これだ!」と思った瞬間である。


「TDU2」×「T500 RS」デモプレイ

公道・公道仕様車をフィーチャーしたゲームならでは、最大1080°のロックトゥロック角度のカスタマイズ性を生かせる。ゆるりとしたハンドリングを楽しむのもまた乙な感じ?



■ 「第3回 秋葉原PCゲームフェスタ」で会いましょう

 PS33用のハンドルコントローラーとして登場した「T500 RS」。しかし、今回の検証でPCでもしっかり使えることがわかった。PCなら、PS3で出ていないドライビングゲームにも「T500 RS」を活用することができる。ぜひ両プラットフォームで使いこなしたいところだ。

 弊誌では今回ご紹介した環境、そして初公開となる「Test Drive Unlimited 2 日本語版」(サイバーフロント)による試乗体験会を、4月29日15:00時より、「第3回 秋葉原PCゲームフェスタ」の1Fステージイベントにて実施する予定だ。

 当地では私、佐藤カフジがメインパーソナリティとして、PCならではのドライビング環境構築について熱弁を振るう予定。いやはやライターを本業としていながら人前でデモンストレーションを披露するというのは緊張の限りだが、来場する皆さんの時間が有意義なものになるよう、おもしろい内容をご提供したいと考えているので、是非足を運んでいただければ幸いだ。

 よろしくね!

(2011年 4月 28日)

[Reported by 佐藤カフジ ]