【連載第24回】あなたとわたしのPCゲーミングライフ!!


佐藤カフジの「PCゲーミング道場」


ドイツから電撃上陸の新ブランド「ROCCAT」特集
欧州トップシェアを争うゲーミングブランドの実力を検証する!


色々な意味で業界の「最先端」を走る、PCゲーミングの世界。当連載では、「PCゲームをもっと楽しく!」をコンセプ トに、古今東西のPCゲームシーンを盛り上げてくれるデバイスや各種ソフトウェアに注目。単なる製品の紹介にとどまらず、競合製品との比較や、新たな活用法、果ては改造まで、 様々なアプローチでゲーマーの皆さんに有益な情報をご提供していきたい。



 ■ ドスパラが販売代理店になったROCCATってどんなメーカー?

秋葉原のドスパラ本店
店内のゲーミングデバイスコーナーにはROCCAT製品がズラリ

 ゲーミングデバイス市場を賑わす個性的なメーカーたち。マイクロソフトやロジクールのゲーミングデバイス部門、そしてRazer、SteelSeries、DHARMAPOINTといった専門ブランドあたりは、既に定評を確立して多くの固定ファンを獲得している。

 そんな中、2009年末に日本に新たな勢力が登場した。ドイツ発のゲーミングブランド「ROCCAT(ロケット)」だ。多くの読者の方が、このブランド名を始めて聞くか、名前は聞いたことがあっても、その内容はよく知らない、といった状況だと思う。それも仕方ないことで、実はこれまでROCCATの製品が国内で大々的に紹介されたことがほとんどないのだ。

 筆者自身も、昨年末になってようやくROCCATの日本上陸を知って驚いた。さらに驚いたのが、その販売代理店を勤めるのが、全国にPCショップを展開している株式会社サードウェーブ、つまり「ドスパラ」だということだ。1粒で2度ビックリというわけだが、今現在ドスパラの店頭では既に、マウス、キーボード、ヘッドセット、アクセサリ類まで、ROCCATの製品がズラリと並んでいる。実際に店頭でそれを見つけて「おっ」と思った方も多いのではないだろうか。

 全く予想もできなかった展開だ。何しろ輸入代理販売の専門企業ではなく、店舗経営をメインビジネスとしている企業が、海外ゲーミングブランドの国内展開に取り組むというのである。このためROCCATは、一般の輸入代理販売企業が扱う製品とは異なり、ドスパラだけで販売が行なわれるというちょっと変わった位置に立つことになるわけだ。

 この販売形態はユニークなものだが、ユーザーにとって「ドスパラに行けば買える」というのはわかりやすい。それはいいとして、問題はROCCATというゲーミングブランド自身のクオリティだ。本当に素晴らしいものであれば、これから多くのユーザーがドスパラへ走ることになるだろう。そうでなければ、単に商品棚のにぎやかしに終わるかもしれない。

 ROCCATは、ゲーミングに必要なアイテムを幅広くそろえているが、果たしてその実力はいかほどだろうか。実際に全製品を入手して確かめてみたので、ご紹介していこう。


【今回のラインナップ】
Kone
レーザーマウス
Kova
オプティカルマウス
Sota
樹脂系マウスパッド
Sence
布系マウスパッド
Apuri
ケーブルアンカー
Arvo
キーボード
Kave
ヘッドセット
Vire
インナーイヤーヘッドセット


■ まずはサードウェーブに話を聞いてみた

 早速製品紹介に移りたいところだが、取材開始時点では筆者もROCCATについてほとんど情報を持っていない状態である。まずは、これがどんなゲーミングブランドなのか、ドスパラでどのように扱われるのかを把握したい。そのためには、まず国内販売を担当する当事者に聞くのがよいだろうということで、早速、サードウェーブに赴き、お話を伺ってきた。

 取材に応じてくれたのは、サードウェーブ商品部でマーケティングを勤める庄司和歌子氏。まず聞いてみたのは、ROCCATが本場欧州でどのように評価されているかについて。庄司氏によると、「ヨーロッパでは非常に高い評価をいただいておりまして、ゲーミング市場における売り上げ上位グループの位置を確保しています」とのこと。

 補足すると、やはり欧州でもっとも強いのはRazer。しかしそれに猛追する形でROCCATはゲーミングデバイス市場における2番手の位置にあり、北欧拠点のSteelSeriesと合わせて3強を構成しているという構図のようだ。この中で最も歴史が浅く若いのがROCCATなので、デビュー直後の躍進振りというのが伺われる。そこまで評価されているブランドであるならば、日本でも扱いたいというのは自然な流れだろう。



・ ROCCATはショップにとってもユーザーにとっても面白い!

秋葉のお店には、実際に触れる状態で製品が置いてあった

 そこで気になるのが、なぜサードウェーブが扱うことになったのか、ということだ。これについて庄司氏はシンプルに「面白そうだから」という意外なコメントをしてくれた。というのは、サードウェーブにとって新たなチャレンジとなるから面白いのはもちろんとして、ユーザーにとっても面白い選択肢を提供できるという考えだ。

 これにはドスパラの店舗経営における戦略も関係している。ドスパラではエンドユーザー向けにPCパーツやBTOマシンなどPC関係の品物を幅広く扱っているが、近年ではゲーミングデバイスへの需要の高まりもあって、専用のコーナーを設けるという機運が高まってきた。しかし、先行してゲーミングデバイスを多数扱っている店舗は山ほどある。そこで考えるのが「差別化」だ。他店にないROCCATを扱うことは、多くのPCゲームユーザーにとって、ドスパラが(他店よりも)面白いお店になることを意味するのだ。

 現在、ドスパラでは全国34店舗のうち中古を扱う店舗を除く20数店舗にROCCAT製品を展開。これに際しては「ユーザー様が実際に製品に触れられるよう、デモ機の設置を積極的に進めています」ということで、とりあえずドスパラに行けばROCCATの製品が触れる、という状況が整備されつつあるようだ。

 ではドスパラでは、今後ROCCATのライバルにあたるゲーミングデバイスは販売しないのかというと、そんなことはない。「ゲーミング市場の活性化のために、ユーザー様により多くの選択肢をご提供することを目指しています。『ROCCAT』はその選択肢のひとつという位置づけです」ということなので、製品間の価格競争もきちんと働くことになる。色々な意味で、ゲーミングデバイス市場に面白い選択肢が登場したことを歓迎したい。



・ 快適なデスクトップ環境を最適価格で提供

価格的には他のゲーミングブランドと同等レベル。あとはデザインと機能をどう評価するかだ

 次に価格について。「仮に、ドスパラのBTOマシンとセットで『ROCCAT』マウスを選択した場合、より安価に買えるのか?」という質問をしてみたところ、庄司氏の答えは「」NO」。店頭での単体売り価格で既に「ベストプライスでご提供しています」とのことで、まずはROCCATのユーザー認知を促進させるためにも、他メーカーの製品に負けない競争力のある価格付けをしているということのようだ。

 ユーザーの反応はどうだろうか? 昨年末に販売を開始してからというもの、現在ではマウスからアクセサリ類まで6種類8製品のラインナップが店頭に置かれている。その中で特に好評なのが、早期に販売が開始された5.1chヘッドセット「KAVE」だという。製品についての問い合わせも多数受けているとのことで、なかなかの手ごたえを感じているようだ。

 最後に庄司氏は、ROCCATの特徴についてこうまとめてくれた。「『ROCCAT』では、自社ブランドの特性を『SDMS=スマート・デスクトップ・マネジメント・システム』と呼んでいます。ゲームはもちろん、それに限らずユーザーの皆さんに快適なデスクトップ環境をご提供するために製品をデザインしておりますので、快適な環境を手に入れたい方は、ぜひドスパラにお越しください」。



■ マウスは異なる価格帯の2種が登場。実力派のハイエンドマウス「Kone」に注目

 ここからは各製品のご紹介をしていこう。まずはキング・オブ・ゲーミングデバイスのマウス関連製品から。ROCCATがどういったブランドなのか、その特徴がこのカテゴリーに集約されているはずである。

 現在ドスパラで発売されているROCCATのマウスは、ハイグレードに位置する「Kone」。また、エントリーモデルの「Kova」が近日中に発売予定とされている。また、布系マウスパッド「Sense」、樹脂系マウスパッド「Sota」が発売中。さらに、個性的なマウスケーブルアンカー兼USBハブ「Apuri」が今後2カ月以内に発売予定だ。



・スタイリッシュで設定項目も多彩なハイエンドゲーミングマウス「Kone」

【Kone】
開発元:ROCCAT
発売元:サードウェーブ
ジャンル:ゲーミングマウス
発売日:発売中
価格:7,980円
センサー:レーザーセンサー
解像度:800~3,200CPI
ボタン数:設定可能8+CPI切り替え2
固有機能:レーザー出力を自動調整するTCU(Tracking Control Unit)搭載

鋭さと滑らかさを両立したフォルム
設定画面。多機能かつスタイリッシュなデザインだ

 はじめにご紹介するのは、ROCCATのハイエンドゲーミングマウス「Kone」。フラグシップモデルとして最高の機能を備えた製品だ。ボタン数は、2つのCPI切り替え専用ボタンを含めて10。8つのボタンは付属ソフトでその機能を自由に設定できる。センサーはレーザー方式で、最大加速度20G、最大トラッキング速度1.65m/秒と、キッチリとゲーミンググレードの性能を実現。

 マウス重要はケーブルなしで118gと、このクラスのゲーミングマウスとしては平均的。ただ本製品には専用の追加ウェイトユニットが付属しており、5g、10g、15g、20gのなかから1つをマウス背面に装着して、その重量を調整することが可能だ。筆者が使用した範囲では、軽くしようと思ってウェイトを取り除くと、重量バランスがややフロントヘビーになって却って扱いにくくなるので、5gのウェイトを装着した状態のほうが使いやすい。

 形状的には、右手でホールドした際に親指が来る部分が大きくくびれており、マウスの曲線的な形状、やや大柄であることもあって、手へのなじみ方はロジクールの「ゲーミングマウス G5」あるいは「MX 518」系統に近い。だが実際、くびれの部分はそれよりも深くなっているので、かぶせ持ちだけでなくつまみ持ちでも「キュッ」とフィットしてくれる。非常に好感触だ。

 機能面で特筆すべきは、付属ソフトウェアによる多彩な設定項目があることだ。まず、本製品はCPI設定として5段階の切り替えが可能となっているが、さらに自由なCPIに設定することもできる。また、マウスパッドの特性に合わせてレーザー出力を調整するという「Tracking Control Unit(TCU)」がひとつのウリになっており、最適なリフトオフディスタンスを自動的に検出してくれる。

 だが、この「TCU」に関していうと、後に紹介するマウスパッド「SOTA」で使用した際、むやみにリフトオフディスタンスが長くなってしまう傾向があって、むしろ「TCU」をOFFにしたほうが扱いやすかった。このあたりはアナログな要因も絡んでくるので、筆者が入手した固体がたまたまそうだったのかもしれないが、欲を言えば、リフトオフディスタンスを直接調整できるような機能があればベストだった。

 その他はとりたててネガティブに感じた要素はなく、むしろ手に馴染みなすい形状や、サイド部分がきちんと滑り止めラバーになっていることなど、ハードなゲーム用途に最高レベルの快適性を提供しうるマウスだと感じた。格好良くデコレーションできる沢山のLEDもあって、ゲームプレイへの雰囲気を盛り上げてくれるという点もいい。デザインがスタイリッシュなので、やさしく光るLEDがとてもサマになるのだ。

 これからゲーミングマウスを購入したいと考えるユーザーには、最高の選択肢のひとつとなるだろう。


左サイドにしっかりとしたくぼみがあり、つまみ持ち、かぶせ持ちの両方でしっかりホールドできる。使用した感触として、手触りはロジクールの「MX 518」系統に近いフィーリング。ボタン数が多いので、様々なシチュエーションに対応できそうだ
ウェイトユニットの交換によって重量を調整可能。標準ではややフロントヘビーな重量配置なので、少々重めのウェイトを組み込むとしっくりきやすいかもしれない
各所のLEDの色を調整して自分ごのみのライティングにすることができる。ゲームチームでカラーを統一して気分を盛り上げてみるというのも面白いかもしれない

・小さく直線的なフォルムに必要不可欠な機能を搭載したエントリーモデル「Kova」

【Kova】
開発元:ROCCAT
発売元:サードウェーブ
ジャンル:ゲーミングマウス
発売日:近日発売予定
価格:5,980円
センサー:オプティカル
解像度:400、800、1,600、3,200CPI
ボタン数:通常ボタン5+CPI切り替えボタン2
固有機能:CPI設定をLEDインディケーターで判別可能

往年のスーパースポーツカーを思わせる直線的なフォルム
大きさを比較

 次にエントリーモデルに位置づけられるゲーミングマウス「Kova」をご紹介しよう。こちらは予価で5,980円と、ハイエンドの「Kone」に比べて2,000円ほど安価な設定となっている。センサー方式はオプティカルで、最大加速度は20G、公称の最大トラッキングスピードは1.0m/秒ほど。ただこの数値はかなり控えめなようで、筆者の簡単なテストではそれよりもかなり高い速度にも十分に追従した。相当なローセンシティビティプレーヤーでなければ、あらゆるゲームシーンで十分に通用するクオリティだ。

 「Kone」に比べると機能面ではかなり削られており、ドライバレスでの動作を前提としている。このためマクロ機能を各ボタンに設定するといった使い方はできない。ちなみに搭載する7ボタンのうち、右サイドの2ボタンはCPI調整に使われるため、ゲームに使えるのは5ボタンだ。

 とはいえ安価モデルできちんと左サイドボタンを2個搭載していることは評価できる。大きさ的には「Kone」よりも一回り小さく、大きさの比較対象としてほぼイコールなのはRazerの「Salmosa」あたり。重量は90gと軽く、小さい力でもしっかりとコントロールできるサイズだ。その上で、ランボルギーニガヤルドを思わせるような独特のフォルムが特徴的。抑揚のある形状が、プレーヤーの指先にしっかりとした「引っかかり」を与え、正確なコントロールができるようになっている。

 面白い点としては、マウスの前部に配置されている2つのLEDが、現在のCPI設定に応じて変化するという仕様を搭載している。CPIは400、800、1600、3,200という固定段階で切り替える仕組みで、エントリーモデルのマウスとしては十分な機能を有しているといえよう。

 ひとつ気になることがあるとすれば、やはり価格だ。エントリーモデルとしては、5,980円というのは少々高い気がするし、わずか2,000円の差額ではるかに高機能な「Kone」が手に入ることを考えれば、例え形状が気に入ったとしても難しい選択になるだろう。

 もしあなたが「小さくて軽いゲーミングマウスが欲しい」と考えているのであれば、この「Kova」はその要求に万全に答えることができる。しかし、より低い価格帯に他の同系統ゲーミングマウスがいくつも存在するので、そこに筆者が敢えて「Kova」を推す理由は乏しい。もちろん、この形状スタイルは独特で捨てがたいのだが。


シンプルなオプティカルマウスではあるが、左サイドに2ボタン、右サイドにCPI切り替えボタンを装備し、ゲーミングマウスとして必要最小限の機能はそろえてある
例に漏れずLEDが光る。現在選択されているCPI設定に応じて色が変わるという仕様だ



■ マウスパッドは布系と樹脂製の各1種類を用意。いずれもトップクオリティ!

・滑りと手ごたえの絶妙なバランスを持つ樹脂系マウスパッド

【Sota】
開発元:ROCCAT
発売元:サードウェーブ
ジャンル:マウスパッド
発売日:発売中
価格:2,780円
表面素材:樹脂系
寸法:350×270mm
備考:ブラックとメタリックブルーをラインナップ

形状そのものにROCCATの作風が表れている
後述の「Apuri」を使ってのショット

 マウスのお供、マウスパッドのラインナップは2種類。そのうちのひとつ「Sota」は、樹脂系の表面素材を持つ、ハイエンドのゲーミングマウスパッドだ。寸法は350×270mmで、厚みはこの系統のマウスパッドとしては薄めの3mm弱。たいていのゲーマーには十分なサイズが確保されている。

 気になる表面の質感は、「サラサラ」系統だ。硬い表面には微細な凹凸が施されて、スルスルとマウスを走らせる際に確かな手ごたえを感じることができる。滑りのよさは、他の樹脂系ゲーミングマウスパッドの中でも最高レベル。ポイントは、単に滑りやすいというだけではなく、非常に乾いた走行感が得られること。樹脂系にありがちな、湿気でソールが密着してひっかかりが生じるようなことが全くなく、安定したトラッキングが得られる。

 ツメで叩くと「カツカツ」と石でも叩いているかのような感触が得られるほど、表面素材の剛性が高いので、耐久性もなかなかのものが期待できそう。背面の滑り止め素材も相当しっかりしたものが使われているので、たいていの表面でしっかりグリップしてくれるはずだ。総合的に見て、他者のトップモデルに引けを取らない、非常に高いレベルのマウスパッドである。

 今回、上記で紹介した「Kone」と「Kova」で使用したところ、物理的感触とトラッキングの両面で非常に満足することができた。ちょっとしばらくメイン装備として使い続けて見たいと思ったほどだ。皆さんも是非、実際に触ってみてほしい。価格は2,780円と、このグレードのマウスパッドとしてはまあまあの位置にあるので、好感触を得られたら勢いで買ってしまっても良いと思う。


表面は硬く、粒子感のあるサラサラとしたすべりを味わえる。初動からスムーズにマウスが走り、体感的にどれだけマウスが動いたかを把握することも容易いため、高い精度でコントロール可能だ




・丸めて持ち運びも可能なスタンダードゲーミングマウスパッド

【Sense】
開発元:ROCCAT
発売元:サードウェーブ
ジャンル:マウスパッド
発売日:発売中
価格:2,480円
表面素材:布+特殊コーティング
寸法:
備考:2種類のデザインをラインナップ

上記「Sota」より一回り大きい
使用時のイメージはこのような感じ

 こちら「Sense」は素材が布系のマウスパッド。価格が2,480円と、上記「Sota」に比べて若干安価だが、外形寸法は逆に400×280mmと一回り大きく、ローセンシティビティ傾向のプレーヤーに向いた製品となっている。厚みは1.35mmで、布系マウスパッドの中でもかなり薄い部類に属するのが特徴だ。

 薄手の布製マウスパッドのよさとして「丸めて持ち運びができる」ということがあるが、本製品はまさにその点を最大に生かそうとしている。それがテニスボールの筒型ケースを思わせる製品パッケージ。非常に頑丈に、再利用可能な形で作られているため、そのままキャリングケースとして利用できるのだ。

 では、気になる滑りについて。実際にいくつかのマウスを走らせてみたところ、特筆すべき滑りの良さというものは感じられない。布の目が細かく平坦になっているため、ソールへの接地率が高いというのがその理由だと思われる。やや初動抵抗の高さ、滑走に入った際の抵抗変化の大きさがあるため、正確なコントロールを得るためには少々余分な力を入れて「マウスを押し付けるように」操作する、もしくはマウスを軽く浮かせて滑らせる必要があった。

 こういった理由で、本製品のゲーミングマウスパッドとしての性能は特段強調して言えるレベルにはないと感じた。ただこのあたりは個人個人で感じ方も違うだろうから、機会があれば実際に試して、自分のプレイスタイルに合うかどうかを吟味してほしい。もちろん、丸めて持ち歩けるスタイリッシュな専用ケースの存在は、行動派のゲーマーにとって大きな魅力である。


布目が細かく、コーティングで扁平化されてもいるため、接地率の高さによる初動抵抗への影響が感じられた



■ ハードゲーマー必携の格好いいケーブルアンカー。これは便利!

【Apuri】
開発元:ROCCAT
発売元:サードウェーブ
ジャンル:ケーブルアンカー
発売日:2ヶ月以内予定
価格:3,980円
USBソケット数:4(バスパワー対応)

パスパワー供給用のアダプタは海外版のもの。日本版では仕様が変わるはずだ
組み立てるとこうなる。取り回しが面倒なマウスケーブルを宙に浮かせて使用することができる

 さて次にステキなマウスアクセサリーをご紹介しよう。この「Apuri」は、マウスのケーブルを中空に固定して操作性を向上させるという目的でデザインされている「ケーブルアンカー」だ。そのためだけにスペースをとるのは勿体無いということなのか、同時に4ポートのUSBハブとしての機能も備えている。

 何より、ひとめ見て「おっ」と思わせる未来的なデザインが秀逸。そして実際に使って見ると、ケーブルアンカーとしてよく考えて作られていることがわかって、さらに「おおっ」と思わせてくれる。特に大きなポイントは、ケーブルを固定するアーム状のパーツがソフトラバー系の素材で作られており、マウスのケーブルが引っ張られるとそれに追従して動き、衝撃をうまく吸収してくれるところだ。

 筆者は以前、ケーブルアンカーを自作して使用していたことがあるが、ハリガネ製だったため、マウスケーブルが引っ張られた際に大きな反動が生じてしまうため、ある程度余裕を見て、長くケーブルを垂らす必要があった。しかしこの製品では、アーム部がやわらかく動いて力を分散してくれるので、ケーブルを短めに垂らすことができる。そうすると、マウスとアンカーが接近した際の「よれ」による抵抗が最小限にとどめられるのだ。

 ベース部分に「足」を装備してアンカー部分に十分な高さが確保されていることもあり、本製品を使用すればケーブルの重さや抵抗を感じることなくマウスコントロールできる環境が提供される。この気持ちよさを、実際に体験することなしに理解するのはかなり難しいと思うが、「1度使ったら戻れないレベル」ということだけはハッキリお伝えしておきたい。

 ついでにUSBハブにもなるということで、キーボードをつなげたり、USBヘッドセットをつなげたり、ゲーム用のインターフェイスをこの「Apuri」から全展開するというのも格好いい。つなぐデバイスが多くなるほど、「Apuri」にかかる荷重が増え、さらにマウスを激しく操作できる余地が生まれるというものだ。


USBポートも搭載して実用性はバッチリ。ほかに例のない、優れたケーブルアンカー製品として人気を集めそうだ



■ ゲーミングキーボードは 親指の可能性を広げるマクロキー搭載

【Arvo】
開発元:ROCCAT
発売元:サードウェーブ
ジャンル:ゲーミングキーボード
発売日:発売中
価格:6,980円
配列:日本語
固有機能:テンキー部をモード切り替えで制御キーとして使用可能。スペースバー下部にマクロ専用ボタンを3個配置

方向キーあたりのパートが省かれた省スペーススタイル
「MODE」ボタンを押すと、テンキー部分が方向キーなど各種制御キーの役割を果たすようになる

 ROCCATではゲーミングキーボードも2種類ラインナップしている。ドスパラで扱いがあるのはそのうち省スペース版にあたる製品「Arvo」だ。キー配列としては、フル配列のキーボードから方向キーとInsert~PageDownあたりの制御キーを省き、その分テンキーを詰めた格好。このため外形寸法は390×140mmと、一般的な省スペースキーボードに並ぶサイズとなっている。

 このスペックを聞いて、「方向キーがない?!」とビックリする方もおられるかもしれないが、カスタマイズで設定可能なのでご安心を。この製品には、右上端にある「MODE」ボタンによる機能切り替え機能があり、「ゲームモード」に切り替えればテンキー部が方向キーを含む制御キーとして振舞うのだ。

 こうしてキー数の不足を補っている上、本製品にはゲーミングキーボードらしいマクロ割り当て機能が備わっている。マクロを割り当てられるキー/ボタンは合計5つ。スペースバー下部に装備されている3つのマクロ専用ボタンと、「ゲームモード」時に余るテンキー部の1と3のキーだ。特に秀逸なのは、スペースバー下部のボタン。ゲームパッドのボタンのような感触にまとめられたこの3つのスイッチは、日ごろスペースバーしか押す機会のない親指に、新たな表現力を与えてくれる存在なのだ。

 キーボードの基礎性能として気になるキータッチは、薄型キーボードによくある標準的なもの。ストロークは4mmほど。押し込むとなめらかな抵抗があり、ゆるいクリック感の後スッと柔らかく底打ちする。作りはしっかりしており、キートップが揺れて余分な音を立てることはない。この価格帯の製品としては、なかなかしっかりした出来だと感じられる。

 本製品のポイントは、やはり親指部分に配置された3つのマクロキーということになるだろう。スッキリとまとめられた省スペースのデザインも良いところである。フル配列のキーボードに慣れていると、ファンクションキーの間が詰まっている点で多少のアジャストが必要だが、メールやブログといった軽めのテキスト作業であればストレスはない。これで6,980円というのは、なかなかお買い得な内容だ。


スッキリと省スペース化されたフォルムは、前述のエントリーモデルのマウス「Kova」に似た作風。直線で構成された外形がゲームプレイへの気持ちを高めてくれる。親指部分に装備された追加のマクロキーは便利に使えそうだ



■ 早速評判のアナログ5.1chヘッドセット。なんとイヤフォンタイプも登場

 最後に、ROCCATがラインナップしているゲーミングヘッドセットを2種類ご紹介しよう。ひとつはアナログ5.1サラウンドに対応したハイエンドモデル、もうひとつはイヤフォンタイプでモバイル用途にも最適な1品。どちらも個性的な製品であり、多くのユーザーにとって面白い選択肢になりうる。



・アナログ5.1chを4スピーカーと振動エンジンで出力するハイエンドヘッドセット

【Kave】
開発元:ROCCAT
発売元:サードウェーブ
ジャンル:ゲーミングヘッドセット
発売日:発売中
価格:9,980円
接続:3.5mmステレオミニプラグ×4(アナログ5.1+マイク) + USB
特性:20~20,000Hz / 114±3dB / 100mW / 40mm
固有機能:各チャンネルを独立して調整できるボリュームコントローラーを装備

製品の装着イメージ
ボリュームコントローラー。チャンネル毎に制御ができるという高機能だ

 ハイエンドゲーミングヘッドセットの「Kave」、最大の特徴はアナログ5.1chをきちんと再生できるという機能性だ。耳をすっぽりと覆う大きなイヤーカップの中に、前後で1つづつの40mmスピーカーと、振動ドライバーを内蔵。計5つのサウンドユニットが20~20,000Hzのサウンドをしっかりと再生してくれるのだ。

 イヤーカップ内の前後に別々のスピーカーが配置されているだけあり、サラウンドサウンドの低位感はばっちりだ。据え置き型のスピーカーと同等とはさすがに行かないものの、2chスピーカーでサラウンドをエミュレーションするような一般的なヘッドセットに比べれば雲泥の差。物理的にスピーカーが耳の前、後ろに配置されているので、ちゃんと「その方向から音圧を感じる」のだ。これは確実にゲームの成績に影響する。

 低音専用のユニットも搭載していることで、迫力も凄まじい。ズドドド、と体の芯まで震えるような音圧だ。音質的に、低音と高音が強調されすぎる傾向は感じたが、そこはケーブル中ほどに装備されている4スライダーのボリュームコントロールを使って、サブウーファー出力を控えめにすれば問題なし。このボリュームコントロールユニットはチャンネル毎のボリュームを調整できるだけでなく、全体のボリューム、ミュート設定、マイクのON/OFFも制御できる。それなりのサイズがあるので、机の上に置いて使うスタイルだ。

 サウンドがきちんと5.1chで聞こえるという点は極めて大きなメリットだが、そのかわりケーブル周りがかなり面倒なことになっている。サウンド入力はアナログ信号にのみ対応しており、3.5mmステレオミニプラグを3本使ってPCのサウンド出力端子に接続する。また、マイク端子も同様なので、系4本のミニプラグが分岐している。さらに、ヘッドセットのサウンドコントローラーに電力を供給するため、USBケーブルも接続しなければ音は出ない。

 それさえクリアできれば、近年のマザーボードにはほぼ必ず搭載されているRealtek HD Audioによる一般的なサウンド出力環境で、アナログ5.1chのサラウンドサウンドをヘッドセットで堪能できるのだ。

 マイク部は感度よく、鼻息や部屋の雑音といった不要な音を拾いすぎる傾向はあるが、ゲーム用途で困ることはまずないだろう。強いて言えば、音を拾いすぎるため、周囲が騒がしいゲーム大会の会場などでは多少問題になるかもしれない。アナログ接続で素晴らしいサラウンドを楽しめるゲーミングヘッドセットは極めて珍しい存在なので、ぜひ一目置いておこう。


耳をすっぽり覆う大きさの、余裕あるイヤーカップは長時間のプレイでも疲れにくい環境を提供する。小折り曲げて小さくまとめることも可能

イヤーカップの中にはサウンドユニットが3つづつ配置されている。これで5.1chを完璧に再生するわけだが、そのぶんケーブルは相当面倒なことになっている



・ヘッドセットはポケットに入れて持ち運ぶ時代に!

【Vire】
開発元:ROCCAT
発売元:サードウェーブ
ジャンル:インイヤータイプゲーミングヘッドセット
発売日:発売中
価格:3,980 円
接続:3.5mmステレオミニプラグ×2(オーディオ+マイク)
特性:18-22,000Hz / 105±3DB / 5mW / 14.2mm
固有機能:ケーブル中間部に超小型マイクロフォンを装備

イヤフォン部。伸びのある高音と、中低音もそれなりに聞こえる
マイク部。これでかなり感度が高い

 最後にご紹介する「Vire」も非常に面白い製品だ。写真を見ての通りイヤフォンである。これだけ小さいのにマイクもついているので、これはまっとうなヘッドセットなのである。サウンドのパワーは、さすがにこのサイズとなればそう期待できないが、スッキリとした伸びのある音質が楽しめる。オーディオ用の安価なイヤフォンと比べて大きな違いを感じることはない。

 やはりこのサイズでマイクもついているというのが面白いところだ。マイクユニットは左イヤフォンから延びるコード上10cmくらいのところにあり、いわれなければ気づかないほどの大きさにまとめられている。装着した際にちょうど口の横あたりにマイクユニットがぶら下がる配置なので、意識せずにそのまま発声すれば、きちんと音を拾ってくれる。

 このマイクは、形状のためか、かなり過敏な感度を持つように設計されているようで、声以外の雑音も全力で拾ってくれる。このためフルサイズのヘッドセット用マイクに比べるとマイクの音質は低め。とはいえ、ホワイトノイズが多く乗るというくらいで、発声内容の判別が難しくなるようなことはまずないレベルだ。十分に実用圏内である。

 このサイズで実用レベルのゲーミングヘッドセットが存在するというのはちょっとした驚きだ。全く苦もなく持ち運べる大きさなので、モバイル環境でオンラインゲームをプレイするような方には真っ先にオススメしたい。


この小さなナリで、ゲーミングヘッドセットとしての機能を果たしてくれる。小型マウスと組み合わせればポケットに入れて持ち運べるゲーミングデバイスセットが作れそうだ



■ ゲーミングデバイス界に素晴らしい選択肢が現われた。気になる人はドスパラへGO!

 というわけで、ドスパラで現在ラインナップされているROCCAT製品を全てご紹介してみた。気になる製品は見つかっただろうか?

 筆者は今回試用したなかでも、特に気に入ったのがハイエンドマウスの「Kone」と、マウスパッドの「Sota」、ケーブルアンカーの「Apuri」、そしてヘッドセットの「Kave」。つまり全てのハイエンドモデルを気に入ってしまった。今あるゲーミング環境を完全にリプレイスしてしまっても良いくらいである。正直、ここまでクオリティの高い製品がズラリと出てくるとは思っていなかったので、本当に嬉しい誤算だ。

 とくにケーブルアンカーの「Apuri」は、ケーブルの重みによるマウスへの影響が最小限になることで、1度使うともうこれが無い環境には戻れなくなるほどの威力。自作ケーブルアンカーも作ったことがある筆者だが、ここまでスタイリッシュにまとめられてしまうと、もうこれは買うしかない、という感じである。それに、メインで使うマウスのメーカーが何であっても、ROCCATのケーブルアンカーは生きてくるので、決して無駄にならない。

 それからヘッドセットの「Kave」は、サラウンド出力可能なサウンドカードでゲームをプレイしている方、それも夜遅くにゲームをするときなど、スピーカーから音を出すわけにはいかない方へ思い切ってオススメできる。なにしろアナログ5.1chをそのままサラウンドスピーカーで出力してしまう製品は珍しい上、総合的なクオリティでも満足いく出来だからだ。

 インイヤータイプのヘッドセットという選択肢も用意されているなど、ROCCATというゲーミングブランドは、他のブランドがやらないことを積極的にやっている感があり、本当に面白い。日本に本格上陸したことで、多くのゲーマーの方の選択肢に入ることになったのは本当によいことだと思う。皆さんも、気に入った製品があったら、ぜひドスパラで実際に試してみよう。これからのゲーミングライフに、確かな手ごたえを感じられることと思う。



(2010年 3月 1日)

[Reported by 佐藤カフジ ]