【連載第13回】あなたとわたしのPCゲーミングライフ!!


佐藤カフジの「PCゲーミング道場」


最強のPCゲーム配信システム「Steam」入門
~使い方の基本からオススメのゲーム紹介まで~


 ゲーム業界の「最先端」を走る、PCゲーミングの世界。当連載では、「PCゲームをもっと楽しく!」をコンセプトに、古今東西のPCゲームシーンを盛り上げてくれるデバイスや各種ソフトウェアに注目。単なる製品の紹介にとどまらず、競合製品との比較や、新たな活用法、果ては改造まで、様々なアプローチでゲーマーの皆さんに有益な情報をご提供していきたい。



■ 今回から「PCゲーミング道場」にタイトルを変えて、幅広いPCゲーミング情報をご提供

 弊紙ご愛読の皆様、当連載の名称が変わったことにお気づきだろうか? 今回より当連載はハードウェアだけじゃなく、ソフトウェアもカバーした、PCゲームシーン全般の情報を幅広くご紹介するコーナーに生まれ変わった。

 もちろん、各種デバイスの情報も引き続きご紹介していくつもりだが、やはりPCゲーミングの世界というのは、PCならではの柔軟性あふれるソフトウェアの数々を抜きにしては語れないものだ。そこで今回よりタイトルも「PCゲーミング道場」として、PCゲーム関連全般、誰も教えてくれない基本的情報から玄人向けのマニアックな情報まで、あなたのPCゲーミングライフを充実させてくれるに違いない様々なトピックをお伝えしたい。

Steamロゴ

 リニューアル初回となる今回は、基本中の基本ということで、PC用のゲームソフト配信サービスである「Steam」をご紹介したい。「Steam」は、ある程度海外ゲームに親しんだPCゲーマーなら誰もが使っている、と思われるほどメジャーな存在だ。登録ユーザーは全世界で2,000万人に達するとされ、PCプラットフォームにおけるゲーム配信サービスのデファクトスタンダードになっている。

 とはいえ、「Steam」は米国のゲームデベロッパーValveのサービスであり、日本国内には公式サポートを行なう代理店が存在しないので、誰かに教えてもらわないと「よくわからない」ものであるのも事実だ。筆者の身近な範囲にも、「海外のよくからんサービスにクレジットカード番号入れるのはどうもなあ……」と尻込みする人もいたりして、なかなか心理的障壁は高い。

 しかし、筆者としてはそんな人にこそ是非「Steam」を使って欲しいと思うのだ。筆者は2004年に「Half-Life 2」の発売と同時に「Steam」を利用し始めて今日に至るが、もはや手放せないレベル。PCゲームのパッケージを物理的に購入することが、ほとんどなくなってしまった。

 なぜなら「Steam」でほとんどありとあらゆるメーカーのPCゲームが手に入るし、一度買ったゲームは永久にどのPCにも即座にネットワーク経由でインストール可能で、パッケージ版のようなCD/DVDチェックとは無縁なので即座にプレイでき、ゲームの外箱が机の上にうずたかく詰まれてスペースを圧迫することもなくなったからだ。

 「Steam」によって筆者のPCゲーム環境は、まさにゲーム天国になった。というわけで今回は、世界最強のゲーム配信サービスのひとつである「Steam」について、どんなものなのか詳しくお伝えしよう。


■ 「Steam」ってどんなサービス?

Steam公式サイト。
http://www.steampowered.com/

 「Steam」は、2002年に米国でValveがスタートしたコンピューターゲームのネット配信、ライセンス管理、およびコミュニティのサービスだ。というと小難しく聞こえるが、イメージ的には家庭用ゲーム機における「Wii Ware」や「PlayStation Network」、「Xbox LIVE」みたいなもので、ネット経由でソフトを購入・ダウンロード・インストールできて、ついでにフレンドやグループといったコミュニティ機能がついているものだ。

 機能構成としては、同じく2002年にスタートしたXboxのオンラインサービス「Xbox LIVE」にもっとも近い雰囲気だ。「Steam」を作ったValveのCEO Gabe Newellが元MicrosoftのWindows開発者だったから、というわけではないと思うが、できることとその表現が似ているので、Xbox 360のユーザーならほとんど迷わず使うことができる。「Steam」には「実績」もあるし、最近、「Xbox LIVE」がゲームオンデマンドサービスを開始したので、ますます両者は似た存在になった。

 また、PCには他のゲーム配信サービスも当然存在するのだが、「Steam」はその中で先駆で、最も完成度が高く、広く普及しているので、ユーザー数が圧倒的に多い。その数は累計で2,000万人を超えているとされ、アクティブユーザー数だけに絞っても優に数百万人は日常的に利用しているようだ。今この原稿を執筆している段階で、「Steam」コミュニティ上に1,504,820人がオンライン接続している。

 それを反映して、「Steam」で配信されているゲームの数は、日ごと増える一方だ。2008年に世界最大手のゲームパブリッシャーであるElectronic Artsが「Steam」での配信を開始したことをはじめ、今ではActivision、Ubisoft、Eidos、2K Games、Atari、CodeMasters、LucasArts、Paradox Interactiveなどなど、大手ゲームメーカーのほぼ全てがゲームを配信するようになっている。いまや「Steam」で手に入らないゲームは、よほどマイナーなものか、Steamと覇権を競う「Games for Windows LIVE」を展開するMicrosoftのタイトルくらいのものだ。

 まだ「Steam」を利用してない方は、いちど公式サイトに行ってみよう。正式な日本国内サポートが行なわれていないわりにサイトがキッチリ日本語対応しているのに驚かれるかもしれないし、プレイステーション 3やXbox 360向けの人気タイトルが、PCゲームとしてSteam上で売られていることに意外な感じを受けるかもしれない。一瞥するだけでも、フルボリュームの大作からアーケードタイプのミニゲームまで、何でもアリのものすごいタイトル数である。


■ 「Steam」に登録してゲームプレイする方法

 ここでひとまず、「Steam」でできることの基本と、その使い方にについてまとめておこう。

はじめにアカウント作成。メールアドレスだけでOKだ
購入は標準的なWEBショッピングカート方式。支払い方法はクレジットカードかPayPalとなっている

・アカウントを登録する

 「Steam」は誰でも無料で利用できる。必要なのは、SteamクライアントとSteamアカウントだ。SteamクライアントはSteam公式サイトのトップページから入手できる。クライアントソフトを起動したらアカウントを登録。ユーザー名、パスワードを決め、メールアドレスを入力したら完了だ。ログイン後、購入したゲームの情報はそのアカウントに紐付けられるので、ログイン情報は大事に管理しよう。

・ゲームを購入する

 「Wii Ware」や「Xbox LIVE」などがプリペイドポイントによる決済が主流なのに対し、「Steam」は米ドル建ての現金決済が基本となっている。支払い方法として利用できるのはクレジットカードもしくはPayPal。国によっては「Steam」で使えるプリペイドカードもあるようだが、日本ではそういったサービスが行なわれていない。

 このため学生の方などは敷居が高く感じられるかもしれない。特にクレジットカードをネットで使うことに抵抗がある人もいるだろう。そういった人々のための救済策としてプリペイドサービスがあればいいのだが、ないのが「Steam」の痛いところではある。ただ、クレジットカードを使うのが怖いという方には、デビットカードという手段もある。

 なお、「Steam」ではよく、何らかのゲームを超格安でセールしていることがある。過去有名なものとしては初代「Half-Life」が1ドルで売られていたり、「Left 4 Dead」の半額セールをやっていたりということもあった。最近ではメーカーを問わず色々なゲームでダイナミックなディスカウントが行なわれていて、週末セールのような形で突然安くなったりするので見逃さないようにしよう。オンライン配信ならではの柔軟性だ。

購入したゲームは「マイゲーム」タブに一覧表示。ここからいつでもゲームを始められる
・購入したゲームをインストールする

 購入したゲームは即座に「マイゲーム」タブに追加され、ダウンロードが可能になる。その後、ゲームをアンインストールしても、購入情報はアカウントに記憶されているので大丈夫。何度でもインストールできるし、別のPCでログインしてインストールすることもできる。ちなみに複数のPCに同じゲームをインストールしても、ゲームを起動するにはSteamにログインしている必要があるので、プレイできるのは自分だけだ。

 筆者はネットカフェにて自分のSteamアカウントでログインして所有するゲームをダウンロード&インストールしてプレイする、ということをたまにやっているが、かつてのようにディスクを持ち運ぶ必要がないのはとても便利だ。また、インストールしたゲームのアップデートがリリースされた場合、パッチは自動で適用される。「Steam」を付けっぱなしにしておけば勝手に最新版になっているので、「Left 4 Dead」や「Team Fortress」のようなゲームでは、毎日のようにアップデートが行なわれることもあるが、全く手を煩わせることがない。


■ 「Steam」独自のフレンド機能、グループ、実績

ゲーム中はいつでもShift-TABキーでSteamのオーバーレイを呼び出せる。ここからフレンドやコミュニティの機能にアクセス
公式コミュニティの例。このほか無数の非公式コミュニティがあり、自由に作ることができる

 購入してインストールしたゲームは、パッケージ版のようなディスクチェックを必要とすることなく即座に起動でき、以後いつでもプレイできる。ついでに、「Steam」ならではの特色として、ゲームにSteamクライアント機能(Shift-TABでゲーム画面にオーバレイされる)が統合され、フレンド機能をはじめとする様々なコミュニティ機能が利用できる。

 フレンド機能は「Xbox LIVE」ライクなもので、ユーザー名あるいはメールアドレスを指定することで登録することができる。フレンド一覧スクリーンにはオンライン・オフラインの状態、プレイしているゲームといったステータスが表示され、ここからフレンドとのチャットを開始したり、ゲームに招待することも可能だ。

 グループ機能は、フレンドの集団バージョンといったもの。内輪の少人数のグループから、ゲームタイトル別、地域別の様々なコミュニティが永続的なグループとして作られており、所属しているグループメンバーのゲーム中の人数、各人が解除した実績などのイベント、はたまたメンバーが投稿したニュース、イベントスケジュールなどをSteamクライアント上で見ることができる。これを利用してゲームチーム、クランといった集まりにもよく利用されているようだ。

 また対応ゲームでは「グループサーバー」という機能があり、グループ内だけのマルチプレイマッチングを利用できる。これは「Left 4 Dead」コミュニティ(日本のコミュニティだけで9,000人近いメンバーがいる)などで大いに活用されており、いつでも国内の快適なサーバーでゲームができるのでとても便利だ。

・タイトルごとに利用できる機能の違い

「Left 4 Dead」のプレイデータページ。「実績」以外にも細かな統計が取られていてビックリする

 ちなみに全てのゲームで「Steam」が提供する全機能が使えるというわけでもない。基本的に「Steam」配信タイトルには、「Steam機能への対応度」に、「完全対応」、「半対応」、「未対応」という3タイプにカテゴリ分けできる。

 「完全対応」のグループでは、ゲーム中のSteamクライアント機能でフレンドをゲームに招待したり、ボイスチャットを利用できるほか、「Xbox LIVE」ライクな「実績」機能を装備。また一部のゲームでは、キーの設定などをSteamサーバーに保存してくれる「Steam Cloud」機能もサポートされる。

 これはValveのゲームや、「Fallout 3」、「Empire: Total War」といったビッグタイトルで実現されており、全体的に増加傾向にある。「Left 4 Dead」や「Team Fotress 2」に至っては、「実績」だけでなくゲーム内の成績が細かに統計され、Steam上で集計される機能までついているので驚きだ。

 「半対応」のグループは、ゲーム中にSteamクライアント機能の一部が利用できるタイプだ。「実績」がない、ゲームへの招待ができないなどで、かわりにそのゲーム特製の達成度指標やマッチングシステムを持っていることが多い。そして最後の「未対応」グループは、かなり強引にSteamから起動できるようにしたタイプのもので、Steamクライアント機能が呼び出せない、当然実績もないなど。昨年、一昨年前にいくつか見られたタイプだ(『Crysis』など)。

 どうせなら「Steam」でプレイできる全てのゲームに「実績」まで対応して欲しいものだが、まだ「Steam」に参入したばかりのサードパーティも多いので、完全対応はこれからといった状況だ。


Steam対応ゲームの「実績」はゲーム内からでも、SteamクライアントのWEBインターフェイスから「プレイデータを見る」を選択しても確認することができる。ちなみに「Team Fortress 2」の実績総数がすさまじいことになっているのは、プレーヤークラス毎に多くの実績項目が追加されたため。「Xbox LIVE」のそれに比べると、かなり自由だ



■ 「Steam」で手軽に楽しみたい! お手ごろ価格でガッツリ遊べるオススメタイトルを紹介

 なんとなく「Steam」の姿が見えてきただろうか? ここでは、これから「Steam」の利用を考えている方向けに、オンライン配信ならではのお手軽価格でガッツリ遊べる、新旧のオススメタイトルをご紹介したい。

 オンライン配信サービスとして先駆にあたる「Steam」では、フルボリュームのタイトルだけでなく、安価なゲームも多数そろえられている。その中には抜群の面白さを持つ大傑作のゲームがいくつも見つけられるのだが、ここでは絞りに絞って3作品をピックアップしよう。

 ちなみに、「Steam」で配信されている各ゲームには、複数の海外ゲームレビューサイトの評点を平均した「メタスコア」が付与されており、この数値がおおむね80を超えるゲームは、どれもかなりの遊び甲斐がある。得点ばかりにとらわれるのは選択の幅を狭めてしまうので危険でもあるが、目安として各タイトルの紹介に付記しておこう。また、筆者の独断で「お手軽度」、「ハマリ度」の5つ星評価を併せて示すので参考にしていただければ幸いだ。


【Trials2 Second Edition】
開発元:RedLynx
価格:9.99ドル (稀に劇的安売りアリ)
ジャンル:レース、スポーツ
Steam実績:25個
メタスコア:83
お手軽度:★★★☆☆
ハマリ度:★★★★★
特徴:シビアかつストイック、そして鬼の難易度

ブイブイーンと、無茶な地形を華麗に疾走するモト・トライアルゲーム
バランスを崩して「グシャッ」とクラッシュ。いちいち物理演算でリアルな動きをするので余計笑えてしまう

 「現代版エキサイトバイク」。本作を一言で表すなら、この表現しか見つからない。奇想天外な地形を踏破するモト・トライアルを、緻密な物理エンジンと素晴らしいグラフィックスで再現したゲームで、プレーヤーが操作するモトクロスバイクの繊細かつダイナミックな挙動がウリ。難易度は極めて高く、「ナメてかかると痛い目を見るぜ」という雰囲気がプンプンしてくる内容だ。

 システム的には、本作は横スクロールのバイクアクションだ。プレーヤーの操作はごく簡単で、アクセルとブレーキ、そして前後の体重移動だけ。カーソルキーだけ、あるいはゲームパッドで簡単に操作できる。ゲームの目的は、「EASY」、「MEDIUM」、「HARD」と区分けされた数十の各トライアル・コースをクリアすることだ。

 極めて単純なゲームではあるのだが、恐ろしく奥が深い。アクセル・ブレーキと体重移動だけで急な坂道を登り、大ジャンプ。ありえない段差を、後輪をぶつけながら乗り越え、今度はタイヤ1個分の足場をウィリーしたまま跳ねていく。ちょっと姿勢制御を誤るだけで、クルリと回転して大クラッシュだ。

 「EASY」レベルのコースなら、数分の練習でクリアできるようになるだろう。しかし「MEDIUM」、「HARD」と駆け上がっていくにつれて、だんだんとコースのつくりが巧緻なものとなり、プレーヤーを悩ませる。失敗しても即座にリトライが可能なのだが、あまりにも難しいので、ひとつのコースで300回リトライしてようやくゴールした、というのも日常茶飯事だ。これぞ「無理ゲー」というやつである。

 しかしそれだけに難しいコースをクリアできたときの達成感はひとしおだ。バイクの挙動も気持ちよく、ミスを減らしてタイムアタックするのもすこぶる楽しい。世界ランカーのリプレイを見れば、山頂の高さに身震いすることだろう。そして、微細なアクセルワークと体重移動のコンビネーションを鍛え、あらゆるトラップを乗り越える、幸せな日々が続くのだ。

 少々ストイックすぎるゲーム性を持つため「お手軽に」遊ぶというわけにはなかなかいかないが、いったんやり始めたら、その後は限界までのめりこんでしまう。そんな凄みのある傑作だ。無料デモ版があるので、是非いちど試してみよう。


「HARD」以上のコースは、もうプレーヤーをいじめているとしか思えないほど無茶苦茶な地形が続出。それでもリトライの嵐を繰り返すうちにだんだんと腕の上達を感じ、ますますハマってしまうのだからタチが悪い

慣れてきたらこんな視点でもプレイできる。足元が見えないので不安でたまらない。だが、それがいい


【World of Goo】
開発元:2D BOY
価格:19.99ドル
ジャンル:物理パズル
Steam実績:なし
メタスコア:90
お手軽度:★★★★★
ハマリ度:★★★★☆
特徴:心地の良い頭の体操、意外なアクション性

「Goo」をつなげてゴールへ導く、それだけの単純なゲームなのに、実に遊ばせてくれる
ゴール時になるべく多くの「Goo」を余らせておけばハイスコア。しっかりと最適な構造を組み立てよう

 これは、北米版「Wii Ware」でWii版が配信されているパズルゲームのPC版だ。なにをするゲームかというと、互いに触手を伸ばして連結構造を作る「Goo」という“玉”をマウスで動かして適切な構造を作り、ゴールのパイプまで「Goo」たちを導くというものだ。

 物理演算をふんだんに取り入れた挙動で、「Goo」を連結して作った構造は、自らの重みによってゆがんだり、足場が不十分なら倒れたりする。その頭に入れた上でゴールまでのみちのりを「Goo」たちで連結していくのだが、あの手この手のステージ構造、「Goo」の数の制限、そして数々のギミックがプレーヤーの頭を悩ませる。

 基本的には、「Goo」の連結が作る全体の構造、重量バランス、強度、様々な材料を考えながら次なる「Goo」を配置していく。まるで、最低限の資材しか与えられずに巨大建築物を作ろうとする建築家のような気分だ。

 例えば、高所まで到達する「Goo」のタワーを建てるときには、中間地点の「Goo」を引っこ抜いて頂点付近にまわす数を稼いだりもできる。その際に構造強度が充分に保たれるようにするのは、幾何学的センスを問われる良質のパズルだ。あるいは、中空で横方向に長く伸びる構造を作るときには、重力によって基本構造が倒れてしまわないよう、逆向きにカウンターバラストを与えるための構造に配置する。

 そうこうしているうちにステージが進み、重力方向にぶらさがるだけの「水滴方Goo」、壁に粘着できる「緑色のGoo」、上向きに引っ張ってくれる「風船」など、様々な材料が登場し、それにあわせた戦略を練る必要があるのだ。

 特に秀逸なのは、ステージごとに全く違った遊び方をさせてくれる、バリエーションの広さ。ひとつのステージそのものが、巨大なギミックを構成していたりして、自動機械のように「Goo」が一定の地点に誘導される仕組みや、触れると連結構造が壊れてしまう障害物など、プレーヤーをとことん楽しませてくれる。

 価格が19.99ドルとそれなりの値段ではあるが、本作から得られる驚き、楽しさ、達成感は非常に大きなものだ。メタスコア90点と、世界で極めて高く評価された作品でもあり、どなたにも安心してオススメできる作品だ。


各ステージいろいろな構造と仕掛けでプレーヤーを楽しませてくれる。自重でつぶれる「Goo」たちのバランスを見ながら、ひとつひとつ構造を継ぎ足していくのがとても楽しい

マップ全体の構造が、工夫の限りを尽くして作られている。何がどうなっているのか把握してから作戦を立て、なけなしの「Goo」をつなぎ合わせてゴールへと導く。気持ちのよい頭の体操になるだろう

【Plants vs. Zombies】
開発元:PopCap Games, Inc.
ジャンル:ストラテジー、アクションパズル
価格:9.99ドル
Steam実績:12個
メタスコア:88
お手軽度:★★★★☆
ハマリ度:★★★★☆
特徴:戦略的な深みと展開の意外性

植物VSゾンビ。庭師としてゾンビの侵略を撃退するという不思議なゲーム
ステージの最初には、たくさんの植物からステージの戦略にあわせた組み合わせを選ぶ。とても悩む

 なんだか見た目はショボそうだけど、やってみると面白い、そんなゲームとの出会いは嬉しいものだ。「Plants vs. Zombies」はまさにそういった作品のひとつ。本作はパズル性のリアルタイムストラテジーとでもいうべき作品で、プレーヤーは「ゾンビの来襲から自宅を守るため、特殊な植物を手に奮闘する庭師」という、よくわからない設定である。

 各ステージは正方形のマスで区切られた「庭」である。プレーヤーはここに、与えられた「植物」の手札を配置し、画面右側から歩いてくるゾンビを撃退するのだ。「植物」には一定ダメージの「種」を発射する基本的な攻撃型植物や、ゾンビの攻撃を一定量引き受ける「クルミ」的なものなど、全数十種類もある。

 対するゾンビは、序盤のステージこそゆっくり歩いてくるだけで、簡単に撃退できるものの、それは序盤だけ。ステージが進むごとにゾンビはバリエーションが増え、タフなやつが出たり、棒高跳びよろしく「植物」の前衛を飛び越えて進入してくるやつが出たり、それらがいっぺんに大量に出てきたりする。

 しかもプレーヤーには、いちどに使える植物の種類の制限というのがあって、問題をややこしくしている。パックンフラワーよろしく近づいたゾンビを食べてしまう植物は一見強そうだが、食べたゾンビを消化するまで長時間無防備になるなど一長一短である。したがってその背後に弾を発射する植物を複数配置し、その前面には壁役の植物を配置。そういった形で各種の植物を組み合わせた防御網を敷くのである。

 また、植物を配置するためには「太陽」のパワーが必要だ。植物「ひまわり」は一定時間毎に太陽のパワーを発生するので、なるべくたくさん配置したい。しかし、ひまわりを植えすぎて防御がおろそかになって、ゾンビの圧力に負けて全滅なんてこともありがちだ。そこが悩みどころであり、面白い。

 本作は数十種類の植物、おなじくらいの種類の個性的なゾンビたち、そしてバリエーションに富んだステージ構成などから、非常に遊び応えのあるゲームに仕上がっている。ちょっと試してみるか、というノリで遊び始めたら、一瞬で数時間経っていたというタイプだ。続きモノのメインゲームモードに疲れたら、趣向を変えた各種ミニゲームでリフレッシュできる。総合的にボリューム感のあるゲームになっており、価格以上に遊べるのは間違いない。


素朴なルールだが戦略は幅広く、後半のステージになると大量のゾンビに対抗するために各種植物の設置タイミングも重要となり、アクション性が加味されてますます手ごわくなってくる

ステージクリアごとに得られる新たな植物や、ショップで購入できる装備などコレクションアイテム、多数のパズルゲームなど、サイドディッシュ的な要素もバランスよく用意されている


■ ゲーム界の潮流としての「Steam」

 ネットの接続さえあれば簡単にゲームが購入できて、即座に遊べる。プレイするたびにゲームのメディアをPCに挿入したり、パッケージを引っ張りだしてくる必要もない。便利な時代になったものだ。最後のトピックとして、「Steam」に象徴される世界の変化について簡単に論じておきたい。

 「Steam」に代表される、オンライン配信の仕組みは、現在では「Wii Ware」、「PlayStation Network」、「Xbox LIVE」など、各ゲームプラットフォームでも一般化しつつある。機能的にも切磋琢磨の状態にあるが、フルバージョンのゲームを片っ端からラインアップするという、流通破壊を実行しているのは「Steam」だけだ。

 オンライン配信は、ゲームメーカーにとっても大きなメリットがある。物理的な流通コストが消滅するため、粗利益が増えるだけでなく、物理制約がないため簡単に国境を越えて、ワールドワイドのビジネスができる。

 また、店舗の限りあるシェルフを圧迫することがないので、アーケードタイプのゲーム、あるいはDLCといった、これまでには成立しにくかった低価格・多品種の市場が作られる。人気タイトルが品薄で機会損失を生むこともない。この特性は、誰の目にも明らかな新たなビジネスチャンスになっている。まさに革命的だ。とはいえ、これには流通・小売業界と良好な関係を築いてきた大手パブリッシャーにとって抵抗があるという見方もできる。

 現状で「Steam」がどれくらいのビジネス規模になっているかは推測の域を出ない。ゲーム販売本数はValveにとって門外不出のデータらしく、これまで具体的な数字が公表されたことはないからだ。しかし、各ゲームのコミュニティメンバー数などから考えるに、既存の流通・小売に迫り、世界のPCゲーム販売における主流の位置に近づいている、と言って間違いないと思う。

 この流れはコンシューマー機の世界でも加速しつつある。特に顕著なのは「ゲームオンデマンド」サービスを開始した「Xbox LIVE」や、ゲームをオンライン配信する予定の「PSP Go」といった最新のプラットフォームでの変化だ。それらに共通しているのは、強力な「プラットフォームホルダー」が牽引している、ということになるだろう。

 これまで、PCゲーム界には全体を牽引できる強力なリーダーが不在であった。しかしいまや「Steam」がひとつの強力なコンテンツプラットフォームとなり、Valveが「プラットフォームホルダー」になりつつある。やがて、本格的なゲームの流通革命が起きるかもしれない(もう起きているという見方もできる)。筆者はその目撃者となりたいので、これからも「Steam」に注目していきたいと思う。

□Valve Softwareのホームページ
http://www.valvesoftware.com/
□「Steam」のホームページ
http://www.steampowered.com/

(2009年 8月 21日)

[Reported by 佐藤カフジ]