ゼロから始める「League of Legends」
ゼロから始める「League of Legends」
第9回:「ストV」綾野APも参戦! 社会人向けゲーム大会「A5G」に参加するという楽しみ方
2016年7月14日 23:43
「League of Legends」(以下「LoL」)を楽しむにあたっては、1人で野良マッチングに臨むもよし、友人やコミュニティの仲間と一緒に遊ぶもよしであるが、より大きな規模で楽しむ試みとして「自主的に大会に参加する」という選択肢がある。
「LoL」の大会といえば、ライアットゲームズの公式大会としてプロチームが競う「League of Legends Japan League」(以下LJL)が開催されているが、こちらは日本が誇るプロプレーヤーたちの卓越したチームプレイを観戦して楽しむ方向性だ。その一方で、一般の団体や企業が自主的に開催する大会も数多く実施されており、プレーヤー同士の交流の場となっている。
「LoL」の遊び方、楽しみ方を筆者なりに説明してきた本連載だが、ゲームプレイに関する部分、具体的な遊び方や楽しむためのコツの紹介は、前回までで一旦区切りとし、今回は「いかに『LoL』を楽しむか」に焦点を当てて、その1つの形として、eスポーツイベント「After Five Gaming」(以下A5G)を掘り下げて紹介したい。
「A5G」は、“競技”としてのコンピュータゲーム、いわゆる「eスポーツ」を業務時間後(アフターファイブ)に楽しむべく開催している社会人チーム向けのトーナメント大会だ。例えるならば「草野球のeスポーツ版」と言えばわかりやすいだろうか。
社会人向けを謳う通り、参加チームは全員、会社勤めの社会人で構成されている。eスポーツを切り口として、参加者(社)同士の交流を図っており、公式Webサイトの紹介文によれば、「居酒屋やジムに行くようにちょっとe-sportsしていこう、お酒を飲みながらe-sportsを見よう、e-sports友達に会いに行こう、そんな習慣を日本で根付かせたいという想いから生まれた」としている。現在は第3回まで開催済みで、すでに第4回の開催も計画されている。競技タイトルとしてはいずれも「LoL」が採用されている。
今回は6月17日(金曜日、day1)と24日(金曜日、day2)の2日間にわたって開催された第3回大会の模様をお伝えするとともに、主催者、出場者、一般来場者のそれぞれに対し、「LoL」とeスポーツを取り巻く現状についてお聞きした。
終業後に楽しむ大人のゲームイベント
A5Gの会場は、秋葉原にあるeスポーツ専門施設「e-sports SQUARE AKIHABARA」。会場時間の17時30分になると、その日の業務を終えた(切り上げた)出場選手や観戦者が集まってきた。ある程度人が集まると、初対面の参加者同士を共通の知り合いが紹介し、名刺交換する様子が見られたのは社会人リーグならではの光景だろう。
第3回の出場チームは、PCパーツショップ「ARK」のショップ店員からなる『TEAM ARK GAMING』、eスポーツアイドルユニット『SunFairies』、株式会社カプコンの社員チーム『Shinjuku Fighters V(^-^)』、プロゲーミングチーム「DetonatioN」の運営会社『Sun-Gence』、システム開発やeスポーツ関連事業を展開する『TEAM APRIL KNIGHTS』、e-sports SQUAREの運営会社『SANKO』の全6チーム。過去にはAiming、ツクモ、デジタルハーツ、ドワンゴ、ロジクールなども出場したことがある。ちなみに本イベントはライフカード株式会社がスポンサーについており、優勝チームにはVプリカ10万円分が贈呈される。
A5Gの模様はe-sportsでも中継されており、開演時間となる18時30分には全チームが集まっているはずが、業務が押して試合開始の19時ギリギリに選手が到着するなどのハプニングもあった。
チームバランスを保つローカルルール
アマチュアの大会とはいえルールはきっちり練られており、不公平感がなくなるよう調整されている。A5Gのルールの中でも特徴的だったのは、チームメンバーのランクを制限するポイント制だ。
参加メンバーにはブロンズが1ポイント、シルバーが2ポイントといった具合に、サモナーランク毎の「個人ポイント」が設定されており、最大値はチャレンジャーの7ポイントとなっている。これとは別に各チームには「チームポイント」が設定されており、これは15ポイントで固定。出場するためには個人ポイントの合計が15ポイントを超えないよう調整する必要があり、圧倒的な腕の差が出にくくなっている。このように主催側が工夫したローカルルールの存在も、アマチュア同士が楽しむ草野球的な集まりにはつきものであると同時に必須であり、ゲームを成立させるための重要な要素と言えるだろう。
アマチュア試合ならではの試合展開
A5Gはトーナメント形式の大会であるが、今回は出場チームが6チームだったので、各ブロックに1チームずつシードが存在していた。day1は予選として2試合、day2にはday1の勝利チームとシードの試合が平行して1試合ずつと、決勝戦がそれぞれ行なわれた。
試合内容についてはアマチュアの試合だけに具体的な内容は割愛するが、お互いこの日のために練習を積んできており、しっかりとした意思の疎通や連携の意図が感じられるプレイが見られ、ファインプレイが出た際には会場から歓声が上がるなど、会場にいるほぼ全員が試合の流れやプレイの意味を理解していることから出る一体感は、プロの試合を楽しむのとなんら遜色ないものであった。
もちろん、アマチュアの試合ならではの見どころもある。参加メンバーの好みと得手不得手に基づいたとみられる、メタとはほぼ無関係なバンピックや、危なっかしいジャングリング、あるあるな感じでやらかすFailなど、プロの試合ではそうそう見られない洗練されていない感じも、飲酒のノリとあいまって場の盛り上げに一役買っていた。
また、大会はLJLの運営を手がけるSANKOが主催することもあって、試合の実況と解説も行なわれている。第3回の実況はブロードキャスターのkatsudion氏、解説はRabbitFive(現7th heaven)に所属していた元プロプレーヤーのRainbrain氏がそれぞれ担当しており、的確な実況で試合の様子を伝えるとともに、軽妙なトークで会場を盛り上げていた。
ちなみにday2の様子は現在でもTwitchチャンネルでタイムシフト視聴することができる。
A5G参加者インタビュー “eスポーツ”にかけるそれぞれの想いとは!?
さて、ここからは、主催者、出場者、一般来場者のそれぞれのインタビューを掲載していく。会場のオープン時間やタイミングの都合もあり、すべての参加者に話を聞くことはできなかったが、各々が持つeスポーツや「LoL」への思いを伺いことができたと感じている。
一般来場者(インタビュイーの希望により仮名)
・A氏(仮名)
――A5Gへの参加は初めてですか?
初めてです。
――A5Gの観戦に来た経緯はなんですか?
参加チームの取引先という繋がりです。
――「LoL」のプレイ経験はありますか?
少しだけ、たしなむ程度ですが。実況・解説で言っていることはわかります。やっぱりこういうイベントの会場だと、みんなが共通でネタを理解できるので、それだけでも楽しいですよね。
――イベントに参加する魅力とは何でしょうか?
なかなかこういう場もないので、家で動画配信とかを見て一人で楽しむよりは、みんなで盛り上がって騒げるライブ感が良いですね。また来たいです。
・B氏(仮名)
――「LoL」のイベントに参加するのは初めてですか?
いいえ。今まで、「LoL」に関連するイベント、例えばLJLの決勝戦などには何度か観戦に出かけたことがあります。
――「LoL」のプレイ経験はありますか?
あることはありますが、プレーヤーとしてはほぼ初心者で、どちらかと言うと試合を観るのが好きですね。DetonatioNを応援してます。今日はLJLの試合もチェックしつつ、A5Gに参加しました。
――プレイ経験が浅いということですが、用語は勉強されたのですか?
がんばって憶えました。やってる人しか使わない用語も多いので、興味はあっても、そこが結構高いハードルになってるとは思います。ハードルを超えれば問題なく楽しめるんですけどね。
――A5Gのようなeスポーツイベントについて、どう思いますか?
普通のスポーツで勝負するとなると、どちらかというと近い年代の人が集まってプレイするイメージがあります。その点では、eスポーツの方がより年齢や世代を超えて遊びやすいところが良いと思いました。
――ゲームを競技と捉える“eスポーツ”についてはどう思いますか?
業界としては盛り上がっているのですが、一般の方にまでこの熱が伝わっているかというと疑問ですよね。まだ“知ってる人は知ってる”というレベルで、温度差は感じてしまいます。日本ではゲームって、どこかで「子どもの遊び」というイメージが拭いきれなくて、そこが大きい壁だと思います。
その壁を超えるにはどうしたらいいかはちょっと結論が出てないんですが、もっと選手個人やプロチームが注目されたり、マスメディアにももっと大きく取り上げられるきっかけが必要なのかなとは思います。
出場者
・SunFaireis:コーチ土井優希(yunnyunn)氏
――A5Gに参加された経緯を教えてください。
SunFaireisの結成にe-sports SQUAREさんが関わっているという関係もあるのですが、直接の経緯としては「大会をやるので是非」とお声がけいただいたのがきっかけです。メンバー全員、A5Gに出場するるのは初めてです。
――ゲームを競技と捉える“eスポーツ”についてはどう思いますか?
子どもの頃、ずっとゲームをしていると、よく親に怒られましたよね。それはなぜかというと、将来の仕事に直接結びつかないからだと思うんです。でもそれって野球とかサッカーでも同じことで、プロを目指すにしても、勉強の時間を犠牲にしてスポーツに打ち込むわけです。結果としてプロとして食べていける人は一握りですが、それはゲームでも同じだと思います。
一般的なスポーツとゲームは色々な面で共通していて、得点を競い、勝敗をつけますよね。それに見ていて楽しく盛り上がれるっていう点でも同じです。野球やサッカーが将来に繋がるものであるとするならば、将来に繋がるパスがあるならば、ゲームも一般的なスポーツと同じように社会に認められるべきだと思います。なので、コンピューターゲームがスポーツとして認められるようになってきているのは、歓迎したい流れだと思います。
――韓国や台湾、欧米諸国に続いて、日本でeスポーツが普及するには何が必要だと思いますか?
今は元からゲーム好きな人たちが「これはスポーツだ!」と言っている段階で、まだ周りの人たちは「そうなの?」とキョトンとしているような状態です。これを変えていくためには、「ゲームって、ほかのスポーツと一緒なんだ!」とみんなが思うようになるための、何らかきっかけが必要だと思います。
――A5Gのようなアマチュア社会人リーグならではの特徴は何でしょうか?
出場者が、それぞれ自分の好きなチャンピオンを選んで戦うところですね。プロのシーンでは見られないようなチャンピオンの選び方をして、それでいてきちんとチームワーク良くプレイしているところ。ある種の緩さ、洗練されてなさ。これがひとつの特徴だと思います。
――アマチュアのイベントに参加する醍醐味はどのようなところにあると思いますか?
一言でいえば「この場でしか味わえない臨場感」ですね。例えば一人で、動画配信経由で見ているだけだと、ファインプレイを見ても「ふーん」くらいで済ませてしまうのですが、これがライブだと、ちょっとしたシーンでも大きな拍手が起こったり、会場全体の雰囲気がはっきりと盛り上がるんですよね。熱くなれる。これにつきます。
――今回、A5Gには初めて出場されたということですが、実際に出場してみてコーチとして思うところはありますか?
みんなまだまだだな、って感じですね(笑)。でも、メンバーのみんなにはまずゲームを楽しんでほしい。その上で、戦術上どうしてこの行動が有利なのかという根本的な部分を教え込むようにしてます。そして、その試みはいまのところ成功しているように思える。今回は残念ながら敗けてしまいましたが、もし次があれば、今度は優勝を狙っていきます。
――今後、eスポーツ関連イベントをどのように変えていきたいですか?
いま私は、SHOW TIMEというeスポーツのパフォーマンス集団に所属していて、イベントを仕掛ける側にいるのですが、現状、こうしたeスポーツ関連のイベントって、運営側の顔ぶれが毎回ほとんど同じなんですよね。例えば実況・解説を担当する人も、毎回変わり映えしないんです。選手以外のところで、新しく参入しにくい空気がある。
でも「自分主催のイベントをやりたい」とか「実況・解説してみたい」という人だってたくさんいるはずなんです。だから私はこれから、イベントを主催する側として、そういった新しい人たちを積極的に巻き込んでいける環境、育てていける環境を作っていきたいと考えています。
こういうイベントって、参加する前は「参加していいのかな?」と迷う部分もあると思うのですが、深く考えずに気軽に参加してほしいですね。人が人を呼ぶというか、人が集まれば、ほかの人ももっと集まりやすくなると思うので。
・TEAM APRIL KNIGHTS:岡持洋介氏(株式会社エイプリルナイツ E-sports事業部統括マネージャー)
――まずは、エイプリルナイツさんのeスポーツ事業について教えてください。
基本的なスタンスとしては、「eスポーツを広めるためにイベントを多く仕掛けられる集団でありたい」と考えています。具体的にはオンライン/オフラインを問わず数多くのイベントを実施し、またその模様をストリーミング配信することで、eスポーツの認知を拡大したいと考えています。
――具体的な施策としては、どのようなものを展開しているのでしょうか。
弊社の「SHOW TIME」というチャンネルで、月に2本ほど「LoL」の大会を開催しています。また、ゲームをテーマにしたバラエティ番組も配信しているほか、オフラインイベントも多く仕掛けています。
――今回のA5Gに参加された経緯を教えてください。
弊社のチームは前回の「LoL」の大会でも優勝を勝ち取っていますので、出ないわけにはいかないだろうと(笑)。eスポーツ、特に「LoL」のイベントを主催している事業者としては、負けられない戦いだろうという認識です。
――ゲームを競技と捉える“eスポーツ”についてはどう思いますか?
一般層への認知をより拡大すべきと考えています。とかくプロの舞台が注目されがちなのは致し方ない部分もあるのですが、プロリーグほど尖った世界ではなく、いまだeスポーツを経験したことのない人たちが、入ってきやすいような、競技人口の裾野が広がるような環境づくりが重要です。弊社が事業として打ち出しているイベントは、そのための施策の1つです。
――A5Gのようなアマチュア社会人リーグならではの特徴は何でしょうか?
なんといっても、色んな人とお知り合いになれるところですね。この緩い空気でBtoBのお話ができるという部分は貴重です。楽しく、仲良く遊べる"コミュニケーションツール"としてのゲームの側面が活きる環境ですよね。これがもしももっと大きな規模であれば、例えば"営業案件をかけて勝負する"といった展開もできるかもしれないですよね(笑)。
――実際に出場してみての感想をお聞かせいただけますか。
程よい緊張感を味わえるというのと、人前でプレイするというのは、やはりeスポーツに関わるメンバーとして良い経験になったのかなと思います。
――ほかのタイトルにない「LoL」の魅力をお聞かせください。
一緒にプレイする中で、その人の性格が見えてくるところです。まず、使うチャンピオンで性格が出ますよね(笑)。無難に堅実にプレイする人もいれば、やるかやられるかの勝負が好きな人もいます。
「LoL」は一人だけ上手くても試合には勝てないゲームなので、戦術を考えられるチームワークが鍛えられるところも魅力です。仕事でも、誰かが死にそうだからフォローするとか、そういうこともありますからね。最終的に勝てばいいよ、という。
――今後、A5Gのような“社会人リーグ”に関して望むことがありましたら教えてください。
今回は"社会人リーグ"という切り口ですが、弊社としては、もっともっと別の切り口でイベントをやってほしいと考えています。学生を絡めていいですし、ゲームの開発会社が自社タイトル外のタイトルで勝負してもいい。eスポーツという概念がより広がるためには、企業同士が手を組んでどれだけ一緒にやっていけるかを考える必要があるし、まだまだやれることはたくさんあるはずです。
「上手い上手くない」ではなく、まずは色んな立場の人に参加してほしいですよね。イベントは顔を見せる場でもあるわけですし、ご挨拶できるというだけでも十分です。まずは雰囲気を知っていただくことで第一歩を踏み出していただくことが大事だと思います。
・Shinjuku Fighters V(^-^):綾野智章氏(「ストリートファイターV」アシスタントプロデューサー)、IyAmAyI氏(同企画)
――A5Gに参加された経緯を教えてください。
綾野氏:僕がA5Gの存在をネットで知って、東京オフィスの「LoL」プレーヤーに声をかけたのがきっかけです。
IyAmAyI氏:昨年からA5Gの存在は知っていて、個人的には参加したかったのですが、なにぶん新人なもので、当時は会社の名前が出てしまっていいものなのか、僕の一存では決められなかったので参加を見送ったのです。今回は綾野さんにお声がけいただいたので、是非、ということで出場しました。
――ゲームを競技と捉える“eスポーツ”についてはどう思いますか?
綾野氏:まず全体的に、最近はeスポーツ業界全体が盛り上がっているな、という印象を受けています。僕らは格闘ゲームを作っていますが、ほかのメーカーさんはFPSやカードゲームなど、いろんなジャンルで勢いのあるゲームを出していますよね。僕はその盛り上がりを象徴するひとつのキーワードとして“eスポーツ”という言葉があると思っています。
eスポーツのひとつの側面としては、プロゲーマーの存在も象徴的ですよね。今はゲーム業界全体と、ゲーム業界以外の人たちが集まって、プロゲーマーの社会的地位を向上しようと色々頑張っている。それは僕個人としても応援したいし、メーカーとしても後押ししていかなきゃいけないと思うことです。
僕もかつては“プロゲーマー”という存在に若干の戸惑いはあって「ゲームで人生を狂わせてしまってもいいのか?」と思ってたのですが、考えてみれば僕自身もストリートファイターが好きでカプコンに入社したので、すでに自分が人生狂わされてるんですよね(笑)。だからまあ別にアリなのかな? と思うようになりました。
いま、プロゲーマーの社会的地位が上がれば、将来的に「プロゲーマー」という職業が確立します。これは若い世代にも繋げていきたい文化だと考えています。
――A5Gのようなアマチュア社会人リーグならではの特徴は何でしょうか?
綾野氏:まず、カプコン内には“eスポーツ部”という部活があって、今回は部活動という形でA5Gに参加しています。業務の一環として報告書も書くんですが、会社的にまるで仕事をしているかのように参加できるので、「LoL」に限らず、こういった活動は是非続けていってほしいなと思います。
また、近しい業界の方と顔を合わせる機会でもあり、今日もたくさん名刺交換をさせていただきました。せっかく「LoL」が繋いだご縁ですので、こうしたイベントをきっかけに、素敵なコラボが生まれてくれたらいいなとも思いました。まあ、もうちょっと“社会人リーグ”としてのカラーを押し出してほしいな、とは思いますね。
――実際に出場してみての感想をお聞かせいただけますか。
IyAmAyI氏:僕も含め、普段から人前でプレイする機会がないので、緊張してしまったこともあってか、チームとしても結果的に受け身なプレイになってしまったのが悔やまれるところです。ただ、勝負のターニングポイントになるところでミスをしてしまうまではかなりいい感じに試合を展開できていたので、次があれば是非また参加したいと思います。
綾野氏:僕はもう人前に出ることには慣れきってしまっていますが、彼の言うとおり“緊張する舞台”を経験することは人生経験という意味でもいいことだと思います。
今回は当社の社員でしたが、例えばeスポーツの日本人選手を世界で活躍させるためには、どんな小さな舞台でも、人前に出ることに選手を慣れさせないといけないかなとは思います。だから小さくてもいいからどんどん大会を開催していって、また規模も大きくしていって、結果的に世界大会の大舞台でも平常心で勝負できるようにしていくことはとても大事なことです。
――ほかのタイトルにない「LoL」の魅力をお聞かせください。
IyAmAyI氏:目的を持ってみんなで動けるというのが面白いなと思っています。僕は元々FPSをたくさんプレイしていたのですが、FPSって個人の技能が結果に残りやすい側面がどうしてもあったのが気になっていました。「LoL」の場合は一人が弱くても、周りが補えば巻き返せる。チームプレイが活きる点を魅力に感じました。
綾野氏:格ゲーにはない概念がいっぱい出てくるところですね。僕は長いこと格ゲー勢だったので、1対1のレーニングを重視して考えがちなんですが、ゲーム全体を通して見ればそうではない。例えばダメージ交換がどうとか、ミニオンのラストヒットだとか、ビルドはこうした方がいいとか、バンピックだとか。そういったコミュニケーションと知識を活かすストラテジーの面白さは、格ゲーにはない魅力だし、僕にとってまるで新しい体験でした。
とはいえ、例えばトップレーンやADCのように個人芸が光る局面もありますよね。そういうロールが得意なプレーヤーさんは、逆に個人技の良さを解ってもらえると思うので、是非格闘ゲームにも手を出していただきたいなと思っています(笑)。
また一旦格闘ゲームから離れてみると、「『ストリートファイター』もこうしたらいいんじゃないか」と思うこともたくさんあるんです。格闘ゲームとMOBAとでは文化が違うので、違うコミュニティに入ってみると“違うこと”の面白さが感じられました。
――今後、A5Gのような“社会人リーグ”に関して望むことがありましたら教えてください。
綾野氏:今はまだ、参加者のほとんどがゲームやPC関連業界にとどまっていると思うのですが、そうではなくて、もっと別の業界の方にも参加していただきたいですよね。
「LoL」をプレイしている方のすべてがゲーム業界関係者というわけではないはずです。そこでこそ生まれる面白いコラボもあるはずですし。それって、業界の活性化どころか、日本経済の活性化にも繋がりうるんじゃないかとさえ思います。そうなるようにしていきたいです。
主催者
・e-sports SQUARE AKIHABARA店長 本田亮輔氏
――改めて、イベントの趣旨をお聞きします。
サラリーマンが仕事帰りに行く、ダーツやビリヤードといった選択肢の中に“eスポーツ”を加えたかったのです。そしてその先に、社会人リーグを発生させたいと考えました。
――イベントの成り立ちを教えてください。
日本でeスポーツがより認知されるために必要なものはたくさんあると思うのです。人もいなければ宣伝も足りない、政治や経済界、そして"大人"の理解も足りない。ひとつひとつの課題をクリアしていく中で、会社組織の中で決済権を持つ方々の理解を得る必要があると思いました。そのためには企業から参加してくださるかたの活躍できる場を提供することから始める必要があります。
その方法は、参加者をステージに上げて、演出すること。企業PRになっていることを演出することを、ちゃんと見せることです。
それを見た上長の方々が、「彼/彼女が頑張っているなら、会社としてバックアップしよう」と思ってもらえるような流れをA5Gでは作りたいと考えています。また、根本はeスポーツを拡げるなかで、企業の「味方」「仲間」を増やしていくことがA5Gの目的です。
――ゲームを競技と捉える“eスポーツ”についてはどう思いますか?
SANKOのeスポーツ事業部としては「ゲームをひとつのスポーツエンターテイメントにしよう」をスローガンに掲げています。私としては、eスポーツとは何かと訊かれたときに、ゲームがサッカーや野球と同じように、スポーツエンターテイメントとして成立している状態と答えたい。その要件は、選手がいて、生活している人がいて、応援者がいて、観戦者がいること。そして観戦者の中に、熱狂と感動があることだと考えています。まず、そうした状況を作り出すことが、日本でeスポーツを広めることだと思っています。
――海外と日本における“eスポーツ”普及状況の違いは何なのでしょうか。
PCの普及率や回線というインフラの面で言えば、日本は問題ないと思うんですよ。eスポーツが普及している海外と日本の決定的な違いは、「社会に承認されていること」が大きいと思います。
――eスポーツが社会的に承認されるためにしてきたこれまでの活動内容について教えて下さい。
大きく分けると2つあります。まずは大会運営。代表的なのはLJLですね。そしてe-sports SQUAREの運営です。
このうちe-sports SQUAREに絞って話をすると、最重要視しているのは「スタッフを育てること」。今日、A5Gを運営しているスタッフは全員e-sports SQUAREのスタッフです。eスポーツを体感できる場所は、ほかのスポーツに比べて圧倒的に少ないので、コミュニティリーダーになれる人間をここで育てているのです。この「e-sports SQUARE」という場所が中心となって、人と人が繋がれる場所を作りたいと考えています。
――大会の競技として「LoL」を選択した理由とは何でしょうか?
企業の中で理解者を増やすことが重要なので、チームファイトがあることはひとつの選考基準でした。また、絶対的に「LoL」プレーヤーが多いことも決め手の1つですね。
――これまで3回開催しましたが、参加者からのリアクションはどうでしたか?
おかげさまで、A5Gで優勝することを目的に活動していると話してくださる参加者さんがいらっしゃるようになりました。ひとつの目標となりつつあることが嬉しいですね。
――将来的に、A5Gをどういった形にしていきたいですか?
思い描く絵としては、出場している人たちを、彼ら彼女らの周りにいる家族や同僚が応援している状況を作りたいです。もっと胸を張ってプレイしてもらいたい。一般的なスポーツだったらそれって当たり前ですけど、まだそうなってはいないですよね。
例えば都市対抗野球大会は、業界を問わず、たくさんの企業が参加して、優勝すればそれがステータスになって転職に役立つことだってあります。何十年かかるかわからないですが、もっと、家族や会社、友人を巻き込めるような、社会人リーグで優勝することがある意味ステータスになるくらいにはしていきたいです。それが最終的なゴールです。
それは果てなき夢ですけど、まずは社内で一緒にやっている人たちと手を組んで、社内コミュニケーションの促進からスタートして、徐々に周囲を巻き込む戦術で行きたいかなと思っています。
取材を終えて
A5Gの取材を終えて感じたことは、どの参加者も、LoLというよりは「日本のeスポーツ」という、もう少し大きな分母に対する現状について、どの立場から見ても何らかのブレイクスルーを求めているという印象を受けた。具体的には“eスポーツ”をビジネスと捉えるためには規模が足りないという共通の問題意識が参加者の中にあったように思う。
もちろん、来場者はそれなりにeスポーツに近しい立場、例えばゲーミングデバイスメーカーの社員であったり、eスポーツ関連の事業者であったり、ゲームタイトルを制作する会社の社員であったり、ストリーマーであったり、ストリーマーの追っかけであったりするわけで、そういった感想が出るのは広い意味でゲーム業界人だからということもあるのだろう。
参加者としても、もっと外に広がってほしいという想いはあるようである。しかし、現状としてはまだまだ“内向き”のイベントにとどまっており、しかもそれほど大きな規模ではない。これはまだまだ様々な施策を試行している最中であり、仕込みの段階であるからとも言える。
会場で交わされる会話を端から聞いていても、eスポーツを盛り上げるためには今後どうしていけばいいのか、参加者みんながLoLを楽しみつつもその点について考え、意見を交換する場にもなっていた。
今回お話を伺ったインタビュイーの皆さんはいずれも、日本、少なくとも東京におけるeスポーツの現状に満足しておらず、明確に問題意識を持ち、“ではどうすればいいのか”をそれぞれの立場から模索している最中だった。
現在eスポーツと呼ばれているジャンルのゲーム人口はそれなりにいるはずで、特に「LoL」のような人気タイトルのイベントであれば、それなりに人が呼べる状況になりつつある。
そしてプロチームの登場と活躍によって、それまで諸外国には存在して、日本のeスポーツ界隈に不在だった“ヒーロー”や“スター”と呼ぶべき存在が確立しつつもある。とはいえ、彼らが世界の舞台で結果を出すこと、そのための地盤をきちんと構築する必要はあるだろう。
今回お話を伺ったe-sports SQUARE AKIHABARA店長の本田亮輔氏は、A5Gを「きちんとビジネスにしたい」旨の話もしていた。どういうことかというと、A5Gは一応営業活動として実施しているイベントではあるものの、入場料を取っているわけでもなく、動画配信も有料チャンネルではないので、実質スポンサーから収入に頼らざるを得ず(会場内で提供されるフード、ドリンクは有料ではあるが)、実質ボランティアに近い状況だという。「よりモノ・コトを大きくしていくためには、やはり先立つものは必要。でもそこをなんとかするためのパスは、まだ明確に定まっているわけではない」と本田氏は話す。
今年はLJLの開幕を皮切りに、オーバーウォッチなどの人気タイトルが国内でも大きく盛り上がっており、またVRという新しい分野のデバイスとコンテンツがいよいよ一般化し始めて、業界としても大きくお金が動く予感に沸いている。控えめに言っても、eスポーツの発展に向けて追い風が吹いている状況ともいえる。
しかし、だからといってeスポーツ一本でビジネスをするにはまだまだ厳しい状況には変わりなく、ほかのビジネスと並行で盛り上げていく段階、言ってみれば「人を呼ぶ」フェーズからは抜け出せていない。
今回、A5G参加者からお話を伺ったことは筆者にとって、LoLという切り口でeスポーツの現状を再確認し、eスポーツをビジネスとして成立させるためにには何が必要なのかを改めて考えるひとつの機会となった。特にLoLは世界のeスポーツビジネスの一端を担うメジャータイトルであるだけに、eスポーツ発展途上の日本にどう展開するのかには今後も注目していきたい。
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