パズルとアクションの絶妙なハーモニー ジェントルマン御用達傑作アクション登場 「Henry Hatsworth in the Puzzling Adventure」 |
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何気なく手にとってプレイしてみて初めて気づく、思わぬ名作に出会った時の驚きはゲームファンならではの醍醐味だ。今回紹介する「Henry Hatsworth in the Puzzling Adventure」はコアゲーマーなら見落としがちなカジュアルゲームだが、希に見る完成度を誇るゲームだ。ニンテンドーDSのマルチスクリーンをフルに活用したゲームデザインと、大人でも楽しめる秀逸な英国ジョーク(!?)に大満足間違いなし!
EAのカジュアルゲームブランドが生み出したこのタイトル、プレイしてみてわかる開発陣の気合いがやたら感じられるこだわりと内容の充実度を誇るただならぬ1作だ。前回の「GTA」同様DSユーザーであればプレイしないと逮捕物の逸品なので、ぜひ注目して欲しい。
【お断り】 |
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当連載でご紹介したゲームは日本国内で流通しているハードウェアでは動作を保証するものではありません。編集部では海外版ハードウェア・ソフトウェアを輸入して紹介しています この記事を読んで行なった行為によって、生じた損害はGAME Watch編集部および、メーカー、購入したショップもその責を負いません GAME Watch編集部では、この記事についての個別のご質問・お問い合わせにお答えすることはできません |
■ 携帯ゲーム機が今年はアツい!
主人公ヘンリーとコールのコンビ |
米国におけるEAを筆頭とした大手パブリッシャーの携帯機向けゲームというのは実に不遇な扱いを受けている。大体の場合は据え置き機からの移植物、しかも開発自体はアウトソーシングで済ませており、低予算と短期間でやっつけるのが当たり前、中には例外もあるがDSやPSP登場以来、市場に送り出されてきた数々の移植物の出来の悪さたるや、プレイ開始数分で内容のダメさ加減を確信できるほどで、ダメゲームをつかまされた子供達の恨みはとてつもなく深い(はず)。
そんな不遇な状況が携帯ゲーム機では相当長く続いていたが、ここにきてニンテンドーDSの長期政権が確定的になってきたことで、各パブリッシャーもクオリティに抜本的なテコ入れをしないと商売が立ちゆかなくなると考えるようになってきたようだ。今年に入ってWiiやDS向けに一線級のゲームスタジオがゲームを提供するようになってきており、プレイステーション 3やXbox 360などのハイデフ機とは異なる方向性で盛り上がりを見せている。
EAが今回DS用に発売した「Henry Hatsworth in the Puzzling Adventure(以下、『Henry Hatsworth』)」は、前回紹介した「GTA: ChinaTown Wars」と同じように、DSの持つハードウェア特性をうまくゲームデザインに入れ込んだ魅力溢れるオリジナルタイトルだ。大作志向が強い欧米のゲーム市場の中では、とかく低く扱いがちだった携帯機で、にわかに質の高いゲームソフトが色々と登場し始めている現状は、我々コアゲーマーにとっても注目に値する出来事だ。深く静かに次世代機登場以来の市場変革が訪れようとしているのかもしれない。
本作は、EAがカジュアル向けに発売したパズル・アクションゲーム。DSならではのマルチスクリーンを活用し、オーソドックスな横スクロールアクションとテトリスライクな落ちものパズルを並行してプレイするという技ありのゲームデザインを採用している。アイディアをゲーム的に面白くするための世界観やサウンドへのこだわりも深く追求されていて、プレイを始めて数分もすれば、このゲームがただならぬものを持っていると、多くのプレーヤーは気づくはず。あらゆる年齢層が楽しくプレイできる、ゲームソフトとしては理想的な内容だ。
開発したのは「Madden NFL」シリーズで名高いEA Tiburon。同社といえばフットボールゲームや、NASCARを題材にしたレースゲーム等の開発元として有名だが、「Nuclear Strike」などのアクションシューティングや、「スーパーマン・リターンズ」など非スポーツゲームも何作か手がけている。今回はTiburonに所属する7名のスタッフと、最近日本でもWii Wareとして配信が開始された「World of Goo」の開発に参加したKyle Grayをディレクターに迎えており、ゲーム性の高さとアイデアの秀逸さは同作と共通するものを感じさせる。
5つのワールドを巡って秘宝を探す | 落ちものパズルでアイテムゲット |
アクションとパズルを行き来する | 様々なステージが待っている |
■ ジェントルマンになるための秘宝を探し求めて世界を大冒険
現実世界で敵を倒すとパズル次元へ |
ゲームは英国紳士を地で行く男、Henry Hatsworthの冒険を描く。彼は「パンパース・アドベンチャーズ・クラブ」という組織でナンバーワン冒険者として認知されており、着用した人が「パズル次元(Puzzle Realm)」と呼ばれる世界と現実世界を並行して制御できるという秘宝を探し求める旅に出る。
この宝物は「ジェントルマン」と呼ばれる古代の支配者によって作り出されたもので、帽子やスーツなど全部で9種類ある。Henryがジャングルの中にある遺跡で宝物の1つである帽子を見つけると、現実世界が不均衡をおこし「パズル次元」から様々なモンスターが現実世界にやってくるようになってしまう。プレーヤーは、残りの宝物を探しつつモンスターを封じ込め、ついでに巨万の富もゲットしなければならないのだ。
ゲームはDSの画面上下で異なるジャンルのゲームが並行して進む。すなわち上画面でHenryを操作して世界中に散らばる5つのワールドを巡って秘宝を探すアクションゲーム、下画面は「パズル次元」になっておりブロックがアクションゲームと同時進行で画面上へとせり上がって行く。プレーヤーはXボタンを押してアクションとパズルを必要に応じ随時切り替えて対応していくため、ゲーム自体の進行はかなり忙しい。
並行して進む2つのゲームの関連性は、上のアクションゲーム部分が現実世界、下が「パズル次元」という設定で、実世界に現れた敵を倒すと「パズル次元」に戻るので、これを更にテトリスのように同じ色のブロックを3つ以上で揃えて消すことで完全退治する。ブロックに封じ込めた敵を消し損ねて画面上のアクション部分までせり出してくると、幽霊のように復活してHenryを苦しめるので、中途半端な対応をしているとプレーヤー自身で難易度を上げてしまうことになる。ちなみにパズルモードに入っている最中は、アクションモードの時間は止まっているのでご心配なく。
ゲームの内容としてちょっとややこしいのは、2種類のエネルギーゲージが存在するということ。まず「パズル次元」に行くためにはエネルギーが必要で、行ってる間は一定量のエネルギーを消費(=制限時間がある)するため必ずしも必要な場面でパズル次元に行けない場合がある。そしてパズル次元には画面上の敵全体を攻撃したり、1upしたり、体力を回復するといったアイテムブロックも現われる。常にブロックをちゃっちゃと消していれば良い訳ではなく、必要な時に備えて有益なブロックを温存して、パズル次元にいつでも行けるようにしておく必要がある。(エネルギーはアクションモードで放っておけば自動回復する)
そしてもう1つ、Henryはソードを使った通常攻撃と銃や爆弾を使った間接攻撃の2種類の攻撃方法を持っているが、後者の間接攻撃はもう1つ別のエネルギーを消費する。このエネルギーをためるにはブロックを消す必要があり、しかも、連鎖などで効率よく消すことで1度にたくさんのエネルギーをたくわえることができるようになっている。
従ってゲームの基本的な流れとして、アクションとパズル両方をうまくこなせれば良い訳ではなく、必要な時にいつでもパズル次元に移って、敵を実世界に戻らせない程度にブロックを消しつつ、ピンチの際にエネルギーを補充できるようにアイテムだけでなく敵ブロックも温存しておくという戦略を立てないとクリアはおぼつかない。実は本作、アクションゲームの難易度としてはそこそこ高く、適当にガシガシ先に進めるほどぬるくはない。
このようにDSの特性であるマルチスクリーンをうまくゲームデザインに活用させたアイディア賞物のルールは、一見敷居が高そうに見えるが、しっかりとしたチュートリアルも用意されているため、ほとんどのプレーヤーは、抵抗無くゲームを楽しむことができる。得てして奇抜なデザインはプレーヤーに負担を与える場合もあるが、本作に限っていうとその心配は杞憂で、プレーヤーを何時間もゲームに没頭させてくれる、たまらない魅力を持っているのだ。
より一層の理解を深めたい時は公式サイトで公開されている映像を観るのが1番手っ取り早い。世界観もひっくるめて簡単に理解できる上、後述のオマケダウンロードも用意されており、サービス満点のウェブサイトなので訪れる価値は特大、ぜひ動いている実際のゲーム画面を見てお眼鏡にかなうか判断をして欲しい。
ルールはチュートリアルで学べる | タッチペンでガラスを割って脱出せよ |
あまりパズルを放置すると大変なことに | 敵ブロックを消すタイミングが重要 |
アイテムブロックを有効活用 | 敵の集中攻撃は1番辛いシーンだ |
■ 「Good Show!」のかけ声でロボットも登場するユニークな世界観
超英国的必殺技Tea Time発動! |
ロボQがどこからともなく現われる |
本作もう一つの魅力は大人もツボにはまる世界観と妥協の無い作り込みだ。主人公HenryとColeという彼の助手のようなキャラクタとの掛け合いは雰囲気だけで面白い。そして「パンパース・アドベンチャー・クラブ」のナンバー2で、Henryと同じく秘宝を求めるライバルのWeasleby(本名をLeopold Charles Anthony Weasleby the Thirdという)との対決など、イベントシーンの作り込みもしっかりしている。
英国を良い意味でおちょくった展開が面白く、どうしてもHenryに歯が立たないWeaslebyが、毎回攻略方法の異なるメカを繰り出しては負けて去って行くあたり、日本のアニメ「タイムボカン」シリーズに通じる愉快さがある。
また台詞のメッセージが表示される時に同期される効果音が、大昔のファミコンゲームの会話音のようにキャラクターごとにユニークな音がついており、これが本来テキストメッセージの応酬だけで済まされるはずの会話シーンを非常に面白く、メッセージの読み飛ばしを極力防ぐ工夫と思うが、うまく機能している。
極めつけは武器エネルギーのゲージをマックスまでためると「Tea Time」というモードを発動させることができる。Henryが「Good Show!」のかけ声と共にお茶を飲むと、どこからともなく「ゴールデン・ロボQ」というロボットが登場し、Henryはそれに乗って敵を蹴散らすことができる。ちなみにお茶を飲む際の背景にはいくつかバージョンがあり、シャーロック・ホームズやロビン・フッドらしき人物が一緒に乾杯しているシーンが用意されており、これまた何種類バージョンがあるのか興味を誘う。
ロボQはエネルギーがゼロになるまで一種の無敵モードとして発動できるが、ゲームが進んで入手した秘宝が増えると股からミサイルを発射したり、上方向にパンチを繰り出したりと攻撃のバリエーションが増えるのも注目したいところ。ボス対決時や敵がわんさかでてくるシーンにはロボQの出動が欠かせないので「Tea Time」を出すタイミングをマジメに計算しておくことも重要だ。
アクションゲーム部分に関しても大味さが一切なく、ドット絵に愛情を感じるビジュアルはキャラクタのしぐさもきちんと描いており、手抜きという言葉はほとんど無縁。ソードの攻撃も通常攻撃以外に上斬り、下斬り、滑り込み(?)斬りなど様々な攻撃方法が用意されており、ジャンプと一緒に組み合わせることで、様々なアクションを楽しめるほか、フィールドのデザインもジャングル、飛行船、溶岩地帯、海の中などシーンに合わせたギミックと、どこか憎めない敵キャラクタ達が三位一体となってプレーヤーを楽しませてくれる。
ゲームを盛り上げるのに欠かせない音楽面にも注目したい。サウンドはどこかモンティ・パイソンを彷彿とさせるようなコミカルかつ英国っぽい曲が多数用意されており、ゲーム内容にピッタリとマッチしている。何より素晴らしいのは無料でサウンドトラックが公式サイトより提供されている点だ。
iPodなどの携帯ミュージックプレイヤーで聴けるようにアルバムアートワークも一緒に挿入されているため、本作を購入する前に、まず耳から堪能するのも良い手段。約170MBのサウンドトラックはEAの単なるサービス精神だけではなく、開発陣による本作に対する自信の現れと言っても過言ではない。私も自前のBlack Berryのアラーム音に「パンパース・アドベンチャー・クラブ」のテーマソングを設定して、毎朝英国紳士魂を磨いている。
ロボQは事実上の無敵モードなのでガンガン進める | ちゃんとHenryが乗り込んでいるのがわかる |
今回(!?)の敵役Weasleby | Weaslebyとは何度も対決することになる |
王道のやられパターンは万国共通か | 敵ブロックも様々な種類がある |
■ 子供の頃に出会いたかった優良なパズルアクションゲーム
ロビン・フッドともTea Time |
あの名探偵ともTea Time!! |
エイリアンやギャング相手に銃をぶっ放したり体がバラバラになったりする海外ゲームが多い中で、「Henry Hatsworth」はとても新鮮なプレイ時間を過ごすことができ、性別年齢層問わず楽しめるゲームソフトの重要性を改めて認識することができた。これは多くのコアゲーマー諸氏も共通した状況にあると思うので、尚更のこと、本作をプレイをオススメする次第。ロゴを見る限りでは、もしかすると「The Puzzling Adventure」というシリーズ化を検討しているのかもしれない。本作のロングセールスを期待したい。
かつて、この手のゲームは日本のゲームメーカーのお家芸だったはずだが、国産タイトルは売れ筋を狙った狭いジャンルや客層のみを相手にするタイトルで溢れるようになってしまっている。国内の特定のユーザー層にだけウケるゲームを作り続けていくうちに、欧米の市場は更に広がり、プラットフォームを問わず様々なジャンルで意欲作が生まれている。中でも次世代機争いにおいて、WiiとDSが支配的なシェアを占めることが今年は確定的となり、同プラットフォーム向けのタイトルが一線級スタジオで多数開発が進められている点は注目に値する。
全世界的にハードの普及は抜群ながらも、ソフト面では今ひとつ元気のないWiiとDSだが、海外ゲームに限って言うと今年が最もホットな年になりそうだ。「Wii Fit」に挑戦状を突きつけた「EA Sports Active」や、「Mad World」を筆頭にセールスを伸ばすセガのMature向けゲームソフト、モーションプラスを活用したスポーツゲームシリーズなど、注目に値するタイトルが目白押しで、これはというタイトルがあれば、本海外レポートでも随時紹介していきたい。
そしてDSに関しては米国で4月に投入されたばかりのニンテンドーDSiには引き続き目が離せない。Wiiウェアと同じように欧米市場でも日本にはないオリジナルのDSiウェアの登場が期待され、PSPとの争いがオンライン分野においても繰り広げられる可能性が高い。既存のDSタイトルについても「Henry Hatsworth」や前回紹介の「GTA: ChinaTown Wars」などの独占タイトルが目に見えて増えてくれば、子供のおもちゃから1歩脱却した大人のゲーム機としての側面もDSiは担う事が可能ではないだろうか。今年のE3で発表されるラインナップがとても楽しみだ。
敵から得た宝石でパワーアップも可能 | いかに行く手を阻む障害を取り除くか? |
本作のアクションはかなり出来が良い | ジェントルマンの秘宝を探しだそう |
真ん中の島がかなり怪しい | 締めの言葉はGood Show!! |
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