【連載第23回】 開発者が語るiPhone/iPadゲームの最先端

iPhone Spotlight Report

往年の「スペースインベーター」筐体がiPad用スタンドとして復活
開発秘話のインタビューと試遊レポートをお届け

 世界中でブームを起こしたiPhoneは、新たなゲームプラットフォームとしての地位を得た。続いて登場したiPadも、かつてないゲーム体験を生み出す可能性を秘めている。本連載では、iPhone/iPadゲーム開発者へのインタビューから、最新のトレンドや魅力を探っていく。



10月11日 発売予定

価格:15,800円


iPadがすっぽりと収まる昔懐かしいアップライト型筐体を模したスタンド。周りのデザインも細かい部分までリアルに再現。高さは31センチで重さは1.4kgになる

 株式会社タイトーから、iPad用「スペースインベーダー HD」を昔のゲームセンターのような雰囲気で遊べるアップライト筐体型の専用スタンド「iNVADERCADE(インベーダーケード)」が発表された。

 当時のゲームセンターに設置されていたアップライト筐体の外観をコンパクトにした外見のスタンドで、画面部分にiPadを差し込み、スタンドに取り付けられているレバーとボタンで「スペースインベーダー HD」を遊べる。このスタンドはドックチャージ機能を備えていて充電も可能。スタンドの前面には2つのスピーカーが内蔵されていて、ゲームはもちろん音楽や映画などでも迫力あるサウンドが出せる。発売は10月11日の予定で、価格は15,800円。

 今回はその発売に先駆け、開発者であるタイトーのキャラクター・トイ事業本部 開発生産部 リーダーの勝又聡氏に制作秘話を伺いつつ、実際に「iNVADERCADE」を試させていただいた。




■ プライス製品の開発経験を活かして思いつきで開発したが……

タイトーのキャラクター・トイ事業本部 開発生産部 リーダーの勝又聡氏。インタビューでは開発の裏話も気さくに語ってくれた

――まず、勝又さんの所属されているキャラクター・トイ事業本部と、ご自身の業務内容について教えていただけますか。

勝又聡氏 : ゲームセンターのプライズ製品で電子玩具の開発をやっています。実際に工場まで行って量産の立ち会いまでしています。私がこの仕事に携わるようになって2年ほどで、その前はゲームセンターに設置されている筐体の品質や安全面の確認をする仕事をしていました。

――昔からゲームセンターの筐体を作られていた訳ではないのですね。

勝又氏 : はい。しかし、このような製品作りはプライズ製品を開発する延長とも言えます。ちなみにインベーダー筐体が発売された1978年当時、私は小学生くらいで、テーブル筐体の「スペースインベーダー」を遊んでいました。

――今回、筐体もののケースを作ろうとしたきっかけは何でしょう?

勝又氏 : iPadがデバイスとして非常に面白く、実際にこの画面でゲームをしても面白いと思ったからです。商品化するなら弊社の1番有名な「スペースインベーダー」だという話になり、昔懐かしい筐体を再現することになったのです。

――実際に作ってみていかがでしたか?

勝又氏 : 最初は単なる思いつきだったのですが、実際に動き出したら大変でした。プライズとは違うジャンルのもので、技術的にも相当レベルが高かったです。

――筐体を作るのには苦労しなかったのですか?

勝又氏 : 形になるまでは比較的早くできあがりました。しかしこれを開発した時は、まだ初代iPadしかなかった頃でした。その後、iPad 2が出ることが発表され、仕様変更をしなくてはならないのが大変でした。

――iPadは初代と2の両方に対応しているのですか?

勝又氏 : もちろん両方対応しています。付属品としてゴムのアタッチメントを用意しており、これを取り付けるとiPad 2がピッタリ入るようにできています。実はiPad 2の発売が噂になっていた頃、本体の幅が広がるかも知れないという噂があり、ドキドキしていました。もし幅が広がっていたらアウトでした。

――今回、この筐体で遊べるのは「スペースインベーダー HD」だけですが、他のゲームやアプリに使えたりはしないのでしょうか?

勝又氏 : 「スペースインベーダー HD」だけです。実は、今はボタンが1個しかついていないのですが、場所的には最大3個まで配置が可能で、基盤も対応できるように設計しています。レバーも現状では左右の2方向だけですが、4方向にも対応できるよう設計していて、ハードの処理的には8方向まで可能な仕様になっています。

――すごいですね。8方向レバーで3つボタンを使うゲームアプリが対応したら、この筐体にも使えるということでしょうか?

勝又氏 : 違います。この筐体ではコントロールパネルが2方向レバーの1ボタンになっていますし、コントロールパネルは交換できないので物理的に無理です。しかし設計段階では8方向レバーで3つボタンまで対応できるようにしてありますので、何か別のゲームでこのような筐体を出すことになったら、即座に対応したものを発売することが可能だということです。




■ 現存する筐体を参考に、当時の筐体をリアルに再現

筐体のサイズに合わせてレバーやボタンが小さくなっているが操作には支障ない。コンパネにはヘッドフォンジャックと音量のボリュームが設置されている
iPadを挿入する部分には、インベーダーのドット絵が描かれている。細かい部分までこだわりを持って作られているのがわかる

――筐体の素材は何を使っているのですか?

勝又氏 : オリジナルは木で作られていましたが、それだと重量が重くなってしまい、持ち運びにも不便になってしまいます。そのためプラスチックでできていて、軽くて量産しやすくなっています。

――レバーとボタンはゲームセンターで使われているものですか?

勝又氏 : 既存のものを使う方が開発するのは楽だったのですが、それだと筐体のデザインが崩れてしまいます。そこでこの筐体にあわせてスケールダウンしたものを1から作りました。操作しやすく遊びやすいものになっています。

――筐体に描かれているイラストはオリジナルのものを再現してあるのですね?

勝又氏 : もちろんオリジナルのものです。「スペースインベーダー」の現存する筐体が1つ、海老名の開発センターにあり、その写真を参考に作っていきました。

――こだわって開発されていますね。ほかに開発中の裏話はありますか?

勝又氏 : 開発当初は、テーブル筐体での企画もあり、モックまで作りました。今は検討中ですが、もしかしたら反響次第では商品化もあるかも知れません。日本だとテーブル筐体が有名ですが、ワールドワイドではアップライト筐体の方が認知度が高いので、今回はアップライト筐体にしてあります。

――ゲームが遊べる以外の魅力となるポイントを教えてください。

勝又氏 : 「iNVADERCADE」は単なるコントローラーではなく、iPadにダウンロードされている音楽や映画、動画サイトなどの映像を楽しむのにも最適に作っています。筐体下部に2個のスピーカーが左右に配置されていて、高音域から低音域までバランスのいいサウンドを迫力のステレオで楽しめます。キチンといい音が出るようにこだわって作ってあります。さらにヘッドフォンジャックと音量のボリュームも用意していますので、ゆったりと自分の世界を満喫できます。もちろんドックチャージになっていますので、iPadをセットするだけで充電を開始します。充電しながらゲームもできますし、音楽を聞いたり、映画を観たりもでき、それらを1つのものでまとめているのも売りです。

――販売台数はどのくらいを予定しているのでしょうか?

勝又氏 : 販売台数は公表しておりませんが、前評判がいいと聞いています。確実に欲しい方は予約していただいた方がいいかと思います。ただし、初回の反響を見て増産も考えています。

――最後に読者の方へ一言お願いします。

勝又氏 : iPadの大画面を使って、昔懐かしい雰囲気で「スペースインベーダー」を楽しめます。当時遊んだ方にはこれで遊んでみてもらいたいです。

――本日はお忙しいところ、ありがとうございました。




■ 筐体はしっかりとした作り。一回り小さいレバーとボタンでも操作性は抜群

 インタビューの際に実物を触らせていただけたので、その感触もお伝えしよう。見た目は重厚感があるものの、プラスチック製の筐体は持ってみると意外と軽くて持ち運びやすい。しかしゲームをプレイしてみたところ、筐体は安定していて、ズレて移動することはなかった。

 気になる操作性だが、レバーとボタンの小ささは気にならず、操作性もよくて非常に遊びやすい。ただレバーは摘む感じで持つことになるので、手のひらでかぶせるように握る人や、レバーの根本を指で挟むようにする人にとっては辛いかも知れない。ボタンは現在ゲームセンターで稼働しているアーケードゲーム機のボタンを小さくしたタイプで押しやすかった。

 「スペースインベーダー」が遊べる以外に充電スタンドにもなる。加えて、レトロゲーム好きな人にはお部屋のインテリアとしても使えそうだ。


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(2011年 9月 27日)

[Reported by 川村和弘]