ホビーレビュー
DX超合金魂 マジンガーZ
企画チーム河内氏インタビュー、試行錯誤から生み出された数々のギミック
(2012/12/27 12:00)
「DX超合金魂 マジンガーZ」の各ギミックを楽しんだ後、企画チームのメンバーであるバンダイコレクターズ事業部企画開発第二チームリーダーの河内保氏に改めてインタビューを行なった。河内氏はムービーでの発光・サウンドギミックの組み合わせを事前に何度も練習して作るほど、本作に並々ならぬ愛情とこだわりを持っている人物である。インタビューではその想いを聞いた。
――河内さんは「DX超合金魂 マジンガーZ」においてどのような役割を果たしたのですか?
河内氏: 私が現在の部署に配属となったのは去年からなのですが、その時点で、すでに「メカニカルモデルとしてのマジンガーZ」の商品化プロジェクトが進行していました。私は、そのプロジェクトの一員として、商品企画に加わりました。商品の開発は、企画を考る社員、設計や企画・生産にかかわるチームや、外部の関係者など、多くの人の手を渡って実現します。この商品について言うと、商品化が決定してから、生産ラインに入るまでに大体20人くらいのスタッフが関わっています。
――「DX 超合金魂」という新しいブランドの第1弾として、マジンガーZを題材にしたのはどうしてですか?
河内氏: 「マジンガーZ」放映40周年というのが1番大きなきっかけと言えます。その“記念アイテム”としてどのようなことができるかを検討した結果、“超合金”でいこうということになりました。そして超合金として何ができるか、ということを考え、それまであたためていた“メカニカルモデル”というコンセプトをベースに商品化を検討し始めました。
過去に「超合金魂」シリーズで「マジンガーZ」を発売したことはありましたが、30cmという大型サイズで商品化するのは初めてでしたし、「マジンガーZ」で内部構造まで表現した「メカニカルモデル」の商品化も初めてです。
メカニカルモデルの構想は10年近く前からあったもので、プロジェクトチームのメンバーの中にその構想をずっと暖めているたメンバーもいて、そのメンバーからの提案もあり、企画が固まっていったのです。
――「DX超合金魂 マジンガーZ」の内部構造に関しては、40年前から様々なものが発表されていると思います。今回のメカニカルモデルは現代風にリファインしたものでしょうか、それとも40年前の当時のものでしょうか。
河内氏: 内部構造に関しては、アニメ「マジンガーZ」のエンディングで内部透視図が描かれています。今回はその絵をベースに、これまでに様々なイラストレーターが描いてきた内部構造図を参考にしながら、新たに描き起こしました。内部構造を描き起こし、設定するところから開発がスタートしており、昨年の11月からおよそ1年の開発期間の末、商品化に至りました。
――「DX超合金魂 マジンガーZ」の開発で、最も苦労した部分はどこでしょうか?
河内氏: ブレストファイヤーの発光です。今回、LEDを使用して光らせることにしたのですが、LEDの光は直線ですので、正面から見ると丸い点のような光り方になってしまう。そうすると、劇中に登場する光り方とは異なってしまうんです。LEDの代わりに、携帯電話のパネルなどに使う“有機EL”を使うことも考えましたが、やはり光り方が異なるしコストも跳ね上がってしまう。そこで、LEDユニットを胸の下に設置し、下から反射させるように光らせることにしました。これによって、胸の板からブレストファイヤーを放射するような光り方をさせることができました。
また、目を光らせるのも実はかなり大変でした。マジンガーZは、顔がとても小さい上に、ホバーパイルダーを頭に入れる必要があるので、頭部部分に目を光らせるユニットを搭載するスペースがありません。パーツの着脱も可能にしなければならなかったこともありブレストファイヤーと同じ考え方で、下からLEDを照らし、首から光を逃がし、目の裏側の透明部分に光が当たるようにしました。このように、様々な条件のもと、試作・検証を繰り返して、発光ユニットを胸位置に搭載することにしたのです。
――では、河内さんが1番自信を持っているところはどこでしょうか。
河内氏: 音と光と可動、これをきちんとミックスできたところです。様々なギミックが詰まった超合金となったことで、「マジンガーZを操作している気持ち」を満喫できると思います。先ほどご紹介した、主題歌を流しながらマジンガーZの外装をはめ込む、というような楽しみ方ができるのも、豊富な曲や音声を搭載している「DX超合金魂 マジンガーZ」ならではですよね。
パーツの付け替え、「格納整備基地」に外装をセットする感触などは、“秘密基地ごっこ”のような気持ちをもたらしてくれます。様々なポーズをつけ、色々な角度から眺め、音を鳴らし、光らせる。当時マジンガーZのアニメを見た子供は「マジンガーZを操縦したい」と誰もが思ったはずなんです。この商品は、「自分だけのマジンガー」という感覚を与えてくれる。マジンガーを所有する楽しさを感じて欲しいと思います。
また、「DX超合金魂 マジンガーZ」は、飾る楽しさを追求した“最高のディスプレイモデル”を目指した作品でもあります。「格納整備基地」に外装をセットしながら、小さい頃に夢中になった“秘密基地ごっこ”の気持ちを思い出して、楽しんでいただければと思います。
当時マジンガーZのアニメを見た子供は「マジンガーZを操縦してみたい」と誰もが思ったはずなんです。パーツを付け替え、様々なポーズをつけ、色々な角度から眺め、音を鳴らし、光らせ、ディスプレイする。この商品を通して、マジンガーZを所有する楽しさを感じて欲しいただければと思います。
次なる「DX超合金魂」のテーマは? 世界観とキャラクター性を重視したアプローチ
――次に、技術的なアプローチを聞きたいと思うのですが、外装をダイキャストにするというのは、重さと耐久性や、外装の外れやすさなどの技術的な課題があったのではないでしょうか。
河内氏: 素材部分での大きな進化はないのですが、ある程度の薄さと、形状の出し方で技術の進化はありました。重量感を体感してもらうために、着脱できる外装の多くをダイキャストにしたのですが、取り付ける先であるメカニック部分は造形をきれいに出すためにプラスチックを選択しましたので、接触すると傷がつきやすくなってしまいます。そこをどうクリアしたかにも注目していただきながら、付け外しをしていただくと設計者の巧みさを感じてもらえると思います。
装甲の接続部分も、大きなピンにしてしまうと“いかにもおもちゃだ”と感じさせてしまいます。違和感のないジョイントのデザインにして、この穴の表現は「本物のマジンガーZはジョイントを使ってるんだ」というような工夫をしています。接続の強度は保ちつつ、原作の雰囲気や“世界観”を重視し、ユーザーが“現実”に引き戻されないような設計にしています。
――「DX超合金魂 マジンガーZ」は全世界の同時発売を予定しているとのことですが、海外での反響はどうでしたか?
河内氏: 全世界での目標販売個数は1万個としています。アジア各国、北米、ヨーロッパ、中南米での販売となります。特にヨーロッパでの人気が高いです。東京おもちゃショーを皮切りに、世界の様々なイベントなどで「DX超合金魂 マジンガーZ」をアピールしたのですが、色々な国で反応がありました。
マジンガーZはもちろん、原作者の永井豪先生への反応が凄いんです。今回改めて“再体感”しましたね。永井先生の世界的な存在感、特にヨーロッパでの人気の高さには改めて驚かされました。
――「DX超合金魂 マジンガーZ」では、今後どのような展開を予定していますか?
河内氏: 「DX超合金魂 マジンガーZ」の発売日と同日に「DX超合金魂マジンガーZ対応 ジェットスクランダーセット」の受注を開始しています。「DX超合金魂 マジンガーZ」のオプションパーツセットになっていますので、合わせてお楽しみいただければと思います。
――では、「DX 超合金魂」ブランドの次なる展開はどのようなものがありますか?
河内氏: せっかく新たに立ち上げたブランドなので、続けていきたいと思っています。ただ“固定概念”はもたないようにしていきたいですし、企画・開発にものすごく時間のかかるブランドなので、まだ発表できませんが、次のキャラクターの検討は行なっています。
――固定概念というと、メカニックモデル、発光・発声ギミック搭載を単純に搭載するわけではないと?
河内氏: そういった可能性もありますが、そこに縛られないようにしていきたいですね。「マジンガーZ」だったからこそ、「メカニカルモデル」と「格納整備基地」というチョイスをしたわけで、違うキャラクターを選択したときに今回とまったく同じ仕様にする、とは限りません。それぞれのキャラクターに合った世界観で商品化をしていきたいと思っています。
――最後に超合金ファンへメッセージを。
河内氏: これからも皆さんのヒーローを超合金でお届けしていきたいと、スタッフ一同思っています。ご期待下さい!
――ありがとうございました。