「イクシオン サーガ」タクティカル・バトルテスト参戦レポート

3度目のテストで見えてきた国産オンラインアクションの全貌


5月10日~14日 タクティカル・バトルテスト実施

2012年 サービス開始予定



 株式会社カプコンが開発中のオンラインゲーム「イクシオン サーガ」において、3度目のバトルテストとなる「タクティカル・バトルテスト」が5月10日から5月14日まで実施された。

 本作が発表されたのは2011年6月で、前回の第2次バトルαテストが行なわれたのは2011年11月。今回はそれから半年ぶりのテストとなる。間が開きすぎて心配になってしまうが、現在も2012年サービス予定となっており、今年注目の国産オンラインゲームとして覚えておいてほしいタイトルだ。

 これまでの2回のテストでは、8対8で戦うアクション性を確かめるのが目的となっており、バトル以外の要素はほとんど入っていなかった。今回はスキルや装備が増え、バトル以外の部分での楽しみも垣間見られる。そのあたりを含めて、鋭意開発が進められている本作の注目点を探っていきたい。




■ フィーリングは格闘ゲーム! 国産ならではの対戦アクション

8人のチームを編成した後、他の8人チームとマッチングする

 本作の柱となるのは、最大8対8のオンラインバトルだ。2チームに分かれて決められたルールのもとで戦うというゲームの流れは、オンラインFPSと同じようなものだと思ってもらって構わない。1人でプレイしていても、気軽にチームバトルにマッチングできる。

 ただし、バトルの内容はFPSとは全く異なる。本作には近接戦闘が主体の「ストライカー(剣士)」、銃で戦う「ブラスター(銃士)」、魔法を操る「キャスター(術士)」という3つの職業(スタイル)がある。このうち後ろ2つは遠距離戦が基本になるが、戦闘では「ストライカー」に詰め寄られて接近戦になりやすい。

 FPSと最も大きな違いは、攻撃スキルには発動後の硬直時間があるという点だ。例えば「ブラスター」の射撃スキルの多くは歩きながら発射できず、その場で足を止めてしまう。FPSのように撃ちながら駆け抜けるといった動きはできないので、どうしても「ストライカー」に詰め寄られてしまう。

 しかし硬直時間があるのは他の職業でも同様で、「ストライカー」の剣を避けたりガードしたりすれば、その隙に反撃のチャンスが生まれる。敵に詰め寄られたら攻撃を防いで反撃するという、格闘ゲームの基本的な流れが本作にはある。

 こういう駆け引きは、カプコンが得意とする対戦格闘ゲームのエッセンスを強く感じる。細かいところでは、敵の攻撃をガードし続けると減っていくガードゲージ(攻撃を受け続けるとガード不能になる)もあったりして、接近戦での駆け引きを重視しているのがよくわかる。海外産の対戦アクションゲームには、一見するとよく似た印象を受けるものもあるが、こういった駆け引きを生むシステムはほとんど見られない。好みは分かれるところだろうが、本作はとても日本的なゲームになっている。


【スクリーンショット】
「ストライカー」は剣による近接攻撃が得意。反面、距離を取られた状態で仕掛けられる攻撃はほとんどない「ブラスター」は射撃で戦う職業。遠距離から放てる強力なスキルを持っているが、近づかれると辛い「キャスター」は魔法を操る。HPの回復など支援系のスキルが充実しているものの、単体での戦闘力は低い
接近してしまえば「ストライカー」は圧倒的に強い。攻撃力も高く、混戦を打破する力がある接近されると困る「ブラスター」も、相手の攻撃をガードはできる。反撃のタイミングを逃さず切り抜けたい攻撃力の乏しい「キャスター」は他のプレーヤーとともに行動したい。味方を回復すれば最後のスコア集計に反映される



■ 8対8のオンラインゲームならではのチーム戦略

本拠地付近が出現ポイント。空から降ってくるような登場シーンが格好いい

 このような対戦格闘的な要素があるということを踏まえつつも、本作は8対8のチームバトルであり、1対1の対戦格闘ゲームとは別物だ。目指すはチームの勝利であり、1人のスーパープレーヤーがいくら頑張っても、味方との協力なしにはおそらく勝てない。

 今回のテストでは、味方の連携をより強く意識させる新ルール「本拠地戦(Crush or Build)」が導入された。従来はただ敵を多く倒すだけのシンプルなものだったが、今回はそれに拠点を確保する・守るという要素が加わっている。

 フィールド上にある拠点領域にプレーヤーが一定時間留まることで、拠点を設営できる。この拠点を先に3つ設営すれば勝利となる。ただし拠点は1度確保しても、敵の攻撃によって破壊されることもある。拠点を作ればそれを守り、拠点を相手に作られればそれを壊しにかかるというのが、このルールの大きな流れになる。敵味方とも拠点をどうにかしようと集まってくるため、自然と乱戦が発生する。

 ここで重要になるのが、3つの職業だ。「ストライカー」は直接的な攻撃が多いため、拠点に真っ向から飛び込んで敵を蹴散らす。「ブラスター」は銃での遠距離攻撃で敵だけでなく拠点を狙い撃ちできるのが強み。「キャスター」は周囲の味方をまとめて回復したり、敵を通行不能にする柵を立てるスキルを持っており、拠点を維持する要役となる。それぞれが自分の役割を果たして動けば、そう簡単に崩されることはない。なお職業は装備している武器によって決定され、対戦のマッチング直前まで自由に変更できる。

 さらに本作には、倒されたプレーヤーから「ジン」という光の玉が飛び出すという要素がある。倒した敵から飛び出した「ジン」を回収すると、スキルの使用に必要なAP(アルマポイント)が回復する。回復スキルを持つ「キャスター」が「ジン」を奪えれば、常に数の優位を保って戦えるわけだ。さらに味方が倒された際には、味方から出た「ジン」を回収することで、その味方がその場で復活する。敵に回収されたり、一定時間内に回収できなかった場合は初期位置まで戻されるので、「ジン」の回収は大きなアドバンテージを生む。「ジン」を回収するためにも、味方が連携して動くことが重要になる。

 なお「本拠地戦」では、敵本拠地を破壊することでも勝利となる。本拠地は拠点に比べてかなり頑丈でなかなか壊れない上、拠点が設営されていると本拠地が少しずつ回復していく。味方と連携して一気に攻め落とせれば、その時点で勝利が決まるものの、本拠地を攻めている間に拠点を3つ設営されれば負けになるので、やはり味方との連携・意思疎通が大切だ。

 「本拠地戦」はただ敵を倒すだけでは勝てない、チーム力が問われるルールだ。即興のチームでどこまでできるか、あるいは指揮官のようなプレーヤーが現われるのか。コンシューマーゲームライクな感触のアクションとは違い、ここはとてもオンラインゲームらしい形になっている。


【スクリーンショット】
新ルール「本拠地戦」は、拠点の設営が目的。自軍の拠点を守りながら、相手の拠点を破壊しに行く。戦闘は大混戦になることが多い
フィールドにある緑のサークルが拠点設営の位置。ここに一定時間立ち止まれば自動的に拠点が作られる敵の設営した拠点は、攻撃すれば破壊できる。先に3カ所の拠点を奪われると負けになるので、見つけたら壊しておきたい「キャスター」には敵の移動を制限する柵を出すスキルがある。これを拠点の周りに置けば盾代わりになる
本拠地を攻め落としても勝利となるが、そう簡単には破壊できない倒されたプレーヤーから、「ジン」という光の玉が飛び出す回収すればAPが一気に満タンに。敵の復活を阻止するためにもきちんと回収したい



■ 武具の強化も実装。僅かに見えたやりこみ要素

戦闘後に経験値を獲得。レベルアップすれば新たな武具やスキルが開放される

 今回のテストから増えた要素として、武器や防具の購入と強化、およびレベルアップによるスキルの獲得がある。プレーヤーは対戦に参加することで経験値を得てレベルアップし、使用できる武具やスキルが増えていく。

 武具については、レベルが上がることで「鍛冶屋」に新たな武器が追加される。当然ながら高レベルのもののほうが強力なので、どんどん武器を持ち替えていく。レベルはキャラクターに設定されており、職業ごとのレベルの概念はない。なお今回のテストでは、低レベルのプレーヤーには能力上昇補正がかけられ、高レベルのプレーヤーとも対等に近い状態で戦えるようになっている。

 さらに武具は能力を強化できる。対戦後に獲得できる「強化ジン」と料金を払うことで、武器なら攻撃力を、防具なら防御力を少し高められる。強化は「強化ジン」と費用さえあれば複数回可能。ただメニューには「成功率」の文字があり、失敗することもあるようだ。

 新たなスキルは、ロビーにいる「占術師」に話しかけることで転送される「神殿」で覚えられる。スキルを覚えるには、レベルアップで獲得したスキルポイントが必要。今回は各職業ごとに6つのスキルが用意されており、一部はレベル制限があるものの、それ以外はポイントさえあれば好きなものから獲得できる。覚えたスキルは取捨選択なく全て戦闘で使えるので、特定の職業のスキルを集中して覚えれば、その分だけ戦術のバリエーションが広がっていく。

 この辺りはオンラインゲームではよくある要素だが、スポーツ色の強い対戦ゲームに明確な成長要素を入れてきたのはやや意外に感じる。対戦と成長のバランスをどう調整していくのかは今後注目したい部分だ。


【スクリーンショット】
「鍛冶屋」には武具が販売されている。強力なものほど高価だが、なるべく1番いいものを使いたい武器や防具の強化も可能。1回の強化では大した違いはないが、何度か強化すればそれなりに効いてくるスキルを覚えられる「神殿」。好みの職業に特化して覚えるか、全ての職業で満遍なく覚えるかが悩ましい



■ オンラインゲームとは思えない抜群のスピード感。課題は初心者への対応か

乱戦でも落ち着いて適切に操作するには、どうしても慣れが必要だ

 今回のテストで、本作の屋台骨となるバトルの仕様や方向性がはっきりと見えてきた。コンシューマーゲーム的なアクションと、オンラインゲーム的なチーム要素を絡めた、日本的なオンラインゲームだ。チーム対戦アクションは数あれど、これに似たゲームとなると数少ない。そういう意外な隙間に目をつけたところは、さすがカプコンといったところ。

 もう1つ特筆すべきは、オンラインゲームとは思えないゲームのスピード感だ。攻撃のリズムやガードからの反撃などのタイミングは、対戦格闘ゲームの感覚に近い。それを遠方のプレーヤーと16人で同時にプレイしているはずなのに、オンラインゲームにありがちなキャラクターの位置ずれや、ダメージ判定の遅れなど、通信のタイムラグに起因する不快感がほとんどない。モーションブラーを多用したグラフィックスも助けにはなっているはずだが、それでもゲームデザインを含め、オンライン向けによくチューニングされていると感じる。

 しかし課題がないわけではない。最大の魅力であるスピード感のあるアクションが、少々難しい。敵の攻撃を見て素早くガード、さらにそのモーションを見て反撃のタイミングとスキルを選ぶ……というのを1対1でやるのも大変なのに、近くには敵味方が入り乱れ、遠くから狙撃してくる敵もいる中で、瞬時に次の行動を選ばねばならない。筆者はこの手のアクションゲームが大好きなので順応できたが、誰でも気軽に遊べるものだとはとても言えない。

 今回は拠点を奪う・壊すという「本拠地戦」のルールで、初心者でもそれなりに貢献する方法はある。しかし敵との戦闘は避けられず、アクションが得意なプレーヤーに一方的にやられることもある。他にはないアクションが本作の魅力ではあるが、それが同時に高いハードルにもなっている。正式サービスではさらに別のルールや仕掛けを用意したり、初心者専用の戦場を用意するなど、何かしらの対策を期待したい。

 もちろんそれは悪い意味ばかりではなく、「アクションゲームファンはどうぞ」と割り切って考えれば、歯ごたえのあるゲームとして楽しんでもらえると思う。一般的なオンラインFPSでも、最初はベテランプレーヤーにバタバタ倒されるものだし、その点で本作が特別厳しいというほどでもない。独特なゲームシステムは、現状でも熱狂的なファンを生むタイプのゲームには仕上がっている。

 あとは今後、どれだけのコンテンツを積み重ねてくるかが見所だ。気がかりなのは、サービス開始時期がまだ不透明なままになっていること。年内サービス予定であれば、そろそろ先の見通しも聞きたいところ。今回のテストの結果を話すタイミングで、何かしらの発表があると期待したい。


【スクリーンショット】
グラフィックスはかなり凝っていて、動きを滑らかに見せるモーションブラー(残像のようなエフェクト)や、光を効果的に使ったスキルエフェクトはとても美しい


(C)CAPCOM CO.,LTD. ALL RIGHTS RESERVED.

(2012年 5月 18日)

[Reported by 石田賀津男]