ジャイロとタッチ操作をメインに、潜水艦ならではの独特なアクションを楽しめるのが、この「スティールダイバー」だ。本作にはそれぞれ魅力が異なる、3種類のゲームが収録されている。この3種類の魅力を交えつつ、本作がどんなゲームなのかをお伝えしていこう。
■ タッチ操作のやりこみゲーム、ジャイロセンサーの体感、シミュレーション的な対戦と、3つのゲームモードを収録
本作には、タッチペン操作で潜水艦を操作しミッションを遂行する横スクロールアクションの「潜水艦モード」、ジャイロ操作で潜望鏡を動かし敵艦船を魚雷で狙う「潜望鏡モード」、シミュレーションゲーム的に対戦が楽しめる「海戦モード」の3種類のモードがある。
・ 「潜水艦モード」―― タッチ操作で潜水艦ならではの動きを楽しむ、ミッションクリア形式のモード
上画面の3Dスクリーンは横スクロールのゲーム画面、下のタッチスクリーンはコントロールレバーやスイッチ等が並ぶ操縦パネル的な画面になっている。上下に動くレバーで浮上と潜水、左右に動くレバーで前進と後退を調整するという、潜水艦ならではの操作になっている |
「潜水艦モード」はタッチ操作で潜水艦を操作し、様々なミッションに挑んでいくという横スクロールアクションのモードだ。右方向にある目的地や目標を目指すのだが、ステージは入り組んだ地形になっていて、ぶつかれば当然ダメージを受けてしまう。また、敵の潜水艦や艦隊の攻撃や機雷などもしかけてあり、それらを魚雷などで撃破しつつ進んでいく。タッチ操作での繊細なコントロールがポイントになっているモードだ。
タッチスクリーンの画面には潜水艦の操作パネルのような画面が表示されていて、ここには前進と後退の出力を操作する横にスライドするレバーと、浮上と潜水の深度を操作する縦にスライドするレバーの、2本のレバーがある。これを操作してコントロールするのだが、当然ながら潜水艦は急には動けない。レバーを操作してから、ゆっくりと反映されていく。そのため、あらかじめ先を見越しての操作が大切になる。
自機として選択できる潜水艦は3タイプ。地形が入り組んでいて大きな敵のいないステージなら小型で小回りの利く「マナティ ND-01」がプレイしやすく、最後にいわゆるボスが出現するステージなら魚雷の4連射ができる大型の「サーペント ND-05」が向いている。中型の「ブルーシャーク ND-03」はバランス型というところで、ステージにあわせた使い分けがポイントになる。最初のうちは船体が小さくて地形にぶつかりにくく、レバー操作が反映されるまでが速い「マナティ ND-01」が扱いやすいだろうか。
プレイ感触は非常に独特で、“潜水艦を操作するもどかしさ”が1番のキーワードだ。前述のようにレバーを操作してもすぐに動くわけではなく、ぐぅーっとゆっくり操作が反映される。「あ、このままだと地形にぶつかる!」と遅れて気づいてからではもう遅い。ステージのマップが表示されているので、スムーズに進めるよう先を見越してコントロールできるようになることがポイントだ。
このもどかしい感覚は、やはり潜水艦の運動特性をゲームで再現したものゆえのものだろう。マップを見つつ、目の前の起伏の“その次”に向けて挙動をコントロールしようという意識がプレイしていると生まれてくる。例えば、1度大きく沈んでから次にすぐさま浮上するというような「V」の字型の地形なら、レバーを大きく潜水側に入れて潜っている途中から、浮上側へと切り替えていくことになる。もちろん、同時に前進/後退の推力のレバーも微調整しながらだ。
「なんだか手元が忙しそうだな」と感じられるかもしれないが、実際プレイ中は結構忙しくタッチペンを動かすことになる。浮上と潜水のレバーを操作するのに気を取られていたら、前進/後退のレバーのことを忘れてしまって慌てたりすることになるだろう。2本のレバーを交互に触りながら微調整するのは、もどかしさがあって慣れないうちは特に苦労するが、上達して狙い通りスイーッと進めるようになると、その動きからも、そして達成感からも気持ちよさが感じられる。
この「潜水艦モード」はタイムアタックがやりこみポイントのひとつになっている。ゴーストの表示(プレーヤーのリプレイ表示)も可能で、開発スタッフによるレコードタイムのゴーストも収録されている。これがまた速い。ステージ中には岩を魚雷で破壊すると空気が噴出して潜水艦を押してくれるような隠れたポイントもある。そうしたギミックも駆使しつつ、最速タイムを狙っていく。
ダメージを受けると水漏れが発生して操作不能の事態に! 水漏れの箇所をタッチして押さえ込む |
ミッションは初期状態では5種類あり、条件を満たすことでさらに解放されるという仕組み。ステージは、シンプルでタイムアタックに適したところから、海底火山が激しく活動する危険地帯、敵艦隊が侵攻してきて多数待ち受けている海域など様々だ。また、ミッションではなく「チャレンジ」という別のゲームもありステージが全8種類ある。こちらはより、タイムアタックに特化したギミックの多い内容だ。
敵潜からの魚雷や艦隊の爆雷、海中の機雷など、敵の攻撃もあるので、こちらも魚雷を発射してそれらを撃破したり、敵の放つ追尾性のある魚雷はマスカーでエアーを噴出しそらしたりして対処するのだが、やはり先を見越した制御がうまくできるかがポイントになる。
中型の「ブルーシャーク ND-03」や大型の「サーペント ND-05」はハンドルで船体の傾斜を調節できるが、小型の「マナティ ND-01」にはハンドルがなく、前方か上空へ1発ずつしか魚雷を撃てない。潜水艦の操縦という観点ではどの潜水艦を選んでも一緒といえそうだが、武装の違いがあるため、選んだ潜水艦によっても遊び方は異なる。敵への攻撃だけでなく、ステージ中の破壊可能なオブジェクトを壊すギミックについても、魚雷が狙いやすいのはメリットになる。運動性能をとるか、装備をとるか、タイムを狙う上で一概にどれがいいというのはなく、ミッションに合わせて試行錯誤することになる。
敵の攻撃を受けてしまうと潜水艦にダメージが蓄積し、たまに水漏れが起きてしまう。タッチスクリーンの操作パネルから水が噴き出して操作不能になり、タッチして押さえ込めば(しばらく漏水箇所を押さえる)すぐに直るのだが、激しい攻撃の中で起きるとけっこう慌ててしまう。ちなみにダメージは水面に浮上すると時間経過で回復していく。最後に大きなボスが待ち受けるステージだと、直前に回復ポイント的な浮上できる箇所が用意されていることもあった。ボスとの戦いでは、よりピンポイントな攻撃と、敵の攻撃を回避する繊細なコントロールが求められる。
ミッションクリア後には、ボーナスステージとしてジャイロを使ったゲームがプレイできる(「潜望鏡モード」と同じゲーム)。ここで敵艦船を撃破すると、潜水艦に貼り付けるデカールがゲットできる。デカールは一定枚数集めると特殊な効果が得られるようになるというパワーアップ要素で、種類が多く効果も様々。
デカールは例えば、「イカリ」のデカールだと「地形の衝突ダメージが半分」になるし、「金の鳥」のデカールなら最高速度がアップする。デカールによって「潜水艦モード」のプレイ感覚が変わってくるというわけだ。
ミッションのステージでは、敵艦船による爆雷や潜水艦による魚雷の攻撃、さらに地形にも活動中の海底火山による衝撃や岩石など、様々な危険が待っている |
・「潜望鏡モード」―― ジャイロセンサーで自分の体を動かし視界を操作! 3D画面と相まって独特な体験が可能
まさに潜望鏡を覗いている状態の画面でプレイする「潜望鏡モード」。視界は3DS本体を左右に動かして操作する。360度がゲームの舞台だ |
「敵艦船(嵐)」では、海が荒れ、それに合わせて敵艦船も、そして自分の視界も上下する |
2つめのゲームモード「潜望鏡モード」は、前述の「潜水艦モード」のボーナスゲームを単体で楽しめる、といった感じのモードだ。ジャイロセンサーの機能により、本体を左右に動かすことで3Dスクリーンの視界も動く。360度を見回すことができるので、回転する椅子に座るか、立ち上がってプレイすると遊びやすいだろう。代わりにタッチペンで視界を動かすことも可能だ。
「潜望鏡モード」は制限時間内に敵の艦隊や潜水艦を魚雷で撃破するのが目的。攻撃目標(ステージ)は「敵艦船」、「敵艦船(嵐)」、「敵潜水艦」の3種類だ。指定された数を撃破すればクリアとなる。
このモードは画面を見ての通りで、体感ゲーム的な魅力がポイント。自分の体ごと回転して視界を動かす感覚は非常に独特で、他にないものだ。「どこだ? どこだ?」と敵艦船を探して3DSを手にぐるぐる回っているプレイの様子は、周りから見るとだいぶユニークかもしれない。ジャイロの精度はなかなかで、視界との一体感も感じられる。実際に360度の周囲に海があるかのようで、3Dスクリーンの3D効果も相まって、かなり独特の体験といえる。
タッチスクリーンには、ズームと潜水の操作をするレバー2本と、魚雷を発射するスイッチがあり、潜望鏡モードではタッチ操作でもボタンでも操作できるようになっている。周囲を見回し、発見した敵艦船に魚雷を当てるだけと、ルールとしてはシンプルなのだが、艦船は移動しているし、魚雷が到達するまでに距離もある。予測して撃つのがポイントだ。
「敵艦船」のステージはシンプルだが、「敵艦船(嵐)」では、海が荒れてうねっている。それにあわせて自分の視界も上下するので、スリリングさや臨場感が加わる。魚雷を命中させるのもより難しい。
「潜水艦」が攻撃目標のステージでは、潜望鏡ではなくソナーを頼りに敵を見つけることになる。ズームで直接見つけることもできなくはないが、視界は悪く、距離の遠い潜水艦を見つけるのは難しい。敵の攻撃も激しいので、潜水操作を使って避けるのも大事になってくる。
シンプルなルールで、3DSならではの体感ゲーム的な魅力を楽しめるモードだ。なお、個人差があることなので一概には言えないが、画面酔いと目が回ることには少し気をつけていただきたい。今回、椅子に座って自分の体をぐるぐると回転させて遊んでみたが、ついついゲームに夢中になるあまり、気が付くと目が回っていたことがあった。特に嵐のステージでは画面内の視界の上下移動も加わるので、酔いやすい、という人は特に、適度に休憩を取りながら楽しんでもらいたい。
「敵潜水艦」のステージでは、海中がメイン。ソナーを駆使して敵潜水艦を見つけ、軌道を読んで魚雷を撃ち込んでいく |
・ 「海戦モード」―― ターン制で対戦するシミュレーションの魅力を持つモード
ヘックスマップに互いの艦船を配置し戦う対戦タイプのモード。姿の見えない敵艦船を互いに探り合うという、熱い読みあいが楽しめるゲームだ |
「海戦モード」は対戦形式のシミュレーションゲーム的なモードだ。CPUとの対戦か、1対1のプレーヤー同士の対戦が可能で、ソフトが1本あれば対戦ができるダウンロードプレイにも対応している。
このモードは、いわゆる「海戦ゲーム(互いにマス目を指定して配置された相手艦隊を見つけ、撃破するゲーム)」をアレンジしたようなルールで、互いの海域に艦隊を配置し、潜水艦で相手海域に侵攻、ソナーを使って相手艦隊を見つけ、輸送船を撃破するのが目標になる。1ターンに1回行動可能で、攻守交代制で進むターン制のゲームだ。
マップは上下が互いの海域になっていて、ここに潜水艦、護衛艦、輸送船を配置してゲームスタート。相手側の海域に進めるのは潜水艦1隻のみで、潜水艦をメインに、いち早く相手の輸送船を探し出せるかがポイントになる。
自分の艦船にタッチすると、敵艦が近くにいる場合マス目に「?」が表示されるのだが、同じ距離のマス全てに「?」が表示されるため、正確な位置はわからない。勘を頼りに移動して見つけるか、ソナーを使って正確な情報を得るかになるが、ソナーを使うと相手にもこちらの潜水艦の位置がわかってしまうし、自分のターンもそれだけで終わってしまう。どこでソナーを使うか、タイミングが重要だ。
潜水艦が敵艦船と同じマス目に入ったら攻撃開始。このときは潜望鏡モードの画面での攻撃になる。移動する艦船の動きを予測しての魚雷発射がポイントだ。このとき攻撃されている側は、攻撃が命中しないようカメラを切り替えながら見守ることになる。
潜水艦にとって脅威になるのは護衛艦の爆雷だ。護衛艦を、敵潜水艦のいるマスに移動させると爆雷を投下して攻撃できる。爆雷は爆発するタイミングを50m、100m、150mから選べ、潜水艦側も同じ3択から選ぶことになる。互いの選んだ位置が一致すれば攻撃命中だ。潜水艦が撃破されると負けになってしまうので、護衛艦に深入りするのはあまり得策ではないだろう。輸送船探しの中のハズレと言っていい。
テクニックとして、艦船をタッチしたときの「?」表示が、複数の艦船で同じ距離のマスに「?」が表示される場合、その重なるところに敵の潜水艦がいると絞り込むこともできる。
こうしたテクニックも活用しつつ、ターンの中でいかに攻めるかいかに守るかがポイント。CPUとの対戦だと難易度選択はなく、読みあいというのもなかなか難しいところがあるが、プレーヤー同士の対戦なら、いわゆる口プレイ(会話で惑わすプレイ)をしたり、表情や反応からなど、いろいろと読みあいをするポイントが生まれてくるだろう。熱い読みあいが楽しめる対戦モードだ。
■ ボリューミーな大作ではないが、個性のある魅力が3つ詰まった“スルメゲー”
魅力が全く異なる3種類のモードが楽しめる、かなり独特なゲームだ。「潜水艦モード」ではタッチスクリーンで2本のレバーを駆使して操作するおもしろさがあり、「潜望鏡モード」ではジャイロセンサーを使い、360度の視界の中を3Dスクリーンで楽しめるという体感の魅力がある。「海戦モード」の対戦もまた、頭脳戦のおもしろさがあり、ガラっと別の魅力が感じられる。
「潜水艦モード」、「潜望鏡モード」ともに、もう少し種類が欲しかったともいえるが、「潜水艦モード」はタイムアタックや開発スタッフのゴーストへの挑戦など、やりこみ甲斐はある。また、3DSならば、ということで期待してしまうのが「すれ違い」要素だが、残念ながら本作にはないようだ。
友人知人に3DSをお持ちの人がいるならば、「海戦モード」をたっぷり楽しみたい。ダウンロードプレイ対応でソフトが1本あれば対戦できるのは嬉しいところ。
タイトル全体への印象として、見た目も含め、ストイックなところがある。それぞれのモードをこつこつと遊びこんでいくと奥深い魅力が感じられる、いわゆる“スルメゲー”というべき内容となっている。潜水艦という題材や、ゲームとしての手触りがけっこう特殊なので、万人にオススメするのは難しいかもしれないが、スコアアタックをメインにやりこめる人なら、マッチするだろう。
画面写真は2D表示のものです。
(C)2011 Nintendo
(2011年 5月 18日)