★ PSPゲームレビュー★
「FFIV」に連なる物語の全てを収録
史上“最も快適で、最も完全な「FFIV」”
「ファイナルファンタジーIV コンプリートコレクション」
ジャンル:
  • RPG
発売元:
開発元:
スクウェア・エニックス
プラットフォーム:
  • PSP
価格:
発売日:
2011年3月24日
レーティング:
CERO:A(全年齢対象)

 「ファイナルファンタジーIVコンプリートコレクション(以下、『FF4CC』)」は、「FFIV」にまつわる全てのストーリーを収録した、まさにコンプリートコレクションの名前にふさわしいタイトルだ。「ファイナルファンタジーIV(以下、『FFIV』)」、その後の物語を描いた続編作品「ジ・アフターイヤーズ」、そして、2つの物語の間を描く新規シナリオの「Interlude」が1本に収録されている。

 ドット絵のグラフィックスはPSP向けに完全リニューアルされており、BGMはアレンジバージョンとオリジナルバージョンの両方を収録していて切り替えが可能。関連イラストやCGムービー等を収録したギャラリーモードを搭載。さらに、プレイを快適にする多数のシステムを搭載している。

 「FFIV」にまつわる物語の全てを完全収録し、原作の魅力を大事にしつつリニューアルされていることはもちろんとして、圧倒的に快適なプレイが楽しめることが本作の大きな魅力。そうした魅力について触れていこう。


【オープニングムービー 「ジ・アフターイヤーズ」】
【オープニングムービー 「FFIV」】
【ギャラリーモード】


■ 「FFIV」、「Interlude」、「The After Years」、3つの作品を完全収録

 まずは、本作に収録されている3つの物語、「ファイナルファンタジーIV:ジ・アフターイヤーズ」、「Interlude」、「ファイナルファンタジーIV」について触れていこう。

・十数年後の世界を描いた正当続編「ファイナルファンタジーIV:ジ・アフターイヤーズ」

主人公はセシルとローザの子供「セオドア」。彼以外にも、「FFIV」でおなじみのキャラクターが成長した姿や新しい世代のキャラクターたちが多数登場する
セオドアがいない間にバロン城は膨大な数の魔物に襲われてしまう

 「ジ・アフターイヤーズ」はもともと携帯電話用ゲームとしてダウンロード販売された作品で、「FFIV」の十数年後の世界を舞台にした正当続編。のちにWiiウェアでもダウンロード配信されたが、パッケージ作品に収録されたのは今回がはじめてとなる。

 主人公はセシルとローザの子供“セオドア”。物語は、彼が1人前の騎士となるための試練に挑むため、赤い翼に乗っているところから始まる。「FFIV」本編の始まりでセシルが赤い翼に乗っているシーンを彷彿とさせる始まり方だ。

 「ジ・アフターイヤーズ」の特徴として、こうした「FFIV」での印象的なシーンを、成長したキャラクターやセオドアのような新しい世代のキャラクターがなぞらえるシーンが多い。「FFIV」をプレイした人なら、思わず反応してしまうような魅力が詰め込まれている。

 赤い翼やセオドアがバロン城を離れている間に、大きな異変が起こる。大量の魔物が空から城を襲い、バロンの王となったセシルや、ローザ、シドたちにも危険が迫る。セシルはローザとシドを逃がし最後まで応戦するが……。空には遠く去って行ったはずのもうひとつの月が、再び現われていた。

 セオドアのシナリオからゲームは始まっていくが、その後、フリーシナリオとして「リディア編」、「ヤン編」、「パロム編」、「エッジ編」、「ポロム編」、「ギルバート編」という6本のシナリオが登場し自由にプレイできる。それらを経て、「カイン編」「月の民編」「真月編」へと繋がっていく作りだ。

 これはもともと本作が携帯電話用ゲームとして、シナリオを個別にダウンロードできるようになっていたなごりなのだが、「FF」としては珍しい章立ての作りには新鮮さがある。「FF4CC」では全てのシナリオがもとから収録されているのでダウンロードの手間もなく、遊びやすい。


「ジ・アフターイヤーズ」はたくさんのシナリオで構成されているのが特徴。それぞれのキャラクターの物語を自由にプレイできる。この「FF」には珍しい章立ての作りは新鮮だ

バトルシステムの特徴のひとつ「月齢」。宿泊すると月齢が進み、魔法や物理攻撃の威力が変わる

 「ジ・アフターイヤーズ」では、バトルシステムに新しい要素が加わっている。ひとつが「月齢」の要素だ。これは宿屋やテントなどで宿泊すると月の満ち欠けが変化するというもので、満月のときなら黒魔法の威力が高まり、物理攻撃の威力が下がる。満月以外に、上弦の月、新月、下弦の月と月齢は4種類あり、白黒の魔法や物理攻撃に影響する。攻略にも影響するので、自分のパーティーメンバーや敵に合わせ、「月齢」を意識するのがポイント。

 もうひとつのバトル要素は「バンド技」。戦闘中に、特定のキャラクター同士のコマンドを組み合わせて発動する連携技だ。たとえば、セシルの「たたかう」とローザの「白魔法」を組み合わせれば、「ホーリーブレード」というバンド技が発動する。

 バンド技は全70種類以上あり、1度発動すればリストに登録されるようになっている。キャラクター同士の関係性などを考え、いろんな組み合わせを試してみるのがオススメ。5人でのバンド技など演出がかなり凝ったものもあり、必見だ。


バトルシステムのもうひとつの特徴が連携技の「バンド」。特定のキャラクター同士のコマンドを組み合わせて発動する強力な技だ

・2つの物語をつなぐ新規シナリオ「Interlude」

まだセオドアが生まれる前、ダムシアン復興の祝いからはじまる「Interlude」。本作でのみプレイできる新規シナリオだ

 「FF4CC」で新規に収録されたのがこの「Interlude」。「FFIV」と「ジ・アフター」の間に起こった、後の“異変の予兆”とも言える物語が描かれている。SFCオリジナル版の「FFIV」に深く携わった時田貴司氏の完全監修による、本作でのみプレイ可能な新規シナリオだ。

 物語の時代は、まだセオドアが生まれる前。ギルバートが国王となったダムシアン復興の祝いへ、セシルやローザをはじめとした懐かしい顔ぶれが集まるのだが……。「FFIV」の物語のあと、平和が訪れた世界に突如あふれる魔物、召喚獣たちの異変、暗躍する謎の存在、そして、新しい世代のキャラクターの誕生が描かれる。

 「Interlude」ではキャラクターのレベルがある程度高く、レベル上げ等の必要はほとんどなくストーリーを進めていける。あまり長い物語ではなく、通して2時間程度で遊び終わるぐらいのボリュームになっている。


「ジ・アフターイヤーズ」へ続く異変の予兆が描かれている

・全ての始まりである「ファイナルファンタジーIV」

「FFIV」も完全収録。他2作と同様にリファインされたハイエンドなドット絵を基本にしている

 全ての物語の原点となる「FF4」も完全収録されている。「FFIV」はアクティブタイムバトル(ATB)を採用し、リアルタイムの戦闘に進化。スーパーファミコンではじめて発売された「ファイナルファンタジー」ということで高い人気となった作品。これまでに様々な機種に移植されてきたが、ドット絵を基本にグラフィックスがリファインされたのは今作が初めてとなる。

 バロンが誇る飛空挺団“赤い翼”を率いる暗黒騎士セシル、親友である竜騎士部隊長カインは、その座を剥奪され、辺境の村ミストへと向かうよう命じられる。増え続ける魔物、人が変わったようにクリスタルを求めるようになったバロン王。異変が起こり始めていた。

 “クリスタル”、そして“飛空挺”と、「ファイナルファンタジー」を象徴するキーワードが軸になっており、シリーズ作の中でもストーリーの魅力が強く出ている作品。また、仲間の入れ替わりが多いのも特徴で、それぞれのキャラクターの魅力やドラマも魅力になっている。


「FF」シリーズではじめてアクティブタイムバトル(ATB)を採用し、シナリオでもたくさんの仲間が登場してパーティーメンバーが入れ替わっていくなど、特徴が多い




■ 高速な自動戦闘「オートバトル」をはじめ、快適に楽しめる新システム多数。快適さが本作最大の魅力

 「FFIV」にまつわる3作が収録され、ボリュームはかなりのものがある「FF4CC」だが、最大の魅力は“快適さ”にある。

ATBゲージの上あたりに「AUTO」と表示されている。これがオートバトル中の表示で、コマンド入力が自動で行われる。バトルもハイスピードになり、非常に快適だ

 もっともインパクトが強いのは“オートバトル”の存在。オートバトルは自動でコマンド入力をしてくれるもので、初期設定なら「たたかう」コマンドを、コンフィグでカーソル位置記憶にしておけば、前回使ったコマンドが自動で選択される。戦闘時にセレクトボタンを押すと切り替えられるようになっていて、設定すれば次以降の戦闘にも持ち越される。

 この“オートバトル”にするとバトルスピードも非常に速くなり、通常のバトルスピード設定の2倍になる。ほとんどの雑魚敵との戦闘ならオートバトルにしておけば瞬時に戦闘が終わるほどで、逃げるにしてもバトルスピード自体が速くなっているので戦闘から離脱するまでが速まる。驚くほどの快適さだ。

 フィールド移動ではダッシュ移動ができる、×ボタンを押しながら移動するもので、コンフィグ設定で歩きと走りのデフォルトを切り替えることも可能だ。

 エンカウント率や難易度はSFC準拠と思われるもので、どちらも結構高めになっている。だが、オートバトルやダッシュ移動のおかげで苦にはならない。オリジナルの歯ごたえを残しつつストレスは軽減している好印象な仕上がり。

 ちなみに、フィールドやセーブポイントでセレクトボタンを押すと「テントを使いますか?」と1発で表示されるようになっていて、これも便利でうれしい。

 リニューアルされたグラフィックスに関しては、SFC等のオリジナル版をプレイした人だと好みが分かれるところだろう。ドット絵を基本にしたグラフィックスは高精細になっていて、特にモンスターの描画はくっきりしていて陰影も深く出ており、目を見張るものがある。一方、メニュー画面や会話時に表示されるキャラクターの顔グラフィックスは原作とはテイストがけっこう変わっているように感じられた。

魔法のエフェクトは今世代のゲーム機らしいリッチなエフェクトに。効果音もそれにともなって新しくなっている。ただ、妙に印象的だった黒魔法バイオの音など、ちょっと寂しさを感じる変更もある

 魔法のエフェクトはドットベースではなく完全に一新されていて、今世代のゲーム機らしいリッチなエフェクトになっている。魔法については効果音も全て一新されているので、たとえば黒魔法バイオの印象的な効果音が変わっているのは、原作をプレイした人にとって寂しいところ。BGMはアレンジとオリジナルを切り替えられるようになっているので、できれば魔法周りの効果音にも何か欲しかったところだ。

 「ジ・アフターイヤーズ」については、携帯電話版やWiiウェア版と比べると難易度が少し調整されているようで、楽に進めるようになっている。「FFIV」については、SFC版やGBA版をベースにしているようで、いわば原作に忠実な仕上がり。歯ごたえもきっちり保っている。

 唯一、ここは変えて欲しかったと感じたのが、アイテム所持数。アイテム所持数が最大48個とSFC準拠なのだが、アイテム収集に苦労するばかりか普通にプレイしていてもアイテム欄が埋まりがちなところがあるので、ここは改善されていても良かったかもしれない(オリジナルにできる限り忠実にという意味では、これも重要な要素かもしれないが)。

 なお、セーブデータは3作品で独立しており、作品間でのデータ引き継ぎはない。どれからでも遊べる作りだ。また、メモリースティックDUOへのデータインストールに対応しており、必要容量は318MB。インストールすれば、読み込み時間がほぼなくなるほど非常に快適なプレイが可能だ。また、プレイ中にはL+R+スタート+セレクトでソフトリセットもできる。起動時の警告画面まで戻ってしまうので少し時間がかかるものの、やり直しやプレイする作品を変えるときに重宝する。


高精細になったグラフィックスのなかでも、モンスターの描画はくっきりと、それでいて陰影も濃く出ていて、見ると「おおっ」と声が出るほどに美麗になっている



■ “快適”で“完全”「FFIV」にまつわる全てを収録した「コンプリートコレクション」

「FFIV」、「Interlude」、「ジ・アフターイヤーズ」と、「FFIV」の全てを収録し、まさにコンプリートコレクションと呼ぶにふさわしい。快適さというプラスアルファはなによりうれしいものだ

 顔グラフィックスやキャラクターのデザインなど、一部テイストの変化には好みが分かれるところがあるかもしれないが、本作は史上“最も快適で、最も完全な「FFIV」”と言える。

 「FFIV」にまつわる全ての物語が完全収録され、ボリューム面の満足度は非常に高い。「ジ・アフターイヤーズ」も全てのエピソードが1本に収録されていることで、遊びやすく、とっつきが良くなった。「FFIV」を楽しんだが、まだ「ジ・アフターイヤーズ」はプレイしていないという人には、この「FF4CC」をオススメしたい。

 何より、オートバトル等によるプレイの快適さは驚くほど。戦闘は原作同様の高いエンカウント率を残しつつ、ハイスピードにオートで終わるのでストレスにはならず、レベル上げもしやすい。ボス戦闘では歯ごたえがしっかりある。原作の歯ごたえを残しつつストレスだけ軽減したうまい作りだ。

 「FFIV」をなんらかのハードでプレイ済みという人は多いと思うが、このストレスフリーに遊べる良さと、新規グラフィックスの新鮮さを楽しみつつプレイできるはずだ。そして、「Interlude」、さらに「ジ・アフターイヤーズ」と、同様の快適さで通してプレイできるのも魅力的。全てを“快適に完全に楽しめる「コンプリートコレクション」”だ。


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(2011年 4月 5日)

[Reported by 山村智美 ]