★PS3/Xbox 360ゲームレビュー★

飛び、撃ち、切り裂く! 無敵の美女ルビ見参!!
まさにインタラクティブなハリウッド映画!

「WET」

  • ジャンル:アクション
  • 発売元:ベセスダ・ソフトワークス
  • 開発元:A2M
  • 価格:7,140円(税込)
  • プラットフォーム:PS3 / Xbox 360
  • 発売日:PS3:9月17日 / Xbox 360:未定
  • プレイ人数:1人
  • レーティング:CERO:D(17歳以上対象)

 ベセスダ・ソフトワークスが9月17日にPS3版を発売した「WET」は、撃ちまくり、斬りまくりの爽快系アクションゲームだ。本作は、北米のテレビドラマ「24」のシナリオライターが脚本を務め、アクション監修、モーションキャプチャーにハリウッド映画のスタッフを起用。ゲーム内では、その効果が充分に感じられる、ハリウッド映画さながらのド派手なアクション、演出を楽しむことができる。

 主人公ルビが向かうところ、悪漢どもは頭を撃ち抜かれ、刀で体を切り裂かれる。ドラム缶は炎を上げ、車は爆発し宙に舞う。チャイナタウン、高速道路、オペラハウス、すべてが鮮血と業火に満たされる。ド派手で過激でそして「爽快」なアクションゲームである。荒削りな点もあるが、ルビの超絶アクションは多くのプレーヤーに楽しんでもらいたい。かっこよく、爽快感のある戦いが体験できる作品だ。



■ 「私を罠にはめた奴は許さない!」。復讐の女神ルビが進む血まみれの道

超人的な戦闘力を持つ美女ルビ・マローン。敵に回すと恐ろしい不死身の女である
壁を走り、銃を乱射。アクション中に銃を撃つことで時間がスローになり、敵を蜂の巣にできる
宙を舞う車とともに敵の車の天井へ! ハリウッド最先端のアクション映画の演出が、随所に取り入れられている

 「WET」とは、殺しの際に手が血で濡れることをほのめかす意味だという。本作の主人公ルビ・マローンは裏社会で名前の通る“何でも屋”だ。2丁拳銃と刀、そして鍛え上げた超人的な身体能力で、引き受けた依頼ならばどんな危険な状況にも恐れずに飛び込んでいく。「WET」のタイトル通り、ルビは敵の返り血を浴びながらターゲットへと突き進んでいく。

 驚くべきはルビの戦闘能力だ。軽々と宙を舞い空中から、地面をスライディングした姿勢で、垂直の壁を走りながらルビが撃ち出す銃弾は正確に敵の頭を撃ち抜く。そして、背負った刀をひとたび抜けば、何人もの敵を瞬時に切り裂く。ルビの強さを象徴するシーンとして、あるステージのボスがルビに向かって「どうやったらお前を殺せるんだ?」と悲鳴混じりにわめく場面がある。

 十数人の敵を瞬時に倒し、絶体絶命の罠にはめても平然とそこから生還してくる。それが本作のヒロイン、ルビなのである。「彼女を敵に回して、無事な者はいない」……「WET」はプレーヤーの手でこの“事実”を実現するゲームだ。ルビを自由自在に操り、群がる敵を倒す。その超人的な戦闘とアクションをたっぷり楽しめる作品である。

 今回、ルビはトレバー・アッカーズという男から、彼の父親であり、世界的な麻薬密売シンジケートのボス、ウィリアム・アッカーズに移植するための「心臓」を受け取る依頼を受ける。しかしシモンズと名乗る小悪党が、その心臓を横取りする。逃げるシモンズを追い、チャイナタウンを血で染め、高速道路で大事故を起こすような騒ぎを巻き起こした後、ルビは心臓を奪還、ウィリアムは一命をとりとめる。

 それから数カ月後、ルビの自宅に1台のリムジンが止まる。中から出てきた男はウィリアム・アッカーズである。彼は息子を連れ戻して欲しいという依頼をしてきた。ルビはその仕事を受け、トレバーがいるという香港に向かう。しかしそれはルビを道具に使った壮大な罠だった。自分が利用された知ったルビは怒りに燃え、復讐の戦いを開始する……。

 「WET」はテレビドラマ「24」のスクリプトライターDuppy Dimitrius氏が脚本を担当し、そして「マトリックス」や「スピードレーサー」のスタントチーム「87 Eleven」がアクションを監修。「スパイダーマン」や「メン・イン・ブラック2」などを手がけたスタジオ「House of Moves」がモーションキャプチャーを担当している。ハリウッド映画のスタッフを起用した効果は画面から充分に感じられ、本作の大きなセールスポイントとなっている。

 昨今のハリウッドのアクション映画では冒頭にインパクトたっぷりのアクションシーンを入れ、観客を映画にグッと引き込むという展開が顕著である。「WET」もその手法が取り入れられており、ステージ2の「自動車大虐殺」は特にインパクトが強い演出がなされている。黒い車で高速道路を逃げるシモンズを、ルビは走る車の天井に次々と飛び移りながら追う。シモンズの部下は車やバイクから銃を乱射しルビを狙う。

 ルビは屋根の上で銃を乱射、ボンネットに移って他の車にジャンプ。さらにトラックの荷台の側面を蹴って大きくジャンプしたり、横転する車を飛び越えたりと、ハリウッド映画そのままの派手なアクションが展開する。ゲームシステムとしては決められたタイミングで指示されたボタンを押す、という古典的なシステムだが、難易度はそれほど高くなく、プレーヤーは画面のアクションをたっぷり見ながら操作ができるバランスになっている。この過剰とも言える演出は映画と同じような強い吸引力を感じた。最先端のアクション映画の手法とインタラクティブ性が生み出す新しい可能性が垣間見えたシーンだと思う。

 もちろんメインとなるアクション部分もたっぷり魅力が詰まっている。ルビがジャンプやスライディング中など何らかのアクションとともに銃を撃つと、周囲の動きがスローモーションになり一方的に攻撃できる。極端な話、普通に移動しながら攻撃を行なわず、ずっとスローモーションで敵を攻撃するのが本作の戦闘といえる。また刀も強力で序盤のステージでは敵に囲まれた場合、刀を振っているだけで倒せてしまう。アクションが苦手なユーザーも練習すれば先に進めるようなバランスになっている。

 うまいプレーヤーへは、高難易度モードはもちろん、スコア稼ぎ、そして「よりカッコイイ戦い方」という目標が待っている。クリアを目指すだけのプレイでは攻撃のためのアクションが単調になりがちだ。壁を走り地を滑り、空中を舞いながらどこまで華麗に戦うか、ルビの能力はそんなこだわりを可能にする。昨今では「プレイ動画」が話題に上がるが、コアプレーヤーによる本作の「超絶プレイ」というものがあったらぜひ見たいと思った。「WET」は「魅せる」ことに強いこだわりを感じる作品である。プレーヤーがどうルビを“演じる”かも楽しみな作品だ。


左から、国際麻薬組織のボスの息子トレバー、盲目でアルビノの暗殺者タランチュラ、タクシー運転手で情報屋のミン
チュートリアルも兼ねた最初のステージ。逃げるシモンズを追いながら、ルビはチャイナタウンを血で染めていく
高速道路でのチェイス。乗用車やトラックが宙に舞い爆発炎上する。ゲームに強く引き込まれる派手なステージだ
香港の街でストリートギャングと対決。ガトリングガンを奪い群がる敵をなぎ倒す


■ 宙を舞い、地を滑り、銃弾と刀で敵を屠る。超人的なルビのアクション

鋭い切れ味を見せる刀。敵をまとめて切ることで高得点を獲得
スタイルポイントを使うことでルビはさらなる強さを獲得する
画面が赤と黒、白の3色に変わるRageモード。攻撃力が跳ね上がりまさに無敵の強さを発揮できる

 ルビは多彩なアクションが可能だ。×ボタンでジャンプ、○ボタンでスライド、L1ボタンを押しながら壁に向かうことでウォールランをする。また水平に出ている棒につかまることで大車輪を行ない、より高い場所遠いところに飛び移ることができる。L1ボタンを押すとつかまれるところが赤くなる「ルビビジョン」が発動する。これにより足場を探り、一見移動不可能なところにも道を発見していくのだ。

 アクションを行なっているときにR1の射撃ボタンを押すと時間がスローになり、敵を攻撃しやすくなる。この時はルビの2丁拳銃のうち左手は自動で近くの敵を狙うようになる。中央に表示されるポインターを動かすことで任意の敵を攻撃することが可能なので、2人の敵を同時に撃つことも、ポインターを敵の頭部に動かしヘッドショットすることもできる。またドラム缶や車を撃ち爆発させて敵を巻き込んで倒すのも有効だ。

 敵を倒すと「スタイルポイント」が入手できる。ジャンプとスライディング中の射撃はどこでもできるため多用しがちだが、同じ攻撃で敵を倒し続けると得られるポイントが少なくなる。刀を使ったり、ウオールランから攻撃したりと工夫することでポイントを多く入手できる。スタイルポイントが貯まってくると右上のポイント倍率アイコンが上がる。倍率は最大5で、倍率に応じて得られるポイントも上昇していく。倍率は敵を倒さないとどんどん下がっていく。敵を倒し続け倍率を高いままどれだけ長く維持できるかが高得点の鍵になる。

 スタイルポイントはステージの合間のアップグレードショップで使う。ポイントを消費することでスライディングから刀を振り上げる「ライジングスラッシュ」や、敵の体を駈け上る「ヒューマンウォールラン」といった技を習得できる。さらに拳銃や刀の威力、ゲームが進むと使用できるサブマシンガンやショットガンクロスボウの性能を向上させることも可能だ。ゲーム中盤からは敵の体力も増えてくる。早めに性能をアップさせることでゲームは有利になるだろう。

 ルビは敵の待ち受ける中へ1人で正面切って乗り込んでいくこともある。そこではいくつかのドアが設置されており、ここから敵が多数出てくる。素早く敵を殲滅させるためにはドアの近くのマークに刀で斬りつけドアを閉じてしまえばいい。ここには倍率を上げるアイテムが設置されていることも多い。このアイテムを取ることでより多くのスタイルポイントを獲得できる。

 敵の集団と戦う場所は得点稼ぎの場所でもある。あえてすぐにドアを閉じず、敵が出てこなくなるまで戦い続ければ、高得点を得ることも可能だ。ただし敵が増えればダメージを受けることも多くなる。中盤からは刀でダメージを与えられないガトリングガンを持つ中ボスが出てくる。いかにこいつを早く倒せるかも攻略では重要だ。

 各ステージではルビが返り血を顔面に浴び「Rageモード」になるポイントがある。血を浴びたルビの視界は黒と赤と白に塗り分けられ、シンプルなイラストのような世界になる。Rageモードではルビの攻撃力とスピードが跳ね上がり、スタイルポイントではなく「連殺数」が重要となる。敵を殺すとスタイル倍率ではなく殺した人数とゲージが表示されるのだ。

 ゲージがなくなる前に敵を倒せばカウンターが上昇していく。黒と赤そして白の3色に塗り分けられた世界はインパクトが強く、倒された敵は死体を残さず粉々に分解して消え去る。独特な雰囲気の中でゲージがなくなる前に次の敵を探すのは、自分が獲物を求め続けるモンスターになったような危険な雰囲気に酔える。目を赤く光らせたルビも怖くてカッコイイ。

 本作は音楽も大きくオススメしたい。敵が待ち受けているところに突っ込む場面や、Rageモードなど、「これからド派手なアクションが始まる!」という場面では、ボーカルの入った曲が鳴り響くのだ。プレイしていると、「WET」の多彩なBGM、ボーカル曲にも驚かされる。Rageモードの狂気を煽るような歌、闘技場で襲いかかる雑魚どもを前にしたときに鳴り響く曲など実に多彩な曲が収録されているのだ。プレーヤーの血管に浸透し、闘争本能に火をつけるような選曲のセンスも素晴らしい。「WET」の爽快感はこのBGMの中で激しく戦う高揚感がもたらしていると言っても過言ではない。


走り、飛び、滑り……。あらゆる姿勢からルビは射撃を繰り出し敵を倒す。どこまでルビに華麗な戦いをさせられるかもチャレンジしてみたい
BGMがプレーヤーをハイテンションに誘うRageモード。ただし連殺数を上げるためには冷静さも必要だ
左がつかまれるところを赤く表示するルビビジョン。炎を避けたり、落ちてくるタルをかわしたりとアクション要素が強い場面も多い


■ 高度数千メートルから、敵の罠のまっただ中まで、恐れることなく進む“ルビの強さ”に驚嘆せよ!

大量の敵に周りを囲まれる。絶体絶命の状況を力づくで切り抜ける、ルビの無敵の強さを堪能して欲しい
高度数千メートルでの戦い。いくつものアクション映画で試みられていたシーンをインタラクティブに楽しめる
リングをくぐっていくトレーニングステージ。練習することで自在にルビを操れるようになる。チャレンジモードでさらなる攻略も可能

 「WET」では様々な凝ったステージがルビを待ち受ける。香港を舞台とした「皆、走る」では背景としてお祭りの巨大な竜がうねうねと動いているのが面白いし、「汚いねずみ」ではパンクファッションに身を包んだストリートギャングが集団でルビを出迎える。「招かれざる客」は地雷原を岩や遺跡にしがみつき飛び越えていくという、アクションゲームならではの感触が楽しい。

 演出が特にぶっ飛んでいるのは「カフカの策略」というステージだ。ここでルビは爆発する飛行機から投げ出されるという絶体絶命の状況に陥る。飛行機に乗っていたガードマンはそんな状況にもかかわらず、同じように落下しながらルビを狙って攻撃してくる。スカイダイビング中の銃撃戦としては「シューティムアップ」という映画がかなり派手で印象深かったが、このステージでは映画そのままの「高度数千メートルから落下しながらのガンアクション」をインタラクティブに“体験”できるのだ。

 銃撃戦をくぐり抜けたステージ後半では落下しながら燃えさかる飛行機の破片を避け、破片の1つについているパラシュートを取りにいくという展開になる。他の破片にぶつかると即ミスとなるシビアなルールで、「WET」の中でも特に“ゲーム”らしい場面ともいえる。「WET」ではアクションと戦闘を様々なバランスでミックスしている。凝った展開とともに、ゲームとしても様々な要素を取り入れているのだ。

 ストーリーの合間では、ルビの“自宅”がステージとなることもある。「飛行機は大嫌い」と公言しているにもかかわらず、ルビの家は壊れた爆撃機を改造したものだ。ここは様々なトレーニングができるようになっており、プレーヤーはチャレンジとして決められたコースを制限時間内に通過しなくてはならない。いざプレイしてみると制限時間がシビアで、コースを覚えないとまともに進むことができない。しかもクリアしないと次のステージに行けないのだ。最初は「普通のステージより難しいぞ、なんだこれ?」と思ってしまった。

 トレーニングステージだからスキップできてもいいだろうと思ったりもしながら、何度も失敗してようやくクリアしたのだが、後になってこのトレーニングステージがゲームを進める大事な足がかりになっていることに気がついた。ステージが進むにつれ要求されるアクションの難易度が上がってくる。トレーニングステージで体で覚えたテクニックがゲームを進める力、ルビの潜在能力を引き出すより爽快なアクションに繋がっていくと実感できた。プレーヤースキルが上がった今ならば、さらなる目標に向かってやりこむのも面白そうだと考えるようにすらなった。ちなみにトレーニングはチャレンジモードで何度でも挑戦できる。

 「WET」は個人的にかなりツボにはまったゲームだ。シビアな目で見れば、アクションゲームとしての細やかなチューニングがもうすこしできたのではないかとか、敵の攻撃のダメージバランス、地形移動の時にカメラアングルでの操作など、細部で「大味さ」を感じる部分はある。ゲーム的にもタイミングに合わせて指示されたボタンを押す所などはさらなる進化が望めるのではないかとも思う。ステージの密度が濃い分、全体のボリュームが少ないという批判も出るだろう。

 しかしそういった弱点を補ってあまりある華麗さとノリが本作にはある。これまでのゲーム以上に「ハリウッド的」テイストが感じられるゲームだ。クエンティン・タランティーノ監督の作品をはじめとした、ハイテンションなアクション映画が好きな人には文句なしにオススメするゲームだ。どこまでルビに華麗な活躍をさせられるか、挑戦して欲しいと思う。ストーリーモードのボリュームが足りないところも、より美しく、高得点を目指すやりこみという方向でカバーできている。

 「WET」はハリウッド的アクション映画とゲームの融合にこれまで以上に踏み込んだ作品だと感じた。アメコミを映画にした作品に通じる、カリカチュアされた雰囲気を持つ過激で楽しい作品だ。ボーカル曲にノって突進し、銃弾で敵を蜂の巣にし、刀で切り裂く快感を感じて欲しい。


左はステージに隠されているサル。1ステージに5匹隠されている。中央はスタイルポイントを得ることができるアイテム。スタイルポイントの倍率ゲージは最大が5。5に保ったままどれだけ敵を倒せるかが高得点の鍵だ
お祭りのドラゴンがゆっくりと横切っていくのが印象深いステージ、「皆、走る」。
爆散した飛行機から投げ出されている状況で、生還をかけて戦う「カフカの策略」
地雷原を越え、ワイン倉や美術品の保存室で戦う「招かれざる客」。他と比べてもアクション要素が強いステージだ
ゲームを進めていくと様々なコンテンツがアンロックされ、キャラクター紹介やコンセプトアートを見ることができる。またチャレンジモードではトレーニングメニューに挑戦したり、ステージごとの最高得点を目指せる

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(2009年 9月 17日)

[Reported by 勝田哲也 ]