PS3/Xbox 360/PCゲームレビュー

クラッシュ上等の超高速公道レースバトル!!
原点回帰を果たした壮絶・痛快カーアクション

「ニード・フォー・スピード ホット・パースート」

  • ジャンル:カーアクション
  • 発売元:エレクトロニック・アーツ
  • 開発元:Criterion Games
  • プラットフォーム:プレイステーション 3 / Xbox 360 / PC
  • 価格:7,665円(PS3/Xbox 360) / オープン(PC)
  • 発売日:12月9日
  • CEROレーティング:B(12歳以上対象)
  • プレイ人数:1~8


 毎年趣向を凝らした新作がリリースされ続けている人気レースゲームシリーズ「ニード・フォー・スピード」。今回12月9日にエレクトロニック・アーツから発売された新作「ニード・フォー・スピード ホット・パースート」は、「バーンナウト」シリーズを手がけたCriterion Gamesによる、クラッシュ上等のカーアクションゲームだ。

 公道レースに警察車両とのバトル、大胆なドリフト走行からニトロやターボでの猛烈な加速、バトルを制するための様々な秘密兵器まで登場と、これまでにないほど「ゲーム的」な装いの本作。目も眩むようなスーパースポーツカーの数々を駆り、爽快・痛快なゲーム性を約束する極限仕様の「ニード・フォー・スピード」に仕上がっている。



■ シリーズ伝統の公道バトルをさらに追求。危ない橋を渡るほどにより速く!

アドレナリン全開の公道バトル!
今回はパトカーでレーサーを追いかけまわすことも可能だ
公道ならではの変化に富む風景も魅力

 「ニード・フォー・スピード(以下『NFS』)」シリーズといえば、その初代作から公道レースを主題としてきた点が特徴だ。猛烈なスピードと危険走行、パトカーとのカーチェイスに激しいクラッシュ。レースというよりもバトル的な要素をクローズアップし、他のレースゲームとはちょっと違った楽しみを提供し続けてきたところに、シリーズとしての真骨頂がある。

 

 この点で考えてみると、サーキットレースのみをフィーチャーしていた前作「NFS:SHIFT」は非常に異質な存在だった。レースゲームとしてのデキがすこぶる良かったことは確かだが、やはりちょっと本来の「NFS」のゲーム性からはかけ離れていた。このため年季の入った「NFS」ファンの中には、自分の知る「NFS」はいつ帰ってくるんだろうと心配していた方もいるかもしれない。

 大丈夫。その「NFS」は今作で、ちょっとやりすぎと思えるくらいの原点回帰を果たして帰ってきた。今作「ニード・フォー・スピード ホット・パースート(以下『NFS:HP』)」は、「Seacrest County」という架空のオープンワールドを舞台に、違法レーサーあるいは交通警察官となって過激な公道バトルを繰り広げるゲームだ。「ブガッティ・ヴェイロンのパトカーが、スピード狂のパガーニ・ゾンダをスクラップにすることがあり得ないなんて、誰が決めたんだい?」とでも言いたくなるような、とてもアメリカンなノリのレースゲームに仕上がっている。

 本作では、100km/h単位のスピード違反が生きがいになってしまっているレーサーと、公道の安全を守るために超改造されたパトカーでレーサーを追い回す警察官と、そのどちらの視点でもプレイできる。そしていずれの側にも相手を打ち負かすための秘密兵器が存在し、トラップを仕掛け、クラッシュを誘発させては高級車を次々に鉄くずに変えていく。路上を法定速度で走る一般車両にとっては迷惑千万そのものだ。



■ ハンドルコントローラー不要! 大胆な操作でガツガツ走るゲーム性

ニトロで急加速!
ドリフトで高速コーナリングを決める

 本作の特徴を伝えるために、まず車両挙動について触れておくべきだろう。前作「NFS:SHIFT」がハンドルコントローラーほぼ必須というストイックなカーシミュレーションを行なっていたことに対して、本作では大胆にアーケードタイプのゲーム的挙動が取り入れられている。トリガーボタンでアクセルを吹かせばグングン加速して、スティックを倒せばギュルギュル曲がって、曲がりながらブレーキを入れればギャリギャリとドリフト走行。基本的な挙動はそれが全てだ。

 ドリフトに入れば200km/h以上の猛スピードでガンガンとコーナーリングできてしまうため標準のゲームパッドでプレイするほうが速く走れるという本作だが、そこに様々なプラスアルファがゲームに深みを加えている。その中で特に基本となるのが「ニトロ」による加速ブーストだ。「ニトロ」は対向車線を走る、一般車両とニアミスする、ショートカットルートを使う、ライバルカーを使ってスリップストリームに入るといった方法でゲージが溜まっていく仕組みになっていて、ゲージを消費することでグンと加速することができる。

 要するにアブない走りをすればするほど、より速く走れるという按配だ。もちろん路上にはプレーヤーがバトルを繰り広げていることなど知らない一般車両が行き交っており、対向車線を不用意に走れば待っているのは大クラッシュ。とはいえクラッシュしても数秒で自動的にレースに復帰できる仕組みがあり大したロスにならないため、積極的に危険走行をしてください、というゲームバランスだ。

 その上で、レーサーあるいは警察官としてキャリアを積んでいくうちに使用可能になる様々な装置が存在し、レーサーと警察官のカーチェイスを繰り広げる「ホット・パースート」イベントでは単なるレースとは異なる独特の戦略性が組み込まれている。続いてそのあたりをご紹介していこう。


「NFS」に公道レースが戻ってきた。今回はレーサーVS警察の戦いをフィーチャーし、様々なギミックを用いた高速バトルが楽しめる



■ レーサーVS警察。時速300kmオーバーのスクラップにするかされるかのせめぎ合い

ゲーム世界は公道が広がるオープンワールド。各地にレースイベントがある
レーサーとして逃げきるか?
警察として逮捕を目指すか?

 本作のメインゲームモードとなる「キャリアモード」では、架空の地域「Seacrest County」を舞台にバトルを繰り広げるレーサーと、それを阻む警察官のどちらでも、自由にプレイすることができる。レースを始めるために必要な操作は、マップ上のアイコンを頼って任意のレースイベントを選択し、使用する車を決めるだけだ。

 

 ちなみにレースイベントにはレーサー・警察官の双方に固有の種類がある。レーサー側なら、普通にレースを行なう「レース」、単騎で目標地点まで走る「タイムトライアル」、ライバルレーサーと1on1でレースする「デュエル」など。警察側なら本部の呼び出しに応じて最短時間で目標地点へ向かう「ラピッドレスポンス」、違反車両を逮捕する「インターセプター」などだ。

 そして双方に共通するレースイベントとして「ホット・パースート」が存在する。これはレース中のレーサーVS複数の警察車両という形で、逃げる側と捕まえる側の集団バトルを繰り広げる本作のメインというべきレースイベントだ。

 「ホット・パースート」のルールは簡単。レーサー側でプレイするなら、スクラップにされる前にゴールラインを通過すれば勝ち(もちろん複数のレーサーが生存していれば順位もポイントになる)。警察側でプレイするなら、全てのレーサーをスクラップにすれば勝ち。そして、そのために使える手段は「車体をぶつける」、「クラッシュを誘発させる」などで、とにかくダメージを与えれば良いというわけだ。

 これをうまくやり遂げられるよう、警察車両には4つの秘密兵器がある。トゲトゲのトラップを車体後部に射出する「スパイクベルト」、前方車両をロックオンして操縦系統にダメージを与える「EMP」、応援を呼んで前方の道路を車両で封鎖する「ロードブロック」、そして空中からの支援を行なう「ヘリコプター」だ。いずれも、バトル中に使用に適したシチュエーションが必ず現れるので、適材適所でタイミングよく使用することが重要だ。

 警察の猛攻から逃れねばならないレーサー側にも4つの武器がある。「スパイクベルト」と「EMP」は警察と共通だが、他の2つは固有。それは、警察車両の武器使用を一定時間封殺する「ジャマー」、一定時間超加速を行なう「ターボ」だ。ドライビングテクニックとこれらの秘密兵器を駆使しつつ、追いかけてくる警察車両を次々に大破させ、逃げきりを狙うというのがバトルの内容となる。

後方の車両を罠にかける「スパイクベルト」。食らったら大ダメージだ
「ロードブロック」や「ヘリコプター」など、警察は組織的にレーサーを追い詰める



バトルに勝利すれば高ポイントを得てキャリアアップできる
高速車両をアンロック
高レベルのレースイベントはクラッシュも劇的に。全ての瞬間で気を抜けない

 レーサー・警察どちらをプレイしても、プレーヤーはレースやバトルの結果得られるポイントによって、様々な特典が受けられるようになっている。新しい車両や新しいレースイベントのアンロックや、4つの秘密兵器のアップグレード、そしてゲーム進行のマイルストーンとなるプレーヤーキャリアのレベルアップだ。

 このあたりの成長要素はごくシンプルだが、新しい車両、新しいレースイベントなどのアンロックは非常にスムーズ。プレーヤー自身のゲームへの習熟に合わせて気持よく進行していく作りになっている。各レースイベントでそこそこの成績を収めるたびに、ほぼ毎回何らかの要素がアンロックされるほどのペースでゲームが進んでいくので、次へ次へとついつい長く遊んでしまう按配だ。

 とはいえ、レーサー・警察それぞれのキャリアレベルのうち、おおむねレベル10(最大はレベル20なので、中間ほど)を過ぎたあたりから、レースイベントがぐっと難しくなっていく。というのも、このあたりから使える車両が最高時速350~400km超というモンスタークラスになるほか、ライバルカーの立ち回りも巧妙になってくるためだ。

 あまりにもスピードがあるため、追う側も追いかける側も、ちょっとした気の緩みや操作の遅れが致命的なクラッシュにつながる。時速400kmで走行中に目前の車両が「スパイクベルト」を展開したら、まず避けきれない。そういった危険を予測しつつ、ライバルカーとの位置取りや駆け引きがますますのっぴきならぬものになっていく。こうして各レースイベントが手ごわくなると同時に、ゲームの戦略性がグッと高まってくるわけだ。

 激しいバトルに勝つためには車両の選択も重要だ。通常、レースゲームでは車の加速や最高速度、旋回性の良さが注目点となるが、本作ではクラッシュに耐える「頑丈さ」やショートカットルートを活かす「オフロード走破性」といった要素も非常に大事になってくる。特に「ホット・パースート」系のイベントでは、イタリア車に多い「速い、曲がる、壊れやすい」車は完全にギャンブル。より確実に勝ちを狙うなら、アメリカ車に多い「速い、曲がらない、壊れにくい」車が有効な選択肢だ。純粋なレースイベントとは全く異なる視点で、プレーヤーの思考を刺激してくれるところが面白い。

 というわけで本作は、ルールはとてもシンプルながら、ユニークな戦略性を持つゲームに仕上がっている。他のマジメなレースゲームのようにリアルな挙動や、車内視点、気の利いたフォトモードなどは存在しないかわりに、ありえないほどのスピード感と危険走行のヒヤヒヤ感、バトルでライバルをスクラップにした瞬間のしてやったり感と、スカッと爽快に遊べるのがいい。ついついやりこんでしまう、クセになる感覚が確実にある。


警察をプレイするならガンガンぶつけてガンガン逮捕! 逮捕というか完全に事故になってるが気にしない

レーサーとして逃げきるなら、ロードブロックの隙間を縫い、トラップを避ける集中力が必要。秘密兵器を上手く活用して警察を撃退しつつ走ろう

タイムアタックや1on1バトルなど、純粋にタイムを競うレース系イベントもある。ショートカットルートを利用するならオフロード性能も重要だ



■ マルチプレイでも熱いバトルが楽しめる。とにかく痛快なゲームを楽しみたい人にオススメ

マルチプレイは最大8名まで対応
追うものと追われる物に別れて壮絶バトル

 コンピューター相手のバトルに慣れてきたら、是非マルチプレイモードにも挑戦して欲しい。本作のマルチプレイでは最大8人の「ホット・パースート」、1on1の「インターセプター」、あるいは「レース」をプレイすることができる。オススメはもちろん「ホット・パースート」だ。反射神経と機転と知恵の限りを尽くして、走行しトラップを仕掛けて勝利を目指す。非常に手強く面白い。

 

 この方向性のゲームとして任天堂の「マリオカート」シリーズを挙げることもできるが、壮絶なスピード感と派手なクラッシュ、相手をスクラップ化することそのものが目的となる刺激的なゲーム性という点で、本作は非常に独特。そういう意味で、本作は他のタイトルにはない独自の世界観、ゲーム観というものを成立させているように思える。

 強いて本作の難点を挙げるなら、シンプルすぎるゲーム性そのものだろう。基本的に、操作が簡単であるため、前作「NFS:SHIFT」のように、あと0.1秒を削るためにドライビングを突き詰める、というような遊び方はそもそも想定されていない。また、車のカスタマイズ・ペイント要素のようなものもないに等しいので、クルマ好きのクルマ愛を満たすような遊び方もほぼできないと考えていい。格好いいスポーツカーが沢山出てきて、信じられないスピードで走って、メチャメチャにクラッシュする、それで全部だ。

 「NFS」シリーズ史上、最もシンプルで、最も理解しやすく、最も刺激的な内容を持つかもしれない本作。「ニード・フォー・スピード ホット・パースート」は、カーレースゲームのファン向けというよりは、より広く、ノンジャンルで痛快なゲームそのものを求めるゲームファンの方々へオススメできるタイトルだ。


【スクリーンショット】

(c) 2010 Electronic Arts Inc. All Rights Reserved.

(2010年12月9日)

[Reported by 佐藤カフジ ]